主な意味
1の概略
中欧・北欧で4月最後の日に行われる行事「Walpurgis Night(英)、Walpurgisnacht(独)=ヴァルプルギスの夜」は、国によって形式は異なるものの、魔女達が集う祝宴の夜とされることが多い。
本来はイングランドの聖ワルプルガの名に因んだもので、北欧のヴァイキングといった非キリスト教の春を祝う風習と混じり合い、祝日となった。
ドイツではブロッケン山で魔女達が山の神々と共に、春の到来を祝し盛大な祭を行うとされており、ゲーテの戯曲である『ファウスト』にもこの魔女達の祝宴が描かれている。
キリスト教が広まるに従い、異端・異教の類い、闇の存在として見られ、追いやられるようになった。そのような印象の元、『魔の山』や『ファンタジア』、『ハリー・ポッター』など様々な分野の作品に影響を残した。
2の概要
CV:水橋かおり
舞台装置の魔女(通称・ワルプルギスの夜 / 本名不明)。その性質は無力。
回り続ける愚者の象徴。歴史の中で語り継がれる謎の魔女。
この世の全てを戯曲へ変えてしまうまで無軌道に世界中を回り続ける。
普段逆さ位置にある人形が上部へ来た時、暴風の如き速度で飛行し
瞬く間に地表の文明をひっくり返してしまう。
(公式サイトより)
(以下、第10話「もう誰にも頼らない」以降のネタバレが含まれます)
全ての運命の不幸を無くそうとする、地上をマホウで埋め尽くし、
全人類を戯曲の中へ取り込もうとする、動く舞台装置。
この世の全てが戯曲ならば悲しい事など何もない。
悲劇ではあるかもしれないけれど、ただ、そおいう脚本を演じただけ。
ワルプルギスの夜で芝居は止まって、もう地球は一周だって回転しない。
物語は転換しない。
明日も明後日も、ワルプルギスの夜。
(プロダクションノートより)
単独の魔法少女では対処しきれない超大型の魔女。見滝原町に出現することが決定づけられている災厄のような存在であり、『魔法少女まどか☆マギカ』における事実上のラスボスとなった最悪の敵である。
本名が謎とされる唯一の魔女。魔法少女たちの間で『ワルプルギスの夜』と呼ばれている。なお、劇中では登場直前にまどか文字でWalpurgisnacht(ヴァルプルギスナハト:独語)という表示が現れる。
多くの魔女はまどか文字で書かれた魔女名を持つが、その名を劇中で呼ばれることはない。しかし彼女だけは劇中でこの通称で呼ばれることから、この魔女が他の魔女と比べて特別な存在であることが伺える。
外観
イメージ映像などで第1話から登場しつつも、長らくシルエットのみで全貌を知ることが出来なかったが、6話にてその名が明かされ、10話において別の時間軸ではあるが全体像を披露。11話において遂に本編の時間軸で出現した。
外観は魔女という言葉にふさわしい、白い縁取りの青いドレスを纏ったような女性の姿。
頭部は上半分が切り取られたように存在せず、そこから2本の角か帽子のようなモノが生え、そこに半透明のヴェールを着けている。
また、スカートの下には足の代わりに巨大な歯車(これが本体であるという)が蠢いている他、彼女を中心に虹色の魔法陣がゆっくりと回り続けている。
他の魔女と比べてもはるかに巨大な体躯をしており、荒廃した見滝原町を見下ろしながら、天地に対して逆さまの状態で浮遊していた。
また、彼女のシルエットは逆向き正三角形( ▼ )であるが、これと対になるように鹿目まどかの魔女化した姿はシルエットが正三角形( ▲ )になるようデザインされている。
作中での行動
主な攻撃手段は、黒い触手のようなモノを伸ばして突く(この触手はその後、複数の使い魔に変化する。)、炎で出来たような槍を飛ばす、周囲の破壊されたビルを浮遊させて叩き付けるといった、他の魔女と比べて遥かに大規模なもの。耐久力も極めて高く、暁美ほむらとの戦闘では大量の軍用兵器による巨大な火力をぶつけられながら、ほとんどダメージを受けずに笑い声を上げていた。
ベテランの魔法少女が存在を把握しており、基本的に個々の魔女については言及しないキュゥべえが出現を予言していること、ほむらの部屋に掲示されていた資料に古代から伝わると見られる文献がある事などから、古くから存在する魔女である事が伺える。
また、その出現は災害と同意義であるらしく、過去にもなんどか出現し、表向きは局地的な自然災害として処理されていたようである。そのため、魔法少女を知らない表の人間もワルプルギスの夜(災害)の予兆を観測し、街の住民を避難させていた。
その実力については、バラつきがあるもののただただ強力な魔女である事が語られている。
唯一つ言える事は、過去のループにおいて彼女を倒し得た(又は撃退した)とはっきり描写されているのは鹿目まどかただ一人のみであり、その結果、彼女は常に死亡しているという事だけである。
…そして、前述の通り本編において登場した上下逆さまになった姿は「まだ本気を示していない姿」である。「本気になった」彼女がどれほどの被害をもたらす存在だったのかもまた、現在に至るまで明かされていない。
ちなみにゲーム版では、彼女を討伐する事に成功すれば、他の魔女と同じようにグリーフシードを落とす。
魔女の結界
結界という異空間に閉じこもる他の魔女たちとは異なり、彼女は現実世界の見滝原町にその姿を現して多大な被害をもたらしている。その様子は魔女を見る事が出来ない一般人にとっては巨大な自然災害に感じるらしく、作中ではスーパーセルとして認識され、人々が避難する描写がなされた。
魔女が見える魔法少女の視点では、彼女の出現前に人形や象の姿を模した大量の使い魔たちによるパレードが行進する。そして彼女自身が出現すると、彼女の周囲がまるで無重力空間になったかのように破壊されたビルの残骸が漂い、それが赤い炎によって燃え上がる。
暁美ほむらの言によると、「他の魔女と違って、結界に隠れて身を守る必要がない」という。つまり、そもそも結界が魔女にとって一種の防衛手段であり、それを必要としないほどワルプルギスの夜は強大な魔女なのだと言える。
使い魔
舞台装置の魔女の手下。その役割は道化役者。
強大な魔力に引かれ集まった無数の魂。
ワルプルギスの夜自身が元々一人の誰かであったのか、
或いは多くの魂が集合することにより生まれた幻であるのか、
今となっては分からない。
(公式サイトより)
ワルプルギスの夜の使い魔であり、主であるワルプルギスと同じく名称不明とされている唯一の使い魔。
ワルプルギスの夜が攻撃に使う黒い触手状の槍が分裂して生まれ、真っ黒に塗りつぶした少女のような姿をしている。ワルプルギスの夜を食い止めようとする暁美ほむらに対し、高笑いをしながら周囲を飛び交う事で翻弄しようとした。
劇中では短い時間しか登場しなかったものの、その姿が最終話のエピローグで表示された「過去の魔法少女たち」のシルエットと酷似していることが、ワルプルギス自身の考察を含めて話題を呼んだ。また、コミカライズ版では巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子の姿を形取った3体の使い魔が登場している。
アニメ本編では特に攻撃を行う場面が描かれていないが、上記のコミカライズ版では巴マミのマスケット銃、美樹さやかの剣といった各々の魔法少女としての武器や戦闘方法をほぼ再現しており、更に3体で連携して戦闘を行うなど、非常に強力な使い魔として描かれている。
本編ではシルエットしか登場しないものの、服や髪の輪郭線のデザインは存在している。
また、名称もプロダクションノートでは仮に影ま法少女と記されている。
パレードの使い魔
上記の使い魔の他に、11話のワルプルギス登場シーンで彼女の露払いを行ったパレード軍団がいる。彼らは魔女図鑑に掲載されず、使い魔であるかどうかは不明である。
最初に小さい使い魔がちょこちょこと走りだすが、あとに続く象に踏み潰され、その後を無数の象が行進していく。
元ネタにおける「魔女のお祭り」を表現していると思われる。
正体について
他の魔女とは明らかに性質の異なる魔女だが、その正体については未だ謎が多い。
第1話時点で、スカートの色や形状などから「美樹さやか=ワルプルギスの夜」説が存在した。しかし彼女が別の魔女になったことと、明瞭に描かれたワルプルギスとはあまり似ていないことなどから、現在ではその可能性は極めて低いと思われている。
また、
- 魔法少女としての武器が時を操作する歯車であり、ワルプルギスの夜の象徴と一致している
- 前述のようにワルプルギスの夜のデザインは魔女化したまどかと対になるようにデザインされている
- 『その性質は無力。回り続ける愚者の象徴』という、まるで彼女自身を指しているかのような言葉
という点から、「暁美ほむらがワルプルギスの夜の元の魔法少女である」という説も存在していた。しかし、現在はゲーム版でほむらの魔女化した姿が登場したため、否定されている。
他にはその使い魔から、古の時代に魔法少女を救うために契約したが、限界を感じて魔女に成り果てた魔法少女という説も存在する。
結局、作中では最後まで彼女の具体的な正体は明かされる事はなかった。
ただし、脚本を務めた虚淵玄は後の雑誌インタビューにおいて、「もともとは一人の魔女だったものが、後に他の魔女の波動を集めることで現在の姿となった。」という、魔女の集合体とも言うべき存在であるという設定を明かしている。