久遠の絆
くおんのきずな
ゲーム概要
平安時代からの輪廻転生によって1000年後に生まれた、現代の少年少女の恋愛を描いた作品。全4時代全3章構成。第1章は現代と平安時代で、季節は春。第2章は現代と江戸時代中期で、季節は夏。第3章は現代と江戸時代幕末で、季節は秋から初冬。
前述の輪廻転生や恋愛のほか、伝奇要素も内包したシナリオには、当時の家庭用ゲーム機に希少だったセックス描写も(間接的ではあるが)盛り込まれている。
PS版の初回発売当時はインターネットが一般層へ普及する途中であったうえ、初回出荷数が少なく早々に完売して増産されたことも重なり、ユーザーの間で話題となった。
シネマティック・ノベルとしての雰囲気を活かす関係上、作中ではあえて声優を起用していない。ただし、後年にはファンの要望に応えて声優を起用したドラマCDが発売された。
2000年5月18日には、PS版に存在した誤字や脱字を修正してトゥルーエンド後の新シナリオを追加したドリームキャスト(DC)版『久遠の絆 再臨詔』(くおんのきずな さいりんしょう)が、2002年7月18日には『再臨詔』に微修正を施したプレイステーション2(PS2)版が、2007年6月14日にはその廉価版(PS2 nice price!)がそれぞれ発売された。2011年11月17日にはプレイステーションポータブル(PSP)版がGNソフトウェアから発売された。
2011年7月1日には、アダルトゲーム版『久遠の絆 THE ORIGIN』(くおんのきずな ジ・オリジン)がザウスより発売された。また、同年9月30日には、同社から同年12月22日に発売予定の『久遠の絆 再臨詔 フルボイス版』の制作がDENGEKI HIME2011年11月号で発表された。
ゲームシステム
「輪廻転生」をメインテーマに、現代を中心に平安・元禄・幕末の4つの時代を舞台に繰り広げられる物語。
ゲームはグラフィック上にシナリオが表示されるアドベンチャー形式で進行。BGMも相まってまるで映画を見ているかのような感覚を再現。そこで「シネマティックノベル」と名付けた。
選択肢により、「無意識」の感情の裏パラメーターが蓄積され、その結果物語の展開がドラスティックに変化する、「E’s(エス)リアクションシステム」を採用している。
再臨詔
DC版へ追加されたおまけシナリオで、特定の条件を満たせば本編終了後に出現する。PS2版にも収録。
本編とは印象を異にする内容が賛否両論を呼び、ユーザーの間で物議をかもした。
すでに作品への強い思い入れを持っていたPS版からの継続ユーザーによる反発が大きかった一方で、DC版からの新規ユーザーによる意見はほぼ許容する内容だったという。
以下に論点とされたものを挙げる。
- 展開が早い
本編ではお互いに譲れない想いを抱えた登場人物たちが千年の時をかけてぶつかり合うのに対し、『再臨詔』では早々に説得が行われ、敵もすぐに出現する。この端折られたような流れが、「『久遠』らしくない」と言われた。
これについては、『再臨詔』を本編と同等の展開にすると容量が膨れ上がるので、おまけシナリオに新作1本並みの労力を割くわけにはいかなかったという事情がある。
- 唐突な結末
いよいよクライマックスというところで『再臨詔』は終了するため、「この後どうなったのか」という声が大きかった。
プロデューサーの宗清紀之は「答えはあなたの心の中にある」、シナリオの加藤直樹は「書きたいテーマを書ききったので私の中では完結している」と述べている。
- なぜ「聡子エンディング」なのか
天野聡子は『再臨詔』シナリオの中心人物のひとりだが、ほかにも多くの人物が主軸となっている。
しかし、システムの関係上エンディングの名称を設定せざるを得ず、やむなく天野の名を取った。どうしても最良の名前が出てこなかったためである。
PS2版では以上の点にフォローが行われており、スタッフロールをムービーに変更してシナリオ終了後の展開を補完しているほか、聡子エンディングも「再臨詔エンディング」となっている。
なお、『再臨詔』は本編と別の流れを描いているが、加藤直樹は「ゲームとしての正史は本編のトゥルーエンド」と語っている。
2011年12月22日には、後述の『THE ORIGIN』から一新した声優陣によるフルボイス版が発売された。
THE ORIGIN
2009年12月29日にYouTubeにて第一報のムービーが公開された後、同年12月31日にザウス公式サイトにてアダルトゲーム化決定の旨が発表された。
その後、『久遠の絆 THE ORIGIN』(くおんのきずな ジ・オリジン)のタイトル発表や後述のリーフレット配布を経て、2011年7月1日に発売された。
- 開発開始
ザウスの前身であるユースがPS版開発に関わっていたことが縁で、PS版発売後にザウス代表の吉田ユースケがフォグ代表の宗清紀之の元へアダルトゲーム化の企画を持ち込んだが、その際には許可が下りなかった。
しかし、約10年後にはアダルトゲーム化を渋るシナリオの加藤直樹を宗清が説得したことで全面改稿を前提に許可が下り、開発が開始された。
- シナリオ変更
シナリオの全面改稿に伴い、時代構成がPS版での全4時代(平安・元禄・幕末・現代)から本作では幕末編が削除されて昭和編が追加されたうえ、平安編の前に物語の起点となる神代編が追加されて全5時代(神代・平安・元禄・昭和・現代)となった。
また、平安編は物語の舞台をPS版のものから約100年後の宮中へ変更したり、元禄編は物語への真言立川流の要素を付加するなどの変更が加えられ、登場人物も全員異なる面々となっている。
崇徳上皇と玉藻前を題材とした平安編シナリオはPS版最初期の構想に存在していたが、PS版開発時にフォグとソニーが「史実とは何か」をめぐって2〜3か月にわたり議論した末、双方合意の上で没にした。
その後、この没シナリオについては断片的な設定が発表されるに留まり、2000年時点では「今後公開されることはない」と明言されていたが、今回のアダルトゲーム化によって日の目を見ることとなった。
- リーフレット配布
製品発売前の2011年1月28日には、日本全国の本作取り扱い店舗でDENGEKI HIME編集部の制作による特製リーフレット『久遠の絆 THE ORIGIN 転生絵草子』(くおんのきずな ジ・オリジン てんせいえぞうし)の無料配布が開始された。
フルカラー、A4変形サイズ、全12ページ。全5時代の概要と登場人物の紹介や、プロデューサーの宗清紀之へのインタビューが掲載されている。
ストーリー
主人公「御門武(プレイヤー入力可)」は平凡な高校生。
謎めいた転校生、「万葉」の出現により、彼の身辺は次第に騒がしくなる。
巻き起こる猟奇的な事件、そして本人にとって最大の謎である意味不明の悪夢。
その因が自身の魂に刻まれた「闇の皇子」の力にあることをまだ彼は知らない。
時は遡り、平安の世。天命を果たすべく降臨した「螢」は、ある日一人の陰陽師に命を救われる。彼の名は「鷹久」。
ほどなく二人は恋に落ちるが、螢は彼の体内に潜む「闇の皇子」の資質に気付く。
「真の皇子」を助けるべき天命と、「闇の皇子」との恋の間で揺れる螢。
タブーを破ったものに待つものは・・・。
螢「私を捜して、鷹久・・・なんども、なんども・・・罪が許されるその日まで・・・ああ鷹久・・・ときが見えるわ・・・」
平安・・・元禄・・・幕末・・・現代。彼らは時と場所を超えて再び巡り合う。
それは、過去から現代へと続く、辛く悲しい恋物語の再演なのか・・・。
登場キャラクター
声優名はフルボイス版 / THE ORIGINの順。
現代編
平安編
声優名はドラマCD版 / フルボイス版の順。
元禄編
池田真之介
主人公。没落した武家の青年。高い剣の腕前を自覚しているが、本心では絵師を志している。
幕末編
葛城信吾
主人公。京の町で何でも屋を営む無頼の青年。
THE ORIGIN
神代編
武日照
主人公。天津神の天菩比と大国主の娘の高比売の息子で、玉葉と結婚して須佐之男の子孫が治める出雲の「須佐の国」を継ぐはずだった。
しかし父が何者かによって殺されたために彼の立場は宙に浮き、婚約の話も立ち消えた。
神としての力を持たないが、代わりに物事の本質を見抜く眼を有する。
玉葉
声優・CV - 一色ヒカル
天若日子と下光比売の娘。須佐の国は末子相続であるため、末姫の彼女の夫が次代の王となる。
玉葉自身は武日照を「お兄様」と呼んで慕っており、婚約が破棄されてからも結ばれることをあきらめていない。
平安編
重仁親王
主人公。次代の帝に近いと言われる身ながら、貴族と平民という身分差の存在に疑問を抱く。
世界の本質を「弦」として見る不思議な眼を持っている。
崇徳院
声優・CV - 原ショー
先代の帝にして、重仁の父。表向きは鳥羽院の息子だが、実はその祖父である白河院の子である。
その出自ゆえに鳥羽院に疎まれて皇位を取り上げられてしまい、現在はなんとか重仁を帝にしようと画策している。
雅仁親王(後白河法皇)
声優・CV - 杉崎亮
鳥羽院の息子だが、周囲のものはおろか父親にすら「即位の器量ではない」と見られていた。
また、異母妹の寿子に道ならぬ恋情を抱いており、世の賞賛と妹の愛を受ける重仁を憎んでやまない。
鳥羽院
声優・CV - チャオササキ
当時の日本の事実上の最高権力者にあたり、崇徳院と区別するために「治天の君」と称される。
強欲で好色だが、権力は決して逃さない。
祖父の白河院の血統を忌み嫌っており、崇徳・重仁父子を皇位から遠ざける。
兵衛佐局
崇徳院の后で重仁の実の母。正気を失ってしまったため、仁和寺に預けられている。
守仁
雅仁の息子。僧侶になるため仁和寺で修行している。父の思惑とは裏腹に、重仁のことを尊敬している。
元禄編
坂上柾崇
主人公。士官を目指しながらかんざし売りで糊口をしのぐ武家の青年とは表の姿。実は幕府隠密の暗殺集団「郭公」の一員である。
郭公の一族は人間離れした力を発揮できるが常に暴走の危険が付きまとい、柾崇の父もそれが原因で命を落としたため、柾崇は自分の中の獣を忌まわしく思っている。
昭和編
千紗
声優・CV - かわしまりの
鷹臣の実家から農地を借りている小作農の娘で、現在はきしめん屋で働いている。
遺伝性球状赤血球症の変種をわずらい、他人の血を欲する体質のため迫害されていたが、そのとき自分をかばってくれた鷹臣を慕っている。