「君は僕と戦えてラッキーだったと思うよ」
「星十字騎士団で一番強いのは 僕だと思うから」
巻頭ポエム
美しさとは、
そこに何もないこと(第64巻)
概要
星十字騎士団のメンバーの1人で、ユーハバッハから“V”の聖文字を戴く。一人称は「僕」。
見た目はフードを被った金髪の少年で「星十字騎士団最強」を自称する。
仲間からは「グレミィ」と呼ばれている。
人物像
後述するユーハバッハさえ警戒する無敵の能力を持っていたが故に、常に斜に構えて人を見下したような性格になってしまっているが、その性根は真っすぐで見た目相応に幼さを残している。
その気になれば安全圏から攻撃する方法もいくらでもあったにもかかわらず、(形はどうあれ)更木剣八の挑発に乗ってわざわざ同じ土俵で勝負してしまった姿から、熱くなりやすいところもあったのかもしれない。
能力
「指一本だって使わない 頭の中だけできみを殺してみせよう」
能力名は『夢想家(The Visionary)』。
想像した事柄を現実にする能力を持っており、自らの肉体強化や瞬間移動のみならず、巨大な瓦礫や紅蓮の炎、大量の水に無数の重火器、果ては超巨大な隕石や宇宙空間までも一瞬で作り出し、その圧倒的な物量攻撃で相手を一方的に叩き潰す、理不尽極まりない戦術が得意。
独立した意志を持った人間の創造すらも可能で、作中では他の騎士団のメンバーと比べても遜色ない能力を持ったグエナエルやシャズを生み出しけしかける、更には自分自身を複製して想像力を並列処理し、能力の出力強化を図る芸当まで見せつけた。彼が作った部下の聖文字は全て「V」である。
また相手の身体や事象への干渉もでき、草鹿やちるの全身の骨をクッキーのように脆くして無力化させ、地形操作で地割れを出現させて剣八を圧殺しようとした。
更には重傷を負ったとしても「自分が負けるわけがない」と想像すれば、たちまち全快も可能とチートにも程がある能力である。
その無茶苦茶な能力と、敵味方関係なく虐殺する残忍さもあって、長い間牢屋にぶちこまれていた(恐らくは味方を平気で巻き込んでいるのが原因)。
ただし、その効果は恒久的なものではなく、意識を逸らせば生み出したものは消えてしまう。また空想で相手を直接再起不能には追い込めない制約から、戦闘中は相手を倒す現象・事象を絶えず想像し続けていなくてはならないし、その想像が自分と相手が互いに見知っているモノでないと、巧く想像が作用しないと、意外にも穴が散見される。また一度破れたグエナエルを即座に処分したり、この人のように隕石を再度召喚しなかったり、唯一有効打になった分身による自爆攻撃を再使用しなかった様子から、恐らく『一度破られた想像は二度と使用できない』制約もあると考えられる。
更に自分が負ける所を想像してしまえば、たちまちそれが現実化してしまう、致命的な弱点も存在している(この為、敵味方関係なく虐殺するのは、雑念が入り攻撃が弱くなるのを避ける意図かもしれない)。後述にもあるように、自分の身体構造に耐えられないようなイメージによる、自己強化を無意識に現実化してしまい自滅を招くケースもある。
その性質から「相手の精神に直接干渉する金沙羅舞踏団や鏡花水月、同じ星十字騎士団のThe Fearのような能力を使用する相手は苦手としているのではないか?」とする説がある。
活躍
作中で旗色の悪いグエナエルを処分した後、そのままやちると交戦し一方的に蹂躙したものの、更木剣八が登場したため彼と交戦。
だが、何を想像しても全て力技で強行突破する剣八のチートぶりの前に殆ど歯が立たなくなり、当初こそ『自身の敗北』を想像し掛けたものの、次第にグレミィの心中に恐怖や焦り以上に、自分の想像を次々と超えていく剣八を見て「喜び」に近い笑みを浮かべており(好戦的になった?)、次第に「剣八を越えたい」とまで思う様に。(憧れの感情だろうか?)
遂にグレミィは「剣八より強い力」を想像して逆転を謀るも、体がその力に耐えられず自壊し敗北。
それを見た剣八は「お前えはお前え(=想像)の中で俺を化け物にしちまった。その化け物に殺されたんだ(=剣八の力を過大評価し過ぎた)」と原因を指摘したが、グレミィは「完璧に正しく想像していた」と反論しつつも、「ただ1つ計算違いだったのは、剣八の力に耐えられるのは剣八の肉体のみだった」と説明した。
つまり正しい敗因は「自分が現在使用している肉体の過大評価」または「強化順番の取り違え」である(尤も想像力で戦うグレミィが『剣八に対抗する手段』のアイディアが枯渇した末に、半ば自棄気味に『剣八自身の更に強い力を求める』元も子もない回答に走ってしまった時点で、既に勝負は決していたようなものだったが)。
そうして崩壊していく肉体と共に「何も想像できない暗闇」に思いを馳せつつ現れた本体は、ケースに入れられた「脳」であり、能力や少年の姿も「脳」が想像して作った姿であった。
「言ったろ。"指一本だって使わずにきみを殺してみせよう"ってね。僕のこの体も全ては僕の想像の産物。言葉通り確かに僕はきみに指一本だって使っちゃいない。」
自壊が原因で何かしら脳に影響を与えたのか、生命活動も想像で行っていたのか、あるいは「死を自覚してしまった」からなのかは不明だが、これによって死亡した扱いになっている(現実でも脳だけで生きていられる人はいない為、後者の可能性が高いかも知れない)。
その後
死亡したためその後の出番はないが、この脳はある目的に使われた事態が判明。
リルトット・ランパードとの関係
小説『Can't_Fear_Your_Own_World』の第十五章のリルトットの回想シーンで登場。団員からは彼の視界にすら入るのを避けるほど恐れられていた模様。そんな中、リルトットからは「ばけもん」「クズ野郎」等と罵られてはいたが、仲間として見られていた。
「腹減ったから何か出してくれ」と頼まれ、能力で袋入りのドーナツの山をリルトットの手に召喚。リルトットが甘党であるのをグレミィは知っており、甘いドーナツにしていたがリルトットからは「甘すぎる」「想像力が広がるから色々なものを食っておけ」などとダメ出しされる。
グレミィはそれに苦笑しつつ見返りを求めたところ、リルトットからは「始末し損ねたら追い討ちくらいはかけてあげる」「それが無理だったら嫌がらせして逃げる」と約束され、それを聞いて「陛下も含めてうちは身勝手な人間ばかりだ」と称した。
そして「戦争が終わったらどうするのか?」とリルトットから聞かれ、グレミィは「それは想像したことがなかった」としつつも「料理を作りたい」と宣言。更にグレミィは「リルトットが一口で肥満体になる高カロリーのクッキーにしとく」と返したところ、リルトットからは「味見くらいはしてやる。期待してるぜクズ野郎」と返答された。
そして、リルトットとの会話後、グエナエルを引き連れ戦場へと向かった。それがリルトットとの最後の会話になった模様。
この回想から、リルトットとグレミィの関係は割と良好であると見受けられる他、グレミィもリルトットから話し掛けられるのが嬉しかった可能性がある。同年代の友達と感じる程度に精神年齢が近かったのだろう。
グレミィを倒した剣八をバンビーズが襲ったのは、この時のグレミィとの約束(グレミィが始末し損ねたら、追い討ちくらいはかけてあげる)を果たす意図だった可能性がある。
余談
この「最強と最強」の戦いは、読者から千年血戦篇の中でも屈指の名勝負の1つとして注目されており、本章のアニメ化に際し、ネット上でも「剣八vsグレミィ」の映像化に期待する声が多く上がっていた。そして、アニメ千年血戦篇の第20話の次回予告でグレミィの巻頭詩が流れ、来る第20話にて遂にアニメ化。読者の期待を上回る作画と声優陣の名演技、そして原作571話~579話の全9話をアニメ1話分で消化するというテンポの良さから絶賛の声が上がり、Twitterのトレンド上位に食い込んだ。視聴者の中には、そのクオリティの高さから「グレミィの出番を一話で終わらせて欲しくなかった」「もっと戦いを見たかったから余りカットしないで欲しかった」と淋しがる者まで居た程。
読者の間でグレミィが幽閉されていた真の理由は、性格の問題ではなく「その気になればユーハバッハを倒しかねないほど強力な能力であるため、それを阻止するために幽閉されていたのではないか?」と噂されるが真意は不明。
作中で団長のハッシュヴァルトが、グレミィが召喚した隕石を見て焦って陛下を避難させた辺り、その可能性はあるかも知れない。
更にはアニメ版での彼の登場回にして剣八との対決・死亡回でのアイキャッチでの解説では、能力に関して説明の後に「その危険性と及ぼす影響の大きさから、グレミィは銀架城内の中でも、ユーハバッハによる特殊な結界により封印される檻に収監されていたという」と書かれており、やはり不条理で強力すぎる能力故に危険視されての投獄・幽閉だったようであるのははっきりしている。
剣八の挑発にあっさり乗ってしまった理由としては「実は褒められ慣れていなかっただけなのではないか?」 との考察がある。剣八は戦いに搦め手を持ち込む考えには批判的ではないので、チートとしか評価しようのない能力を振るうグレミィの「自分が星十字騎士団最強」の発言を信じ、能力の有用性を認めた上で「最強なら最強らしく戦ってみせろ」とする旨の挑発を行った。
剣八はリルトットと同様に自分の能力を素直に褒めてくれた数少ない相手だったため、そんな相手に直接対決で勝利して自分の強さを認めてもらいたがった程度の人間性を残していた本心が、彼の直接の敗因だったのかも知れない(因みにCVを担当した花江夏樹氏もこの点に対し、公式アニメサイトのインタビューにて『ただ、圧倒的な強さを持つ(更木)剣八に出会ったグレミィは、負ける恐怖や焦りのほかにも、想像通りにいかない強敵に出会えた喜びや、想像を超えてくる剣八に対する嬉しさを感じたのかなと思っています』と語っている)。
尚、剣八との文句なしのチートクラス同士の対決を遠くから観戦していた(しかも建物の屋上で足を延ばして、持参したと思しきクッションを背もたれにしながら双眼鏡で眺めていた)アスキンは「あ~あ…まったく…。世間じゃ空想だけで何にもできねえ奴を悪く言うが、空想だけで何でもできちゃう奴を見ちまうと、何にもできねえ方がどんだけ平和だろうと思うぜ」と、グレミィのこのチートにも程がある能力を味方ながらに盛大に皮肉る評価を下した。
見えざる帝国の指導者であるユーハバッハさえ巻き込みかねない隕石を召喚した攻撃の際には、グレミィを批難するような態度を示す星十字騎士団員もいた。
やはりリルトット以外の星十字騎士団員達にはその能力を快く思われておらず、見えざる帝国の中で孤立していたようである。