ゾイド野生体
ぞいどやせいたい
惑星Ziにおいて誕生した金属生命体のうち、「ゾイドコア」と呼ばれる一元化された生命器官を持つ種であり、ゾイド人は含まない
ゾイドの語源は「ZOIC ANDROIDS(動物型アンドロイド)」だが、その実態はゾイドコアを動力源兼制御システムとして機械のボディに組み込んだサイボーグであり、サイボーグ化される前の状態で自然の中に生きるものを「野生体」、特に人類の手が全く入っていないものは「完全野生体」と称される。なお、サイボーグ化後に人の制御を離れてしまったものは「野良ゾイド」と呼び分けられている。
野生体の姿は公式でも発表年数によって違いがあり、金属質の骨格のような姿、から地球生物に近似したものまで様々である。
「想像図」としてリリースされたものとしては、メカ生体の形態に準拠しつつ、有機的なラインの金属外皮を持った銀色の動物といったイメージになっている。例えばライガーゼロの原種のライオン種の野生体はトップ画像のような「金属質の巨大ライオン」と言える姿をしている(という想像図が公開されている形)。
勘違いされがちだが、「野生体想像図のように白い装甲のゾイドはメカ生体化後も野生度が高い」という設定は特に存在しない。軍用ゾイドに白い外装が多いのは、へリック共和国の主要民族が白や青を象徴として好むからである。
また、野生体ベースのパワーを活用した機種であるライガーゼロやバーサークフューラーの「素体」部分は黒い機械ボディである。これらの機種は単に標準仕様の外部装甲が白っぽいだけで、そもそもフューラーの標準アーマーは白ではなく薄紫、ゼロは本来の所属である帝国仕様だと標準アーマーが赤い。
また、二種のゾイドコアを遺伝子操作し人工的に融合させキメラ化したオルディオスでさえ白いので、外装の色と野生度は基本的に無関係である。
バトルストーリーやアニメの劇中でも言及されるが、規格化された兵器であるはずのゾイドに「パイロットや装備との相性」や「気性」といった不安定な部分があるのは、同種であっても個体差のある生物を元にしているからである。
特に「パイロットとの相性」はゾイド側の生き物としての性質の影響が大きい。
操縦桿などによる情報入力だけではなく、第1期シリーズの時点で思考コントロール、第2期シリーズではコンピュータ側の補助だけでなく精神リンクも利用しているなど、「機獣とパイロットが心を通じ合わせる」形で動く部分も描写されており、メカとしての機種は同じでも個体と乗り手によって発揮する力に差が出るため、ゾイド乗りの矜持を示すとある名言も生まれている。
特にバトルストーリーにおける共和国ゾイドは帝国ゾイドよりもコア改造の割合が高くないため、相性の差が発生する傾向が強い。ゴジュラスなどは高い戦闘力を有しながらも、気性の激しさからパイロットを選ぶ。逆にアイアンコングのように、気性が穏やかゆえに兵器としての規格的な制御を受け付けやすいとされるゾイドも見受けられる。
後に登場したブロックスゾイドは完全な人工ゾイドコアを使用し、精神リンクを必要としない設定となっている。また、『機獣新世紀ZOIDS』では「ゾイドイヴ」から直接誕生した第一世代ゾイドを除き、戦闘用ゾイドの意志は普段は表に出てこない設定となっている。
また、アニメ作品では制御系統に「コンバットシステム」が介入している様子が度々描写されたが、これは「ゾイドの戦闘本能」の指標であり、システムがフリーズするということはゾイドが怯えたり戦意をなくしたことを意味する。
大きなダメージによって命の危機に瀕したり、自然災害などでゾイドの本能が強く刺激されると、行動不能になったり、戦闘用の命令を無視してその場からの避難などを優先してしまうようになる。
- コンバットシステムの設定は、後にバトルストーリーでもスパークライガーの説明文で逆輸入されている。
過去の時代では多くの野生体が生息していたが、古代ゾイド人や地球人による家畜化、淘汰、環境の変化や改造・兵器化により、大型化したり戦闘兵器とされてしまっているものが目立ち、野生体ゾイドは時代が下るほど減少する傾向にある。
古代ゾイド人は、野生ゾイドを捕獲して食用としたり家畜にしたりしていた。
石器の通用しない金属の外皮は食用にはならず、一部の筋肉や臓器が食用とされた。
狩りの方法としては、主に磁石を使用して捕縛したり、金属元素を大量に含む心臓の機能を停止させたりしていたという。
種類
哺乳類型や昆虫型のほか、恐竜型が現代にいたるまで(環境の変化によって地上から淘汰され地下世界へ追いやられたものの)生き延びている。
肉食の獣脚類型には、尻尾を引きずるゴジラ体型と、尾が水平に持ちあがったタイプの二種類が存在する。これは同じモチーフでありながらもコアが異なるゾイドが登場した2期シリーズにて特に見受けられ、例としてはデスザウラーとジェノザウラーが挙げられる。
また、同じ種のゾイドであっても大陸ごとに異なる亜種のようなものが発生しており、判明しているものだと中央大陸と西方大陸ではオオカミ型ゾイドの大きさが異なっている(中央大陸種は家畜化されているという設定もある)。
野生体ゾイドが地球生物と似た姿なのは一種の収斂進化の結果とされているが、地球には存在しないドラゴン型などの野生体も存在しており、第2期シリーズにおけるレドラー野生体は暗黒大陸に生息していた事が言及されている。「ヒストリーファイル」においても、共和国成立以前の暗黒大陸軍がドラゴン型やワイバーン型のゾイドを使用しており、中央大陸の人々を驚かせたという。
完全野生体
環境変化などの様々な理由から、人間の影響を受けずに野生で育ったゾイドは時代が経過するほど希少化する傾向にある。
特に大きな環境激変が起きた惑星Zi大異変後は多くのゾイド種が保護下に置かれたが、そのような厳しい環境でさえ完全野生体として生き抜ける個体群は生命力がズバ抜けて高い。
ライガーゼロ、ケーニッヒウルフ、ゴジュラスギガ、バーサークフューラー(凱龍輝)、セイスモサウルスのように、「野生体ベースで開発したことによるポテンシャル」を特徴としている機種もあって、こうした機種はゾイドを人為的に凶暴化・活性化させる「オーガノイドシステム」とは真逆のアプローチによる強化策が採られたものともされる。
『ゾイド新世紀/ゼロ』では、バトルストーリー側とは同名でありながらも設定が異なった「オーガノイドシステム」を搭載した特殊な個体である「アルティメット・エックス」が登場しているが、こちらは野生の本能を生かしたアプローチではなく、人工知能による学習能力をゾイドに連動させている。
『ゾイド-ZOIDS-』および『ゾイド新世紀/ゼロ』では、すべてのゾイドが「ゾイドイヴ」から発生した生命体であるとされるが、上記の設定にあてはまるタイプの「野生体」は登場していない。劇中、フィーネが思い出した古代の廃墟の風景でも、ゾイドは戦闘用に改造されたメカ生体の姿だった。
人の制御下にいないゾイドも、メカ生体の状態で野生化した「野良ゾイド」や、無人制御による待ち伏せ戦術などに使われる「スリーパーゾイド」ばかりである。
オーガノイドは、アーバインいわく「普通のゾイドよりも知能が高い」とされ、外付けの武装を持たないが極めて特殊な能力を持つ一方で、「普通の」が一般的な野生体のことなのかメカ生体化された個体のことなのかははっきりしない。
しかし、オーガノイドを初めて目にしたバン・フライハイトは思わず「なんて綺麗なんだ」と呟き、野生ゾイドであるかのように認識していたほか、軍人のロブ・ハーマンとオコーネルは、オーガノイドの存在を知りつつも説明されるまでジークのことを「野生体ゾイド」だと認識していた。
つまり、劇中に登場しなかっただけでメカ生体化されていない野生ゾイドは存在しているようであり、オーガノイドはそれらの野生体と極めて近い姿をしていることもわかる。
「ゾイド狩り」のエピソードで行われていたゾイドコア実験でも、進化・成長の図解としてゾイドコアの発生から成長が描かれている。
上記の通り「すべてのゾイドはゾイドイヴによって生み出された」という背景も明確に語られているが、バトルストーリー同様に人類が野生体を捕獲してメカ生体化しているのであれば、ゾイドイヴから発生した野生体とメカ生体が併存する状況は特に矛盾していない。
戦闘経験値を積む事で自己進化を行うが、ブレードライガーのように、オーガノイドの力による短期間の進化という異例の事態も発生した。
アニメ劇中では、人が制御していない野良ゾイドが自分の意志で武装を使用するシーンがある。
- 第一話でガイサックに追われたバンは「野良ゾイドが武器を撃ってくることはあり得ない」と考えていたが、これが「野生体の身体に存在しない武器を使うはずがない」という意味なのか、そこまでして人間を襲うことはないという意味なのかははっきりしない。
- ガイサックの尻尾のビーム砲や、デスザウラーやバーサークフューラーやデススティンガーなどの荷電粒子砲のように、「体内から発射するエネルギー系の武器」を使用する場面が目立つが、腕に装備したビームガンを撃つレブラプター、外付けのガトリングガンを使用する『フューザーズ』や『ジェネシス』でのアイアンコング、アタッチメント式の鼻先ビームガンを使うエレファンダーなどの例がある。
金属生命体は意識や精神を持つ様子はよく描写されるが、霊魂に相当するものを持つかは、バトルストーリーなどでは不明瞭である。
しかしアニメゾイドなど後年の媒体では、何度かそれらしい描写がある。
- 『ゾイド-ZOIDS-』
- フィーネ・エレシーヌ・リネが超能力を披露したり、思念体の状態でバン・フライハイトに力を与えている。
- バンのシールドライガーやオーガノイドのシャドーが一度「死亡」しており、その後に復活している。
- リーゼと関わりのある少年ニコルと、彼の相棒ヘルキャットの「チロル」が共に「幽霊」であるかのような描写で登場した。特にチロルは全身が白一色という、典型的な幽霊を連想させる姿をしている。
- デスザウラーがギュンター・プロイツェンの意識を乗っ取ったり、ヒルツが合体した際には周囲に多数の人面が現れていた。この真相は定かではないが、フィーネは「デスザウラーは邪悪な意識によって人を掌握し、古代の戦争にも参加していた」と語っている。
- 『ゾイド新世紀/ゼロ』では、スピノサパーの幽霊と少女の幽霊が登場している。
- 『ゾイドフューザーズ』では、ファイヤーフェニックスが凱龍輝の荷電粒子砲によって殺害された際に霊魂が天に昇る場面が存在し、その後、ファイヤーフェニックスの転生体と思われる少女の「フェニス」が登場し、超能力によってジェットファルコンを復活させたり、リヒタースケールとの決戦でも巨大な思念体となって出現している。
- フェニスの登場は、全ゾイドシリーズでも珍しい「転生」や、「金属生命体から有機生命体に転生」等の超自然現象を示唆させる描写となっている。
- 『ゾイドジェネシス』では、明確に「ナンバー」ムラサメライガーの「エヴォルト」の原理が、「パイロットの思考に感応した姿に変化する」「瞬間的に生と死を繰り返す」という解釈がされた。
- 『ゾイドワイルド』では、ベーコンの魂がファングタイガーに憑依しているかの様な描写がされていた。
- 『機獣新世紀ZOIDS』では、オーガノイドのジークの「魂」の姿は幼女であり、ギュンター・プロイツェンも「超古代に誕生した人型ゾイド」とされている。
- アニメ版でも、「すべてのゾイドの母」とされる「ゾイドイヴ」が人型である事や、上記のフェニスの登場など類似性が見られる。
- 『ゾイドジェネレイションズ』でも、「霊魂」の存在を思わせる描写がいくつか散見された。
過去のアニメの時代にも、惑星Ziにて犬やウサギに近い哺乳類型の野生動物、イグアナ、鳥、魚、虫、蟹、オウムガイとタニシを合わせたかのような生物等が生息している事が確認されたが、これらの生物がグローバリーIII世号と共に飛来した地球由来の存在なのか、それとも土着の生物の子孫なのかは不明。
『ゾイド-ZOIDS-』では、ダブルソーダとサイカーチスの共通の先祖の古代昆虫が登場している。
なお、様々な資料から、「犬」「ゴリラ」「ゾウ」「バッタ」「ミジンコ」「ミトコンドリア」「サソリ」などを含む地球産と同じ生物学のカテゴリーはそれなりの数が認識されている。
『ゾイドジェネシス』の時代では、地球由来の動物と外見が異なる有機生命体が目立つが、これらが「大異変」を経て進化・適応したのかは不明である。
ゾイドワイルドシリーズ
『ゾイドワイルド』シリーズのゾイドは、「ワイルドブラスト」のように一部外付けの大型武装ありきで「本能開放」としているなど、野生体に当てはまるのかどうか判断しにくい部分もある。
地球が舞台であり、「生態系の頂点に君臨する」と紹介されているが、これが地球由来の生物の生態系にゾイドが組み込まれたのかどうかを表すのかは未知数である。
なお、落雷などのきっかけによって発掘後などのゾイドが自然復元されることもあるらしい。
また、デスメタル帝国がゾイドを復元する際に電撃を使用していたことから、「電気」が重要なファクターとなっている可能性もある。
『ゾイド 邪神復活! ~ジェノブレイカー編』を含む。
※は、見た目的に可能性が高い種類なので確定ではない。
- 公式にて野生ゾイドの系統図も設定されているものの、その扱いは作品や時期によってやや差異もある。第1期シリーズ初期のコロコロコミックでは、ゾイドは宇宙線によって突然変異した金属生命体とされているものも存在した。もっとも、この設定は1期の他の媒体や後続の作品でもその後言及されず、『装甲巨神Zナイト』の冊子にてメタルハート(同作におけるゾイドコア相当の心臓部)が宇宙線を取り込み稼働する説明が見られる程度である。
- 野生ゾイドが生物進化の果てに登場した設定は最初期から存在しているものの、アニメ『ゾイド-ZOIDS-』では「ゾイドイヴ」から発生した存在とされており、同作では野生ゾイドが直接的には登場していない。後に電撃ホビーマガジン誌の記事「SMACK ZOIDS」では、(バトルストーリーにおける)ゾイドは古代人または外宇宙人による人工生命体とする説が存在するとされているが、それ自体は惑星Ziでも荒唐無稽な説としている。尚、バトルストーリー側のゾイドが地球生物に類似した形質を持つ点は収斂進化によるものとされている。
- その後、『ZOIDS concept art』では過去の時代にタイムスリップした地球からの入植船によって、惑星ゾイド由来の原始金属生命体に地球生物のDNAを取り込み改造したものが野生ゾイドと設定付けられている。後の『ゾイドワイルドZERO』でも地球ゾイドが地球人(元惑星Zi人)の技術を介して誕生する経緯は同様だが、時代の異なる宇宙船が地球を旅立った形跡が存在する事から、両惑星間で文明の興亡が繰り返されている可能性も言及されている。
- 英語では、軍艦やロボットなどは全て女性格である「SHE」と呼ばれる。『ZOIDS』シリーズは『トランスフォーマー』と同じく、凱旋帰国して国内で人気を帯びたコンテンツでもある。
- 奇遇だが、上記の「全てのゾイドはメス」という意見と、いわばゾイドの育ての親である海外の概念には似たような部分がある。女体化はあくまでも同人だが。