概要
AK-74は1974年にソビエト軍が採用した銃で、従来のAK-47系列に替わるものである。
AKMの流れを汲み、削り出しではなくプレス製レシーバーとなっている。
口径がAKMから小口径化されて5.45mm(使用弾薬5.45×39mm)になっており、大きな特徴となっている。
この5.45×39mm弾の弾頭の内部には空洞があり、人体に当たった場合射入口は小さいが射出口が口径と比して大きく、筋肉血管を含む周辺組織に広い体積で損傷を受ける為、治療が難しいという特性があった。そのため、1978年から1989年のアフガニスタン紛争に投入されたAK-74と5.45×39mm弾はアフガニスタン武装勢力から恐れられたという。
この技術は西側にも影響を与え、現行の5.56×45mm弾(SS109、M855)では、同様の構造が採用されている。
基本データ
全長 | 950mm |
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銃身長 | 415mm |
重量 | 4850g |
口径 | 5.45mm×39 |
装弾数 | 30発 |
バリエーション
AKS-74 - ストック折り畳みモデル
AKS-74U - リンク参照
AK-74M - リンク参照
RPK-74 - 軽機関銃。
変更点
AKMからの変更点は、小口径化の他、マズル部のフラッシュハイダーが大型化されたことである。これは、AK系の銃の持病でもある「連射や速射時に銃口が右斜め上に持ち上がる」症状を軽減するための物であり、左右の大型のスリットのほかに、前方へガスを噴出する小型のスリットや銃口の動きを御するための小穴が複数開けられるなど、結構凝った造りである。当然取り付け部もM14P1.0逆ネジからM24P1.5正ネジへと変更され、AKMやAK47のハイダーとの互換性は無く、この余波でバヨネットラグがガスブロックからフロントサイト基部下に増設された。(ガスブロック基部に残ったバヨネットラグはグレネードランチャーの取り付けに用いられる)
初期の物は合板のストックだったが、後にプラスチック製ストックが採用された。
旧来のAK-47、AKMに替わり順次配備されていったが、当然一つの組織に古いAKMと新しいAK-74が混在してしまう時期も存在する。
その上で問題になるのが弾薬の規格であるが、上記改良点にあるとおり、それぞれ7.62×39mmと 5.45×39mmを使用する。
そのため、夜間や視界の悪い状況であっても適合弾薬がすぐ分るようにAK-74にはストックに溝が入っている。
ちなみにガスブロック前側が垂直に(AK-47やAKMでは斜めになっている)変更されているといった細かい部分も変更されている。
マガジンはベークライト製が全面的に使用され、のちにスチール製で全体を黒ないし暗紫色の樹脂でコーティングしたタイプも登場した。反面、AK-47のような古典的なスチールプレス製のマガジンは本国では採用されていない。
ロシアになってから
ソ連崩壊と同じ時期にAK-74にプラスチックを多数使用し、ストックを折りたためるようにしたAK-74Mが開発され、現在ロシア軍で使用されている。
また、主要メーカーの一つであるイズマッシュは、同銃のカービン版AK-105や連射速度が向上させ3点バーストの追加したAK-107などAK-100シリーズを開発している。
ロシア国外では
ソ連製小火器の例にもれず同盟国にも供与やライセンス生産が認められた。
しかしながら、アフリカや中東、アジア地域にはAK-74の配備によって余剰化した AK-47やAKMを供与したことと、旧式のAK-47やAKMとは弾薬の互換性が無いため従来の弾薬の在庫の廃棄や弾薬製造ラインの大幅な改修が必要であるため、AK-74(タイプの銃)を使用しているのは、旧ソ連構成国や旧ワルシャワ条約機構以外ではキューバやアンゴラ、シリア、モンゴル、ベトナム、北朝鮮など比較的少数に止まっており、AK-47やAKMに比べると普及度が低い。
- 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)
北朝鮮では本銃と同型のAKを88式自動歩銃として採用。朝鮮人民軍の一線部隊は概ねこの銃に切り替わっているとみられる。
88式自動歩銃はハンドガードの形状など細かい部分は異なるものの概ねAK-74と同等であるが、マガジンはスチールプレスで、折り畳みストックのモデルは中国製の56-2式やイスラエル製のガリルに似た形のストックに替えられている。
日本では、横浜の海上保安資料館で同国の工作船とともに展示されている。
- ドイツ民主共和国(東ドイツ)
東ドイツでは、AKMシリーズの同国版であるMPi-KMの後継としてMPi-AK-74として国産化されたほか、本銃をもとに主として第三世界などへの輸出を目指したモデル「ヴィーガー(Wieger)」が新たに開発された。
ヴィーガーのラインナップの中には、冷戦のさなかであるにもかかわらずイデオロギー対立の相手先であるNATO標準の5.56㎜×45㎜弾を使用するモデルも存在するなど、社会主義圏の軍事的な最前線ながら同国の複雑な立場が滲み出るモデルであった。
生産開始が1985年とベルリンの壁崩壊が目前に迫った時期で、輸入テストを行った数ヶ国で好意的な評価を得ていたものの、その後壁の崩壊とともに受注は全てキャンセルされたため結果的に大々的な量産は行われなかった。
- 日本
日本では、1990年代にオウム真理教が教祖麻原彰晃の指示のもと「救済」の名目で民間人等の大規模虐殺を画策。その一環として猛毒の化学兵器であるサリン70tなどとともにAK-74タイプの自動小銃1000丁の密造が計画され、実際に製造が始められた。
オウム真理教は1990年代にロシア国内で多くの信者を獲得したのみならず、ソ連製のMi-17ヘリコプターの購入や信者らにロシア国内で軍事訓練を受けさせるといった風にロシアとの結びつきが強く、AK-74の導入も前後の経緯を考えれば不自然ではなかった。
当時、ソ連崩壊の余波で軍や軍需工場の規律は荒廃の頂点にあったため完成品の密輸も(少なくとも調達の時点では)さほど難しくなかったと考えられるが、教団は機密保持のために予め乗っ取った鉄工所と教団施設内の秘密工場での密造という手段を採用。教団幹部がロシアに飛び、実銃の見分や書籍や論文などの調査が行われた。
とはいえ、知識のみならず経験も求められる自動小銃の製造は曲がりなりにも高学歴集団だったオウム真理教幹部らでも手に余ったらしく、苦心の末数丁完成したところで情報が漏れて警察の強制捜査が入り、"大量密造"は未然に防がれた。既に生産されていた大量の部品はオウム真理教側により、証拠隠滅を目的にサティアンの柱内への隠匿やダムへの投棄が行われたが、信者の自供によって完成品や部品が押収されている。
麻原によって、銃本体は『ナーディー』、銃弾は『プラーナ』と名付けられていた。
押収された部品や完成品は鑑定の結果、銃身径がやや狭く5.45㎜弾を削ってから装填する必要があったり、マガジンの出来が悪いため回転が不安定であったりと完成度は低かったものの、一応は実射が可能で殺傷能力は充分と評価されている。もし量産されていた場合、日本の治安に重大な影響を及ぼしていたことは想像に難くない。
当時は新世紀を目前に控えて、オカルトや終末思想、都市伝説といったコンテンツが人気だったためか、「オウムの銃を見た」「警察はすべて破棄したと発表したが実は未だあるのではないか」などといった流言が度々飛び交ったという。
AK-74の後継は
後継としてAN-94が配備されているが高価化や複雑化など多くの欠点を抱え、さらに改良も出来ていないという問題もあって配備はロシア軍の一部に留まり、改良型を含め多数のAK-74が現役である。
最近ではさらなる現代化改修がされたAK-200が開発されたがロシア軍が保有するAKライフルの数が足りていることから購入をキャンセル。AK-74Mの現代化を進める考えであったが、2013年9月にAK-12の正式採用が一度は決定したが、2017年3月に改めてAK-12と共にA-545を配備するとの決定が出された。