概要
てんとう虫コミックス版ドラえもん第14巻に収録されている「ラジコン大海戦」を原作とし、大山のぶ代版アニメ第64話にて映像化され、声優交代後の水田わさび版ではその年の年末スペシャルにてリメイクされた。
ラジコンに乗り込んで戦うというストーリーは大長編「のび太の宇宙小戦争」にも見られる様に、「ドラえもん」という作品のメインテーマ、そして「ドラえもんのうた」の歌詞にもある「こんなこといいな、できたらいいな」の具現化の例の一つであり、他にもラジコン話はいくつか存在する。その中でも本作は特にテンポの良い進行や、ラジコンとはいえ戦艦大和に対し零戦部隊が雷撃を仕掛けるというスペクタクルな展開があるためか、一部では「神回」「一度見たら忘れられない回」との評価が有る。
なぜ、子供向け作品でこんな難解な内容なのかというと、この作品は週刊少年サンデー増刊号掲載の特別読切作品だから(Fは掲載雑誌によって作風や作品内容を変幻自在に変えていた)である。ほかに「のび太の恐竜」(原作)、「ゆうれい城へひっこし」「ハロー宇宙人」も増刊サンデー掲載作品。
あらすじ
のび太がお小遣いを貯めて買ったばかりのラジコンボートが、進水式でスネ夫のラジコン大和にぶつけられ、沈められた。
弁償するとは言うものの、まるで誠意の無いスネ夫に対し、ドラえもんは仕返しにスモールライトで小さくなって、のび太を連れて大和を乗っ取った。
大和を鹵獲されたスネ夫は、ラジコン大和の製作者である従兄弟のスネ吉に連絡。するとスネ吉は「大和を沈めよう」と持ちかけ、ラジコン零戦部隊を用意し、火薬入りの魚雷を搭載して出撃。
悠々とドラえもんとのび太の操縦で進む戦艦大和だったが、そこへスネ夫とスネ吉の零戦の雷撃部隊が来襲しここに公園の池を舞台にしたドラえもん陣営vsスネオ陣営のラジコン大海戦の幕が切って落とされた。
スネ吉の零戦4機を擁した速度により翻弄し、魚雷を発射。大和は回避行動を行うも間に合わず命中、轟沈※
とうとうドラえもんを怒らせたか、ミサイル付き原子力潜水艦(のラジコン)から発射した対空ミサイルにより零戦を全機撃墜、更にボートへ向け撃沈声明を発す。
当然スネ吉も黙っているでもなく、零戦用の魚雷で応戦するが潜水艦には浸水一つ起こらなかった。対して反撃で放たれた魚雷はそれとは比べ物にならない威力であり、あっけなく吹き飛ばされ轟沈
スネオ陣営は敗戦。戦後賠償金を課せられることになったのであった※2
そして、ドラえもんは陣営を勝利に導いた武勲艦をのび太へと譲るのであった
尚、「スネ夫を殺して僕も死ぬ!」というのび太の迷台詞や、スネ吉の「戦争は金ばかりかかって空しいものだなぁ」という、風刺めいたオチの台詞も本作の劇中のものである。
余談
- 実際のゼロ戦こと零式艦上戦闘機は、六二型等であれば250kg爆弾程度ならば爆装は可能だったが、エンジンの馬力や機体の強度不足等様々な理由から雷装は不可能である(航空魚雷は800kg以上あるため、軽快な戦闘機である零戦が積むには重過ぎるのだ)
- のぶ代版では魚雷を上空からの水平爆撃に使用し、上部構造物を破壊している。しかし、本来魚雷は喫水線下の破壊を目的とした兵器である。まさにラジコンでなければ実現できないシチュエーションだといえよう。
- わさび版では原作漫画版に準じ、低空からの雷撃に変更され、実際の航空魚雷の運用に即した物となった(一方で原作及びのぶ代版では、大和航行中に軍艦行進曲が流れているが、わさび版では省略された)
- 大和が撃沈され、代わりに出した潜水艦だが、魚雷にもビクともしなかった。ドラえもん曰く「本物並みの強度を持っている」からという。実際の潜水艦に防御装甲はないに等しいのだが仮に本物並みというのが深度700mまで潜航可能という意味だったらおもちゃ程度の魚雷では歯が立たなかったのも自明だろう(耐圧殻の防御性能については不明)
- 一応、潜水艦のラジコンは実在しており愛好家がいる。しかも潜水・浮上までも可能なレベルのものがある。ただし、現実の潜水艦と同じ機構を内蔵する為、製作だけでもかなり費用を要するものである。
※ ちなみに史実での沈没原因は魚雷が片舷に集中したことによる転覆(誘爆)だが後に実際の海底調査で船体が真っ二つに破断しているのが明らかになった。
※2 ボートの弁償、ボートが使用不能になったことによる遺失利益、減価償却による相殺は割愛。