概要
阿南まゆきの漫画「ふたごみたいなふたり」は、『ちゃおデラックス』2012年ホラー夏号(7月増刊号)に掲載されたエピソードの一つ。
2013年発売のホラー短編集『ブラッディ・リリィ』及び、2016年発売の『ほんとうにこわい恋愛~恐ろしすぎる恋の罠~』に収録されている。
阿南まゆき先生お得意のガールズホラー系で、ちゃおホラーに多いオカルト抜きの「人間が怖い」タイプのホラー作品。
主人公の女の子が、双子のように似ている事がきっかけで友達になった女の子に、異常なまでの執着と狂気を向けられてしまう物語。
ストーリー
主人公の田中真昼(まひる)は、いつも独りで本を読んでいてクラスで孤立している山田真夜(まよる)のことが気になり、声をかける。
ふたりは気が合い、すぐに仲良しになった。
ふたりは身長も血液型も誕生日まで一緒で、名前も似ていて、私たちまるで双子みたいだね、と真昼は笑う。
真夜の提案で、同じ美容院に行き、お揃いの髪飾りを購入、お揃いの髪型で揃える。
クラスメートからも双子みたいでかわいいと言われ、それからふたりは、なんでも双子みたいにお揃いにするようになった。
真夜の方が一生懸命で、それは真昼ちゃんのことが好きだから…
とはにかむ真夜を愛おしく思う真昼。
今までずっと一人で、親友なんて出来た事無かったと俯く真夜に、真昼は私たちはもう親友だと固く手を握る。
「私たちこれからもずっと一緒だよ!」と抱きしめてくれる真昼に、真夜が仄暗い感情を抱いていたことにまだ真昼は気付かず、このころまではふたりは幸せだった。
だが、真昼が原田タカシという隣のクラスの男の子と仲良くしているのを目撃した真夜は、原田くんに「真昼ちゃんに手を出すな」と詰め寄る騒ぎを起こす。
真昼が止めて事無きを得たが、真昼が今日は原田くんと帰る約束をしていると言うと、真夜は強引に付いてこようとする。
困惑する真昼だったが、一緒にお話すれば原田くんがいい人だって分かってくれるかも…と思い、ファミレスで三人で会食する事に。
そして真昼がお手洗いで中座している間に、原田くんから真昼に対する真剣な気持ちを真摯に伝えられ、真昼ちゃんと仲良くする事を許してほしいと言われるが…
「気安く真昼ちゃんの名前を呼ばないで 汚(けが)れる!」と、指と指の間にフォークを刺して恫喝するのだった。
真昼にもう原田と会うなと求める真夜だが、真昼は原田くんとつき合っていた。
真夜ちゃんも好きだけど、原田くんも好きだと言う真昼に対し、真夜はデートに付き纏おうとするが、拒否される。
彼氏ができても真夜との友情は変わらないと言う真昼に対し、真夜の狂気が加速していく…。
双子コーデへの執着で、真昼が原田くんから貰ったアクセサリーを探し出し身に着ける真夜を、
真昼は拒絶する。
「これからはそれぞれの時間を大事にしよう!!双子ごっこはもうおしまいよ!!」
それから真夜は数日学校を休み、真昼は自分が言い過ぎたせいで真夜を傷つけてしまったことを気にしていたが、教室で再会した真夜は顔中に包帯を巻いていた。
そして包帯を解くと、真昼と同じ顔に整形されていた。
「双子はずっと一緒にいなきゃいけないんだから!
これで私と真昼ちゃんは一生はなれられないんだよ!」
親友の狂気を目の当たりにした真昼は悲鳴を上げて逃げ出してしまう。
その日の放課後。
帰宅した原田くんの部屋に、真昼が訪ねてきており、原田くんは切羽詰まった状況の真昼に声をかけるが…
原田くんは真昼の顔をした恐ろしい形相の女の子が別人と悟り戦慄する(真夜の整形をクラスメートは目撃しているが、原田くんは隣のクラス故に知らなかった模様。
包帯整形の衝撃イベントを教室でやる超展開も、原田くんに見せず、衝撃を演出する意図があり、阿南まゆき先生のプロットの上手さが光る)。
「お前があらわれておかしくなったんだ
最初からこうすればよかった!
しねぇぇぇ!!」
カッターナイフで襲い掛かる真夜。
原田くんは幸いにも軽症で済んだが、真夜はその日から3ヶ月入院することになった(経緯は不明だが、3ヶ月も入院はおそらく精神病院的な事情と思われる)。
それから3ヶ月後。
真夜から電話でふたりにしてきた事を謝りたいと涙声で伝えられた真昼。
直接会って謝りたいという真夜に、快く受け入れ真夜の家を訪れる。
お茶を飲みながら謝罪を受け入れ、仲直りをしたふたり。
しかし…
見せたいものがあると真夜が真昼の為に用意していたのは、棺桶だった。
「真昼ちゃんの棺桶よ」
真昼とずっと一緒にいるためには生きていては難しい、だからふたりで心中する。
それが真夜が出した答えだった。
恐怖で逃げようとする真昼だが、体が痺れて転んでしまう。
さっき飲んだお茶にしびれ薬が盛られていたのだ。
包丁を手に迫ってくる真夜から痺れる体で必死に逃げ、揉み合ったはずみで真夜を階段から突き落とす真昼。
真夜の家を飛び出し、薬で目がかすみながら必死で夜道を逃げる真昼は、通行人に助けを求めるが…
ニガサナイ
真夜だった。真昼は滅多刺しにされて殺されてしまった。
真夜は殺害した真昼を棺桶に安置し、髪を双子コーデに梳いて微笑む。
「うふふ これで真昼ちゃんは私だけのものよ」
そして自らの胸に包丁を刺して自害するのだった。
私たちはふたごみたいなふたり
誕生日も一緒 死んだ日も一緒
これで私たちは永遠に一緒よ――
※ラストは棺桶の中で仲良く手をつないで死んでいるふたりの姿で幕を閉じるが、
物理的に不可能な状況なのは、たぶんイメージ図であろう。
棺桶は「真昼ちゃんの」と言っているし、実際ふたりで入っているわけではあるまい。
登場人物
- 田中真昼(たなかまひる)
主人公。
クラスメートが敬遠していた独りぼっちの子を気にかけて声を掛けたり、真夜の奇行凶行にドン引きしつつも最後まで親友として接した優しい女の子。
その裏表の無い笑顔と優しさが、真夜ちゃんには眩し過ぎたのであろうか。
彼氏ができても真夜ちゃんとの友情は変わらないと言った言葉に、きっと偽りは無かったはず。
真夜の常軌を逸した距離感にははっきりと拒絶の意を伝えるなど、ちゃんと自分を持っている子という印象もある。
当初の無責任な無邪気さや、原田くん関連の鈍感さはあるものの、よくも悪くも平凡な優しい女の子なのだろう。
- 山田真夜(やまだまよる)
暗くてつまらない子としてクラスで孤立していたところを、真昼に声を掛けられ、やがて常軌を逸した依存で執着していく。
独占欲と行動力そして攻撃性が凄まじく、双子コーデに拘り過ぎる事を咎められるや本当の双子になるべく整形したり、拒絶されるや恋仇の原田くん殺害を図り、挙句の果てには真昼と心中を図る、徹頭徹尾、狂気を見せ続けた。
整形手術、痺れ薬、棺桶をDIYなど、中学生(確証は無いが、制服の描写や、阿南まゆき作品の傾向から見て)とは思えぬ手段を多数講じる実力者であった。
- 原田タカシ
真昼たちの隣のクラスの男の子で、誠実で優しくユーモアのあるイケメン。会食での描写からコミュ力も高いとみられる。
真夜からあからさまな敵意を向けられても理解を示し、友好関係を保とうと努力するなど誠実な人柄。
真夜を恋人の大切な親友として尊重したうえで、真昼を好きという気持ちを伝える真摯さ、これは真昼ちゃんが好きになるのも分かる。
会食で真夜から指と指の間にフォーク突き立てられ恫喝されて以降は、ビビって真夜を避けるが至極当然の反応であろう。
余談として、阿南まゆき先生のガールズホラーで殺されずに生き残れた稀有な男の子だったりする。
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