概要
従来のドック型揚陸艦、ヘリコプター揚陸艦、揚陸指揮艦を集約し、さらに航空支援を行う航空隊を運用でき、小規模なものなら単艦で上陸作戦を行える。
米軍のワスプ級を例にとると、M1エイブラムス戦車6両を含む海兵隊遠征大隊一個大隊の人員と装備をまるごと収容でき、ウェルドックでは上陸用舟艇4艇を運用できる
特徴
航空機運用能力
強襲揚陸艦は輸送ヘリやティルトローター機を用いて人員、装備を揚陸し、また近接航空支援の攻撃ヘリやVTOL機を運用するため、航空機運用に適した全通甲板をもち、そのためにしばしば空母と勘違いされる。
たしかに一部の強襲揚陸艦では補助空母的な運用がされることもあるが、強襲揚陸艦の任務はあくまで地上部隊の揚陸であるため、カタパルトやアレスティングワイヤーを装備して搭載量を減らすようなことはできない。よって運用できるのはヘリコプターの他はVTOL機に限られ、現在は実質ハリアー一択となっている(F-35Bが間もなく加わる模様)。ハリアーは空対空戦闘も熟せなくはないが、垂直離着陸する場合は重量の関係から武装や燃料の搭載量が大きく制限される。またF-35Bは垂直離着陸用の補助エンジンを搭載したことから非常に鈍重となり、空戦自体が困難となっている。
揚陸能力
上陸作戦こそ強襲揚陸艦の本分である。上陸作戦においては敵の水際防御を突破した後は、敵が反攻の準備を整える前に十分な防御力をもった橋頭堡を構築する必要があり、それまでにできるだけ多くの人員、装備、物資を揚陸することが必要となる。よって揚陸作業のスピードは作戦の成否を決する重要な要素であり、その要たる強襲揚陸艦は空と海の両面で非常に強力な揚陸能力をもつ。ウェルドックと全通甲板を兼ね備える強襲揚陸艦は、ヘリコプターを用いた迅速な人員物資の揚陸と、上陸用舟艇を用いた主力戦車等大重量装備の揚陸を同時にこなす事ができる。また、上陸用の大部隊を収容する必要から、医療設備も空母や補給艦とならんでトップレベルのものを備える。それらの強力な揚陸能力は上陸作戦に留まらず、災害派遣などにおいても力を発揮する。先の東日本大震災では米軍の強襲揚陸艦『エセックス』が孤立した沿岸被災地へヘリと上陸用舟艇を用いて物資人員の揚陸を行った。
指揮通信能力
上陸作戦は海軍、海兵隊は勿論、国や場合によっては陸軍や空軍も参加する大規模な統合作戦となり、その指揮系統はあらゆる作戦の中で最も複雑なものとなる。司令部は通常の旗艦に収まりきらない大所帯となり、求められる指揮通信能力も非常に強力なものとなる。そのため従来では専用の揚陸指揮艦という艦種が用意されていた。
この艦の任務を受け継いだ強襲揚陸艦は指揮通信能力においても非常に強力なものを備える。その指揮通信能力は上陸作戦に留まらず、ほかの艦隊行動時においても有用であるため、韓国の独島級やフランスのミストラル級のように艦隊旗艦として運用される強襲揚陸艦も多い。