Jリーグの発足に当たり、初代Jリーグチェアマンを務めた川淵三郎をはじめとする準備陣は「クラブの法人化」「ホームタウンの確立」「1万5000人以上収容可能なナイター設備付きの競技場の確保」「18人以上のプロ選手との契約」「下部組織の運営」など7つの参加要件を提示。大半のサッカーチームが企業の傘下にある実業団だった当時としては相応に高いハードルとも思われたが、1990年6月までに合計20団体から応募が届いた。当初はこのうち8クラブにまで絞り込む予定であったが、バブル景気の下、当時活発だった企業の社会貢献ブームもあって、加盟を熱望する団体があまりにも多いため初年度参加クラブを10クラブに枠を広げることとなり、これがオリジナル10へとつながる。
地域バランスなどを考慮して、まずはJSL1部加盟クラブである古河電工(東日本JR古河)・三菱自工・読売クラブ・日産自動車・全日空(全日空佐藤工業)・トヨタ自動車・松下電器・マツダの8クラブのプロ化が決定。
残りの2枠は清水市民クラブ、ヤマハ発動機、ヤンマー、日立製作所、フジタ、住友金属の6クラブの争奪戦となった。
この中で、清水市民クラブは母体である清水FCが日本サッカーのリーグ構成における「4部」相当のリーグである静岡県リーグ所属にとどまっており戦力面での問題があったものの、1991年の高校総体サッカー競技のためにつくられた日本平運動公園球技場があったことなど、他の参加要件が他クラブに比べて有利であり、まず一枠を清水が確保した。
残り一枠については、天皇杯優勝経験のあるヤマハ・ヤンマー・日立・フジタの中から1クラブを選出することがほぼ決まっており、JSL2部所属で天皇杯優勝経験もない住友金属については当時の鹿島町長や住友金属幹部らに川淵氏が「住友金属さんの加盟は99.9999%無理ですよ」と公言するほど分が悪かったが、それでもあきらめない住友金属関係者に対し、川淵氏は「観客席に屋根の付いた1万5000人収容のサッカー専用競技場を建設できるなら考えましょう」と発言。参加をあきらめさせるためにはなった言葉だったがこれに対して当時の茨城県知事・竹内藤男が屋根付きの専用スタジアムを建設することを確約したことが決定的な要因になり、逆転で住友金属が最後の一枠に埋まることとなった。
クラブ一覧
クラブ名 | 前身 | ホームタウン | 発足時のホームタウン | 前身の発足年 | 開幕前年度所属 |
鹿島アントラーズ | 住友金属工業蹴球団 | 茨城県鹿嶋市他 | 大阪府 | 1947年 | JSL2部 |
ジェフユナイテッド千葉 | 古河電工 | 千葉県市原市 | 横浜市 | 1946年 | JSL1部 |
浦和レッズ | 三菱自工 | 埼玉県浦和市 | 兵庫県 | 1950年 | JSL1部 |
ヴェルディ川崎 | 読売クラブ | 神奈川県川崎市 | 東京都 | 1969年 | JSL1部 |
横浜マリノス | 日産自動車 | 神奈川県横浜市 | 神奈川県横浜市 | 1972年 | JSL1部 |
横浜フリューゲルス | 全日空サッカークラブ | 神奈川県横浜市 | 横浜市 | 1964年 | JSL1部 |
清水エスパルス | 清水FC | 静岡県清水市 | 清水市 | 1956年 | 実業団ではないので未表記 |
名古屋グランパス | トヨタ自動車 | 愛知県名古屋市 | 静岡県 | 1939年 | JSL1部 |
ガンバ大阪 | 松下電器 | 大阪府吹田市 | 1980年 | 大阪府 | JSL1部 |
サンフレッチェ広島 | マツダ | 広島県広島市 | 広島県 | 1938年 | JSL1部 |
なお、鹿島アントラーズと清水エスパルスは現在のホームタウンの名前が異なっているが、これはホームタウンの合併や吸収が発足後のため、発足時の地名を採用している。また、ホームタウンが追加されたクラブも存在する。
降格
1999年よりJ2リーグが設立されると、毎年昇格、降格争いが起こり、オリジナル10のクラブにも降格したクラブも存在する。2023年現在、清水、千葉、東京はJ2リーグ所属で、他はJ1。
なお、鹿島アントラーズと横浜F・マリノスは2023年現在も降格経験がなく30年間J1に居続けているため未表記とする。
クラブ | 降格年 | 降格回数 | 最終復帰年 | 現在 |
浦和 | 1999年 | 1回 | 2000年 | J1 |
千葉 | 2009年 | 1回 | 以降復帰無し | J2 |
川崎V | 2005年、2008年 | 2回 | 2007年 | J2 |
清水 | 2015年、2022年 | 2回 | 2016年 | J2 |
名古屋 | 2016年 | 1回 | 2017年 | J1 |
G大阪 | 2012年 | 1回 | 2013年 | J1 |
広島 | 2002年、2007年 | 2回 | 2008年 | J1 |
各クラブのタイトル(2023年6月現在)
2023年現在、全てのクラブがタイトル経験があり、うち8クラブはリーグ優勝を経験している。
ここでは、J1リーグ、天皇杯、Jリーグカップ、ALCの4つを対象とする。なお、ここでは発足後のみを表記し、前身時代は含まない。
クラブ | 数 | 初獲得年 | 最終獲得年 | 内容 |
鹿島 | 20冠 | 1996年 | 2018年 | (リーグ8回、天皇杯5回、リーグカップ6回、ACL1回) |
市原 | 2冠 | 2005年 | 2006年 | (リーグカップ2回) |
浦和 | 10冠 | 2003年 | 2023年 | (リーグ1回、天皇杯4回、リーグカップ2回、ACL3回) |
川崎V | 7冠 | 1992年 | 2004年 | (リーグ2回、天皇杯2回、リーグカップ3回) |
横浜M | 8冠 | 1992年 | 2022年 | リーグ5回、リーグカップ1回、天皇杯2回 |
横浜F | 2冠 | 1993年 | 1999年 | (天皇杯2回) |
清水 | 2冠 | 1996年 | 2001年 | (天皇杯1回、リーグカップ1回) |
名古屋 | 4冠 | 1995年 | 2021年 | (リーグ1回、天皇杯2回、リーグカップ1回) |
G大阪 | 9冠 | 2005年 | 2015年 | (リーグ2回、天皇杯4回、リーグカップ2回、ACL1回) |
広島 | 4冠 | 2012年 | 2022年 | (リーグ3回、リーグカップ1回) |