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ファンタジア

ふぁんたじあ

フィンランド語では「ファンタジー」、音楽用語では「幻想曲」を指す。本項ではディズニー映画について解説する。
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曖昧さ回避

  1. 1940年にディズニーが制作した長編アニメーション。本項で解説(主に2010年に販売されたDVDスペシャルエディションに収録されたブライアン・シブレイによる音声解説を元に記述する)。
  2. RPG『テイルズオブファンタジア』(TOP)の通称。
  3. pixiv内の企画『pixivファンタジア』シリーズのこと。
  4. マリオカートWii』に登場するマシン。(ファンタジア(マリオカート)を参照。)

登録タグでは2が大半を占める。


概要

世界初の「ステレオ映画」であり技術的に見て非常に重要な歴史的な映画である。


音楽が主体のため、映画というよりは「音楽作品」として評価される事が多い。

また作品自体がとても長く、幾度も発売されているがカットされていたり再編されていたりする。


中でも『魔法使いの弟子』は特に有名。この作品で出るミッキーは赤いローブに青いとんがり帽子をかぶっている。


続編として『ファンタジア2000』が、上映から60年後に製作された。

製作

魔法使いの弟子

1937年の夏(1938年という説もある)、ビバリーヒルズで食事中だったウォルト・ディズニーは、指揮者のレオポルド・ストコフスキーと偶然居合わせた。クラシック音楽の指揮者としては珍しく、映画出演などで有名になっていた彼のファンだったウォルトは「ミッキーマウスの短編映画を"魔法使いの弟子"をもとに作りたいので指揮を頼みたい」と明かした。ディズニー作品のファンだったストコフスキーはこれを快諾、意気投合した2人によって企画が始まった。

こうして1年をかけて「魔法使いの弟子」は完成したが、録音だけでも総勢100人のスタッフを動員したことで16万ドルも費やしてしまい、それまでの短編作品とは比べ物にならない破格のコストが掛かった。これにより、ウォルトは「魔法使いの弟子」を長編の一部にしようと提案し、アニメーションとクラシック音楽の調和をテーマとした「コンサート映画」と題した映画の企画に発展させる。


長編映画化

製作にあたり、ウォルトとストコフスキーはクラシック音楽を大衆に分かりやすく、親しみやすく広めようと考えていた。そこで、音楽評論家ディームズ・テイラーのラジオでのユーモラスな解説をウォルトが気に入っていたことから、彼が解説担当として迎えられた。

選曲には多くの議論がなされた。ウォルトは時代を超えた傑作を選ぶため、数百曲のクラシック音楽を聴いたという。「熊蜂の飛行」や「ワルキューレの騎行」といった様々な曲が候補に上がったが、最終的に厳選された8曲に決定した。


長期に及ぶ製作

規格外の作画枚数、当時最新のステレオ録音技術の導入など、大規模な製作が祟り、完成には長い期間と多額の経費が掛かった。こうして3年が過ぎ、映画はようやく完成し、1940年11月13日に公開された。ウォルトは「何とか完成させられたが、もう二度と作れないだろう」と語っている。

完成間近に、ストコフスキーによって映画のタイトルは「ファンタジア」に決定した。


解説

編曲

本作では初めてクラシック音楽に触れる人にも親しみやすくするために、曲を編集して短くしたり、曲順を入れ替えたりするなどの大胆なアレンジが多く行われた。ウォルトのこのような方針について、ストコフスキーは「木の剪定のようなものだ」と支持した。

また、本来は挿入していない、作中の効果音に見立てた編曲も随所に見られる。


ファンタサウンド

ストコフスキーは本作の全ての曲をステレオ録音しようと画策していた。各部門とソロは別々のマイクで録音し、後にミックスするという提案にウォルトも賛成し、開発された音響システムがファンタサウンドである。しかし、そのためには大量のスピーカー(30〜80個)が必要になった。それ故に映画館に多くの設備を導入するためにウォルトは独自に配給班を編成した。


前例のないスケール

まだコンピューターなどが存在しない年代にもかかわらず、制作期間3年、11人の監督、120人以上のアニメーター、103人編成のオーケストラ、上映時間126分、原画枚数100万枚とかつてない程の大規模なスケールで制作されたことから、史上最も手間を掛けたアニメーション映画の1つともいわれている。


トッカータとフーガ ニ短調

映画の幕開けとなる曲。この曲は指揮者のストコフスキーの十八番であり、冒頭に持ってくることについては皆同意見だったという。監督はサム・アームストロング。序盤では指揮者と演奏家の色付きのシルエットが続く。今でこそ当たり前のように行われている撮影方法だが、当時は影の投射に巨大な照明が必要だったため、撮影が非常に困難だった。また、ウォルトはこのシーンを3Dで表現しようとも考えていたという。


途中からは抽象画のようなアニメーションが展開される。これは当時ウォルトがレン・ライオスカー・フィッシンガーの抽象映画に影響を受けていたことによる。フィッシンガーは1938年頃よりディズニースタジオでアニメーターとして雇われており、「トッカータとフーガ ニ短調」の制作に携わっている。ウォルトは「音楽会でウトウトしている雰囲気」を目指し、演奏家と抽象的なイメージを求めたが、フィッシンガーのリアリズムを完全に排除した抽象性の強いデザインに対し、「観客は新しいものを好むが、そればかりだと落ち着きをなくす」と述べ、最終的にフィッシンガーの表現は大幅に修正された。後に彼はスタジオを去ったが、修正されたとはいえ本作では至る所に彼のデザインの影響が垣間見える。


組曲"くるみ割り人形"

主題とアニメーションはそれまでのシリーシンフォニーシリーズに近い作品。8つの楽章の内6つが使用されている。チャイコフスキーのバレエ組曲をバックに、花や魚や自然の精霊たちが幻想的な踊りを繰り広げる。また、昆虫の音楽隊を出す案もあったらしい。


こんぺい糖の踊り

ディームズ・テイラーはこの曲について、「交響曲ではないため各楽章に繋がりはないので順序を入れ替えても差し支えないだろう」と言った。そこでウォルトは、原作のお菓子の国の妖精を露の精として解釈し直した。以降は自然探求をテーマに、妖精や精霊達を描いていく。

前作に引き続き監督はサム・アームストロングが担当。妖精のハチドリのような動きは、ナイン・オールドメンの1人レス・クラークが考案した。

劇中で蜘蛛の巣を露がつたうシーンには精巧な作画が見られる。


中国の踊り

7体のマッシュルームのダンサー達が輪になって踊る。当初ウォルトはカエルの前でトカゲを踊らせるつもりだったが、スタッフの1人がキノコに東洋的な要素を見出したことでそちらに変更された。ダンサーの動きは「三馬鹿大将」を元にしている。


あし笛の踊り

水面上でバレエを踊る花達を描いている。アニメーターの参考用に多くの実写映像が撮影された。花がくるくると回りながら滝に落ちていくシーンはウォルトの発案である。


アラビアの踊り

海の底の金魚の舞。劇中の金魚の動作はウォルトが細かく指示を出している。ウォルトは「魚達は女性的で美しく魅惑的だ」と語り、金魚のなまめかしい動きを表現してほしいと要請した。ウォルトの金魚に対するこだわりは前作「ピノキオ」のクレオにも見られる。

クラークと同様にナイン・オールドメンのフランク・トーマスオリー・ジョンストンは、この透き通っていて繊細なアニメーションを絶賛した。


ロシアの踊り

活気に満ち溢れた花達のダンス。背景を森林ではなく黒にしたことで花の色彩と動きが強調されて見える。花のエネルギッシュな動きの作画にはかなりのテクニックを要したようである。


花のワルツ

様式的な表現が一掃され、「こんぺい糖の踊り」と同様に妖精の世界が現れる。しかし登場する妖精はそれとは別のものである。このシーンでは場面が夏、秋、冬へと移り変わっていくのが特徴。葉が紅葉して舞っていくシーンや、種がバレリーナのようにふわふわと飛ぶシーンはウォルトの希望によるもの。なお、後者は描くのに1枚5時間は掛かるのだという。氷の精が水面を滑走する様子はスケートの動きを参考にしている。クライマックスシーンは雪の結晶の形をレール上で動かし、妖精のアニメーションを二重露出で合成して表現された。


魔法使いの弟子

ミッキーマウスが主人公の物語性の強い作品。大魔法使いイェン・シッドの帽子を無断で被ったミッキーは、ほうきに命を与えて面倒な水汲みをさせようとするが、止める方法が分からないため大混乱に陥る、というストーリー。監督はジェームズ・アルガー

概要を読んだストコフスキーは、主人公がミッキーであることについて、「我々を象徴する新たなキャラクターの方が良いのではないか」と提案、「ただの案なので却下しても構わない」と付け加えた。無論ウォルトはこれを却下した。その後も制作中は「白雪姫」に登場する小人のおとぼけを出す案もあったらしいが、ウォルトは他の長編のキャラクターを使いたがらなかった。

数多くの作品であらゆる役を演じたミッキーだけが例外だった。


ミッキー主演作品だけあってか、ウォルトは制作中に多くのアイデアを出した。特にミッキーが崖の上で指揮をするシーンには明確なビジョンを持っていたといわれている。

曲が終わるとストコフスキーとミッキーが握手をするシーンが影で表現される。本作でミッキーが台詞を発する唯一のシーンである。


春の祭典

「生命の誕生と恐竜の時代を表す曲を」というウォルトの発言をきっかけにテイラーが選んだ曲。広大な宇宙空間に始まり、地球上に生物が育まれ、恐竜の誕生と繁栄、絶滅といった生命のドラマが展開される。ビル・ロバーツポール・サターフィールドの共同監督による作品。

元は同じストラヴィンスキー作曲だが、「火の鳥」を使用する予定だった。


序盤の宇宙空間のシーンでは、電球を赤く塗り、6メートル四方の部屋につり下げ、背景に小さな穴を開けた黒い幕を置いて裏側から照らし、カメラにレール上を走らせて表現した。

火山とマグマのシーンでは、バケツの中でオートミールと泥とコーヒーを混ぜ、ホースを入れて空気を出す映像を参考に映像化された。また、このシーンではウォルトは「美しく描いて欲しい」と自身のビジョンを語っていたという。

続いて原生生物が何百万年もかけて進化していく様が描かれる。この一連のシーンは後に科学者になる者達に影響を与えたという。

そして、恐竜達の神秘的な弱肉強食の世界が広がる。ストーリーディレクターは恐竜の動きが喜劇的に捉えられることを懸念し、細心の注意を払ったとのこと。終盤ではステゴサウルスティラノサウルスの闘いが描かれるが、実際にはどちらも同じ時代に生きていた恐竜ではない。

クライマックスでは恐竜達が死に絶え、大地震で地上が割れ、大地が太陽に照らされるシーンで幕を閉じる。当時恐竜が絶滅した要因としては、隕石衝突説よりも地殻変動及び気候変動説が有力だったため、恐竜が干ばつによって苦しむ様子が描かれた。


ウォルトは当初「春の祭典」で映画を締めようと考えていたという。理由は、観客への衝撃が強すぎて後に何を見せても印象が薄くなってしまうと思ったからである。


サウンドトラック君

休憩が終わり、後半に入る前に挿入されるサウンドトラックの説明。1938年のストーリー会議でウォルトが提案して入れられたシーン。1本の細い線から成るサウンドトラック君が、テイラーの要求に応じて様々な音を奏でる。

目も口もない無機物に感情を持たせる表現技法は、「アラジン」の魔法の絨毯へと続くディズニーアニメーターの伝統芸である。


田園交響曲

べートーヴェン作曲の田舎の牧場を思い描いた曲。しかし、アニメーションはギリシャ神話オリンポスの神々を描いている。ハミルトン・ラスクらが監督を担当した。高い評価を受けている反面、一部人種差別的な場面(黒い下僕のケンタウレットが黒人のステレオタイプを思わせるデザインだった)が散見され、後に修正されたというエピソードも持った作品である。


ストコフスキーは当初べートーヴェンがあまりに高名な作曲家なので、奇妙な映像で曲が台無しだと思われないだろうかと心配し、この曲を使うことに強く反対した。しかし、ウォルトは「ベートーヴェンの名が轟くぞ」と断言した。公開後、本作は大勢の人にとってベートーヴェンを知る契機となった。


全編に渡る鮮やかで大胆な彩色が特徴である。ディズニーの得意分野であるユニコーンペガサスケンタウロスといった、擬人化された幻の動物の描写が随所に見られる。特にペガサスの親子が空を飛ぶシーンは、「翼のある馬が飛ぶ姿を初めて描いた作品」として後世に影響を与えている。ペガサスを描いたのはナイン・オールドメンの1人エリック・ラーソン。ラーソンは動物の生態構造と性格をよく研究する人物として知られ、「ピノキオ」のフィガロや「わんわん物語」のぺグを描いた。ペガサス達が翼を畳んで着水するシーンはウォルトの注文によるものである。

続くケンタウロスケンタウレットキューピッドに誘われて戯れ、恋をするシーンでは「魔法使いの弟子」でミッキーマウスを描いたフレッド・ムーアが監修している。

酒の神バッカスと祝祭のシーンでは、バッカスをナイン・オールドメンのウォード・キンボールが手掛けている。

クライマックスの嵐の去った平和なオリンポスのレイアウトは、ディズニーランド建設に貢献した元建築士のケン・アンダーソンが描いた。


いずれもウォルトを支えたディズニーの一流アニメーター達が多く担当する作品となった。


"ラ・ジョコンダ"より"時の踊り"

朝、昼、夕方、夜と過ぎ去る時間を表現した曲だが、ウォルトは「動物の踊り手が異なる時間を表す」という風に解釈した。ディズニーのアニメーターが昔から得意としてきた動物の擬人化が存分に活かされている。ある意味最もそれまでのディズニー映画に近い作品。劇中のバレエは実際に模型を制作して、綿密に計画を練られた上で映像化されている。監督はノーム・ファーガソンソーントン・ヒー

ダチョウミラ・ユパノーバカバヒヤシンス・ヒッポゾウエレファンシーネワニベン・アリ・ゲーター、それぞれがコミカルに踊りを披露する。舞台となる柱廊と噴水のある劇場は、1938年の映画「華麗なるミュージカル」をモチーフにしており、噴水からヒヤシンスが出てくるシーンは同映画のパロディである。

ウォルトは本作の説明にあたって「象徴的なバレエにしたい」と述べており、「何かを象徴すればシーンの効果は倍増する」と熱弁し、ついにはスタッフの前で歌い出したという。この時の彼はかなりノッていたとのこと。

また、ウォルトは皆が案を考えている段階で、早くからワニを登場させようと思いついたという。これに関しては相当なこだわりがあったようで、歯を剥き出しにしてうなりながらワニの動きを実演してみせた程だった。


禿山の一夜

それまでのディズニー映画にはほとんど見られなかった邪教賛美を細部まで描いた作品。監督はウィルフレッド・ジャクソン、アニメーション監修はウラジミール・タイトラ。揺れるように浮かび上がる骸骨のエフェクトは曲がったブリキに映る影を撮影して作られた。命を持て遊ぶ邪悪な悪魔や、悪霊のグロテスクで禍々しい造形は他のディズニー作品とは一線を画している。

大悪魔チェルナボーグを担当したタイトラは「ミッキーの巨人退治」といった作品で培った経験を活かし、その手腕で巨人を描き上げた。

元々参考のために俳優のベラ・ルゴシが翼を広げてみせる演技を撮影したが、タイトラはそれを使わず、代わりに監督のジャクソンを上半身裸にさせて観察したという。

フランク・トーマスオリー・ジョンストンもタイトラのアニメーションを「内なる感情をダイナミックな動きで表現している」として高く評価している。


アヴェ・マリア

夜明けと共にチェルナボーグ達が寝静まり、流れるようにクライマックスを飾るのが、この「アヴェ・マリア」である。「禿山の一夜」と対になる演出が施されている。登場人物はキリスト教巡礼者達のみ。

このシーンは、どこまで宗教的にするべきかが議論されていた。1938年12月8日の会議でこのことに対してウォルトは「宗教らしさはない」と答え、「キリスト教国以外で上映してもわずか4分なので問題ない」と話した。さらに、「この曲無しのラストだと恐ろしい雰囲気で終わってしまう」とも話していた。

「アヴェ・マリア」は、ひと続きのアニメーションとしては当時最も長く、撮影には6日間を費やしたが、使うレンズが違うことが発覚したり、撮影中に地震に見舞われるなどのハプニングの連続により、撮影が大幅に長びいてしまい、プレミア公開まで残り1日という所でようやく撮り終えたという。


また、ウォルトはかつて盟友チャールズ・チャップリンから言われた「観客に次のアクションを待たせることを恐れるな」という言葉に従い、それまでの曲とは違い、緩やかなテンポの厳粛な作品に仕上げている。

巡礼者達の列を過ぎ、木々の間を通り抜け、朝日が顔を出した所で映画は幕を下ろす。


反響

封切り

多額の費用を費やし、多数のスタッフを動員した「ファンタジア」だったが、興行成績は芳しいものではなかった。というのも、従来のディズニー作品とはあまりにも異なる作風だったため、大衆には難解だったことが大きな理由とされている。

例をあげると

  • 説明などを除き、台詞も効果音も一切存在しない
  • 各曲の解説の度に実写の人間が登場するという、従来のディズニー作品には見られない演出
  • 何の脈絡もなくクラシック音楽が次々に流れる構成
  • 80分程度が一般的なアニメーション映画の長さだったのに対し、2時間以上という驚異のボリューム
  • 全体的に芸術性に傾きすぎたために娯楽性が失われてしまった

といった要素が従来のディズニーファンには受け入れにくかったようである。

特に「春の祭典」「田園交響曲」は元となった曲のイメージと全くかけ離れているとして批判が集中し、音楽の専門家ではないにしろ、独自の表現方法で観客の想像力を刺激しようとしたウォルトに対しても、クラシック音楽の専門家からは非難の声が相次いだ。

さらに、「ファンタジア」上映にあたってファンタサウンドを実現させるために多くの設備と莫大な費用を必要としていたため、上映可能な映画館が限られており、収益面でも失敗し、前作「ピノキオ」の興行不振と合わせてかつてない程の大赤字になってしまった。


再評価

しかし、現在ではその映像美と音楽から、根強い人気と高い評価を獲得し、名実ともにディズニーの最高の作品のひとつとして多くの映画ファンから愛されている。


当時、使用楽曲の作曲家達の中で唯一存命中だったイーゴリ・ストラヴィンスキーは、公開の数年後に、自身の作曲した「春の祭典」について、「編曲には反対だった」と述べ、ストコフスキーの指揮も批判していたといわれている。また、アニメーションに関してはコメントを寄せず、「愚の骨頂に批判してもしょうがない」とまで言ったという。一方でアニメーター達の話によれば、公開の前年にはスタジオを訪れており、「魔法使いの弟子」の映像と合わせて本作を好んでいたらしい。さらに、同伴者が「彼のイメージと違う」と言った際、ストラヴィンスキーは「いや違わないよ」と言ったとのこと。

このようにストラヴィンスキーの反応には諸説あるが、彼が公開後にディズニーに対し、「火の鳥」を始めとする自身の幾つかの楽曲の使用許可を出したのは事実である。「火の鳥」は後に「ファンタジア2000」にて映像化された。


また、手塚治虫によると1960年代頃、当時再公開された本作を観たヒッピー達が「これこそ俺達の映画だ!マリワナの幻想をディズニーは描いてくれたのだ!」と狂喜したらしい(「『ファンタジア』にえがかれた過去と未来への讃歌」1987年(昭和62年)8月28日印刷のパンフレットより)。


1990年にはアメリカ国立フィルム登録簿に選ばれ、1998年にはアメリカン・フィルム・インスティチュート(American Film Institute)のアメリカ映画べスト100において58位にランクインし、10ジャンルのトップ10ではアニメーション映画部門で5位に選出されている。


評価

レイ・ハリーハウゼンは、1981年の「タイタンの戦い」にて、ストップモーションペガサスを描いた際、「田園交響曲」から影響を受けたと述べている。

また、1940年に地球誕生から恐竜の絶滅までを描いた「Evolution of the World」という作品を制作していたが、同年に「ファンタジア」が公開されたことにより、ハリーハウゼンは制作をやめたという。


ディズニーファンだったフェデリコ・フェリーニも本作をお気に入りの映画の一作に選出している。参照


スティーヴン・スピルバーグは、幼少期に「禿山の一夜」を鑑賞し、あまりの恐ろしさにトラウマになったことで知られている。また、1982年の「E.T.」製作の際も本作から影響を受けたという。参照

2012年、スピルバーグは好きな映画べスト10の内の1作に「ファンタジア」を挙げている。


終戦から10年後に日本で公開された本作を見て衝撃を受けた冨田勲は、ステレオを超えたマルチトラック録音の再生に対し、強いこだわりを持つようになった。


大塚康生は月刊ディズニーファンの中で「この作品は技術的に文句なくすごい。とくに“禿山の一夜”が好きなんです」と語っている(月刊ディズニーファン2011年8月号80頁「DISNEYFAN,ME TOO!」より)。


太平洋戦争の直前、海軍がアメリカ輸送船から押収した「ファンタジア」のフィルムを試写室で鑑賞したうしおそうじは、上映中に涙したという。


手塚治虫は昭和62年の再公開時のパンフレットにて「各曲のテーマがバラバラで統一感に欠ける」点を指摘しつつも、「過去と未来への讃歌ともいえる内容を持ち、アメリカ映画が21世紀へのこす数少ない歴史的名画のひとつ」と高く評価した。

また、手塚は後の1966年11月11日に、本作へのオマージュを込めた「手塚版ファンタジア」ともいえる実験アニメーション映画「展覧会の絵」を公開した。


楽曲

ファンタジア

  1. トッカータとフーガニ短調
  2. バレエ組曲「くるみ割り人形
  3. 交響詩「魔法使いの弟子
  4. バレエ音楽「春の祭典

  1. 交響曲第6番「田園」
  2. オペラ「ラ・ジョコンダ」より「時の踊り」
  3. 交響詩「禿山の一夜」
  4. 歌曲「アヴェ・マリア

ファンタジア2000

  1. 交響曲第5番「運命
  2. 交響詩「ローマの松」
  3. ラプソディ・イン・ブルー
  4. ピアノ協奏曲第2番
  5. 組曲「動物の謝肉祭」より「終曲」
  6. 交響詩「魔法使いの弟子」
  7. 行進曲「威風堂々
  8. バレエ組曲「火の鳥

余談

  • 劇中ではディームズ・テイラーが曲の解説中にポケットに手を突っ込みながら話すが、これは堅苦しくならないよう、観客にくつろいでもらうために考えられたものである。
  • ドビュッシーの「月の光」も入れる予定だったが、制作段階で中止された。その映像は1946年の「メイク・マイン・ミュージック」の一編「青いさざなみ」にて使用された。
  • 上映時間の長さ故にディズニー映画にしては珍しく途中から休憩に入るが、休憩が終わった後も中々演奏が始まらない。これは、休憩中に席を立って中々戻らない観客に配慮したため。
  • 1988年のロバート・ゼメキスの映画「ロジャー・ラビット」では、本作のキャラクターが多数カメオ出演した。劇中には「ダンボと『ファンタジア』のキャストの半分をディズニーから借りたんだ」という台詞が存在する。また、「魔法使いの弟子」のほうきがスタジオの掃除をするシーンでは、同曲がサックス奏者によってわずかに流れている。
  • 本作がプレミア公開されたニューヨークのブロードウェイ劇場は、1928年に「蒸気船ウィリー」でミッキーマウスがデビューした場所である。

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