バチカン市国
ばちかんしこく
概要
バチカン市国(バチカンしこく、ラテン語:Status Civitatis Vaticanae、イタリア語:Stato della Città del Vaticano、英語:Vatican City State)は、ヨーロッパにある国。領域がイタリアのローマ市内にある世界最小の国であるが、ここより小さな例は、いずれも国際的な承認を得られていない「自称国」である。日本では略して「バチカン(ヴァチカン)」と呼ばれる事が多い。人口は800人前後である。
同国はローマ教皇が居住するキリスト教のカトリック教会の総本山である。都市国家・宗教国家であり、1984年10月に街そのものが世界遺産に登録された。国土は日本の皇居より小さく、中国の北京にある天安門広場とほぼ同じ広さである。
歴史
同国の名称はこの地が「ウァティカヌスの丘」と呼ばれた地名から由来している。ここで聖ペトロが殉死した為、聖地にしてキリスト教の中心地となった。4世紀前半にサン・ピエトロ大聖堂が建設され、ここに移り住んだ司教が教皇となって全ての教会へ影響力を及ぼすようになり、カトリックの本拠地となった。
教皇庁はイタリア半島中部に広大な教皇領を持っていたが、イタリア統一運動の中で領土を失い、1870年9月にイタリア王国にローマを接収され、世俗的権力を失う。1929年2月に締結されたラテラノ条約によって教皇庁の権利が放棄される代わりに、バチカンの独立と教会の特別な地位を保証させた。
政治・行政
ローマ教皇を頂点とするローマ教皇庁が統治しており、教皇庁の責任者である国務長官のもとで行政庁長官が実務に当たっている。公用語はラテン語であるが、公文書や儀式時に使うぐらいで、一般にはイタリア語・フランス語・ドイツ語を喋る。他に英語・スペイン語・ポルトガル語も使用されており、加えて最近は中東への配慮からアラビア語も使われるようになった。なお通貨はユーロである。
同国に軍事力はほぼ無く、スイス人傭兵とイタリア警察がいるだけである。その傭兵の斬新な制服はミケランジェロによるデザインとも言われる。
外交
多くの国と外交関係を樹立しているが、大半の共産主義の国とは断絶しており、現在でも中華人民共和国・ベトナムとは正式な国交がなく台湾の中華民国と国交を結んでいる(近年、これらの国々と関係修復を模索する交渉もあるが、司教の任命権などで綱引きが続いている。尚、キューバも共産主義国だが、大半の国民がカトリック信徒であることもあって、関係を断つのは双方ともに現実的な選択肢ではなかったため、共産主義革命以降も途切れる事無く国交が続いている)。また1934年2月に反共主義の国として満州国にも教皇使節を派遣していた。ソ連とは外交関係を樹立せず、ロシアになった後の2009年12月にやっと外交関係を樹立した。
現在、国交がないのは、前述のアジアの共産主義国や一部のイスラム国などのみ。また、狭い国土のため、国民より「国外」からの出勤者の方が多い。数百人の国民は、カトリック信者である市民の多くが城壁内で生活するが、その他の3000人の職員が市国外から通勤している。