概要
MARVELコミックのヒーロー作品『スパイダーマン』に登場するヒロインの一人で、スパイダーマンことピーター・パーカーの恋人。
原作アメコミ本編においての彼女
ピーター・パーカーが人生で初めて真剣に愛した女性。ピーターが通っていたミッドタウン高校のライバル校であったスタンダード高等学校に通っていた。
ピーターとはエンパイアステート大学に進学した時に出会った。美女のグウェンに言い寄ってくる男は大勢いたのだが、当時メイ叔母さんが病気に臥せっていたピーターはそんなグウェンの事も眼中にない状態だった。
グウェンの方もスーパーヴィランが現れるとすぐに姿を消すピーターを臆病者と思っており、第一印象は良くなかった。
だが時が経つにつれ、ピーターの事を前向きに捉えられるようになり、ピーターが彼の幼馴染のメリー・ジェーン・ワトソンことMJと一緒にいた時には思わず嫉妬してしまうなど、次第に心惹かれるようになる。
叔母の病気などトラブルがかさみ、この時のピーターはうつ病になりかけていたが、グウェンが友人たちと共にピーターを助けた。
メイ叔母さんの方も若い二人の恋路の邪魔にならないよう健康なフリを装ったこともあった。
二人は付き合うようになるが、時にはスパイダーマンとしての活動を優先させてデートをすっぽかすなど必ずしも順風満帆だった訳では無かった。
また、グウェンの父親であるニューヨーク市警のジョージ・ステイシー警部がキングピンに洗脳され、ピーターはやむなくジョージと戦った。その様子を目撃していたグウェンはピーターがジョージを攻撃したと勘違いし、別れようとする。
後にジョージに対する洗脳は薄れ、ジョージからそのような事実は無かったと告げられ、ピーターとも和解した。
スパイダーマンはドクター・オクトパスと戦うが、父ジョージが戦いで生じた瓦礫から子供を助けようとして死亡しまう。死の間際にジョージはスパイダーマンにグウェンの事を頼むと告げて息を引き取るが、グウェンは父親の死はスパイダーマンのせいだと考えていた。
叔父のアーサーは父親を失い悲しむグウェンを見て、「イギリスに来ないか?」と誘う。
グウェンはピーターにイギリス行きを相談するが、スパイダーマンを憎んでいるグウェンに対してピーターは引き止める事が出来なかった。内心ではピーターに引き止めてほしかったグウェンは傷ついてしまう。
グウェンがイギリスに旅立った後、ようやく一緒にいるべきだったと気づいたピーターは自らもイギリス行きを決意。
カメラマンとしての報酬を貰っているデイリービューグル社から、ニュース写真を取ることを条件にイギリス行きを認めてもらう。だがスパイダーマンとしての活動を優先させたために、グウェンと会えずに帰国してしまう。
ピーターを置いてイギリスに行ったのは間違いだったと思い直したグウェンは、ニューヨークへ帰り、ピーターの家で再会を果たす。
ピーターはガールフレンドをどこにも連れていけない自分の貧乏が嫌になり、安定した職業に就こうと決心する。
グウェンはアパートでピーターを待っていたが、スパイダーマンの正体を知っているグリーンゴブリン=ノーマン・オズボーンに誘拐され、ガス攻撃で意識を失う。
戦いが始まる前にグウェンは目を覚まし、ゴブリンからピーターこそがスパイダーマンであるという衝撃的な事実を知らされる。
すぐにスパイダーマンも現れるが、グウェンはショックから何も話す事が出来なかった。
戦いが始まると、ゴブリンはグウェンを橋から落とすという凶行に及ぶ。スパイダーマンはクモ糸を伸ばし、彼女を助けようとする。
スパイダーマンは無事にグウェンを助けだせたと思っていたが、糸がグウェンを捕まえた時の衝撃で首が折れてしまっており、橋からグウェンを引き上げた際に彼女が亡くなってしまった事を知る。
スパイダーマンは怒りに任せてゴブリンを殺そうとするが、怒りを抑えてゴブリンにとどめを刺さない事にした。だが、ゴブリンがスパイダーマンを殺そうと飛ばしたゴブリングライダーがゴブリンの体に突き刺さり、ゴブリンの自滅という形で決着する。
グウェンの死は、恋人のピーターをはじめ、彼女の親友だったMJなど多数の関係者に深い喪失感を与えた。
※なお、「グウェンの死は編集者であるスタン・リーが知らない間に描かれており、スタン・リーは出張から戻って来たら、スパイダーマン誌でとんでもない事が起きてて唖然となった」という伝説が有る。
グウェンの元教授であり、密かに彼女に思いを寄せていたマイルズ・ウォーレンは狂気に取り憑かれるようになり、ジャッカルというスーパーヴィランに変身。得意のクローン技術を使って彼女のクローンを作るなど、一騒動を起こした。
その後は、たまにあるパラレルワールド系のクロスオーバーでゲスト出演する程度の登場となっている。
『ハウス・オブ・M』では「ピーターが心の中で望んでいた世界」が魔法によって実現した。その理想世界でのグウェンは、ベンおじさんと共に生存しており、ピーターと結婚して子供まで出来ているなど、ピーターにとって未だに大切な人であった事が綴られていた。
2005年発表の「シンズ・パスト」ではグウェンが過去に宿敵のノーマン・オズボーンと関係を持っており、死ぬ前に双子を出産していたという衝撃的な展開が発表された。
双子はノーマンの特殊なDNAの影響で急速な成長を遂げたが、代わりに老化も早くなっている。
なお、恋人のピーターには関係を持った記憶はない。
双子がピーターの前に姿を現した時に、ピーターは彼らがグウェンの子供だという確証を得ようとしてDNA検査に及んだが、自分のDNAは使わずに墓地からグウェンのDNAを取り出している。
元々、清純の象徴のような存在の彼女がよりにもよって宿敵のノーマンと浮気というキツすぎる内容は彼女が死んだ時と同様、ファンの間で大きな衝撃となった。
2007年には「ワン・モア・デイ」というスパイダーマン関係の設定を一新・リセットするイベントが行われたが、この設定はそのまま残りファンを落胆させた。
このあんまりにもあんまりすぎる内容は2020年になって覆された。
実はノーマンの息子のハリーがピーターを苦しめるためにノーマンとグウェンの遺体からDNAを採取して遺伝子操作で双子を誕生させたと言う事になったのである。
また、生前のグウェンとノーマンが口論している様子をMJが目撃していたというのも裏付けとなっていたのだが、ミステリオが目撃者のMJと当事者のノーマンに催眠術を施していたという事になった(ノーマンはスパイダーマンとの戦いで一度死んだが、その後復活している)。
強引な設定変更が行われたが、当時モヤモヤしていたファンや、死後に酷い設定改変が行われたグウェン本人も少しは救われた事だろう。
日本語版では光文社の『スパイダーマン』がまさにグウェンがヒロイン時代のエピソードが集中しており、まとまった量を読むことができる。出版されたのが相当古い時期のため、当然ながら絶版で入手は困難。また本のサイズが日本の小版コミックと同じのためか、セリフの文量が少なく、本来フルカラーのコミックが白黒と色々難点もある。
小プロの『スパイダーマン:ステイシーの悲劇』ではグウェンが死亡した時のエピソードなど6話分を収録している。入手難度が低く、カラーはきちんと再現され翻訳などもしっかりしているので、まずはこちらを読む方が良いだろう。
また同じく小プロの『マーベルズ』では一般市民の目線でグウェンや、スパイダーマンとゴブリンの戦いなどが描かれている。グウェンが清純の象徴と綴った理由が分かるはずである。単純にアメリカンコミックの名作中の名作と言える本なので、手にとって損はない。
コミック『アルティメットスパイダーマン』においての彼女
異世界のスパイダーマンでは設定変更が行われ、パンクファッションに身を包んだ気の強い女性となっている。モデルは初期のマドンナ。
一度はカーネイジに殺されてしまうが、カーネイジの細胞を利用して復活し、ピーターの恋人となった。
アニメ『スペクタキュラー・スパイダーマン』においての彼女
ピーターの親友である内気な少女。ピーターに想いを寄せるが、関係が進展する前に番組が終了となった。
映画版においての彼女
サム・ライミ版『3』には、MJと食い違いを起こしたピーターの新たな恋人候補として登場。
当初はエディのガールフレンドであったが、当のグウェンは一方的にアプローチしてくるエディを内心鬱陶しく思っていた。
こちらでは死なずに生還するも、メインヒロインがMJである為に結ばれることはなかった。
どちらかというと原作漫画のアン・ウェイングに近いポジションである。
『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ(マーク・ウェブ版)では、メインヒロインとして登場。
当初はミッドタウンハイスクールの同級生としてピーターと交流を深め、やがて恋人関係になり、スパイダーマンとなった彼をサポートする。父であるステイシー警部の死に(こちらではリザードマンとの戦闘によって死亡)ピーターが苦悩するようになったのを見かねて別れを告げ(ピーターが警部に「娘を巻き込むな(交際をあきらめろ)」と遺言を残してそれをグウェンも察していた)、やがてイギリスへの留学を決意するが、それをきっかけにピーターと橋の上で和解。共にエレクトロへと立ち向かう。
しかしスパイダーマンの正体を知ったグリーンゴブリンによって人質にされ、時計塔から落下。ピーターはウェブを放って彼女を助けようとするが、一歩間に合わず(捕まえたが反動で地面に頭を強打した)、正史通りの最期を遂げた。
MCU版では今の所、登場無し。
1作目の『スパイダーマン:ホームカミング』でリズがグウェンのポジションを担当していたが、最終的に(命は落とさなかったものの)グウェンとは異なる形でピーターと別れていた。
3作目の『ノー・ウェイ・ホーム』ではMCUの世界に転移したマーク・ウェブ版ピーターの口から元いた世界におけるグウェンの顛末が語られており、それと同時にピーターがグウェンの死を未だに引きずっている事が言及されている。
脚本事情
なお、本来ならば彼女がメインヒロインとなる予定だったが、原作者のスタン・リーが代筆者を立てて休暇をとったところ、当時の脚本家のゲリー・コンウェイが彼の意図を知らずに彼女を殺してしまい、彼女の死には、読者どころかスタン本人さえもが大きなショックを受けた。と、日本随一のアメコミ識者である小野構世の著書などに記されているが、『スパイダーマン:ステイシーの悲劇』に拠れば、実際にはスタンもグウェンが死亡する事は既知だったと明かされている。
ゲリー曰く、グウェンはヒロインとしては欠点がなさすぎて魅力がないらしい。
スタンもMJがヒロインとなってから物語がより面白くなったとヒロイン変更を認める発言を残している。
主要キャラクターが前触れもなく死亡する事は当時のアメコミ界隈では異例中の異例と言える出来事であり、彼女の死を一つの時代(シルバーエイジ)の終焉として見る事もある。
死亡キャラの復活が頻繁に行われるマーベル世界において、今日まで復活していないキャラクターとしても有名。『スパイダーマン』の中ではベンおじさんもその一人である。
グウェンのクローンが登場した脚本は、グウェンの死を描いたゲリーの手による物であり、復活を匂わせるような脚本ではあったが実際はただのミスリードであった。
この時のクローンの大量登場と混乱は、後にさらなる混乱を招いた『クローンサーガ』に繋がっている。
ただ、グウェン本人の復活こそないが、グウェンのクローンは時折登場しており、ピーターを大いに悩ませている。
ゲリーが娘と共に映画『アメイジングスパイダーマン』を鑑賞した際に、娘から「パパはこんな良い娘を殺しちゃったの?」と問い詰められたという。
『シンズ・パスト』において双子が登場した際には当時の脚本家のJ・マイケル・ストラジンスキーはグウェンとピーターの子供という事にしようとしていたが、ヒーロー活動に支障が出ると編集陣から反発を受け、設定変更となったという。だからと言ってゴブリンの子供というのは酷すぎであり、スパイダーマンの歴史の中では悪名高い『クローンサーガ』レベルの黒歴史となってしまった。
演者について
実写映画におけるグウェン役のエマ・ストーンとピーター役のアンドリュー・ガーフィールドは実際に交際していた。なお、原作での共演も多いデアデビル役のベン・アフレックとエレクトラ役のジェニファー・ガーナーも2015年まで結婚していた。
スーパーヒロインとして
スパイダーグウェン(ゴースト・スパイダー)
詳細はスパイダーグウェンを参照。
グウェンプール
詳細はグウェンプールを参照。
関係者
いとこのジル・ステイシーは香港からニューヨークに引っ越してきた女性で大学時代の友人。ピーターと恋愛に発展しかけたが、MJの生存が明らかとなり身を引いている。
遺伝的には子供といえる双子に兄のガブリエル・ステイシーと妹のサラ・ステイシーがいる。二人ともノーマンにピーターこそが仇だと教育されていたが、サラはピーターの言動を見て全てノーマンの虚言だと見抜いた。
双子はノーマンの特殊な血液によって成長が極端に早まり、成人した状態でピーターと対面している。
特に妹のサラは生前のグウェンと瓜二つなことからピーターを驚かせた。
兄のガブリエルはゴブリン血清を投与した後、グレイ・ゴブリンとなってピーターと敵対した。
なお二人とも遺伝的な欠陥のせいで早逝している。
関連動画
(このようなパロディができるのも、エマとアンドリューが本当に付き合っていたからこそである。)