「惑星Zi。そこには、優れた戦闘能力と自らの意思を持つ金属生命体ゾイドが存在した。」
「ゾイドとは、即ち生きた機械なのである!」
概要
正式なタイトルは『機獣創世記ゾイドジェネシス』。
2005年4月から2006年3月にかけてテレビ東京系で全50話が放送された。
タカラトミーの玩具シリーズ『ゾイド』のアニメ化作品の第4作目にあたる。
世界観
「大異変」によって惑星Ziに二つあった月の一つが失われ、生態系と文明に壊滅的な被害を与えたとされる。そのため、地理や共同体も過去の歴史から大きく変動している。
- 「大異変」に該当する設定はバトルストーリーにも見られるが、こちらはより規模が大きく破壊的であった。
それまでのアニメシリーズやバトルストーリーの世界とは明確な繋がりを持たず、敵役であるディガルド武国側はバイオゾイドと呼ばれる恐竜の骨格を意匠とした特殊なゾイドを保有している。
バイオゾイドには通常兵器による攻撃がほとんど通用せず、「リーオ」(キットやバトルストーリーなどでは「Metal-Zi」)と呼ばれる特殊な素材で造られた武器を持たないと正面からの撃破が難しい。
また、これらとの対比を図る為か主人公サイドには(デカルトドラゴンを除けば)恐竜型ゾイドは一切登場せず、従来のシリーズよりも文明が後退している上に、野生ゾイドの存在も確認できない(野良ゾイドはいる)ので、前述のディガルド武国を除き、新たに大型ゾイドを大量生産する事は不可能であり、人々は旧時代の遺物となったゾイドを様々な場所から発掘・サルベージして生活や戦闘等に利用している。
本作の世界観では、「生物としてのゾイド」を認識している人物が少数派で、あくまでも兵器や重機として扱う人間が目立つ。とくに地上の人間は、野良ゾイドに関しても「なぜか知らないけど動いている」という認識をしている者もいる。
ゾイドの燃料としては、「レッゲル」(レッド+ゲル)という「ジェネレーター」から生み出されるゲル状の燃料が見られる。テラフォーミング装置であるジェネレーターから発生しているため、自然界にも鉱物資源や石油と似て自然発生している場所もあるが、ジェル状になっているなど質が悪く、燃費の効率も劣るとされる。
- このため、ゾイドの修理や改修を行える人物は貴重な人材とされている。また、ゾイドの修繕や整備をする環境や資源も限られており、発掘したゾイドを有効利用できない場合も少なくないことを示唆する場面が見られた。
- このような状況下で、どのようにゾイドの部品や弾薬などを生産・補給したりしているのかは不明瞭な部分が大きい。
- 大昔のゾイドを「発掘」して再利用する例はこれまでも散見され、例えば『ゾイド-ZOIDS-』のウルトラザウルスや『ゾイド新世紀/ZERO』のジェノザウラーやバーサークフューラーも、大昔の個体を発掘しているとされる。
「ゾイドの名前」に関しては、「パイロットの頭に自然に浮かんでくる」という描写がされているが、これがゾイド側が人間に働きかけているのかそれとも関係がとくにないのかは不明である。
また、ゾイドだけでなく様々な旧時代の知識が失われており、ビームやレーザーなどの光学兵器のエネルギー弾を「光の弾」と呼んだり、Eシールドに該当する装備を「バーリア」と呼ぶなどの描写も見られた。
- ビームトータスなどの呼称を認識しているが、その「ビーム」が何なのかは把握していなかったという場面もある。
さらに、この時代の「ゾイドではない動物」も、過去の作品とは異なり、地球由来の動物と外見が異なっているが、「大異変」を経て進化・適応したのかは不明である。
その他には、「バラッツ」と呼ばれるブロックスゾイドが数多く見られる。また、ディグと呼ばれる超大型のオリジナルゾイドも見られた。
背景
その特異な作風から誤解されがちだが、当初からゾイドのアニメの企画として製作された。ただし、「他作品との繋がりは触れずにいる事で自由に現状を描く」といったマインドセットでいたのは確かで、その流れでファンタジー風の世界観や「ジェネレーター」「ソラノヒト」のような設定も考案された(出典)。特に、他のシリーズ作品より「戦争」や「軍事」を丁寧に描写している点には定評がある。
また、上記の様々な設定だけでなく、他にもゾイドシリーズとしては歴代でも珍しいアプローチが散見される。主人公のルージ・ファミロンは「戦闘を好まない優男」「将来の夢が教師」などステレオタイプから外されており、ライバルとなるザイリン・ド・ザルツの描写もこれまでのライバルキャラとは異なる部分が少なくない(むしろカール・リヒテン・シュバルツに似た背景を持つ)。
もっとも目立つ点としては、年齢と体型が如実に異なるヒロインを二人用意して明確に「萌え」を前面的にアピールしているため、この風潮を歓迎する一方で好ましく思わない人も少なからずいた。
- もっとも、「真のヒロインはムラサメライガーやザイリン」と冗談で言われることが多いが、これはあながち間違いではなく、後年に発売されたDVDのトップイラストでも、他の作品とは異なり、ルージと一緒に描かれていたのはザイリンであった。
その他にも、特殊なオープニングソングである『夜鷹の夢』や上記の「ナンバー」の設定が非常にえげつなかったり、改造を施されたゲオルグがCGで描かれたり、シリアスな本編に反してEDがどんどんカオスになっていった、なども話題を呼んだ。
メインキャラクター側のゾイドとしては、レインボージャークだけは完全な新機種である。ムラサメライガーも「ティラノライガー」のコンセプトの再利用と思われる部分があり、ランスタッグ・デッドリーコング・バンブリアンもそれぞれオルディオス・アイアンコング・ベアファイターの機構を受け継いでいる。
『ゾイドジェネレイションズ』は、厳密には世界観が異なるもののタイアップ企画である。また、バトルストーリーの『BATTLE ANGLE』は、本作に通じる設定を持つ。また、『機獣新世紀ZOIDS』では、バン・フライハイト達と疑似的なクロスオーバーを果たしている。
なお、上記の通り企画のコンセプトが二転三転しただけでなく、日本のアニメ史上もっとも制作現場が混乱した作品の一つとしても知られており、監督が長期間不在で指揮系統も確立されておらず、かなり制作が難航したとされる。そのため、最初期のゾイドの挙動や流動性のある動きが後には変更されたり、作画が安定していなかったり、本来のムラサメライガーのテーマ曲がほとんど第一話でしか使われていないなどの影響がみられた。
商品展開においても、カノンフォート・ハウンドソルジャー・ブラックライモス・レドラーが、本作に併せてリペイントされて再発売されたが、アニメには未登場というゾイドシリーズでは異例の事態になった。代わりに『ゾイドジェネレイションズ』にてハウンドソルジャーとブラックライモスがメインキャラクターのゾイドに選ばれた。レドラーが登場しなかった理由は、デカルトドラゴンがユニゾンを解かなかった理由と同じく、恐竜や古代爬虫類モチーフであることが原因なのかもしれない。
また、ムラサメライガーの鳴き声が歴代のライガーから変更されており、吠えるシーン自体もかなり少ない。その代わりに、唸り声を上げる場面がある。
ちなみに…
バンプレスト(現:バンダイナムコエンターテインメント)の『スーパーロボット大戦』シリーズには、版権元のトミーがライバル企業であるという事情からゾイドシリーズは参戦できないと思われていたが、2009年の『スーパーロボット大戦K』で版権の壁を乗り越えて参戦を果たしている。
ただし肝心のゲーム内での扱いについては…お察し下さい。
ストーリー
ある日、近海に沈んでいた青いライガータイプのゾイドの発掘を手伝っていた主人公・ルージ・ファミロンは、見た事の無い銀色のゾイドが村を襲撃するのを目撃する。
ルージは、ムラサメライガーに乗り込み、銀色のゾイドを撃退する。
しかし、戦闘によって村の生命の源となる「ジェネレーター」が破壊されてしまい、ルージはジェネレーターを修理できる職人を探す旅に出る事になるのであった。
登場人物
/の後は愛機のゾイド。
ルージ一行
- ルージ・ファミロン(CV:平田宏美)/ムラサメライガー
- ラ・カン(CV:松山鷹志)/ソードウルフ
- レ・ミィ(CV:こやまきみこ)/ランスタッグ
- コトナ・エレガンス(CV:伊藤静)/レインボージャーク
- ガラガ(CV:三宅健太)/デッドリーコング
- ロン・マンガン(CV:谷山紀章)/バンブリアン
- セイジュウロウ(CV:津田健次郎)/ソウルタイガー
キダ藩
ディガルド討伐軍
- ホー(CV:坂口候一)/セイバータイガー(グレー)
- ハック(CV:西本理一)/エレファンダー
- バルブロ(CV:室園丈裕)/コマンドウルフ
- ディンガ(CV:河野清人)/セイバータイガー(グレー)
- ガボール(CV:佐藤ゆうこ)/ブラストルタイガー
- ダンブル(CV:竹口安芸子)/ケーニッヒウルフ Mk-Ⅱ
- ヤクゥ(CV:夏樹リオ)
- ドクゥ(CV:小伏伸之)
ディガルド武国
- ザイリン・ド・ザルツ(CV:松本保典)/バイオメガラプトル→バイオヴォルケーノ
- ゲオルグ(CV:石井康嗣)/バイオトリケラ
- フェルミ(CV:兵藤まこ)/バイオプテラ
- ソウタ(CV:深水由美)/バイオケントロ→改造ランスタッグ
- ジーン(CV:中村秀利)/バイオティラノ
- ララダ3世(CV:石森達幸)
- ボラー(CV:四宮豪)
- ガゼル(CV:最上嗣生)
- ゴザイル(CV:坂口候一)
ソラノヒト
無敵団
その他
- ラージ・ファミロン(CV:相沢正輝)/ビームトータス
- ミン・ファミロン(CV:増田ゆき)
- ファージ・ファミロン(CV:恒松あゆみ)
- シオ・ファミロン(CV:竹口安芸子)
- ジンゴ(CV:田中完)
- ストーン・ハーラ(CV:加藤優子)
- リンナ・エレガンス(CV:伊藤静)
- ウィプス・ド・ザルツ(CV:近藤孝行)
- ムサ(CV:安井邦彦)
主題歌
オープニングテーマ
「夜鷹の夢」
作曲 - D・A・I / 作詞 - 川村サイコ / 歌 - Do As Infinity
歌詞を大胆かつ巧みに編集したことで有名。是非自分の耳で聞き比べて欲しい。
エンディングテーマ
「Real Love」(第1話 - 第28話)
作詞 - 森由里子 / 作曲 - Jin Nakamura / 歌 - PARADISE GO!! GO!!
「ありのままでLovin'U」(第29話 - 第43話)
作詞 - 森由里子 / 作曲 - YUPA / 歌 - レ・ミィ×コトナ(こやまきみこ&伊藤静)
「握りしめたその手に」(第44話 - 第49話)
作詞 - marf / 作曲 - 鳴瀬シュウヘイ / 歌 - レ・ミィ×コトナ(こやまきみこ&伊藤静)
「夜鷹の夢」(最終話)
作曲 - D・A・I/ 作詞 - 川村サイコ / 歌 - Do As Infinity
各話リスト
話数 | サブタイトル |
---|---|
第1話 | 襲撃 |
第2話 | バイオゾイド |
第3話 | 旅立ち |
第4話 | はじめての街 |
第5話 | 決闘 |
第6話 | 山のアジト |
第7話 | 嘆きの山 |
第8話 | 地下水路 |
第9話 | 温泉の村 |
第10話 | 迷い |
第11話 | 旅の仲間 |
第12話 | 潜入 |
第13話 | 支配 |
第14話 | 脱出 |
第15話 | 離散 |
第16話 | 出会い |
第17話 | 怒り |
第18話 | 合流 |
第19話 | 紅蓮 |
第20話 | 決意 |
第21話 | 帰郷 |
第22話 | 誓い |
第23話 | ハヤテ |
第24話 | 驕り |
第25話 | 進軍 |
第26話 | 霧の河 |
第27話 | 再起への道 |
第28話 | 伝説 |
第29話 | 秘密 |
第30話 | 魔物の森 |
第31話 | 残された者 |
第32話 | ソラノヒト |
第33話 | 予兆 |
第34話 | 強襲 |
第35話 | 奇襲 |
第36話 | ほころび |
第37話 | 襲来 |
第38話 | 突撃 |
第39話 | 入城 |
第40話 | バイオ粒子砲 |
第41話 | 政変 |
第42話 | 密会 |
第43話 | 鍵 |
第44話 | 離陸 |
第45話 | 遺産 |
第46話 | 瓦解 |
第47話 | 決別 |
第48話 | 神の雷 |
第49話 | 決戦 |
第50話 | 再生 |
評価
アニメゾイドとしては、フューザーズ程ではないものの、賛否両論である。
恐竜型ゾイドがほぼ悪役限定、悪役の恐竜型ゾイドのデザインがあまりに異質(ただし、ゾイドの出自を考えると正当な先祖返りデザイン)そして萌えを意識したキャラデザと玩具展開が従来のファンから大きく批判された。
また、玩具販促アニメにもかかわらず売れたキットはムラサメライガー系統とバイオヴォルケーノのみといってよく、玩具販促アニメとしては非常に厳しい評価と言わざるを得ない。
しかしストーリーやキャラクターは非常に評価が高く、とくにメインヒロイン二人の関連グッズは中々の売り上げであった。ファンの間ではどちらがいいかと白熱した議論も繰り返されていたりする。
後年様々な分野の長期シリーズがテコ入れのために美少女キャラを導入して売り上げ回復を図っており、いわば、時代を先取りしすぎた名作といえる。
関連イラスト
関連動画
外部リンク
関連タグ
ゾイド-ZOIDS- ゾイド新世紀/ゼロ ゾイドフューザーズ
ゾイドワイルド:ジェネシスから10年以上の間隔があいて放送された新作。ただし、放送局は異なる。
ゾイドワイルドZERO:ゾイドワイルドの続編。放送局は、ジェネシスと同じテレビ東京系列となる。
七人の侍:モチーフの一つとされている。
風の谷のナウシカ:滅びた世界を整えるため、旧世代の人類がテラフォーミングの機構を生み出し、大多数の人類はその歴史や真価も知らない、などの世界観に関する共通点が見られる。
デジモンアドベンチャー:西園悟作品繋がり。