竜送りのイサギ
りゅうおくりのいさぎ
概要
アニメ化の実績がある「ノケモノたちの夜」原作の漫画家・星野真による漫画作品。小学館のWEB漫画サイト「サンデーうぇぶり」にて、2023年9月3日より連載を開始した。
歴史好きの星野真先生が、「日本神話」をモチーフに世界観や登場人物の名前に取り入れた新作。竜が住んでいる平安時代"風"の異世界を舞台に、少年の竜殺しの旅路を描いた作品である。
- コミックス単行本は「少年サンデーコミックススペシャル」ブランドより第1巻が発売(2024年1月時点)。
- 2024年1月10日発売の「週刊少年サンデー」第7号に、物語の前日譚にあたる特別読み切り「天羽々斬」が掲載された。
- 2024年1月にBSJapanext放送の「ボイコミラボ」に本作品が取りあげられる。22日放送回では4話「天気雨」、29日放送回では7話「巌鏡」がボイスコミック化された。
あらすじ
ここは、竜が棲む世界の流刑地・陵獄島。人はおろか、この世界ではごく普通にいる竜ですら近寄ろうとしない。
斬った相手の記憶が垣間見える首打人の少年・イサギは、ある日死罪となった将軍・タツナミと出会い、彼に剣術の稽古をつけて貰った。首打人に指名されたのちタツナミの処刑当日、イサギが自身の特殊能力「サトリ」で見たタツナミの記憶は「彼が大きな竜を斬り殺した」という事実であった……
世界観
舞台は「ヒムカの国」。
天候と風を司る竜への信仰が深く、人々はその存在に政治経済文化信仰などで多大な影響を受けている。竜について滅多なことを言うと石を投げられるほど。
だが僧侶がいることや四十九日、焼香、仏壇とおぼしきものも存在しているため、竜のみを信仰しているわけでもなく仏教の影響もみられる。「通例髪を長く伸ばして結ぶ」という文化があり、作中の人物は大抵髪が長い。
身分制度が存在しており、重罪を犯せば家族諸共縁座で最下層の身分に落とされる。
刑罰は江戸時代のものと近い様で、殺人は死罪に当たる。
- 街並みは江戸時代風だが、陵獄島は平安時代風でもあり和風ファンタジーといっても独特な雰囲気がある。
- 地名は日本列島らしき土地を竜の体に対応させているようで、例えば現実の東北地方と思われる土地は「頸州」、下北半島と思われる土地は「喉仏半島」、恐山と思われる土地は「逆鱗山」と呼ばれている。「太政閣」にて政治の中核を担っている。
- 通貨は「鐶(かん)」が使用されている。
登場人物
記載のあるCVは2024年放送のボイスコミック版のもの。
- 櫛灘イサギ(くしなだ いさぎ)
CV:川島零士
主人公の少年。若白髪で中の後髪のみ黒。左の額に三日月形の傷がある。
罪人の子として生まれ、首打人(=首切りの役人、死刑執行人)として陵獄島で暮らしていた。斬首の腕前は抜群。故に二つ名は「斬聖」。
タツナミとの鍛練を経て、人を斬る際に(一部ずつだが)斬られる人間の記憶を見ることが出来る特殊能力「サトリ」を手に入れる。
某兄さんの異世界転生後の姿ではない。
- 須佐タツナミ(すさ たつなみ)
都では「稀代の名将」として知られていた将軍。罪を得て死罪が言い渡され、イサギを首打人に指名し第1話で斬首刑を受けたが、表向きは病死とされた。手錠を引きちぎるほどの怪力を持ち、死ぬまでの数ヶ月間イサギに剣術を教えた。
イサギに首を斬られる際記憶を彼に渡し、(情報量の多さ故に少しずつしか見られないようだが)得た罪は「竜殺し」であることが判明する。
左耳に付けていた耳飾りはイサギに託された。
「天羽々斬」は彼が陵獄島に流されてくる場面から始まる。
- 須佐チエナミ(すさ ちえなみ)
CV:浪川大輔
タツナミの息子で三男坊。イサギの「サトリ」の噂を聞きつけており、「父はどうやって竜を殺したか」をイサギに聞き出して、滞在先の陵獄島からイサギと一緒に竜を探しに向かう。須佐家の家宰(=執事、家老)である鳥居道玄と連絡を取っていたが、合流先で道玄は辻斬りに討ち取られていた。
タツナミの顔の傷はチエナミが付けたもの。某上司とは他人の空似。
- 十文字マヒナ(じゅうもんじ まひな)
CV:長妻樹里
国の最大商会「十文字屋」の最高幹部で、年齢はタツナミと同世代。
生前の鳥居道玄から連絡を受けており、辻斬りに対処したイサギ・チエナミの元に現れる。
- 鳥居道玄(とりい どうげん)
須佐家の家宰。須佐家の勢力回復を恐れる者によって暗殺される。チエナミに歩法を教えた者でもあり、彼に慕われていた。
- 八雲蒼緋(やくも そうひ)
臍州一の剣豪と呼ばれた試斬人。本編の3ヶ月前、"竜の刀"をマヒナから彼女の仲間の命とともに強奪し逃走。以来近辺で辻斬りを繰り返している。
八雲蒼緋の娘。父親と行動を共にしている。
- ささみ
埼多摩荒野が原産の埼多摩驢馬(♀)。
笹が好物であるため、“ささみ”という名前が付いている。
間違っても「埼多摩驢馬にはそこら辺の草でも食わせておけ」などと言ってはいけない。
- 宗田(そうだ)
CV:岡本信彦
十文字屋の目利きのおっちゃん。出会い方は最悪だったがイサギと親交を持つ。
余談
なんでや!中日関係ないやろ!
WEB掲載が始まって数日後の2023年9月8日頃。
…これらの要素がNPBのプロ野球チーム「中日ドラゴンズ」を連想させるとして話題に。
連載開始当時、中日ドラゴンズは5位や最下位が定位置の暗黒時代で、立浪和義監督が「与田剛監督時代と比較してチームをさらに低迷に追い込んだ」環境下で「戦う顔」「打つ方はなんとかします」「令和の米騒動」「チュニドラ」などネタを出し続けていたため、「タツナミの奴、なんで竜を殺したんだ?」というセリフが、立浪監督が采配ミスをした際にネット上でこぞって使用される事態になったほか、
…という大喜利も発生。
星野真先生は野球に関しては疎いため、中日暗黒時代と重なって生まれた偶然の産物と言えるが、当の先生の反応はこの通りで、とばっちりもいい所だ……