概要
惑星Ziの中央に位置する中央大陸デルポイに存在する国家。
首都の名はそのまんま「ヘリックシティ」。
大陸東部の安定した気候と肥沃な土地に恵まれた国家であり、人口も多いことから純粋な国力と生産力だけでいえば常に他国を圧倒している。
「共和国」という国号かつ元首は大統領だが、実際のところは以下の歴史にある通り、多分に君主制に近い体制および政治環境をもっている。とはいえ、「大統領」が事実上の絶対的な君主として振舞えているわけでもなく、その地位は議会や軍、国民の支持を考慮、配慮し続けねば成り立たないものであることは各所の描写から示唆されている。
全ての始まりであった長きにわたるゼネバス帝国との戦争(内戦)も、ヘリック大統領とゼネバス皇帝の兄弟間の権力闘争や政治路線の違いはあくまで端緒でしかなく、主因は中央大陸の東部と西部の環境の差異などによる部族間の諸々の格差問題であったと言える。そのため、ヘリック大統領も統治者として個人としての思惑を優先することは出来ず、ゼネバスとの戦争を止めることは出来なかった。
同様の事がネオゼネバス帝国勃興前後のキャムフォード大統領にも言える。
カリスマ的指導者の存在によって紛争を克服し、統一した体制を得たものの、実態は各勢力の複雑な寄せ集めであり、ひとたび、その指導者を失うと綻びが生じていく…という状況はかつての地球にあったとある国を彷彿とさせる。
国章は稲妻を図案化したもので円にZ字状の斜線。細かく変遷しており幾つものバリエーションがある。
歴史
かつて同大陸に存在していた風族、海族、鳥族、虫族、地底族、砂族、火族、神族の八部族が東西(風・海・鳥・虫の東側、地底・砂・火の西側、神族は中立)に分かれて争っていた時代、(ガイロス帝国成立前の)暗黒大陸から侵略軍が現れ、東側の代表だった風族の族長ヘリック・ムーロアが東西を結束させて立ち向かって侵略軍を撃退した事から西側の代表だった地底族の族長ガイロスが負けを認め(※)、他の部族もヘリックを自分たちの統治者と認めたことでZAC1957年にヘリックを王としたヘリック共和国が誕生。その後ガイロス自身は新天地を求めて暗黒大陸へと渡り、妹はヘリックの第二夫人となった。
この時点では王位と議会が併存していたが、ZAC1975年にヘリック王が死去した翌年に王位を継いだ彼の長子(母は風族の貴族である第一夫人)であるヘリック2世が王制を廃止し、自ら大統領に就任したことで新体制へと移行した。
実はこの暗黒大陸軍の出現は全民族の「共通の敵」を作るためにヘリック自身が正体を隠して暗黒大陸に渡って彼らの中央大陸侵攻を煽ったマッチポンプ(※ガイロスはそれに気づいていたがヘリックの知略を認めて黙っていた)によるものとされる。一方で「ハイエンドマスターモデル」版では経過がやや異なり、中央大陸にかつてより存在したヘリック王国が周辺国を平和維持ないし武力で吸収し大陸を制覇したとある。
バトルストーリー
<中央大陸戦争>
ヘリック2世の弟であり地底族出身の第二婦人を母とするゼネバス・ムーロアが共和国軍司令官に就任した同年、ゼネバスを含めた軍強硬派が外征論を唱えて議会と対立、そして議会の陰謀により追放されると(ヘリックは兄弟間の私闘という形に留める事で対立を発展させないようにしようとしたが、議会や大統領親衛隊が独断で介入しヘリックを救援し、ゼネバスを追い払った)地底族などを率いて大陸西部を制圧しゼネバス帝国を建国する。それから2年後のZAC1980年に国境線を巡ってゼネバス帝国との戦争が開始された。大陸東西の戦争が再燃したと言える。
当初は両国ともゾイドの改造も簡素であり、至って原始的な戦い方をしていたが、後にZiに漂着した地球の宇宙移民船グローバリーⅢ世号の乗組員たちの協力もあって、それまで前時代的な兵器であったゾイドを強力な兵器へと改造し、一挙に近代的な軍事力を獲得した(但しこれはゼネバス帝国側も同じである)。それまで原始的でのどかなレベルだった戦いもそれに伴い激化していった。
技術力で勝る帝国軍に対して一時は押され気味であったものの、次第に莫大な国力を武器に勢いを盛り返していき、1度は帝国首都を陥落させ、帝国軍を中央大陸から追い出すことに成功する。しかし、数年後には暗黒大陸ニクスの国家ガイロス帝国の支援を受けたゼネバス帝国の逆襲を受け、今度は自国の首都を落とされてしまう。だが民衆や戦力の大半を「トンネル作戦」で脱出に成功させたことにより共和国軍はほぼ無傷であり、各地でゲリラ戦を展開しつつ新型決戦ゾイドの開発をして首都の奪還に成功、更には帝国首都を再び陥落させ、中央大陸戦争は終結、旧ゼネバス帝国領を併合して再び中央大陸の覇権を握った。
<第一次大陸間戦争>
だが上記の戦いで疲弊した所を付けこまれる形で、ゼネバス帝国軍を吸収したガイロス帝国からの宣戦布告を受け、今度はガイロス帝国軍との戦いに突入する。
共和国軍はすぐさま暗黒大陸に派兵、だが迎え撃つ強力な新型ゾイドを有するガイロス帝国軍こと暗黒軍の猛攻はすさまじく、首都を空襲されるなど劣勢に陥るも新鋭ゾイドの力でどうにか形勢逆転し帝都に侵攻するが、その最中に巨大隕石衝突による惑星Zi大異変(グランドカタストロフ)が発生し本土である中央大陸は3つに分断され暗黒大陸も一部が水没、両軍とも戦闘不能になるほどの壊滅状態に追い込まれてしまい、戦争は休戦という形で未決着のまま終わった。
<西方大陸戦争>
大異変で一時は壊滅状態に追い込まれるも、それから40年後には新たに国家元首となったルイーズ・エレナ・キャムフォード大統領(その正体はゼネバス皇帝の娘)の元でひたすら復興に努め、それにより培ったな資金力と工業力のおかげでこの時の国力はガイロス帝国の5~6倍と言われるほどに成長している。
大異変から43年後のZAC2099年、グランドカタストロフの影響により中央大陸と暗黒大陸で直接の行き来が出来ない(両大陸の間の海は強電磁嵐が吹き荒れる海域と化している)事からガイロス帝国軍は中央大陸を抑えるため、まずは西方大陸エウロペを中継点にするために同大陸に侵攻、それに対抗して共和国軍も西方大陸に軍を派遣した事で再び両国の間で戦端が開かれた。そのためアーバインからは「西方大陸民にとっては帝国も共和国も同じ」と評されている。
開戦当初は軍の再編よりも復興を重視していた為、共和国軍の軍備はまだ十分ではなく国家予算を軍事費につぎ込んでいたガイロス帝国軍の強大な戦力相手に劣勢を強いられていた。だが新技術オーガノイドシステムの入手に成功し、更に制空権を奪取して帝国側の補給線を叩き、これに打撃を与えた事を契機として優勢に転じ、帝国軍を西方大陸から追い出す事に成功する。
<第二次大陸間戦争こと暗黒大陸戦争>
西方大陸での戦いが終結した直後に帝国側に休戦勧告を送ったが、黙殺されたために暗黒大陸への派兵を開始する。
だがこの流れそのものがヘリック共和国とガイロス帝国を共倒れにして滅ぼすと言う目的を持ったガイロス帝国摂政にしてゼネバス皇帝の息子(隠し子)ギュンター・プロイツェンの策略通りの展開でしかなかった。
ZAC2101年、暗黒大陸で擦り切れるような消耗戦を繰り広げる中、共和国軍の閃光師団がプロイツェンが操る鉄竜騎兵団の存在を察知した事で、プロイツェンの陰謀が発覚しそうになる。だがその後、共和国軍は帝国軍と血みどろの激戦を繰り広げた結果多大な被害を出し、その直後にガイロス帝都ヴァルハラにおいてプロイツェンがPK師団を率いて反乱を起こした為にガイロス帝国軍と休戦が成立。共闘してプロイツェン率いるPK師団と交戦、撃破するもののプロイツェンにとってはPK師団全滅どころか自分の死さえ折り込み済みであり、帝国首都での決戦においてプロイツェンの自爆(デスザウラーのゾイドコア爆発)により共和国軍も戦力の多くと陽動にかかったことで時間を失う。
更にそれと同時に本土である中央大陸ではプロイツェンの息子ヴォルフ・ムーロア率いる鉄竜騎兵団の侵攻と彼に扇動される形で発生した旧ゼネバス国民の裏切りなどで、主戦力の多くを暗黒大陸に派遣していた事で手薄になっていた本土の共和国軍は次々に敗退し、遂には首都を陥落され、脱出しようとしたルイーズ大統領も行方不明になり、表面的にヘリック共和国は滅亡した。
<第二次中央大陸戦争>(非公式名)
中央大陸は新たに勃興したネオゼネバス帝国の支配下に置かれるも、暗黒大陸から帰還した主力部隊と大陸内の残存勢力が合流して各地でゲリラ戦で抵抗を続ける。東方大陸の民間企業ZOITECの支援を受けつつ新戦力ゾイドブロックスを開発、反抗へ打って出るがZAC2106年にネオゼネバス帝国軍により中央大陸から完全追放され、東方大陸へ逃げ延びる羽目になるも、ZOITECとガイロス帝国の支援を受けて戦力を再編し、中央大陸奪還を開始する。
ZOIDS CORE BOX付属の公式ファンブック5では戦争の結末とその後が描かれた。
付属のバトルストーリーと違ってZi-ARMS社がネオゼネバスについたことで、ただでさえ劣勢だった戦況が更に絶望的なものになっている。
セイスモサウルスの攻撃で集結した戦力の半分以上を失い、最早師団を結成する人員すらいなくなった共和国にとって、敵軍がパイロット補充の必要も人員の損失を気にする必要もない無人兵器を手にしたことは最悪の状況だった。
ガイロス帝国の援軍も加わったとは言え自軍の20倍にまで膨れ上がったネオゼネバス軍と正攻法で戦う方法は最早なく、残された手はネオゼネバスの迎撃体制が整う前に敵陣を突破しヘリックシティを奪還する、ただそれだけだった。
狙いは当たりヘリックシティの前に集結したネオゼネバス軍は全体の10分の1だったが、それでもその数は共和国軍の2倍以上だった。
そしてセイスモサウルスを中心として周囲を量産型エナジーライガー、デスザウラー、量産型デススティンガーで固め、更に無尽蔵のキメラブロックスを従えたネオゼネバス軍はゴジュラスギガや凱龍輝にとっても手強すぎる相手であり、戦いの序盤こそ帝国軍を圧倒し鉄竜騎兵団の一角を壊滅させる戦果を上げたものの、徐々に押し戻されていき、ついに撤退に追い込まれる。
敵軍が集結し切る前にヘリックシティを奪還することが唯一の勝利の可能性だった共和国軍の撤退は事実上の敗北だった。
しかし、ヴォルフがレイ共々生死不明となり、ネオゼネバス軍が軍隊として機能しなくなると、状況は一変し、停戦協定を経て戦争は終結。
ついに中央大陸は統一された。
所属人物
※バトルストーリー、公式ファンブックシリーズに登場、記載された者のみ。
太文字は固有の活躍エピソードがある者。
<ZAC1980年~ZAC2056年>
- ヘリック・ムーロアII世
- ロイ・ジー・トーマス
- ヨハン・エリクソン
- ローザ・ラウリ
- ハーバート・リー・チェスター
- マーチン
- ルイス
- ロバーツ
- グラハム
- トミー・ミューラー
- ロイ・ジー・クルーガ
この内、トーマスは『ゾイドバトルストーリー』、ミューラーは『新ゾイドバトルストーリー』の著者であり、我々が目にしているのは彼らの記した戦記の''地球語訳''と言う設定になっている。
<ZAC2099年~ZAC2109年>
- ルイーズ・エレナ・キャムフォード
- ロブ・ハーマン
- エル・ジー・ハルフォード
- トミー・パリス
- アーサー・ボーグマン
- アーバイン
- マミ・プリジット
- レイ・グレック
- ウィナー・キッド
- シシリー・ヴォルタ
- セレス・アルドワーズ
- バディター・ロウエン
- スティブ・ボーン
- デュー・エルド
ヘリック共和国製ゾイド一覧
共和国軍のゾイドはなるべく野生体の個性を活かす改造が主流で、コックピットも視界の広いキャノピー式を取ることが多いとされていたが、「ゼネバスの逆襲(首都陥落)」以降はディバイソン等の装甲コックピットも採用されるようになり、第一次大陸間戦争時代の新型機は全て装甲コックピットである(旧式期の改良型であるサラマンダーF2のみ例外)。
※本来は帝国製のライガーゼロおよびZOITEC製のゾイドブロックスも共和国の主力だったため記載。
第一次中央大陸戦争~第一次大陸間戦争 |
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西方大陸戦争~第二次中央大陸戦争 |
ゾイド-ZOIDS-
バトルストーリーとは完全にパラレルな世界観となっており、首都は中央大陸の「ヘリックシティ」ではなく、西方大陸の「ニューヘリックシティ」(書籍「ゾイドエンサイクロペディア」ではアニメ初期段階で中央大陸に所在する資料も作られていた事が明かされているのだが、どうやら大人の事情で変更されたらしい)で、現大統領の名前も「ルイーズ・テレサ・キャムフォード」としてプロイツェンとの関係も特になくなっている。
物語開始当初はガイロス帝国に対して劣勢のまま膠着状態に陥っており、さらに帝国摂政にして主戦派筆頭のプロイツェンの強行によってより一層追い詰められつつあったが、バン達の活躍もあってこれらの国難を乗り切る。
そしてプロイツェンの帝国への反逆の際における帝国軍との共闘を経て帝国と講和を結び、後に共同で超国家的特殊部隊「ガーディアンフォース」を設立したりしている。
作中の二大陣営の一角であるが元々は帝国から独立したような経緯があるらしく、プロイツェンなどの帝国強硬派からは「反乱軍」として対等な相手と見られてない状態だったことが窺える。実際、ガイロス帝国に対し、各方面で大きく差をつけられているようで、戦争で押されがちであるばかりでなく、科学技術力・工業力の点でも「共和国製品」が「帝国製品」より質が悪く信用されていないというのが度々描写されているなど、何かと不利な点が多い。その点で、国力そのものでは最大勢力だったバトルストーリーとは大きく異なっている。
アニメ版における主な所属人物
バトストおよびマンガ共通の登場人物は除く。