概要
ギリシャ神話の英雄であるペルセウスの物語を描いたスペクタクル巨編映画。
特撮映画の世界的な巨匠であるレイ・ハリーハウゼンが最後に製作に携わった作品という事で有名であり、大きく分けて、1981年版の原作と2010年版のリメイク作品がある。
2010年版には更に続編として、タイタンの逆襲が製作されている。本記事では、タイタンの逆襲まで含めて記述する。
本シリーズに登場したクラーケンについては、タイタンの戦いのクラーケンを参照。
映画と神話の違い
ペルセウスの神話の骨格となる「メドゥーサとケートスを倒して、アンドロメダを救う」と言う基礎となる部分については忠実に描いているが、それ以外の点に関しては大きく改変が加えられている。
特に怪物の造形と言う点に関しては顕著で、メドゥーサに関してはこの映画の登場によって大きく造形が変わった。
更に、1981年版と2010年版に関しても内容に差があり、1981年版はペルセウスとアンドロメダのロマンスをメインとしているのに対して、2010年版は神々に反旗を翻す人間にメインテーマを置いている。
1981年版には、ゼウスをはじめとして、アテナ、アフロディテ、へパイストス、テティス、と言った神々に、メドゥーサ、ペガサス、グライアイ、オルトロス、ケートスとギリシャ神話の神々や怪物の数々をこれでもかと言う数盛り込んでいる。
珍しいのはテティスに対する扱いで、この映画ではカリボスの母として登場し、同時にカリボスに並ぶ悪役としてペルセウスの前に幾度となく立ちはだかっているが、この役どころは本来、ギリシャ神話では基本的にヘラやアテナが担うものであり、映画や演劇では多くの場合ハデスが担う役どころである。
2010年版とその続編であるタイタンの逆襲に関して言うと、神話としてだけでなく、ペルセウスの物語としても大きく改変が加えられており、ペルセウスが結ばれるのがアンドロメダではなく、イオ。後年ペガサスとともにキマイラを倒す。人間の傲慢が原因で物語が始まった1981年版に対して2010年版は神々の方が傲慢であった。など、神話に手を加えた原作に対して更に手を加えているのが特徴的となっている。
尚、2010年版とタイタンの逆襲に関してはウィキペディアから文章を引用。
後年の影響
怪物の造形と言う点では、後年の作品に数多くの影響を与えた。
特にこの作品に登場するメドゥーサの「下半身が蛇の胴体」「顔が悪魔的」といったラミア的な要素は、本作の1981年版がオリジナルである。
このほかにも、クラーケンについても従来の巨大なタコ又はイカと言う発想から離れて、タイタンの生き残りと言う設定が加えられ、異形の怪物として新たに造形された。
ただし、クラーケンに関しては映画内での扱いの悪さもあって、その後も巨大なタコ又はイカと言う姿が一般的になった。
造形作者は日本の特撮にも多大な影響を与えた特撮映画の巨匠レイ・ハリーハウゼン。
内容
メドゥーサが中ボスとして登場し、クラーケンがラスボスとして登場するという点と、ラスボスとの戦いよりも中ボスとの戦いの方に尺が多く使われている点は共通しているが、それ以外の点では話の展開が大きく違う。
最大の違いが、映画オリジナルキャラクターであり、悪役であるカリボスの扱い。
1981年版では、ペルセウスの恋のライバルとしてカリボスが立ちはだかり、このカリボスがペルセウスに降りかかる様々な困難の元凶となっている。
しかし、2010年版ではハデスの部下としてメドゥーサ戦の前後に登場して、ヒロインを殺害するという単なる悪役としての一面のみが強調されている。
1981年版のストーリー
アルゴスの姫であったダナエは、その美しさゆえに父王によって塔の上に幽閉されていたが、そんなダナエの前に現れたゼウスとの間に一人息子であるペルセウスが誕生する。
しかし、ペルセウスが誕生したことで父王はダナエを追放し、それに怒ったゼウスは父王を殺し、タイタンの生き残りであるクラーケンを海に放ちアルゴスを滅ぼす。
その後、ダナエとペルセウスはセリーポス島に流れ着き、ペルセウスは立派な青年に成長する。
そのころ、女神テティスの息子であるカリボスは、金持ちの息子として生活し、アンドロメダの婚約者となる一方で、聖なる泉を荒らして沼地に変え、ペガサスの種族を絶滅寸前まで追い詰めるという傍若無人ぶりを発揮していた。
これに怒ったゼウスはカリボスを醜い怪物の姿に変え、テティスはゼウスへの報復としてペルセウスをゼウスの監視の行き届かないヤッファの町へ飛ばす。
こうして、ペルセウスはゼウスの、カリボスはテティスの力を借りることで二人は敵対することになる。
その後、アンドロメダに呪いがかかっていることを知ったペルセウスは、カリボスの腕をささげることでその呪いを解き、アンドロメダの新たな婚約者となる。
テティスは、その報復としてヤッファの町にクラーケンを解き放ち、アンドロメダを生贄にしなければヤッファの町を滅ぼすと迫る。
クラーケンを倒すためにはメドゥーサの首を使うことしか方法がないと知ったペルセウスは、ゴルゴンの島に行き、双頭の犬であるディオスキロスを倒し、メドゥーサに挑む。
メドゥーサを倒したところにカリボスが現れ、ペルセウスはこれを倒すと、ペガサスに乗ってヤッファの町に戻り、メドゥーサの首を使ってクラーケンを石に変える。
全ての決着がついたことで、ゼウスはこれ以上の戦いを禁じ、ペルセウスはアンドロメダと結ばれて王になり、彼の活躍によってペルセウス座、アンドロメダ座、カシオペア座、ペガサス座が作られて、物語は終わる。
2010年版のストーリー
星座が誕生する以前の古代ギリシア時代。世界を支配していたのはクロノスが率いるタイタンの神々だった。しかし、クロノスの息子の神であるゼウス、ポセイドン、ハデスらオリンポスの神が台頭した。ゼウスはハデスに「父を倒す為の怪物」を創る様に頼んだ。ハデスは自身の肉体を削り恐ろしい怪物クラーケンを創った。クロノスを打ち倒したゼウスたちはそれぞれの支配地を決め、ゼウスは天界と神々の王に、ポセイドンは海洋の王になった。ハデスはゼウスに騙されて長兄でありながら暗黒の冥界の王となっていた。やがて神々は人間を創り、彼らからの崇拝と愛を糧に不老不死を保っていた。しかし、傲慢の限りを尽くす神々に対し、ついに人間たちは反旗を翻す。
ペルセウスと彼の家族が漁に出ると、アルゴスの兵士達がゼウスの像を破壊しているのを目撃する。冒涜に怒り狂った神々は、フリアエを解き放ち、兵士達を襲い、漁船を破壊する。ペルセウスだけが生き残り、兵士達に発見される。
ペルセウスは、神々に対抗しようと祝宴を行なっている王ケーペウスと王妃カシオペアのもとに連れてこられる。王妃カシオペアは娘の王女アンドロメダと神々を比較し、アフロディーテよりも娘の方が美しいと豪語する。これに怒ったゼウスは、兄であり冥界の王であるハデスを人間界へ解き放ってしまう。かねてより神々を侮辱していたアルゴス国王と王妃の前に現れたハデスは、10日後の日食の日に海の魔物・クラーケンを放ち都を滅ぼすと宣言。滅ぼされたくなければ、王女・アンドロメダを生贄に捧げろと要求してくる。ハデスはペルセウスに、ペルセウスがゼウスの息子で半神であると告げ、去っていった。
ペルセウスはイオに会い、出生の秘密を知る。イオはさらに、ペルセウスのこれまでの人生を全て見てきたと明かす。ペルセウスは神々を倒すことのできる唯一の人であり、イオはこれまでも彼を守ってきているのであった。
ペルセウスはクラーケンを倒す方法を知るため、王の警護隊と共にグライアイの魔女のもとに向かう。権力欲の強いハデスに裏切られた後、ゼウスはペルセウスにオリンポス山で作られた剣と翼のある馬ペガサスを与える。ペルセウスはこれらを断ったが、王の警護隊のドラコ隊長が念のため預かる。その直後、彼らはハデスの使いのカリボスに攻撃される。カリボスはドラコ隊長に腕を切り落とされ逃亡する。彼らはカリボスを追うが、カリボスの傷口から滴り落ちた血により作り出された巨大サソリに襲われるが、ジンの長老に率いられた砂漠の魔術師の一群に助けられる。ジンは神々の敗北を望んでおり、ペルセウスと警護隊の味方となる。
グライアイの魔女の隠れ家に着き、クラーケンを倒す方法は冥界の神殿に住むゴルゴンのメドゥーサの首を手に入れなければならないことを知る。メドゥーサと目が合った者は全て石になってしまうのである。
ペルセウス、イオ、ジンの長老、ドラコ隊長および生き残った警備隊員であるソロン、エウセビオス、イクサスは冥界に入る。彼らがメドゥーサの隠れ家である神殿に入っている間、イオは外で待つ。ジンの長老とドラコ隊長はゴルゴンにより傷を負い、自ら犠牲になる。ペルセウスは裏返した盾にメドゥーサを映して近づくまで待ち、ついにメドゥーサの首をはねる。ペルセウスがメドゥーサの首を持ち神殿を出ると、カリボスがイオの背後に現れて彼女に重傷を負わせる。ペルセウスとカリボスは戦い、自分がゼウスの子であることをついに受け入れ、ゼウスから与えられた剣を使いカリボスの胸に突き刺す。
イオは死に際、その場を離れたがらないペルセウスに行くよう促し、アンドロメダとアルゴスを守るよう諭す。その後彼女は粉々になり、金の霧となり空に舞い上がる。ペガサスが登場し、ペルセウスはペガサスに乗り、クラーケンが放たれたアルゴスに急いで戻る。アルゴスの人々は捕らえられ、クラーケンに差し出されたアンドロメダは拘束される。クラーケンの目覚めにより人々が死に、オリンポス山の力関係は崩れる。ハデスが現れ、ゼウスのように人々の信仰や崇拝を望んでおらず、恐怖だけが望みであると語る。その後、弱ったゼウスを簡単に制圧する。
クラーケン討伐の命を受けたペルセウスは、神の血を引く者として世界の存亡をかけた戦いに挑む。ペガサスに乗り空を飛び、ペルセウスはアルゴスに到着し、クラーケンがアンドロメダの所に到達するまさにその瞬間、ペルセウスはメドゥーサの首をクラーケンに突きつける。クラーケンはゆっくりと石になっていき、崩れる。激怒したハデスが現れペルセウスを殺そうとする。ゼウスの声が聞こえたペルセウスは剣をハデスに突き刺す。剣が稲妻を受け、その剣をハデスに投げつけるとその勢いでハデスは冥界に突き戻される。
ペルセウスはアルゴスの女王となったアンドロメダを海中から救い出す。アンドロメダはペルセウスに王としてアルゴスに留まることを願ったが彼はこれを辞退する。ペルセウスはまたゼウスから神格となることを望まれ、これも辞退したが、その後ゼウスはたとえペルセウスが人間として生きようとも孤独ではないと語り、イオを蘇らせる。
タイタンの逆襲
前作『タイタンの戦い』の後、亡き妻イオの忘れ形見へレイオスと穏やかな漁師の生活を営むペルセウスの元にゼウスが現れ、冥府の迷宮タルタロスが開き怪物たちが現世へあふれ出し世界に危機が迫っていると告げる。崇拝を失い力の衰えつつあるゼウスは人間としての強さを見込んで助力を請うがペルセウスは息子との暮らしを守るため追い返してしまう。ゼウスは、タルタロスの修復のため、兄である、冥界の王であるハデスの元を訪れるが、裏切りにあい冥府の虜囚となってしまう。完全に開いた冥府より現れた怪物キマイラに、息子と住む町を襲われたペルセウスは、神の血を引く者として、そして一人の父として、再び世界の存亡をかけた戦いに挑む事を決意する。
関連タグ
聖闘士星矢:2010年版の監督を務めたルイ・レテリエが大ファンで、神々の鎧のイメージは黄金聖衣である。
トロイの木馬:同様にハリウッド映画の主題となったギリシャ神話の一節。