ギュンター・プロイツェン
ぎゅんたーぷろいつぇん
概要
ガイロス帝国の幼き皇帝ルドルフ・ツェッペリンに代わって政務を取り仕切る摂政。
バトルストーリー、アニメ、漫画のいずれにおいても境遇や活躍が大きく異なっており、共通しているのは名前と銀の長髪を有した大男という容姿、摂政でありながら自らの野望のために仕えるべき帝国にさえ仇なそうと暗躍するという基本設定くらいである。
バトルストーリー版
プロイツェン家は代々摂政を輩出していた家系であったが、惑星Zi大災害時に他の跡継ぎが全員亡くなったため、その生き残りであった彼が摂政に就任することとなったという。
惑星Zi大異変の影響で崩壊しかけていたガイロス帝国を一代で立て直した功労者として名を馳せていた。若い頃には自らゾイドに乗って暴徒の鎮圧に乗り出した事もあったとされる。
ガイロス初代皇帝が崩御すると、初代皇帝の唯一の存命の血縁者でまだ幼かった2代皇帝ルドルフ・ツェッペリンに代わり事実上の帝国の支配者として君臨する。摂政は皇帝親衛隊長官を兼ねるため、皇帝親衛隊は通称「PK(プロイツェン・ナイツ)師団」と呼ばれ、そのPK師団に政治犯の逮捕権を与える事で政敵を次々と抹殺する謀略家としても恐れられ、議会を抑え国政を完全に掌握。更には秘密裏に「鉄竜騎兵団」と言う私設軍隊を結成して息子を指揮官に据えていた。
国の再建と同時に軍備再編に力を注ぎ(国防軍のカール・リヒテン・シュバルツからは国力回復よりも戦争を優先する姿に疑問を持たれている。開戦前から既に国家予算の6割を軍事費に廻すという超軍事国家となっていた)、戦力を整えると再びヘリック共和国への侵攻を開始、そのためにまずは共和国本土への橋頭保を確保することを謳い、西方大陸に出兵。いわゆる“第二次大陸間戦争”を引き起こす。その頃より当時は絶滅状態だったデスザウラーの復活計画や西方大陸で発見されたオーガノイドシステムの研究も進めていた。帝国軍が西方大陸での戦争に大敗しても、共和国からの休戦を蹴って継戦を選択。そして戦いがガイロス帝国本土に移ると次第に不穏な動きを見せるようになり、鉄竜騎兵団を使って本土防衛隊の一部を全滅させるなど、あえて共和国軍を帝国本土に招き寄せるような利敵行為が目立ちはじめる。
その正体は、かつてへリック共和国に敗れ、援助を求めたガイロス帝国に逆に滅亡させられたゼネバス帝国皇帝ゼネバス・ムーロアの息子(現共和国大統領ルイーズ・エレナ・キャムフォードことエレナ・ムーロアの異母弟に当たる)であり、全ては父の無念を晴らすべくヘリック共和国もガイロス帝国も破滅させ、最終的にゼネバス帝国を再建する事が目的だった。そのため、ガイロス帝国に連行されていた旧ゼネバス軍将兵やその子孫たちを前述のPK師団や鉄竜騎兵団に密かに集めた上で、この秘めた目的のための実行部隊としていた(旧ゼネバス兵達がどの時点で、どこまでの範囲でプロイツェンの秘密を知らされていたかは不明。少なくとも第二次大陸間戦争での西方大陸から撤退する時点で、多くのゼネバス兵が鉄竜騎兵団の司令ヴォルフ・ムーロアの事を「ゼネバスの子孫で自分達の主君」と認識していたようである)。
プロイツェン家の者と周囲に認識される一方で(実際にその血統にあるのかは不明。少なくとも母親がプロイツェン家出身者もしくはその配偶者であった可能性は高い)、実はゼネバスの子でもあったという複雑な背景をもつように、彼の出生の経緯は不明な点が多いが、ギュンター自身はかなり早い段階で自分の本当の父がゼネバスだと知っていたようで、ゼネバスがガイロス帝国の虜囚の身のままニクス大陸で客死した頃にはギュンターも父の無念を晴らす事を考えられるほど成長していたが(その頃は少年であったとバトルストーリーにある)、当時は出自を明かすわけにも行かなかったので(明かしていたらガイロス帝国の名家・プロイツェン家の家督は継げず、ましてやガイロス帝国摂政なぞありえなかった)異母姉が喪主を務める葬儀にも参加することができず、遠くから眺めるしかなかった。実父がゼネバスであることを周囲が気付いていた様子は全くないため、ギュンターの実父と周囲に認識されていた存在(母親の連れ合い・義父)がいたのかもしれない。
又、完全に憶測になってくるが、ガイロス帝国の名門プロイツェン家の人間として扱われたはずのギュンターだが、自身が産まれ育ったガイロス帝国やその体制に愛着を抱くどころか、それを破滅させる野望を抱く一方で、ほとんど生前に会った事もない実父(これについてはバトルストリーで明言されている。ゼネバス本人がギュンターという息子がいる事を知っていたかは不明。少なくとも娘のエレナには伝えられていない)の無念を継ぐ決意を固めた事から、強烈かつ歪んだ愛憎を持つに至った背景が窺え、あるいは、その複雑な生い立ち等から良き近親者に恵まれず、不遇な幼少時を過ごした過去などがあったのかもしれない。又、息子がいる以上、私生活における妻もしくはそれに該当する女性もいたはずだが、それについては全く触れられていない(息子をゼネバス派の後継者としている事から、旧ゼネバス帝国の関係者だった可能性がある)。
ギュンターの生年は不明だが、産まれが恐らくガイロス帝国内であった事、ZAC2051年(ゼネバス帝国が滅亡し、ゼネバス父娘がガイロス帝国に連行された年)の時点で既に十数歳位であったろうエレナが姉にあたること、ZAC2056年の大異変発生から、あまり時間をおかずに亡くなったらしいゼネバスの葬儀を既にゼネバスを父と自覚できていた少年時のギュンターが遠目に観ていたことなどを合わせ見ると、ゼネバスが一時、ガイロス帝国に亡命していた時期に出来ていた子、すなわちZAC2040年~ZAC2042年頃の生まれと推測することもできる(連行されて亡くなるまでが10年間も無かっただろうゼネバスの虜囚時代の子では葬儀の時点で幼すぎることになってしまう)。そして、この推測に基づくなら劇中(ZAC2101年頃)では実年齢は60歳位という事になる。その割に外観が老けていないようだが、旧バトルストーリー時から、この星の人間は地球人より寿命が長いと設定されており、成長した後は地球人の2倍ほどの時間をかけて老いていくようであるため矛盾はしていない(この推測を基準にして地球人年齢に換算すればギュンターは40歳位ということになる)。
両軍の全面開戦で互いが疲弊しきった所で(劇中では「失脚の恐れがあるので、今回の戦いは勝たねばならない。味方にそれと解らず負けるのと比べれば、勝ってみせるのは児戯に等しい」と側近に言ってのけ、実際に自ら指示を出して完勝してみせているなど、意図的に戦果を調整することで絶え間ない消耗戦をもたらし両軍をすり潰していた事が解る。また、両軍を消耗させる規模を大きく&タイミングを早める必要があると見做すと、鉄竜騎兵団用に復活させたデスザウラーをガイロス帝国正規軍=国防軍に廻すなど臨機応変に対応し続け、有能ぶりを発揮している)ギュンターは本格的な反乱を起こし、ルドルフに自身の正体を明かしてゼネバス帝国”の復活を宣言、ネオゼネバス帝国初代皇帝ギュンター・プロイツェン・ムーロアを名乗る。この際、ミドルネームとしてプロイツェンを残しているため、一定の思い入れ(母親絡み?)があるのかもしれないが、それについての詳細が明かされる事はなかった。
この事により、今までの戦争はすべてギュンター達・旧ゼネバス帝国残党による陰謀だったとしてへリック共和国とガイロス帝国は休戦、ルドルフを人質に彼が立てこもるガイロス帝国首都ヴァルハラへと同盟軍は急行した。
しかし彼は帝国首都にブラッディデスザウラーを改造した強力な爆弾を仕掛け、首都におびき寄せた両軍をまとめて壊滅に追い込もうとしていた。その首都爆破を阻止すべく立ち上がったルドルフからの決闘の申し出に応じて自らその作戦の要になっているブラッディデスザウラーに乗り込み、皇帝専用セイバータイガーに乗ったルドルフを追い詰めるが、そこに乱入したシュバルツからの不意打ちで致命傷を負い、己の最期を悟った彼は当初の予定通りデスザウラーの自爆装置を作動させてヘリック・ガイロス同盟軍の主力を道連れに炎の中へと消えた。
しかしシュバルツの機転によりルドルフ(とシュバルツ)は助かっており、またギュンターに付き従う者(旧ゼネバス帝国より連行されたゼネバス兵)が老兵ばかりなうえ全滅しても満足げな表情で死にゆく者しかいなかった事からギュンター自身さえも囮だと気づいたロブ・ハーマンの撤退命令により同盟軍主力も全滅は免れている。
彼の意思は息子である鉄竜騎兵団指揮官のヴォルフ・ムーロアに引き継がれ、彼が共和国軍主力を引き付ける事で防備が手薄となった中央大陸に侵攻した鉄竜騎兵団によって共和国首都は陥落、二代目皇帝ヴォルフの下でネオゼネバス帝国が現実のものとなった。
アニメ版
元帥として帝国軍を指揮する傍ら、老衰していた当時のガイロス皇帝ツェッペリンⅡ世に代わり政治と軍事を取り仕切っていた。
優秀な人物であるが、性格は極めて冷酷かつ傲慢であり「この星に国は二つも要らない」とヘリック共和国を国家ではなく「反乱軍」と見なし、ルイーズ・テレサ・キャムフォード大統領(ロブの母親ではあるが、エレナとは違いギュンターとの血縁関係は無い)に対し無条件降伏を迫っている。更に、国への忠誠心などほとんどなく、いずれは自身がガイロス帝国の頂点に立ち、最終的には世界の覇者にならんと目論む野心家であるなどバトスト版とはまさに正反対の人間となっている。アニメ版の彼は権力を掴むことが自体が事実上の目的であり(己の願いや夢のために行動するのは誰でも同じ事で、そのために犠牲者や敗者が出るのも普遍的な事。よって自分もそうしているまでと豪語していた)、権力が曲がりなりにも自身の理想のための手段でしかなかったバトスト版とは大きく異なる。
一応、ハーディン、ラルフ、マルクスをはじめ多くの軍人達が彼に心酔し、戦犯どころか皇帝暗殺を企んだ逆賊扱いになっているであろう第二部でもプロイツェン支持派が存在していた事から彼自身のカリスマ性は決して低くはなかったようだ。
孤児だったレイヴンを紆余曲折の末に拾い、彼にオーガノイドのシャドーを与えてゾイドの操縦方法を始めとした戦闘技術を叩き込んだ人物でもある。
また、バンの父親と、彼の相棒のコマンドウルフの「ジーク」は、プロイツェンの差し向けた軍勢からシャドーを守るために死亡している。プロイツェンのこの事件を把握しており、「主人公の親の仇」として存分にバンを煽っていた。
当初は圧倒的な軍事力と緻密な戦略で戦争を優位に進め、遂には共和国本土まで軍を進めるが、崩御した皇帝に代わって新たな皇帝となったルドルフの停戦勧告により、撤退を余儀なくされる。しかし、Ⅱ世が崩御する間際に「ルドルフに何かあればプロイツェンを皇帝にせよ」という旨の遺言を遺していたため、ルドルフを暗殺して自分が皇帝の座に就こうと画策し、同時に超古代に封印された破滅の魔獣ことデスザウラーの力に目をつけ、その復活も推し進めていた。
命を狙われて帝国を出奔したルドルフに幾度となく追手を差し向けるが、バン達の活躍によってルドルフ暗殺は阻止され、更にそれが露見すると本性を現し、復活させたデスザウラーを使って共和国軍だけでなく帝国軍にも刃を向けた。
この時点でプロイツェンはデスザウラーの持つ邪悪な意志に取り込まれもはや破壊を希求するだけの狂人と化してしまっており、デスザウラーがバンとブレードライガーの特攻で破壊されると自身もその爆発に巻き込まれて姿を消した。
この時死亡したかに思われたが実は生存しており、続く第二部『ガーディアンフォース編』ではデスザウラーのコアと融合した異形の怪物「ダークカイザー」として復活していた事が判明、裏でヒルツとリーゼを操り、ヘリックとガイロスへのテロ行為を繰り返していた。
この時のコアに身体の右半身のみ埋まって金属化し、声もエコーが掛かっている姿はかなり不気味。
身体についた結晶を光らせバリアを出すことが可能。
自らを「デスザウラーそのもの」と定義し、古代ゾイド人の遺跡に残っていたオリジナルボディのデスザウラーと融合して完全復活を果たそうとしていたが、実は操られていたのはプロイツェンの方であり(実際半分デスザウラーに精神とリンクしていたため、デスザウラーがプロイツェンの身体を借りて喋っていたと言うべきか)彼はデスザウラーのコアを守るための器に過ぎず、土壇場でヒルツの裏切りに遭い、逆に再生するコアに吸収される形でその意識と人格は消滅するという呆気ない最期を遂げた。
マンガ版
上山道郎原作の『機獣新世紀ZOIDS』に登場。
現ガイロス帝国摂政で、その政治的手腕は皇帝のルドルフをもってしても勢いを止める事はできないほど優秀な人物とされる。
性格も上記のメディアミックスと比べて冷静沈着かつ達観的で、あまり感情的な面も見られないどこか人間離れした男として描かれている。
しかし、その背景はアニメともバトストともかけ離れており、本作における彼の正体は「超古代に誕生した人間型ゾイド」で、シャドーキーと呼ばれるオーガノイドと同じ機能を持つアイテムを生みだす能力を有している。
また、レイヴンが連れていたシャドーは本来は彼のパートナーであり、レイヴンが改心すると、彼の元を離れてプロイツェンの元に戻っている。
ヘリック共和国との戦争を指揮する一方、同志のドクトルFと共に「この世のゾイド全てに安らかな眠りを与える」という目的の下に「D」と呼ばれるゾイドの復活を目指しているとされるが、現在はマンガの更新が停滞しているため、これ以上の詳細は不明である。
余談
- 概要の通り、アニメ版とバトスト版で大きく性格が異なる。しかしアニメ版のデスザウラーは、野心を持って自身に近づいた人間の精神を狂わせるとされており、ガイガロスでの決戦時にも、それまでは新たな為政者としての情熱を語っていたが、デスザウラーを召喚したとたんに急に破壊衝動をむき出しにしてガイガロス自体を破壊しはじめた。そのため、アニメ版の彼も本来はバトスト版のような人物であったのが、デスザウラーによって歪められていた可能性もなくもない。
- アニメ版では、外道極まりない悪党ながら、暴走した際の様々な顔芸やエキセントリックかつハイテンションな言動から、ゾイドファンにはシリアスな笑いを誘うネタキャラとして人気があり、アニメ版放映当時から「プー閣下」や「プー様」などの愛称(蔑称)で呼ばれていた。
- 一方のバトスト版では序盤から登場はしていたが、こちらのシナリオの進行はアニメよりも遅く、彼の真実と真意が明かされたのはアニメが終了してからだいぶ後(約2~3年)のことだった。そのためアニメではただの極悪人だったのに対し、バトストでは徹底して冷徹ではあれど内面は父の祖国復興に命をかける誇り高い武人だった事に多くのゾイドファンは驚き、以降一部のファンからはバトスト版のプロイツェンはアニメと区別する形で「綺麗なプー様」と称されている。
- 声を担当する大塚氏は、後に令和のゾイドアニメ『ゾイドワイルドZERO』にて番組冒頭のナレーションを担当することになる。ちなみに本作では、何かと『ゾイド-ZOIDS-』を思わせる点が要所要所で登場する。