『女神異聞録ペルソナ』に登場するニュクスについてはニュクス(女神転生)を参照。
概要
今作における全ての元凶であり、真のラスボス。
太古の昔に地球に飛来し、地球上の生命体に「死」を授けたとされる超存在。人間を影人間化させる怪物シャドウの母体でもある。
現在は空に浮かぶ月と一体化して眠りについているが、目覚めた暁には地球上の全人類を影人間化させて死に絶えさせるという文字通り世界を滅ぼす力を有している。
ニュクス自身に意志と呼べるものはないが、ニュクスを復活させることがシャドウ達の活動目的である。またニュクスのもたらす滅びの思想に憑りつかれてしまう人間も少なからずおり、桐条鴻悦、幾月修司、本編終盤のストレガはニュクスを復活させるために暗躍する。
具体的には、本編の10年前に鴻悦はニュクスを目覚めさせる宣告者デスを不完全ながらも生み出すことに成功。さらに鴻悦の遺志を継ぐ幾月の暗躍により、本編にて主人公ら特別課外活動部が大型シャドウ達を倒してしまったことで、終盤にてデスが完全に覚醒。ニュクスと同じ性質を持つデスに引き寄せられるようにニュクスの目覚めも始まった。
デスの顕現は滅びの確約であり、ニュクスの訪れを防ぐことはできない。また到来するニュクスの絶対的な滅びの前に力の大小は問題ではなく、大型シャドウを撃破してきたS.E.E.Sでもニュクスを倒すことはできないため、もはや何をどうしようが世界の滅びは避けられない。
ただ宣告者である望月綾時を殺せば、影時間やニュクスにまつわる人々の記憶はすべて消え、ニュクスがもたらす滅びの瞬間までを苦しまず平和に過ごすことが可能となる。
唯一、与えられたのは、"死に方"の選択権だけ…
どちらにせよ、死ぬという事実…
死に方なんて、どう選べというのか…
本編にて
12月31日に「綾時を殺し、記憶を手放す」を選んだ場合はバッドエンドになる。
ニュクス到来が多少先延ばしになったとはいえ、世界の滅亡が確定しているため何の希望もないように思えるが、そもそも大前提としてニュクスを止める方法は存在しないため、どのみち滅ぶ世界でニュクスに怯えることなく最期を迎えられるこのエンディングはある種の救いともいえる。
また大なり小なり辛い人生を送ってきたS.E.E.Sメンバーがシャドウもペルソナも何もかもを忘れた普通の高校生になれるのはこの世界線しかなく、その意味でも報われるものがある…かもしれない。
「綾時を殺さず、今のままを続ける」を選んだ場合はニュクスと対決することとなる。
2010年1月31日、特別課外活動部はタルタロス頂上で死闘の末にニュクス・アバターを下すが、直後に月の表面が割れてニュクス本体がついに出現。月そのものであるニュクスが、ニュクス・アバターとタルタロスを目印として地球への降下を開始する。
さらにニュクスが地球に近づきすぎたことで、影時間下で本来ならシャドウの影響を受けない筈の象徴化している人々の象徴化が解除されてしまう。上空のニュクスを見て恐慌状態に陥った人々は次々と影人間化してシャドウが大量発生し、無数のシャドウに引かれてニュクスがさらに活性化するという悪夢の連鎖を引き起こす。
主人公達はニュクスの発する重力波で立ち上がることすらできず、漫画版ではタルタロスが崩壊しかねないほどの衝撃波が発生し、劇場版では召喚したペルソナ達が塵芥のように消し飛ばされ、次元が違い過ぎる圧倒的な力と絶望的状況を前に成す術はなく、もはや世界の滅びをただ待つしかないものと思われた。
薄れゆく意識の中、ベルベットルームで目を覚ました主人公の耳に、この1年で出会い絆を育んだ人々の声が聞こえてくる。築いたコミュニティによって強くなるワイルドの力が、主人公の力になりたいという人々の願い、離れていても繋がる絆の力によって極限まで高まり、究極の力である【XXI.宇宙】ユニバースが発現する。
何事の実現も奇跡ではなくなる力を手にした主人公は、仲間達の制止を振り切って上空に浮かぶ月へと飛翔。月の内部に侵入し、卵のような形状のニュクス本体と相対する。
世界を滅ぼすニュクスの力の前に倒れそうになりながらも、仲間達の声に後押しされながら猛攻を耐え凌ぎ、ユニバースの最後の力で「大いなる封印」を発動。
不可能を可能にする究極の力を前に、決して倒せないと謳われた死の母星ニュクスもついに活動を停止し、再び眠りにつく。かくして世界の滅びは免れて主人公も帰還し、S.E.E.S.一同は約束の日を迎えるのであった。めでたしめでたし。
ニュクスって結局どういう存在なの?
出番自体は最終盤かつイベント戦闘ながらも絶大なスケールで印象に残るニュクスであるが、本編だけだと世界を滅ぼすことやシャドウの母体であることといった断片的な情報しか分からなかったりする。P3オリジナル版の設定資料集である「ペルソナ倶楽部P3」では本編で描写されなかったニュクスの詳細な設定や、それにまつわるP3の世界観について説明されている(無印当時の設定なので後発タイトルの場合どこまで設定が生きているかは不明)。
ニュクスと太古の地球
元々ニュクスは宇宙で生まれた巨大な天体サイズの地球外生命体である。
生命体といっても地球の物理法則とは異なる法則の下に存在する物質で構成されており、地球上で発生したタイプの生命に死をもたらす波動を発する超危険生物であることから「星を喰らうもの」と呼ばれた。
そんなニュクスは40億年ほど前は休眠状態で宇宙空間を彷徨っていたのだが、ある時不運にも、当時まだ生命が誕生したばかりの地球へ天文学的な確率で衝突してしまう。
(※画像はイメージです)
激突の衝撃は地球の一部が砕けるほど激しく、壊れた地球の破片が寄り集まって月を形成。ニュクスも衝撃で肉体と精神が分離してしまい、肉体は形成された月と一体化し、精神は地球に宿ることとなった。
つまり『P3』世界の月は、原始地球の一部とニュクスの肉体が混ざり合って生まれた天体である。肉体と言っても精神が抜けた無害な抜け殻状態であり、また衝突時に肉体が激しく傷ついたため、ニュクス本体は月の中で永い時間をかけて大人しく自己修復を行うことになる。
ニュクスと集合的無意識
問題は地球に定着した精神の方であり、肉体から離れてもニュクスの精神が発する死の波動は強大で、当時の地球上の生命を脅かした。
ニュクスの傍迷惑なファーストコンタクトに対し、まだ原始的だったとはいえ本能的に生を望む地球の生物は死の波動に抵抗。生物達は自分達の精神を高度に進化させることで、地球の生物すべての共有情報域である集合的無意識の領域を作り出し、そこにニュクスの精神を封じ込めることに成功。封じる原動力となるのは「死にたくない、死ぬのは怖い」という抑圧の力であり、そんな死の恐怖を乗り越えようとする精神作用がニュクスの波動を抑え込むという理屈である。
こうして地球生物はニュクスの死の波動への耐性を付けただけでなく、複雑な精神構造を持つ生物として爆発的に進化した。代償として、アメーバ等の原始生物が持っている無限に細胞分裂できるようなある種の不死性を進化の過程で失い、寿命という名の「死」を有することとなった。
ともあれ地球の生命はその後順調に進化を続け、何も問題はないと思われたが…。
ニュクスとシャドウ
こうして精神もバラバラになったニュクスであるが、ニュクスは本能的に元の姿に戻ろうとする性質を有しており、集合的無意識下で大人しくしているタマではなかった。
集合的無意識下、すなわち全ての生物の意識の奥底に封印されたニュクスの精神は「死を怖れる心」によって抑圧されている。この心を持たず、「死」というものについて深く考えず漠然と生きる者や、生きる気力を失って積極的に死を望む者は、無意識下から脱出しようとしているニュクスの精神を抑圧することができなくなり、ニュクスの精神の一部が抜け出てしまう。
この個人から抜け出たニュクスの精神体こそが『P3』におけるシャドウである。
ヤバそうなのが抜けて綺麗スッキリ…という都合のいい話ではなく、厄介なのは生命体の精神に取り込まれているシャドウは、それ自体が重要な精神構造の一部になってしまっているという点。これがなくなるということは、生命体の中でも特に高度な精神構造を持つ人間にとっては自分の精神そのものを失うことに等しいのである。
よってシャドウが抜け出た人間はまともな精神活動ができなくなり、廃人同然になってしまう。これが影人間の正体である。人間にとってあってもなくても困るのがシャドウなのだ。
本来の姿に戻ろうとするニュクスの性質に従って、シャドウはまずシャドウ同士で集まって結合しようとする性質を持つ。シャドウが結合するたびに徐々に本来のニュクスとしての力を取り戻していき、一定数以上が結合すると時空に干渉する力が使えるようになる。しょせん精神体に過ぎないシャドウは通常空間では活動できないため、この力を使って影時間を作り出し、自身のシャドウを抑圧できない人間を影時間内で襲ってシャドウを奪い取り、更なる増殖と結合を繰り返していく。
結合を繰り返して十分に力が戻った後は、月の肉体と再融合して真の姿を取り戻そうとする。これがニュクスとシャドウの最終目標であり、ニュクスが宇宙生物として完全復活するとフルパワーの死の波動で全ての命が消え失せる(ちなみに原作の綾時はニュクスが目覚めれば全人類が影人間化すると語っているが、影人間化はニュクスがシャドウを取り戻すための過程に過ぎず、それ自体は真の滅びではない)。
実はニュクス復活は本編以前にも地球の歴史上何度も起きかけている。たとえば大きな戦争や疫病が発生すると、生きるのが嫌になった人々の間に社会不安と終末思想が広がり、抑圧の力が弱まってシャドウが大量発生しニュクス復活が近づくのである。本編で本性を現した幾月が言及した「予言書」とは、そんな色々な時代の終末の様子が記されたものである。
とはいえたびたび起きたとされるニュクス復活の危機も何だかんだで乗り越え、何ら問題はないと思われたが…。
ニュクスと黄昏の羽根
『P3』の世界には、「黄昏の羽根」と呼ばれる青白い板状の物体が存在する。鳥の羽根のようにも見えることからこの名がつけられた。
物質と情報の中間的な性質を持ち、見た目は無機物でありながら生体反応に近い波動を帯びているなど常識では考えられない特徴を備えているが、ほとんどがブラックボックスで詳しい原理は未だ解明されていない。『P4U』や『P4U2』でも重要アイテムとして登場する。
実はこれは月と同化しているニュクスの肉体の一部が剥がれ、地球へ落ちてきたものである。全容が解析できないのは地球上の法則から外れた物質で構成されているため。
これを先代の桐条グループ当主・桐条鶴悦が発見したことが全ての始まりとなった。
本編の14年前に鶴悦は黄昏の羽根とシャドウの研究を開始。最初は羽根が持つ不思議な力を何かの役に立てようとしていたともされるが、研究が進むにつれて鶴悦は羽根のバックボーンにあるニュクスの存在に気付き、そしてニュクスがもたらす終末に憑りつかれてしまう。
ちなみに黄昏の羽根自体は概ね正常に研究が進み、シャドウと同様に時空に干渉する力を持つことや、これを内蔵された機械が不思議パワーを発揮し影時間でも作動可能になることが判明。対シャドウ特別制圧兵装の精神中枢、召喚器、巌戸台分寮の作戦室にある機器、美鶴のバイクなどに内臓され、本編でのS.E.E.Sの戦いに大きく貢献した。
ニュクスと宣告者
滅びの思想に憑りつかれた鶴悦は、本編の10年前にニュクスを降臨させるための作業を実行。これが本編で語られているシャドウの結合実験である。
シャドウは個体ごとにアルカナ番号0~XIIまでの異なる性質を持っており、多くのシャドウが合体して全てのアルカナが結合した時に13番目のアルカナであるデスへと変質する。デスはニュクスと同じ死神の性質を持つ宣告者であり、デスと引き合うように月のニュクスが地球へ引き寄せられてデスや地球上のシャドウと合体し、バラバラになっていた肉体と精神が数十億年ぶりに元通りになるという仕組みである。
本来ならデスが生まれるには、数多くの人々が終末に憑りつかれる→大量のシャドウが発生する→シャドウがくっついてアルカナが結合…という手順を踏む必要があるのだが、上述のように歴史上ニュクスが復活しかけた際もデスが生まれるには至らなかった。
そこで鶴悦は人々が終末に憑りつかれるという迂遠な条件をすっ飛ばし、人為的にシャドウを集めて実験で強制的にアルカナを結合させるという力業でデスを生み出そうとした。月の肉体も本編の時点でほぼ修復が完了していたため、もしこの実験が成功していればこの時点でニュクスが到来し、P3の物語が始まることなく世界が滅亡していたが、岳羽詠一郎のファインプレーにより実験は失敗したのであった。
ちなみに詠一郎は「食い合って一つになる大型シャドウを倒してはならない」とメッセージを遺しているが、仮に倒さず放置した場合でも大型シャドウは勝手に増えて勝手に結合を始めるため、どっちにしろデスを宿した主人公が港区に来て大型シャドウが目覚めた時点でデスの復活は避けられなかったと言える。
まとめ
ニュクスについてまとめると、
- ニュクスは地球外生命体
- ニュクスの肉体は月に、精神はシャドウになった
- 集合的無意識が生まれたのはニュクスがきっかけ
- 全ての生命にはニュクスの精神であるシャドウが宿っている
- 人間が死を望むとシャドウが精神から抜けて影人間になる
- シャドウがたくさん集まると月の肉体と合体して世界滅亡
ということになる。
死の波動やシャドウを振り撒くニュクスは地球にとって非常に迷惑な存在であるが、基本的に本来の姿に戻ろうとする本能で動いており、およそ意思や敵意といったものは持っていない。月や集合的無意識と同化し、何億年も共生(?)してきた設定も踏まえると、一過性の災害というわけでもなく、もはや地球や生命の一部と捉えることもできる。
「不可分の『死』とどう向き合っていくか」というペルソナ3のテーマと密接に結びついたラスボスといえるだろう。