概要(CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜)
1988年12月9日にリリースされたTM NETWORKの6枚目のオリジナルアルバムである。
アナログ盤、CD、カセットテープの三形態で同時発売され、1992年にはMD版も発売されている。
CDは他のオリジナルアルバムと共に何度かリマスターされては再販されていたが、2014年12月24日には最新リマスター音源を使用し、後述の「アナログ盤の曲順」で収録したCD2枚組にアルバム全曲のInstrumental Versionを収録したCD1枚を追加し、更に1989年8月30日の横浜アリーナでのライブDVD完全版がセットされた完全生産限定BOXの『CAROL DELUXE EDITION』が発売された。
同時にハイレゾ版のダウンロード販売も開始している。
TM NETWORKのオリジナルアルバムでは最大の66万枚と云う売り上げ(オリコンの集計による)を誇るが、現在のSonyMusicの公式出荷データに基づく総売上では100万枚を既に突破しているとのことである。
2024年1月12日にはベストアルバム『Gift for Fanks』と『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』の2枚がTM NETWORK史上初となる『SACD/CDハイブリッド盤』として復刻販売された。
一般的に「リマスター版のCD」と呼ばれる商品は、収録曲をアルバムの曲順どおりに並べ替えて(アナログマスターの場合はダビングによって)制作されるカッティングマスターを“マスターテープ”としているが、今回のSACD化では、カッティングマスターよりも一世代上流にあたる貴重なトラックダウンマスターを全曲分揃えたとのこと。
本作は1988年に小室哲哉氏がイギリスに拠点を移し、かつてビートルズが楽曲制作に使用した事で有名なロンドンのスタジオでアルバム全曲のレコーディングが行われた。
TM NETWORKのオリジナルアルバムがアナログ盤としてCDと同時発売された最後の作品であり、アナログでの録音に拘った音作りで構成されているのが特徴である。
また、アナログ盤は二枚組の豪華仕様であり、曲順がCD版やカセットテープ版とは異なり、「CAROLのストーリーに関連する曲」と「通常のTM NETWORKの楽曲」ときっちり分けて収録されている。
これは小室哲哉氏の意向によるもので「アナログ盤は僕ら制作側の本来意図した曲順で、CD版はリスナーが飽きないような曲順にした」と云うことである。「CDはランダム再生でリスナーの好きに曲順を変えられるけど、アナログ盤ではそうはいかないから」と云うことらしい。
本作のオリジナル版が発売された1988年の末は音楽媒体がレコードからCDへの転換期終了間際という時期だったこともあり、本作のアナログ盤は極めて生産数が少ないうえに初回出荷分のロット以降は全く再生産されておらず、ジャケットや内容の豪華さからコレクターの間でも人気が高く、状態の良いものは希少価値でありオークションやフリマサイトでは高値で取引される傾向にある。
アルバムジャケットのイラストおよびキャラクターデザインはGAINAXの佐々木洋氏が手がけ、ビジュアルコーディネーターに井上博明氏(GAINAXプロデューサー)、ビジュアルディレクターは前田真宏氏(現GONZO取締役)と貞本義行氏(GAINAX所属)が担当した。
なお、この時の縁で佐々木洋氏が1988年当時に描いた未発表作品が19年後にTM NETWORKのシングル『WELCOME BACK 2』(2007年)のジャケットとして使用され、同年発売のアルバム『SPEEDWAY』では佐々木氏が新たに描き下ろしたTM NETWORKのイラストが使用されており、更に佐々木氏は2014年4月26日から5月20日まで行われたライブツアー『TM NETWORK 30th 1984〜 the beginning of the end』のツアーグッズTシャツ用にも新規イラストを提供している。
アルバム収録曲
1.「A Day In The Girl's Life (永遠の一瞬)」 作詞︙小室哲哉 作曲︙小室哲哉 (4:10)
2.「Carol (Carol's Theme I)」
作詞︙小室哲哉 作曲︙小室哲哉 (2:55)
3.「Chase In Labyrinth (闇のラビリンス)」
作詞︙小室みつ子 作曲︙木根尚登 (4:33)
4.「Gia Corm Fillippo Dia (Devil'sCarnival)」 作詞︙小室みつ子 作曲︙木根尚登 (5:18)
5.「Come On Everybody」
作詞︙小室哲哉 作曲︙小室哲哉 (4:56)
6.「Beyond The Time (Expanded Version)」
作詞︙小室みつ子 作曲︙小室哲哉 (5:18)
7.「Seven Days War (Four Pieces Band Mix)」 作詞︙小室みつ子 作曲︙小室哲哉 (4:58)
8.「You're The Best」
作詞︙小室みつ子 作曲︙小室哲哉 (5:23)
9.「Winter Comes Around (冬の一日)」
作詞︙小室みつ子 作曲︙木根尚登 (4:41)
10.「In The Forest (君の声が聞こえる)」
作詞︙小室みつ子 作曲︙小室哲哉 (2:56)
11.「Carol (Carol's Theme II)」
作詞︙小室みつ子 作曲︙小室哲哉 (4:00)
12.「Just One Victory (たったひとつの勝利)」 作詞︙小室哲哉 作曲︙小室哲哉 (6:59)
作詞︙小室哲哉 作曲︙小室哲哉、木根尚登 (5:52)
収録時間トータル62分01秒。
上記に記載の曲順はCD版である。
概要(小説)
上記のアルバムのコンセプト・ストーリーを元に木根尚登氏が著した長編小説。
ロンドンから少し離れたバースという街に住む主人公のキャロル・ミュー・ダグラスは、自身の好きなバンドグループのガボール・スクリーンの急激な人気低迷を始め、突如ビッグベンの音が消えたり、父親がチェロから思うような音が出なくなり苦悩する姿に直面する等、日常の奇妙な変化に強い違和感と気味の悪さを覚える。
ある日の夜、ガボール・スクリーンの新譜に何かを感じ取ったキャロルは真夜中の学校に忍び込み、音楽室のサウンド・グラフィックシステムでガボール・スクリーンの曲を再生する決意をする。
ディスクを再生したその瞬間、スクリーンから膨大な光が溢れだし、キャロルは見知らぬ世界へ飛ばされるのだった。
すべての奇妙な事象の元凶である『魔王ジャイガンティカ』に奪われた「音」を取り戻す為に、迷い込んだ異世界『ラ・パス・ル・パス』で、この異世界の住人であるフラッシュ、ティコ・ブラーニ、クラーク・マックスウェルの三人と出会わなければならない。
魔王を倒し「奪われた音」を取り戻すため、キャロルの旅が今始まる。
概要(アニメ版)
上記の小説を原作に一時間にまとめたアニメーション映画。
1990年にTM NETWORKのファンクラブ上映会で公開され、OVAとしてビデオテープやLDも販売された。
現在ではDVDソフトとして入手可能。
随所にCAROL収録曲が挿入されている。
構成・キャラクター原案を漫画家の高河ゆん氏が務める。
アニメ版の制作から5年後の1995年には、キャロルの孫にあたる『品川京呼』が主人公となる続編漫画『CAROL-K』をソニー・マガジンズより刊行されていた漫画雑誌『きみとぼく』にて高河ゆん氏が連載を開始したが、休載が続き未完のままで雑誌自体が廃刊となってしまい、現在では当時の雑誌を手に入れるしか閲覧方法がない。
『CAROL-K』の漫画は未完のうえに単行本化すらされなかったが、関連商品としては椎名へきる氏のラジオ番組『HOLY SHINE IN NAKED』、『SHINE IN NAKED』にて放送されたラジオドラマ版全4話を再構成し収録、加えてキャロル役の高山みなみ氏による『CAROL (CAROL'S THEME Ⅱ)』の英訳カヴァーバージョンと木根尚登氏によるメインテーマ曲を収録したアニメドラマCD『CAROL -K ~Graduater~』が1996年9月21日に発売されている。
アニメ版の内容は小説と大同小異である為、キャラクターのみ説明する。
✬キャロル・ミュー・ダグラス(声優︙久川綾)
本作の主人公。ブロンドヘアの少女。
ラ・パス・ル・パスを救う呪文は異世界人にしか聞き取れないとの理由でクラークにより召還された。
当初は敢えてブラックコーヒーを飲んだり子供臭いという理由で甘い物を拒否したりとワガママであり、森で出会ったティコに「危険だからここで待っていて」と言われても勝手に歩いて迷子になったり、前述の理由からドモスが好意で渡した甘い木の実を断ったりと身勝手でもあった。
しかし物語後半では精神的に成長し、悪に怒りを覚えて自らの使命を受け入れる覚悟を決め、ラ・パス・ル・パスを救おうと努力する。
シーンによっては髪を片方だけ巻いたりする。
✬フラッシュ(声優︙宇都宮隆)
ラ・パス・ル・パスのボーカリストであり剣士でもある。
一見無愛想だが、実は不器用なだけで面倒見は良く頼りになる男である。
最初はキャロルのことを疑っており、彼女と衝突していたが、共に窮地を乗り越えるうちに次第に距離は縮まり、親密な仲になっていた。
宇都宮隆似である。
アニメ版のラストシーンでは宇都宮隆の女性ファン達がキャロルに嫉妬する事態になった。
✬ティコ・ブラーニ(声優︙飛田展男)
ラ・パス・ル・パスのギタリストであり狩人でもある。
森で倒れていたキャロルを最初に助けた人物。
獣人とのハーフらしく、耳がエルフっぽい形をしていてピクピクと動く。
常に他人を思いやり、周囲への気遣いが出来る優しい男である。
原作イラストではファンタジー世界らしく目に遮光ゴーグルを着けていたが、アニメ版では作画の都合で普通のサングラスになった。
狩人らしく銃器の扱いに長け、武器は主に拳銃を使う。
木根尚登似である。
✬クラーク・マクスウェル(声優︙塩沢兼人)
ラ・パス・ル・パスのキーボーディストであり僧侶である。
ケプリらに囚われ、ジャイガンティカに音楽を献上させる目的で幽閉されている。
ロンドンにいるキャロルにテレパシーでメッセージを送り、ラ・パス・ル・パスに呼んだのは彼。
音楽によるジャイガンティカの寝かしつけも担当している。
最終決戦では、ピアノを弾きながらキャロルと同時に、正しい呪文「ジア・コーム・フィリーポ・アルカディア」を詠唱し魔王を葬った。
美味しいところは全部持っていく策士な男である。
小室哲哉似である。
✬ドモス(声優:山田栄子)
迷路の森にて道に迷ったキャロル達の前に現れたピーターラビットの様な大きい兎。
クラーク達の仲間。
その外見に驚いたキャロルにも優しく接し木の実を分けてくれた。
ライーダ達に襲撃されて命を落とす。
TM NETWORKのライブではサポート・ドラマーの阿部薫氏が演じていた。
✬ケプリ(声優:速水奨)
魔王陣の幹部。
ライーダと人間のハーフ。
本当は美しい音楽を愛している。
キャロルに好意を抱き、改心しかけ彼女達の脱出に加担するが逃亡途中に殺害されてしまう。
TM NETWORKライブでは当時B'zでデビューしたばかりのサポート・ギタリストだった松本孝弘氏が演じていた。
✬魔王ジャイガンティカ
見た目は「単眼の異形の怪物」であり、「美しい音を喰らう」事で世界を闇へと変える、まさに悪魔の様な存在である。
地球上の綺麗な音を自分の食糧として次々と奪っていた。
ラ・パス・ル・パスから音を奪い尽くし、荒れ果て殺伐とした世界に変えた元凶である。
魔獣のライーダを大量に産み出して、忠実な下僕として従える。
原作イラストとアニメ版では全く容姿が異なる。
TM NETWORKのCAROLコンサート時にこれを模したオブジェ(デザインはアニメ版に近い)が舞台に設置された。
✬キャロルの父親(声優:田中秀幸)
チェリストととして有名だったが、音を奪われてしまった為に心を病んでしまった。
✬ガボール・スクリーン
正体不明の謎の三人組バンドグループ。
キャロルはその大ファンであるが、新曲が世間から駄作扱いを受け、急激に人気が低迷してしまった。