かつて岡山県岡山市南区箕島の国道2号岡山バイパス沿いに在していたドライブイン。通称は平食(ひらしょく)。
概説
1981年(昭和56年)開店、2015年(平成27年)6月16日20時閉店。
国道2号と岡山県道73号との合流ランプの西側下り(倉敷福山方面行)線沿いに存在。最盛期には岡山バイパスのほぼ向かいとなる地点(上り線、岡山姫路方面行)に2号店を設置していた。なお2号店の方は本店に先立って2013年3月20日に閉店している。
また岡山市南区藤田の国道30号線沿いには店舗こそなかったが自販機集団(オートレストラン)を置いていた。
西日本(近畿・中四国・九州)のヲタ界隈に現在もなお熱く往年の姿が語られ伝えられる「伝説のドライブイン」である。
店舗の外には膨大な自販機集団(オートレストラン)が置かれ、また店内店舗として「ヤマザキYショップ」(のちのデイリーヤマザキ)を構えていた。
ちなみにマスコットキャラクター(今に言うゆるキャラ)がいた。平食の看板メニューのひとつであるおでんの煮卵(味玉)をイメージしたひらたまごちゃんである。
歴史
当初こそ長距離配送のトラック野郎を対象とした、お冷やのグラスがワンカップ酒の空き瓶という、どこにでもある漢すぎるドライブインであったのだが、1990年代の第2次ゲーセンブーム(いわゆる格ゲー&クレーンゲームブーム)あたりから(漢風味を残したままで)徐々に方向性が怪しくなっていった(褒め言葉です)。
ラーメン1杯ワンコイン(500円)のレベルで、国道2号を利用するトラック野郎や走り屋の皆様、果ては運転免許を取りたての体育会系大学生などに「ワンコインでそこそこ満足に食える。あまつさえ夏目漱石/野口英世一枚を持っていけば腹十二分目ないしは食いきれぬほど満腹になれる」コスパの良すぎるお店として広く知れ渡った。さらに本店隣地にゲーセン(楽市楽座)が出来上がると、メシを食うぐらいならゲームに注ぎ込みたいレベルの現地ヘビーアーケードゲーマー御用達の飯屋としても機能した。
そして上述した第2次ゲーセンブームを越えたゼロ年代、平食はついに萌えた。
クレーンゲームのプライズに抱き枕やねんどろいど、ガチの萌えフィギュアなど濃いにも程があるヲタ御用達グッズを導入しまくり、ゲームコーナーには数多くの萌えポスターが貼られまくったのである。
そして、これを目当てに多くの痛車のオーナーが平食に集まるようになり、最終的には平食の駐車場が痛車で埋め尽くされイベント化する事態も起き、そして平食は痛車の聖地とまで呼ばれるようになった。
かくて平食は昭和レトロと平成萌えが混然一体となって同居するカオス空間として、多くの濃い人たちに愛されるドライブインとなったのである。
しかし、2010年代に入ると土木技術の進歩により近隣の土地造成が加速。結果、周辺ロードサイドにコンビニやファーストフード・ファミレスなどが進出。トラック野郎の一部の皆様はそちらに流れてしまい、平食は壮絶な生存競争に晒される事となった。
それでも長年培ってきたノウハウと人脈から大手店舗でも実現できないローコストを実現させ奮闘する。
しかし2014年1月に維持費を捻出できなくなった、として萌えゲーム類を撤去。さらに運命の2015年、ついに平食が仕入れ元としていた卸売業者が音を上げる。かくて平食は値上げか閉店かの選択肢を突き付けられ「値上げをすれば周辺のコンビニや飲食店を相手には太刀打ちできない」と判断。6月16日23時をもっての閉店を決意した。
予告最終日には多くの客が詰めかけた。結果、平食の資材は閉店予定3時間前に底をつき、閉店は20時に早まった。しかし、平食が閉店しても誰も帰らないどころか、夜に向けて人は増える一方であった。そして平食店内では店員さんたちが最後の掃除を行っていた。
本来の閉店予定であった23時。平食の従業員によって本当に店内の明かりが落とされた時。
集まった客たちは平食を万雷の拍手で包んだ。
34年間愛されたドライブイン、それに相応しい、人々に惜しまれての最期であった。
その後
隣接していたゲーセンと車装備店は平食閉店後も数ヶ月は営業していたが、結局は閉店している。
現在、平食の跡地は廃材業者に買い取られており、廃材・廃棄物や資材の置き場になっている。半分廃墟と化した看板の骨組みなどに往年の姿を見る事も出来る。
関連タグ
SSSS.DYNAZENON:第10話に似た外観の建物「ヨモツ食事センター」が登場する。