概要
NPB、パシフィック・リーグに所属するプロ野球球団「北海道日本ハムファイターズ」の本拠地として、2023年シーズンより使用開始予定の球場。所在地は北海道北広島市。
日本の不動産会社「日本エスコン」とネーミングライツ(命名権)契約が交わされ、「エスコンフィールドHOKKAIDO」の愛称が使われる。
2004年シーズンより「札幌ドーム」を本拠地として使用していた日本ハム球団であったが、ドーム施設自体は第三セクター会社である「株式会社札幌ドーム」が運営。日本ハム球団は「株式会社札幌ドーム」へ使用料を支払う形で主催試合を行い、また施設内の広告や売店での収入は全て札幌市側へ帰属するために日本ハム球団は収益がなかなか得られない状態が続いていた。
さらにはサッカー・Jリーグのチームであるコンサドーレ札幌(北海道コンサドーレ札幌)の本拠地と併用されているため、「サッカー用としても使っている座席が野球観戦に向いていない」「ファウルグラウンドが広く臨場感に欠ける上に、ファウルフライが増え打者が不利になる」「グラウンドが人工芝のため選手が故障するリスクが上がる」など設備側の問題があり、日本ハム球団は(公共施設の運営を民間企業などに委託する)指定管理者制度の採用を提案するも、札幌市側は拒否。
結局日本ハム球団は「自前の球場を建設して本拠地を移転する」ことを決め、札幌市の隣の北広島市からの誘致を受けた。
北広島市が提示した広大な敷地を使って、野球観戦だけでなく(試合がない日でも)買い物・食事・レジャーが楽しめる「ボールパーク」として、総工費600億をかけて建設。球場のほうは冬季に備えて開閉式屋根が設けられ、グラウンドも天然芝を採用、外野側の壁が大きなガラス張りになっている。
また命名権を取得した先述の「日本エスコン」は球場に隣接する形でマンションを建てて、このマンションの購入者に10年間の球場フリーパスを特典として与えた。
規約違反?
2022年11月8日、本球場のグラウンドの構造が公認野球規則が定める「ホームベースからバックネット側のファウルゾーンの広さ」に関する規定を満たしていないことが報じられた。
公認野球規則では、試合を行う競技場の構造についての記述があり、規則2.01において「本塁からバックストップまでの距離、塁線からファウルグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレーの妨げになる施設までの距離は、60フィート(18.288m)以上を『必要』とする」と明記されている。しかし、本球場は本塁(ホームベース)からバックストップ(バックネット)側のフェンスまでの距離が約15mと狭く設計されており、これが同規則に反していると問題視されたわけである。
ちなみに、2022年時点での12球団の本拠地球場における本塁とバックネットの距離は以下の通りで、いずれも前述の基準を満たしている。
- 24.5m:札幌ドーム
- 23.8m:横浜スタジアム
- 19.6m:明治神宮野球場
- 19.0m:千葉マリンスタジアム(ZOZOマリンスタジアム)
- 18.4m:西武ドーム(ベルーナドーム)、阪神甲子園球場
- 18.3m:宮城球場(楽天生命パーク宮城)、東京ドーム、ナゴヤドーム(バンテリンドーム ナゴヤ)、大阪ドーム(京セラドーム大阪)、福岡ドーム(福岡PayPayドーム)、広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)
このような問題が発生した理由として考えられるのは、アメリカと日本における野球規則の「言葉の違い」である。
今回問題とされた部分は、MLBなどアメリカのベースボールで用いられる公式規則『Official Baseball Rules』(原文)では以下のように記載されている。
「It is recommended that the distance from home base to the backstop, and from the base lines to the nearest fence, stand or other obstruction on foul territory shall be 60 feet or more.」
これを忠実に日本語に翻訳すると、以下のようになる。
「本塁からバックストップまでの距離、塁線からファウルグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレーの妨げになる施設までの距離は、60フィート以上が推奨される」
日本の『公認野球規則』は基本的にアメリカの『Official Baseball Rules』を翻訳したものであるが、ここに決定的な違いが存在する。英語の「recommended」は日本語では「推奨される」という意味であり、アメリカでは必要条件ではないのだ。
これに対して、『公認野球規則』では「必要とする」と記載されており、日本では必要条件であると解釈される。つまり、本球場の設計はアメリカの『Official Baseball Rules』を前提としたものであればセーフだが、日本の『公認野球規則』を前提としたものであればアウトというわけである。
MLBでは「60フィート以上」を満たしている球場は30球団のうち2球場のみで、その大半が16m以下になっている。最短のカウフマン・スタジアム(カンザスシティ・ロイヤルズの本拠地)に至っては12.7mしかない。2020年に開場したグローブライフ・フィールド(テキサス・レンジャーズの本拠地)も42フィート(12.8m)である。
本球場はHKSと大林組グループが設計と建設を担当(建設には岩田地崎建設も参加)したが、このうちHKSはアメリカのテキサス州ダラスに本社がある会社で、前述したグローブライフ・フィールドを含むMLBの本拠地球場の設計も手掛けている。HKSがアメリカと日本の規約の違いに気付かなかった、もしくは確認が不十分なままアメリカの規約を基に設計してしまった可能性が高い。
表記揺れ
※本記事の記事名は、ニュースなど各種媒体で用いられている「エスコンフィールドHOKKAIDO」表記を採用しています。