StG-940は、1980年代にドイツ民主共和国(東ドイツ)で設計・少数製造されたアサルトライフル等のモデル名。
外貨獲得を目的とした輸出向けモデルであったが、ドイツ再統一によって消滅した。
後に述べるが、StG-940なる銃は存在しないものの便宜的に用いられる呼名である。
概要
冷戦期にソ連の影響下にあった東ドイツでは、国家人民軍や準軍事組織でAK系列の銃が使用されていた。
東ドイツは分割・第二次大戦勃発前から工業が盛んであったため、AKをMPi-K(シリーズ)として国産化するのみならず、主に発展途上国などに向けて大量の自国製AKを輸出し、堅調な実績を重ねていた。
とはいえ、同じくAKの輸出が重要な外貨獲得(と外交)手段の1つであるソ連にとっては、東独製AKは目の上のたんこぶとも言えるもので、AK-74系列は自国向けのライセンス生産こそ認められたものの、それまでと違って輸出することは禁じられたという。
そこで、輸出用小銃として新たにウィーガー(Wieger)シリーズを開発。
StG-910(91xシリーズ)は7.62×39mm弾、StG-920(92x〃)は5.45×39mm弾で、StG-940(94x〃)は5.56mmNATO弾を使用する一連の銃の呼名となった。
構造
基礎的な構造はAK-74とほぼ同一とされる。
StG-940シリーズはWiegerのうち、5.56mmNATO弾を使用する一連のモデルのカタログ名で、ラインナップは通常の固定ストックのStG-941、折り畳みストックのStG-942、カービン銃のStG-943、軽機関銃LMG-944、狙撃銃PG-945である。
つまりStG-940なる銃は存在しないわけだが、慣例的にWiegerシリーズを指す名詞の一つとして使われるようである。
先に触れたStG-910やStG-920も同様の命名則である。
いずれも本家AKと比べると、ハンドガードやグリップ、ストックなどに人間工学的な配慮が見られるほか、フロントサイトとガスブロックが一体化され、フラッシュハイダーも原型のAK-74とは明らかに異なるものである。
その反面、多くのAK亜種と同様にレシーバーやセレクターといった部位には進化は見られない。
StG-942・943等に用いられた折り畳みストックは東独製MPi-KMSやルーマニア製AIMSと同様を鋼棒を曲げるなどして成形したもので、右方向への折り畳み・畳んだ状態でのセレクター操作が可能である。
配備
設計完了後程なくして、国家人民軍で少数が試験された。
良好な信頼性や精度が確認されるなど結果は上々で、本格的な量産と輸出は1991年を目処に開始するという計画が組まれた。
それに先立って、数千丁が生産され採用がインドなど見込まれた国々へ送られて試用に供されている。
総じて本銃の評価は悪くなかったと見えて、Wiegerシリーズ全体で少なくとも12カ国が採用を決定するなど幸先こそ良かったものの、1989年のベルリンの壁崩壊と翌年のドイツ再統一によって本銃に関する計画そのものが凍結され、結局量産されることなく姿を消した。
レプリカなど
- StG-2000-C
アメリカで流通したレプリカ。
インターネット上で確認できる銃砲店のカタログによれば、StG-2001-Cが7.62×39mm弾仕様でStG-911の、StG-2003-Cが5.56mm弾仕様でStG-941のそれぞれレプリカだった。
また、ソ連崩壊後のロシアでも外貨獲得を目論んで、本銃同様に5.56mmNATO弾を用いるAK-101が開発されている。
これはAK-74Mを基にしたものだが、弾薬以外は原型とほぼ変わらない。