詳細
名称は、ロシア語で「携帯式対戦車擲弾発射筒」を意味する「РПГ-7:Ручной Противотанковый Гранатомёт(ルチノーイ・プラチヴァターンカヴィイ・グラナタミョート)」の英字綴りである「Ruchnoy Protivotankoviy Granatomet」の頭文字をとった略称。
RPG-7は装薬に点火して対戦車擲弾を発射し、弾体が一定距離進んだ後に弾体のロケット燃料に点火することで更なる加速を生み出し射程と目標への貫通力を高めたロケットランチャーのような兵器である。
後方に発射ガスを逃がして反動を抑制する機能を持つため無反動砲に分類されることもあるが、構造上「砲」の定義に当てはめにくいため、名称によりグレネードランチャーに分類されることもある。
ややこしいので、「RPG」か「対戦車擲弾筒」の名称でカテゴリを独立させたほうがいい気がするが、新型は今後出て来そうにないのでこのままでいいのかもしれない。
同様の構造と特性を持つものに兄弟機のRPG-2、RPG-16、そして先祖であるドイツのパンツァーファウストなどがある。
弾頭の種類は、HEAT弾頭のPG-7V、周囲の人間を爆圧で殺傷するサーモリバック弾頭のTBG-7V、対人用の破片榴弾のOG-7V、タンデム対戦車榴弾のPG-7VR等、様々な弾頭がある。
先端の弾頭部、中間部のロケットブースター、尾部の安定翼と発射薬の3つで構成されており、使用時には弾頭とロケットブースターが一体となったものに尾部をねじ込んで接続する。
創作物などでRPGを発射したシーンでは安定翼後方にある後端部からブラストを吹いて飛翔していくように描かれる事が多いが、実際には発射後に炸薬部後部にあるロケットブースターの噴射口から噴出して加速し、後端部の噴射のような発光は弾道を確認するためのトレーサーとなっている。
そのように描かれるのはロケットブースターの燃焼時間は短い為、トレーサーの燃焼を推進剤の燃焼と誤認したと思われる。
なお、一定時間(約5秒で、900~1,000m程)飛翔すると弾頭は時限信管によって自爆する構造となっているが、中国製の69式などでは自爆機能を備えていない。
構造単純、取扱簡便、低製造単価、再装填可能でありながら現代の主力戦車をも破壊し得る強力な破壊力を兼ね備える優秀な兵器であり、ロシアを中心に旧共産圏の国々が軍に正式配備している。
独特な投射軌道から単純なアイアンサイトでは直撃は難しいが、2.7倍の光学サイトを装着することで命中性を高めることは出来る。
しかし、初期の光学サイトは特定の(要するに米軍の)M48パットンシリーズの車高基準に作られていた上に安価ゆえに粗悪品も多くアイアンサイトで狙う方が確実に当たると言う話もある。
多くのコピー品が存在しているのはソ連が同盟国での製造にはライセンス料の類を徴収しなかったことも大きい。
ソ連崩壊によりロシアになった後は民間企業であるBazalt社となり、ライセンス料が徴収されるようになったが改良を加えることでライセンス料を払う必要をなくすなど(中国の69式、ブルガリアのアーセナル社などの元ソ連衛星国企業)により継続して製造されている。
枯れた技術で構成されている事もあり、パテントによる保護も行えない事から、こういったコピー品の製造を妨げることが出来ていない。
欠点として、兵器の構造上派手なバックブラストが出て射手の位置が撃った瞬間にバレてしまうことである。
そのため、撃った後、射手は撃った場所から移動しなければすぐに反撃されてしまう。
これだけの反動軽減装置を以ってしても発射時の反動はかなりのもので、素人が打てばスコープを頭にぶつけて怪我するレベルである。
また、弾頭部の信管は圧電素子を用いているためにしっかりと激突しないと不発となる、HEAT弾頭では適したスタンドオフ距離で作動しないと効果が薄くなる等の問題があり、金網やスラットアーマーといった簡易で安価な対策で無効化されてしまう。
交戦距離が近い市街地では問題になり辛いが、弾頭が風の影響を受けやすいという欠点もある。
弾頭そのものの飛翔速度はかなり速いため先代のRPG-2よりは当てやすいとされているが、弾頭が風上に向くという性質から特に遠距離の標的の場合は当て辛いという。
なお、光学サイト取り付け用のマウントはAK-47やAK-74、SVD等のサイドマウントと同形状のため、光学サイトの流用が可能となっている。
PGO-7光学サイトの目盛りはRPG用のために全く役に立たないはずだが、ゲリラや正規兵問わずRPG用光学サイトを取り付けたAKの写真を見ることが出来る。
2012年、なぜか日本は福岡県北九州市でヤのつく自由業者さんの所から発見された。
……いったいどこにどうやって使うつもりだったのかは未詳である。
ちなみに公表された写真を見る限りRPG-7ではなくそれ以降に開発されたRPG-26と言う使い捨てタイプであって純正のRPG-7ではないが、国内のその手の自由業者探しまくれば69式ぐらいは発見される可能性はある。
現在でも純粋な製造権利を持ってRPG-7を製造しているロシアのBazalt社製品を自衛隊は住友商事を通して被弾、耐弾テスト用に購入・使用している。
アメリカではAirtronic USAが2009年にアメリカ軍向けにRPG-7のコピー(ロシアからの製造ライセンス取得の有無は未確認)であるPSRL-1及びGS-777を製造し発表した。
このアメリカ製RPG-7ともいえる対戦車兵器は、トリガーグリップがM16/M4カービンのものに変更されているほか、ランチャーの左右上下にピカティニー・レールが装着されている。
なお、初期装備であるアイアンサイトやM4カービン用のフォアグリップやストックはピカティニー・レールに装着されている。
上記の通り中国でも69式という名前でデッドコピーが製造されている。大きな特徴としては機関銃や狙撃銃の様にバイポッドが装着され、他にもマウントハンドルの追加や幾らかの軽量化などの小改良が施されていたがバイポッドに関しては使い勝手が良かったのか後にソ連・ロシア製のRPG-7に逆輸入されている。
その他の「RPG」(一部のみ紹介)
以下を参照すれば分かるとおりソ連(現ロシア)では、ざっくりといえば「爆発する系」の対戦車兵器の形式番号に「RPG」と振られるようである。
「RPG-7」の兄弟
- RPG-2・・・RPG-7の前身的な物、弾頭は推進力を持たないが、発射筒の構造は7に近い
- RPG-16・・・ソ連空挺軍向きに開発されたもので発射筒は分解可能。
無反動砲型
- RPG-18・・・アメリカのM72LAWのような伸縮式使い捨てタイプ。1972年以降はこのタイプが主流。
- RPG-28・・・タンデム弾頭式の使い捨てタイプ。筒の伸縮はしない。
- RPG-29・・・現在、ロシア軍に使われている後装填のもの。標準でタンデム弾頭となった。
- RPG-30・・・タンデム弾頭式の使い捨てタイプ。アクティブ防御に対応するために先行してデコイロケット弾が撃ち出される。
手榴弾
- RPG-43・・・対戦車手榴弾(Ручная Противотанковая Граната)。投擲後、バネ仕掛けで露出する成形炸薬弾頭は布製の「尾」によって垂直に落下することで、戦車などに「トップアタック」を行うことが出来る。
フィクションでのRPG-7
かなりの高威力を発揮する兵器として登場することが多いが、RPGの通常弾頭は成形炸薬弾という特殊なもので広範囲への効果はそれほど無い。(成形炸薬弾のエネルギーの8割近くは周囲に散るので爆風や破片である程度の距離までは十分に殺傷能力がある)
基本破壊力は一点集中型であり、その貫通力は内部の炸薬に頼らなくても戦闘ヘリや装甲車の装甲ならブチ抜ける。
当然戦車の装甲も破壊できるが装甲材質の向上により、内部にまで致命傷を与えるには側面や上面などの装甲の「弱い」部分を狙う必要がある。
「ロケットランチャー」の名称で登場することもある。
また見た目もいかにもロケット砲的な、弾頭の露出したわかりやすい形なので、パンツァーファウストと並び漫画などでもよく利用されていることが多い。
その場合、HEAT弾頭のPG-7Vが使用されることが殆どとなっている。実際には対人用の榴弾(HE弾)なども用意されているのだが、知名度が低く、見栄えもしないためか、フィクションでは滅多に目にしない。
ブラックホーク・ダウン等で対空兵器として使われ、撃墜を行っているために対空兵器としても扱える兵器という誤解も広がっている。
もちろん、上に向ければ空に向かって飛んでいくし、威力も対戦車兵器なので当ればヘリだろうが戦闘機だろうが撃ち落とすことはできる。
が、弾道が対地射撃とは異なるために光学サイトの目盛りは参考にならず経験による射撃が必要となる。それでも300mまでが命中の限界といわれている。
要するに、フィクションでは空中の目標にも一撃で当たるのがさも当たり前のように描かれることが多いが、実際は空中を動く目標に当てるのは難しいのである。
貨物輸送中で移動速度が遅く回避機動を取ることの出来ない輸送ヘリ、兵員の降下などで静止しているヘリ、離着陸中で機動が制限されている機、等に奇襲的に用いるのが最も現実的、それでも当たるかどうかは五分五分、動いてる目標に対してはまず当てる事はできない。
実戦ではどうかと言えば、モガディシュの戦闘でのブラックホークの撃墜は破片効果を狙って空中炸裂するように時限信管にした弾頭で数百発打ちまくった結果の撃墜である。とはいえ、高度の低い離着陸時などを狙われれば非常に危険なのは確かであり、フィクションでの描写は“大げさ”としても、ヘリにとっては重大な脅威には違いない。実際に命中する事はなかったとしても、脅威によって作戦が変更されたり、中止となった時点で効果があるといえるのだから。
また、2005年にアフガニスタン紛争で行われたレッド・ウィング作戦(映画『ローン・サバイバー』に題材にされた軍事作戦)では、NAVY SEALsの偵察チームがタリバンの武装勢力に見つかって窮地に立たされてしまい、救援チームを乗せたCH-47が現地に向かうが、タリバンが放ったRPG-7が直撃して撃墜し、搭乗していた16名が全員戦死(偵察チームは4名中3名が戦死する)し、SEALs史上最悪の戦死者を出している。
ちなみにモガディシュの戦闘では、映画と異なり地面に穴を掘ってRPGのバックブラストを逃がせるようにするなど対空陣地を用意した上で撃ちあげ、陣地自体も先に攻撃を受けないよう偽装していたのだが、BHDを含めた映画やゲーム等の影響からか、シリア等で一部のゲリラ等は下準備をせずに撃ってバックブラストで自爆したり、簡単に落とせると思い込んで堂々と身をさらして撃つも外して反撃を受けたり、撃つ前に反撃されるといった事も起きている。
そして、ゲームだからとある意味やりたい放題やっているのがバンダイナムコゲームスから発売されているフライトシューティングゲームエースコンバットのXとX2。
護衛目標や自機を攻撃する兵器として登場するが、本来無誘導である筈の弾頭が自機めがけて誘導追尾して来たりする。ちゃんとミサイルアラートが鳴る上にしかも当たると結構痛い。
X2においては、特に超兵器バラウールが登場するステージにて衝撃の事実が明らかに。
バラウールを護衛する部隊の隊長らしき人物が「ヴァラヒア軍人の気概を見せろ!」と部下を叱咤している。
これには旧日本軍もびっくりである。気概でロケット弾に誘導性能を付けられるのだから。
今では魔法少女も愛用中。
(補足)
ソ連武器全般に言えることだが映画などで登場する“RPG-7”は、オリジナルではなく、中国製の69式が“代役”となっている場合が多い。西側での入手のしやすさやコストなどが影響していると想像されるが、69式はオリジナルにはないキャリングハンドル(持ち手)が追加されており、注意して見れば容易に見分けがつく。
エアソフトガンでのRPG-7
ルール上弾頭を撃ち出すことが出来ないため、コスプレ用の荷物になるかグレネードランチャー用カートリッジを内蔵しての単発式の散弾銃のようなものになっている。
変り種ではペットボトルロケット発射機になっているものもあるが、こちらもゲームでは使用不可。発射時には当然、バックブラストの代わりに水が噴出する。