概要
大映の倒産から終了してしまったガメラシリーズだったが、「84ゴジラ」でのゴジラシリーズの復活を受けてガメラ復活の声が上がるようになり、そのゴジラのvsシリーズが大ヒットしたこともあって企画が本格的に始動した。
ところが、いざ始めようとしたら予算が5億円というガメラ昭和シリーズからの伝統ともいえる低予算での制作になり、本作から平成ガメラ三部作を手掛けることになる金子修介監督も頭を悩ませたというなんとも言えないスタートを切ることになる。
本作はゴジラシリーズとは異なり、一度設定をすべてリセットした上での完全新規ストーリーともいえる展開になっている(ゴジラシリーズは初代から派生して物語が展開しているパターンがお決まりである)。そのため、昭和シリーズのお子様向け路線を完全変更し、リアリティ路線、大人向けを意識して制作された。とは言っても、この平成三部作を通してガメラが子供を助けるシーンや子供たちから親しまれているシーンがあり、ヒーロー怪獣としての一面も残してはいる。
最初のプロットは、後の角川ガメラのそれと非常によく似ていたが、更にファンシーだった。
本作のライバル怪獣は昭和シリーズのキャラからリメイクということで、人気も高かった「ギャオス」が選ばれた。が、昭和ギャオスはその構造上首が動かせないという欠点があったりなんなりだったので、大幅にリデザインされ、より生物的なデザインになっている。
当初は、初代ライバルであるバルゴンも検討されていた。後年、バルゴンはジャイガーやバイラス共々漫画にて復活した。
配給収入的には目標の10億円には届かない5億2千万円という結果だったが、ビデオの売上などもあって結果的にぼちぼちになり、続編「ガメラ2」の制作が行われるようになった。
キャッチコピーは「亜音速の大決戦」または「超音速の大決闘」。
あらすじ
日本へとプルトニウムを輸送途中にあった輸送艦の海竜丸と海上保安庁の巡視船「のじま」は突如、謎の岩礁に接触し座礁してしまう。しかし、岩礁は独りでに船から離れていった。この謎の「漂流岩礁」はたちまち世間で話題になり、巡視船に乗り合わせていた海保職員の米森は保険会社の草薙と共に岩礁の調査へと向かう。
一方で同じ頃、鳥類学者の長峰は長崎県警からの協力依頼を受ける。長峰の恩師が音信不通になった「姫神島」の島民から「鳥が・・・」という通信を最後に島全体と連絡が取れなくなっているというのだ。調査に同行した長峰はそこで3匹の謎の鳥(?)を発見する。
この鳥は巨大且つ怪力で人間を襲う肉食の猛獣であるにもかかわらず、政府は捕獲作戦を開始。福岡ドームで自衛隊を動員しての捕獲作戦が行われるが、そこに米森たちが駆けつける。
その暫く前、米森達は岩礁を発見したが、そこは勾玉が散乱し、奇妙な文字の石碑があるという遺跡を持った岩礁だった。しかし、調査中に石碑が崩れると岩礁も崩れ、中から巨大な怪獣が出現し、福岡ドームを目指して泳ぎだしているという。
その危惧通り、巨大な怪獣が福岡に出現し、鳥は一匹が殺され、残りの2匹も脱走してしまう。そして、鳥を殺し損ねた怪獣はまるで円盤の様に回転して空へと消えていく。
――最後の希望・ガメラ、時の揺りかごに託す。災いの影・ギャオスと共に目覚めん。――
碑文の予言が動き出したことに人間たちはまだ気付いていなかった。
余談
- 本作は自衛隊全面協力の元、制作された。……が、空自からの協力を得るのに一悶着があった。というのも、空自の協力の条件は「自衛隊機を落とさないこと」であったためであり、本作の原案で空自のF-15がバッチリと撃墜されてしまっていたからである。結局、作中ではそのシーンは改められ、空自からも協力が得られる事になった。
- 具体的には、中盤、成長しきった最後のギャオスが東京を襲撃するシーンである。映画では、スクランブル発進するものの『市街地上空での戦闘は許可できない』(字幕)と指示されるだけでF-15Jの出番は終了しているが、当初の構想では普通に空中戦へ突入し、超音波メスで撃墜され有楽町マリオンへと墜落する予定だった。
- 本作の見所の一つが「人間から見た等身大の怪獣」であり、この点の表現が生かされている事が大きく評価され、ゴジラで長年特技監督を務めた川北紘一氏からも絶賛されたという話も残っている。
- 日本テレビ系列も本作に協力していた事から作中に登場する各地のアナウンサーは「本物」のアナウンサーであり、ちらほらと朝の顔とも言うべきアナウンサーの姿を見る事もできる。尚、おかげで避難を促す緊急速報等は迫真に迫るものに仕上がっているが、当時は丁度「阪神・淡路大震災」直後でもあったことから「震災を思い出す」といった批判が出たという(とは言っても、撮影自体は震災前に終了していたから偶然の一致なだけである)。
- 劇伴の1つ「ギャオス逃げ去る」が『水曜どうでしょう』の予告編に使用されていたことは有名(DVD化された際には別のBGMに差し替えられている)。ちなみに、『どうでしょう』のレギュラーメンバーである大泉・鈴井の両名は次回作にチョイ役で出演している。
- 初期プロットでは姫神島で発見されるギャオスは5体だったが、予算の都合で映画に登場するのは3体に減らされた。映画公開当時に発売されたノベル版(著者は脚本を担当した伊藤和典)では初期プロットに基づいたストーリー展開となっており、5体のギャオスが登場した。ちなみに上記のF-15がギャオスに攻撃され市街地に墜落する一幕も、ノベルでは削除されずに残っている。
- 1体は福岡ドームでの捕獲作戦のさなかに射殺され、もう1体は富士山麓での戦闘で負傷したあと共食いに遭って死亡する。
- 監督金子修介・脚本伊藤和典のタッグは、かつて『ウルトラQザ・ムービー星の伝説』で実現しかけたもののポシャった組み合わせであった。今作の監督就任当初、あまりの低予算に金子は落胆しギャグ路線へのシフトも覚悟したものの、伊藤と、当時『八岐之大蛇の逆襲』などで頭角を現していた樋口真嗣を迎えられたことで、本格派怪獣映画への挑戦を決めたといわれる。
- 冒頭に登場する巡視船「のじま」船長を演じているのは、『対ギャオス』をはじめ昭和ガメラで何度も主演を務めた、往年の大映スター本郷功次郎その人。今作で数十年越しに再オファーをもらったことに感激し、それまでは半ば黒歴史化させていた怪獣映画への出演経験を、これ以降自身の経歴に記載するようになったという。
- また序盤、福岡港に出現したガメラを目の当たりにして自衛隊パイロットが言葉を失うシーンがあるが、これを演じているのは当時まだ20代の佐藤二朗である。まだ会社員と劇団員の二足の草鞋状態で、ぶっちゃけほとんど無名の俳優だった氏の貴重な姿を見られる。
- 本作でギャオスの着ぐるみに入った亀山ゆうみ氏は、女性のスーツアクターならぬスーツアクトレス。苗字に「亀」と入っているのみならず、94年に「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」のビデオを見た4~5日後に、知人から本作のスーツアクトレスを勧められた……という、不思議な縁で本作に参加している。テレビの動物番組でカラスやコウモリの動きを見て、それを真似ないように樋口特技監督と相談し、動きを考えた。なお、劇中でも証券所前のリポーター役で登場している。
- 本作とほぼ同時期に東宝では『ゴジラVSスペースゴジラ』の制作が行われたが、あちらの最終決戦の舞台も福岡となっている。
- ちなみに、『VSスペースゴジラ』では屋外のシーンでは福岡ドームが極力映されないようにされており、市街地のミニチュアでも福岡ドームは作られていない(というか、そもそも作らないよう現場にも指示が出ていた)。これは、『ガメラ大怪獣空中決戦』で福岡ドームが戦場の1つに割り当てられたため、東宝側がそれに配慮したためだという。
- ガメラシリーズの悪しき伝統(?)である低予算でありながら迫力のある映像を生み出せたのは樋口特技監督の逆転の発想にあった。通常、ゴジラシリーズのような怪獣映画では様々な角度から撮るためにセットを大きく広く作るのだが、樋口氏は予め絵コンテを引き、その場面を撮るために必要最小限のセットで済ませたのである。アニメ制作も手がけていた樋口氏ならではの手法だが、それ以外にも屋内セットを使わず晴天の空を活かした屋外セットで撮影するなど、予算が限られる中で様々な工夫が凝らされた。