「その思いがある限り、私はおまえの力となろう……」
CV:塩屋翼
概要
プリキュア達と敵対するキラキラルをうばう存在の黒幕である闇の存在。
ジュリオやビブリー等のしもべ達にキラキラルを集めるように命じている。
しもべのエリシオは“人々の心の光全てを闇に染め上げる事”がノワールの望みだと発言している。
骸骨のような白い仮面、長い黒髪、漆黒のローブが特徴。巨体の胴体から手を生やしており、人間とは思えない造形をしている(正体については後述)。
様々な場所へ虚空から自在に現れる神出鬼没な存在である。
100年前、世界を闇に染める為暗躍していた。当時いちご坂は闇に染まり人々の心が荒廃していたが、当時のプリキュアであるルミエルがノワールの野望を阻止して、いちご坂は闇から解放された。
100年前にいちご山の妖精達も闇の影響を受けたため現在、詳細な記録等は残されていない。
「伝説のパティシエ・プリキュアがキラキラルで世界を笑顔に包み込んだ」という戦いの結末だけが伝承で残されている。妖精の最古参である長老もノワールについて知らなかった。
ノワールの言葉づかいは柔らかめで、プリキュアシリーズでは珍しく部下に対して強権的な態度を取らない首領格である。
過去のプリキュアシリーズの黒幕達は、野望の達成のため邪魔者であるプリキュアの排除を部下に任せ、後方に控えるパターンが多かった(代理の指揮官を立てたケースもあり)。
それらに対して、ノワールは自らが積極的に動いて配下の勧誘や助力などを行なっており、本拠地に佇んで指示を出すだけの存在ではない。黒幕の行動力の高さは大変な脅威と言えよう。
作中での活動範囲は日本のいちご山からフランスのパリにまで及んでいる。ただ、ノワールは自由に行動する反面、普段はどこにいるのか一切不明である。
ジュリオやビブリーからはノワールと連絡を取れない模様。エリシオがグレイブにノワールからの指示を伝えるシーンはあるが、エリシオがノワールと会話する描写は最終クールからである。
能力
ノワールは「心の闇」を抱える人々から闇のキラキラルを抜き出し、それを闇の力がこもったアイテムに変換する事ができる。
「アイテムに宿った闇の力を使えば心の中にある願望を満たせる」と囁き、その誘惑に乗ってアイテムを受け取った者は超常的な力を振るう事が出来るようになる。
力を授かったものは「ノワールのしもべ」と呼ばれる。
ノワールが闇のアイテムを与えるのは「心の闇を自ら生じさせた者」に限られる。
ノワールの力を受け入れた者達は被害者ではなく当事者であるというのは本作の世界観において重要な点である。
本作のプリキュアの能力は「キラキラルを通じて他人の心から思いを受け取り、自分の思いを乗せて返すこと」だが、その意味でノワールはプリキュアと同じ資質の力の持ち主とも言える。
キラキラルを通じて相手の心の闇を受け取り、増幅させて「彼らが求める闇の力」を与える。それを受け取った者達の心はますます荒んでいく。
キラキラルを通じて「友情」・「愛」・「幸福」などプラスの思いを繋げるのがプリキュアで、「悲しみ」・「怒り」・「憎しみ」などマイナスの感情を力に変えるのがノワールである。
プリキュアとノワールはコインの表と裏の関係にある。
第23話では闇の力で弓と矢を作り出しており、プリキュアのクリームエネルギーと同様、武具を錬成する能力もある。
真の姿に戻った場合の能力は後述。
配下への対応
「ノワールのしもべ」はノワールに支配されているのではなく、闇の力をノワールから貰う事を自ら望んだ者である。いわば支配ではなく契約である。
ノワールは怒り・憎しみ・妬みといった「心の闇」を抱く者への支援を惜しまない。
ジュリオがノワールの任務よりも個人的な動機を優先した時、それを咎めず肯定して新たな力を与えている。それを嫉んだビブリーが「なぜ私だけを愛してくれないのか?」と言った時は「嫉妬か。素晴らしい」と賞賛して力を与えた。
闇が増幅した結果、しもべ達の心が潰れても気にしていない模様。
ビブリーがキュアパルフェに敗北後、ノワールは無視を続けて彼女の孤独感による心の闇を高めていった。「次にプリキュアを倒せなければ用済み」の最終通告をするが、ノワールの言葉を待ち続けたビブリーは救いを感じ、彼女は歓喜の中で自滅の道を進んでいった(最終的にはプリキュアに救済される)。
しもべ達がプリキュア側へ寝返った時は、偽りの闇として自ら粛清することも厭わない。
ノワールの正体
過去
46話にてノワールの正体が明かされる。
元は人間であり、ルミエルの生前の知り合いである。
外見は若干癖のある黒髪とツリ目で黒い瞳(ハイライトが殆どない)が特徴。髪さえ伸ばせばエリシオとそっくりである。
100年前、戦場で生まれ育った彼は、ある日ルミエルの工房前で倒れていたところを発見される。まだノワールが人間の青年だった頃の話である。
目の下に隈があり健康状態が悪かったようだが、それ以上に彼は心が傷ついていた。戦場での許されない罪のために心が闇に染まっており、スイーツを作るとそれが灰になってしまう。
ルミエルは彼を笑顔にしてその心を光に満たしてあげるべく、客人として迎え入れ、寝床や食事でもてなした。その献身的な態度にノワールは少しずつ彼女に心を開くようになる。
そしてある日、ノワールはルミエルに尋ねる。なぜスイーツを作っているのかと。
「みんなを笑顔にしたいから。もちろんあなたも」とルミエルは答えた。するとノワールは突如、彼女の腕をとり、険しい瞳でじっと見つめながら強い口調で言い放つ。
「私を笑顔にしたいのなら、私だけにスイーツを作れ」
それは恫喝に近かったが、ノワールが自分の本心をストレートに口にしたものだった。
現在のノワールが人の心の闇に付け込むため甘言を躊躇なく使うことを考えると、この不器用すぎる告白とは対照的である。
ルミエルは「みんなを笑顔にするプリキュア」としての使命があり、ノワールの求愛とも取れる告白に対して「ごめんなさい」としか言えなかった。この時にルミエルが浮かべた困惑の表情は、今までノワールにずっと向けてくれていた優しい笑顔とは全く異なるものであった。
ノワールの闇に染まっていた心は完全に折れ、『大好き』の気持ちは憎しみや悲しみを誤魔化す偽りのものと見なしてしまう。
彼の心の闇のキラキラルは増大していき、自らの肉体を捨て「悪意そのもの」の闇の化身となった。それが現在のノワールである。
一方、空っぽになった肉体には、ルミエルが自分のために作ってくれたカップケーキのキラキラルを闇に染めてそれを注入した。かりそめの命を与えられた肉体は「ノワールの思い通りに動く肉人形」として生まれ変わった。ノワールはその肉人形にエリシオという名前をつけ、世界を憎しみや悲しみで染めるのに必要な大量のキラキラルを奪うための「しもべ」として利用することになる。
こうして『キラキラルを奪う存在』が生まれたのだ。
散々引っ張っといて痴情のもつれかと侮るなかれ。
上記の通り彼は戦場で生まれ育っており、戦争で許されない罪(ボカされているが恐らく殺人や窃盗の類)を犯してしまい、心が傷ついていた。
そんな時に1人の女性が無償で提供した愛は、何よりも有り難かったのだろう。
その愛を否定された(ように彼が感じた)とあれば一気に拗らせてしまうのも、そう非現実的ではない。
オフィシャルコンプリートブックのスタッフインタビューでは「振られた腹いせというより、ルミエル1人では応えられないほどに愛を強く求めたがゆえの悲劇(要約)」と説明されている。
なおルミエルも「自分がノワールを意図せず傷つけてしまったことが全ての元凶」とずっと後悔しているが、最終的にノワールによっていちご坂が闇に覆われ人心が荒廃し地獄の有様になったことで私情を殺してプリキュアとして街の人々を守る使命を貫くことを決意。孤軍奮闘しながら最終的にノワールを打ち倒し、人々の笑顔を取り戻した。だが全ての戦いが終わった後にルミエルの笑顔があったかどうか…… 作中では彼女のその後の人生は語られることなく、死後にその魂は妖精たちによって祭壇で祀られた。
一部では痴情のもつれ繋がりでハピネスチャージプリキュア!と絡めたネタが挙げられていたりも。
時代背景の考察
詳細な描写はないが、ノワールというフランス語の名前を持つことや、100年前(1918年)は帝国主義による第一次世界大戦の最中だった事から、彼は欧州で起きた戦争に巻き込まれたと考えられる。
第1次世界大戦中、フランスは消耗的な戦闘を繰り返す主戦場となり、フランス軍の犠牲も多く、大規模な兵士の反乱や脱走事件が起きるなど、かなり悲惨な状況であった。
ノワール最終形態
46話でキラキラル集めが終わり、世界を闇に染める力を得る。
そして彼はエリシオを吸収し、自分が捨てた肉体を取り戻した。
外見はエリシオと似ており、黒紫色の長髪と赤い瞳(ハイライト無し)が特徴。
最終形態の能力
戦闘以外では、多数のディアブルの分身を作り世界中を闇に染め上げる力や、映像を映しだす能力を発揮している。
戦闘においては、人間の体を取り戻したために以前の形態のような不定形な体ではなくなったため、戦い方はエネルギー弾を駆使するスタンダードなもの(アニメ基準で)となっているが、威力は非常に高いものとなっている。また、耐久力も優れたものとなっており、プリキュアのクリームエネルギーによる連携攻撃を余裕で耐え抜いている。
この後ルミエルの介入があり、プリキュア6名+ルミエルの力でようやく互角の戦いになった。
末路
100年越しの因縁に決着をつけるべく、キラパティを襲ったノワールだが、プリキュアは彼らの事情を知り「ルミエルさんとノワールの笑顔を取り戻す」ために奮起する。
ルミエルの助力により戦力差が縮まったところで、吸収されていたエリシオが表に出て、ノワールを追い出すように肉体の支配権を取られてしまう。
エリシオはプリキュアとの戦いを通じて知ったことを語る「光と闇の片方だけを消す事は不可能だ。心がある限り光と闇の戦いに終わりはない。心が空っぽの自分がこの戦いを終わらせる事ができる」と、そして彼はルミエルとノワールを同時にカードで封印。
光は闇を、闇は光を打ち消し合いながらその波は世界中に広がっていく。全ての光と闇は失われ、全ての生物の心から感情が喪失する。そして地球は『空っぽの世界』へと作り変えられた。
その2つのカードはエリシオの武装として使われた。
その後、紆余曲折の末に心の存在を受け入れたエリシオ(詳細は本人の記事で)は、そのルミエルとノワールのカードをキラキラルに変換していずこかへと去っていった。そのキラキラルは世界に溶け込み消えていった。
最終的にプリキュア達とノワール一味の戦いに明確な決着はつかなかったのだが、そもそも心の光と闇をめぐる戦いは「大好き」の気持ちがある限りずっと続くので、ある意味正しい終わり方と言えよう。
ある仮説
48話でエリシオの過去回想シーンがあり、ビブリーやジュリオがノワールのスカウトを受けるシーンがある、その場面にエリシオもいた。
エリシオの影が伸びて、その中からノワールが出ている事が確認できる。
作中で説明はなかったが、肉体のないノワールはエリシオの影という形で存在していたのだろう。エリシオが人形というなら、マリオネットがからくり糸を通じて操り手と繋がっているように、ノワールとエリシオはずっと繋がっていたわけだ。
ノワールが普段どこにいるか分からなかった事も、エリシオが他のしもべよりもノワールの指示を直接受け取る機会が多かった事も、当然の事だったと言えるだろう。
エピローグにて
最終決戦から数年後を描いた第49話(最終話)のエピローグで、大人になった宇佐美いちかがキラパティ片手に世界中を旅している姿が描かれている。
いちかは中東風の国に滞在していた。そこで犬を連れた小さな男の子がピンクブラウンの髪の小さな女の子をいじめている姿を目にする。
いちかは男の子が本当は女の子が好きなのに不器用だから、いじめてしまったんだと見抜き、男の子を優しく諌め、そして2人にカップケーキをご馳走して笑顔にしてあげた。
余談
名前について
役者について
ノワールを演じる塩屋翼氏は、プリキュアシリーズは本作が初出演。翼氏の実兄である塩屋浩三氏もふたりはプリキュアのベローネ学院の校長とフレプリ劇場版およびプリキュアオールスターズDX3に登場したトイマジンを演じており、兄弟でプリキュアの敵キャラを演じることになった。
転生後を演じた鈴木みのり氏もプリキュアシリーズ初出演であり、彼女はその以前に第18話に登場したゲストの男の子を演じている。
小ネタ
なお、真っ黒な体に白い仮面をつけている外見や、胴体から直接手を生やせるなどの点から、一部のファンの間では「カオナシみたい」と言われている。
関連タグ
ジュリオ(プリキュア) ビブリー グレイブ(プリキュア) エリシオ ディアブル(プリキュア)
トイマジン:中の人のお兄さんが演じた、劇場版プリキュアのラスボス。
プリキュア以外
イカーゲン:ノワールの中の人が、一時間前(後に1時間後)に出てくる、敵組織の幹部。彼が死んでからノワールが登場したため、一部のファンからは「ノワールは彼の生まれ変わりでは?」との噂がある。
アラシヤマ:ほぼ完全に一致(一人称や京都弁を除く)。中の人も同じ。
フォンセ・カガチ:黒幕としての役割が完全に一致。