概要
1999年より再開したゾイドシリーズ第2期から登場し、細かい設定の違いはあれど『ブロックをボディの基礎にする』という共通の特徴を持つゾイドの総称。
従来の動力稼働ゾイドと異なり、5mm径のジョイントブロックによる「組み替え」「無稼動」「変形」「合体」を基本構想とし、ゾイドシリーズはかねてから改造遊びを推奨していたが、若年層ユーザーから改造における難易度の高さを訴える声が多かったことと、当時「ゾイド新世紀/ZERO」の放送終了が迫っていた事からホビー商品として企画された。
シリーズの途中からは既存の動力稼働ゾイドとの連動も加味され、ブロックス用の5mm軸マウントを採用した商品も発売された。
身体の各部や武装パーツを自由に組み替えて楽しむ組み立て式のブロック玩具であり、単にブロックやパーツを組み替えて遊ぶだけでなく、組み替えたパーツを既存のゾイドのカスタマイズパーツとして装着する事も可能。従来のポップアップキットの売りの一つだった歩行・走行ギミックはディメトロプテラやレオゲーター等のTB8シリーズを除きオミットされたが、低価格かつカスタマイズの自由度の高さからライト及びヘビーユーザーの心を鷲掴みして数多くのゾイドブロックスのゾイドが発売される事になった。
当時のおもちゃ屋では電動ゾイドが高額さからいつまでも売れ残り、逆にブロックスはすぐに売れては新商品が足され回転が速い様子も散見され、シリーズ全体で見ても徐々にブロックス展開が主流になっていくことになった。
アメリカでは、『Z-Builders』(ズィービルダーズ)の名前でハズブロより発売されており、同社オリジナル製品も数点がリリースされ、日本でもごく一部の製品がイベント会場限定品として発売された。
ゾイドバトルストーリー(ゾイドの背景ストーリー)では人工ゾイドコアを持つ新機軸のゾイドとして設定されている。また、同サイズの旧来ゾイドより単体の性能では大きく劣るが、扱いやすさや安価さから汎用性では大きく勝り、合体すれば大型ゾイドクラスの性能を実現できるとされる。また、ゾイドの出自(野生動物の臓器を生きたまま抉り出し人工ボディに移植することで優れた生きた兵器とする)を考えても、人造ゾイドコアで大量生産できるゾイドブロックスは倫理的観点においても旧来ゾイドより遙かに優れているといえる。
ゾイドブロックス一覧
ブロックスゾイド
(当該記事を参照)
キメラブロックス
(当該記事を参照)
バラッツ
『機獣創世紀ゾイドジェネシス』放送時に発売されたブロックスで、旧ゾイドシリーズに登場したアタックゾイド(コマンドゾイド)のような位置づけの1人乗りの超小型ゾイド。使用するブロックはネオコアブロック1つのみとなっている。商品は開封するまで中身がわからないブラインドボックス形式であり、パーツはあらかじめランナーから切り離されている。シークレットとしてクリア成型のギラフソーダが混入されていた。
劇中では主に作業用として用いられていたほか、フィラソードがムテキ団の乗機として登場した。
ゾイド・ザ・ワンブロックス
その名の通り単体のコアブロックにデフォルメ調のゾイドの手足を取り付ける事で完成するシンプルな構成のブロックス。ブラインドボックス形式とカプセルトイの二形態でそれぞれ異なるラインナップが発売されている。
カプセルゾイドブロックス
ユージン(現:タカラトミーアーツ)より発売されたカプセルトイシリーズ。既存のブロックスに比べてデザインはより有機的となり、ラインナップも植物や二足歩行型ロボットといった既存のゾイドシリーズの枠に捉われない独特のものとなっている。
コアブロックのデザインは従来のものと異なっており、本家ブロックスにはない十字型のジョイントや球形のブロックなどもある。
ネオブロックス
ブロックやパイロットフィギュアの形状が一新された新規格のブロックス。従来のブロックスの問題点でもあったジョイントの保持力の低さは解消されたが、ブロックの形状が変更された事で組み換えの自由度は低下してしまっている。
ストーリーは「ビース共和国」と「ダイナス帝国」の二つの国家による戦争を扱ったものに変更されたが、登場人物や物語などはシリーズが終了しても一切明かされることはなかった。
レジェンドブロックス
ゴジュラスやアイアンコングといった歴代のゾイドをネオブロックスの規格で再現したもの。ネオブロックスのパーツを用いたチェンジマイズも可能。パイロットのフィギュアは旧ゾイドシリーズと同様にメッキ加工されている(ヘリック共和国:金・ゼネバス帝国:銀)。
カスタムブロックス
バラッツと同様に1つのコアブロックに各種パーツを組み付けていくランナー切り離し済みの低価格帯のアイテムだが、バラッツと異なるのはパーツの組み換えによってネオブロックスの武器として装着可能な点である。ブラインドボックス形式ではない為、欲しい種類を選んで購入する事が可能だった。
元々カスタムブロックスは『ゾイドジェネシス』シリーズにて発売される予定だったが、諸事情によりネオブロックスシリーズにて発売される事になった。
評価
ゾイドブロックスは、商業的にはかなりの成功を収めたものの、一部古参ゾイドファンから失敗例としてよく槍玉に挙がるシリーズであり、理由としては以下がある。
完全人工生物化
ブロックスは完全人造ゾイドコアによる人工生命体のため、ゾイド最大の特徴であった“野生の本能”を持った生きた機械の要素がなくなった。見方によってはただの生物型ロボットにも解釈できるようになってしまっている。これにより、従来制約であった元になる野生生物がいないと生産できない点が排除された。
- ただしファンの解釈も分かれており、完全に無生物化してしまったと捉える向きと人造生物として一定の命と捉える向きがあり、当時のホビーでの扱いも曖昧である。例えばアニメや漫画作品では相棒として扱われたり、魂を感じさせる描写もある。バトルストーリーでは明確に人工金属“生命体”と表現もされているし、キメラブロックスが“凶暴”と表現されたり、ゾイドの亡骸を合体ではなく"取り込む"と表現されたりもする。一方で、その凶暴性を“プログラム”とも表現されており、完全人工"物"と解釈されても無理からぬ描写ではある。
ゾイドの高度な感情の有無
アニメシリーズは言うまでも無く、バトルストーリーにおいても、生物であるゾイドが人間と心を通わせると言う展開は多々ある。
- 自らの意思でパイロットを選び、操縦も精神リンクで行うゴジュラス・ジ・オーガ
- 敵への恐怖を共有してパイロットと心を通わせたジェノブレイカー
- 野生の本能を残し、パイロットのメンタルで性能が極端に変わるライガーゼロ
- 勇敢な少年の想いに答えて多くの命を救ったセイバータイガーゴールド
- 命と引き換えにパイロットを救ったアロザウラー
しかしブロックスはバイオコンピューターによってゾイドの意思を再現している。再現された本能は本物に極めて近く、キメラブロックスの暴走の原因になってはいるが、プログラムで再現されたものであるため、一種のAIと受け取れる。またブロックスが主役のバトルストーリーではゾイドの心を掘り下げる描写がほぼないため、心がないと捉える向きもある。少なくとも、旧来のゾイドのように情緒溢れる高度な感情は持たない可能性が高い。それ故、感情移入しにくい、心を持たないロボットと同じと受け取るファンが少なからずいた。
(もっとも概要で触れているように、心を持った生物であるゾイドを改造している点は倫理上問題があるのだが……)
- 一方でプログラムされた行動ではなく“本能”とわざわざ表現されており、キメラブロックスの暴走はブロックスが生きている機械であるゾイドである証左とも受け取れ、単純な心はあるとも解釈でき、やはり解釈は分かれる。
性能
性能は通常のゾイドに劣るとされているが、上記の通り無尽蔵に生み出せ、従来のゾイドよりも低コストかつ汎用性が高いことから、その欠点を補って余りある実用性をもっている。
さらに合体すれば従来ゾイドに比肩するレベルまで強化されるうえ、後に通常ゾイドと同等の出力を持つTB8シリーズが出現し、フェニックスも単体でさえ同サイズのシュトルヒを凌駕する等、後半はもはや性能・量産性共に通常ゾイドを凌駕する完全な上位相関となり、従来のゾイドの必要性が失われてしまっている。
設定上セイバリオンは、明確に性能は十分でありながらブロックスの有用性から生産数が少なくなったとされており、商業展開的にもブロックス登場後は、小中型ゾイドは旧シリーズから復刻機のみで、動力ゾイドの新作は大型機のみとなっている。これにより、動力ゾイド展開がおざなりになったと考えるファンもおり、従来のゾイドファンから余計に抵抗感が強まった。
総括
上記の通り、これまでのゾイドを否定している面が大きいのは事実。しかしながら、動力を排して比較的安価になり、改造や組み替えもしやすく、平成の中流階級のご家庭からは非常に好まれ、ゾイドとしては非常に売れた。平成後期ゾイドが長引いたのは本シリーズの健闘が大きかったともいえ、決して失敗や劇薬ではなく、偉大な功労者であった。
一部の古参ファンからの受けは非常によろしくないものの、物言わぬ多数派にヒットしたからこそ当時のゾイドの主流になっていったともいえる。当時の子供達の中には、ブロックスが初めてのゾイドデビューであった者達も大いに存在したからである。
余談
- 第1期、第2期にてゾイドの主流であった1/72スケールの無動力のゾイド商品としては、アタックゾイドやSSゾイドに次ぐシリーズとなる。それ以前の主力だった大型電動ゾイド(ケーニッヒウルフやライガーゼロイクス)から低価格の組み換えトイとしての側面を強めた点には、当時流行していた男児向け玩具が「爆転シュート ベイブレード」のようなホビー系であった点にも通ずる部分がある。
- 当初は所属勢力も特定されておらず、既存のゾイドとの繋がりも明言されていなかった(とはいえ、初期の玩具の段階で既存世界観の大陸やゾイドの存在は示唆されており、販促チラシでは西方大陸の企業により開発されたというアナウンスがなされていたが、後にその製造元は東方大陸ZOITEC社へと設定そのものが変遷した)。展開時には若年層向けのコロコロコミックではバトル漫画路線の「ZOIDS惑星Zi」を、より年齢層の高い電撃ホビーマガジンではバトルストーリーと繋がりを持った誌面展開を行っていた(後に公式の玩具側でも後者寄りの展開となる)。
- ゾイドは昭和、平成、令和と時代が経るごとに展開の仕方ががらりと変わり、既存のファンから新機軸が激しい批判を受けることは多いシリーズであるが、ブロックスはとりわけその色が強く、一部の古参ファンと当時の若い世代の温度差は本当に凄まじいものがあった。
- 人工生物化に関しては、先述の通りゾイドの根幹を揺るがす設定ではあるものの、ゾイドの設定を深く追わない当時のライトユーザーからは特に気にされていなかった。逆に、設定を深く読み込む一部の古参ファンからは非常に受けがよろしくなく、未だにブロックスは失敗という者もそれなりにいる。Google検索などでは「ゾイドブロックス」と打ち込むと検索候補に「失敗」と出てきてしまうほどである。
- ゾイドを生きた機械で相棒としながらも、野生動物から主要器官を抉り出して人造ボディに移植して兵器として使う設定は若い世代からは激しい拒絶反応を示されており、完全人工ボディの方が倫理的ではないかという反応もある。とりわけ、『ゾイドジェネシス』では人間がとある事情でゾイドと同じような扱いを受けているショッキングなシーンがあり、トラウマとしても界隈では有名。人がされてトラウマになるレベルの行為を野生動物に行う倫理問題を解決するには当時としては完全人工生物にするしかなかったという評価もある。
- ゾイドの心に関しては、単なる兵器として扱われる機体と、心を持つ相棒として描かれる機体は従来から混在しており抵抗感を感じないファンも多い。またSF作品では高性能なコンピューターを心と捉えるか単なるAIと捉えるかは永遠のテーマであり、ここも古参ファンと若い世代との温度差が激しい。
- 性能に関しては、リアルミリタリーを突き詰めれば合理的というフォローはある。特にバトルストーリーはリアルミリタリーを標榜しており、合理的な兵器ブロックスがリアルミリタリーを支持する古参ファンから激しい非難を受けたのは皮肉である。圧倒的汎用性から既存戦術をがらりと変えたドローンが現実にもあり、ドローンも老兵からは戦闘機の補助、若い兵士からは時代を変える安全で扱いやすい主要兵器という見方で溝があり、奇しくも新旧世代で見方が全く異なる点は似通っている。ある意味ではそこもリアルミリタリー的ではある。
- ブロックスに対する評価は、その後のゾイド像を大きく決定づけるものとなった。メーカー側は商業的には一定以上のヒットをしつつも予想外に大きな批判を巻き起こしたブロックスを相当反省したようで、ブロックス系のキットは再販も行われず、その後の再展開では純粋なブロックスゾイドは皆無である。また、賛否ありつつも大ヒットしているゾイドHMMシリーズでもブロックスゾイドやそれらと深いつながりを持つゾイドは令和6年現在一切商品化されていない。第3シリーズでは、完全人工ゾイド、キメラ型、幻獣型は全く登場しなくなり、タカラトミー製のゾイドは動力キットが主流になっていくことになる。また、第3シリーズの地球産ゾイドは一度休止し化石化した生物を発掘して使役する設定へと変わり、倫理的にも時代にある程度則した設定になった。