概要
現在の日本の河川で恒常的に生息する在来種として最大級の淡水魚で、北海道、樺太、北方領土での自然分布が確認されている。
漢字では「伊富」、「伊富魚」、「伊当」と表記される。
名前は大きさの割に細長い体型から「糸魚」と名づけられたとされている。
かつては青森県や岩手県など東北地方の河川にも局所的に生息していたとされるが、環境の悪化により絶滅したとみられる。
成長すると魚食性が強くなり主にフクドジョウや小型のマス類を食べるが、水辺に寄ってきたカエル、ヘビ、ネズミ、水鳥の雛なども襲うとされる貪食ぶりである。
他のサケ類と同じく海に降りる習性があるが、1度の産卵では死なず川も流れが緩やかな水域を好む。
顔つきは他のサケ類のようにスマートではなく、むしろ口ヒゲのないコイ類のような素朴さである。
ただし歯は鋭く顎も頑丈である。
体長は大きいもので1.5mほどに育ち、2m以上の個体も捕獲された例がある。
しかし成熟するまでは6年ほどかかり15から20年まで生きるとされるが、毎年産卵するわけではないともされている。
近縁種としてロシアに生息するアムールイトウや、中国大陸のチョウコウイトウ(メコンイトウ)、朝鮮半島のコウライイトウ、ヨーロッパのドナウイトウが知られている。
日本では「幻の大魚」とされているが養殖化自体には成功しており、観賞魚や、刺身やフライ向けの食用魚として北海道や青森で行われている。
キャッチ・アンド・リリースの対象として釣り人上級者からも人気があり、『どうぶつの森』シリーズや『ぼくのなつやすみ3』などの全年齢向けゲーム作品でも釣る事ができる。
北海道に住むアイヌは食料として重要視するだけではなく、皮を加工して服や靴を作る文化を持つ集落も存在した。
アイヌ語では「チライ (ciray)」、「オペライペ (operaype)」、「トシリ (tosiri)」、「ヤヤッテチェプ (yayattecep)」などと呼ばれていた。
ある民話では鹿を飲み込むほど大きな個体が人々を苦しめたが、英雄カンナカムイに退治されたと伝えられている。
この話は初期の『まんが日本昔ばなし』で「湖の怪魚」としてアニメ化されており、真っ黒の怪魚チライとして登場したが、見た目は本来のイトウとは全く異なるモンスターそのものであった。
関連項目
:イトウがモチーフともされるポケモン。