概要
ヴァイキング傭兵集団・『アシェラッド兵団』の首領。
過去にヨーム戦士団のフローキの依頼を受けて、トルフィンの父親トールズを奸計によって殺害したことで、トルフィンからは何度も決闘を仕掛けられている。
表向きはデーン人で通しているが、ルーツにはウェールズの王族と将軍アルトリウスの血が流れており、ローマ風の鎧を着て真剣に約束する際は北欧神話の神々ではなくアルトリウスに誓う等、母の血筋にこそ誇りを持っている。
真名(まな)はルキウス・アルトリウス・カストゥス。
因みに「アシェラッド」は英語アルファベットで"Askeladd"と書くため英語圏では「アスケラッド」のように発音されることがあるが、ノルド語にかなり近しいノルウェー語においては"k"を「シ」のように発音するので「アスケラッド」とは読まない。
人物像
表向きは気さくで飄々とした性格だが、根っこは狡猾な策謀に長け、部下であろうとも情け容赦のない仕打ちをすることもある冷酷非情な人物。剣の腕前は兵団でも随一を誇る歴戦の強者。人の才覚や性格を見抜き操る術にも長け、常に沈着冷静、いかなる状況においても最善を尽くす男であったが、デンマークの王位継承問題に足を突っ込んだために苦難の道を歩むことと成った。
デーン人豪族の父ウォラフと、その奴隷にされたウェールズの元王女の母リディアの間に生まれたが、奴隷との間に生まれた子だった故に、名付けもされずに鍛冶師の下で生き、常に灰だらけだったことからアシェラッド(灰まみれ)と呼ばれ、庶子として馬小屋で育てられた。だが11歳の時に父に才覚を見出され異母兄と共に館に住むことを許され、2年で家族内での地位を固め、隙を見て父を暗殺し母の復讐と財産獲得を果たす。この時の自身への嫌疑をそらすために父と仲が悪かった兄に濡れ衣を着せるやり方は、後のスヴェン王暗殺計画でも踏襲している。14歳の時に危篤の母を連れて故郷ウェールズへ赴き、このときウェールズの人脈を得た。
そのため内心では短慮で粗暴なデーン人を「豚にも劣る」と軽蔑しており、また、母方の故国ブリタニアを滅ぼしたアングロ・サクソン人に対しても非情。ただし父親殺しなどで見られる悪辣なまでの自分の冷酷非情さもまた父方のデーン人の血筋故であることを自覚しており、心の底では自分という存在すら嫌悪している。
故に自らを指導者や王になれる器とは思っておらず、母より聞かされたウェールズの英雄アルトリウスの帰還を待っていた幼少時を引きずるかのように己を導いてくれる理想の主君を求め、その手助けをしたいと願っている。
一口に言えば”矛盾の人”であり、その複雑な心を理解し得たのは親友であるビョルンだけであった。
己を仇と狙うトルフィンに対し、かつての自分を見ているのか、どこか師匠の様な接し方をしており、かつて暗殺した彼の父親トールズにも理想の主君になりえたとして憧れに近い感情を抱き続けている。
プロフィール
年齢 | 33歳(第二巻)、43歳(第一巻初登場時)、44歳(没年) |
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身長 | 170cm |
体重 | 65kg |
来歴
当初は兵団を引き連れて各地へ略奪や小競り合いの参戦をして生計を立てていた。
トールズの抹殺を目論むフローキの取引に応じてトールズ一行をフェロー諸島で待ち伏せし、諸島の集落の残骸でトールズ達の退路を断った後、正面から攻め寄せる。だが、ビョルンの船がトールズ一人に制圧され、アシェラッドはトールズと決闘を行うが敗れるものの、彼に理想の君主を見出したことで彼に自分の兵団の首領にならないかと持ち掛ける。それに激昂したビョルンがトルフィンを人質にしてしまい、トールズは自分の命と引き換えにトルフィンの助命を要求したことで、やむなく弓隊に合図してトールズを射殺する。その後、トールズが死んだことで動かすことが出来なくなった彼らの船を接収する。だが、そこに復讐心を漲らせるトルフィンが乗り込んでいたが、そのことを承知で彼を兵団に置いておく。
ロンドンの戦いにも参戦するが、トルケルの強さに分が悪いと悟り撤退。適当な農村を襲って占拠し、今後の方針を考えていた時にトルケル軍に敗れた包囲軍の生き残りからクヌート王子が捕虜にされたことを知り、奪還を目論む。後にトルケル軍と包囲軍の残党の交戦中に、トルフィンがどさくさに紛れてクヌート達を奪還し保護する。その後、ウェールズに逃げることで追跡してくるトルケル軍から一時は逃げ切る。
だが、ウェールズを通ってデンマーク軍本営に向かおうとするが、雪が降り始めたため近道してイングランドを通ろうとするも大雪となって足止めされてしまい、近くの村を襲って村人達を皆殺しにして占拠し冬を越そうとした。だが、村の外に出ていた生き残りを取りこぼしたことでトルケル軍に居場所がバレて再び追跡を受ける。さらにクヌートを王として成長させるために側近のラグナルを暗殺するも、ラグナルからクヌートの親子事情を知って殺したことを後悔する。
逃走を続ける中、団員達からトルケルへの恐怖と自身のツキが尽きたと見限り離反を考える者が現れ始め、最終的にビョルンとトルフィン以外の団員全員が裏切りクヌートの引き渡しを迫られるが、クヌートをビョルンとトルフィンに託して自身は殿を務めて団員達と交戦する。十数人以上斬り殺すが、脚に矢を受けて動けなくなったところにトルケル軍が到着。トルケルにトルフィンは反乱に加わっていないことを教えると、自身は生かされ裏切った団員達はトルケル軍によって皆殺しにされる。
トルフィンとトルケルの決闘では、自身の剣の光の反射でトルケルの目をくらます横やりをいれたことでトルケルに殺されそうになるが、クヌートが駆けつける。別人に生まれ変わった彼を見て、トルケルとともに王として見定めて従い、ラグナルを殺したことを明かすが許される。
その後はクヌートに参謀として従事し、クヌートの父親であるデンマーク王スヴェンを如何にして抹殺するか画策する。しかし、スヴェンが自身の故郷であるウェールズを今度の侵略地として定めたことに驚愕(その動揺した様子をフローキ達に見られ、ウェールズが弱みだと見抜かれてスヴェンに知らされる)。ウェールズを救うために説き伏せてウェールズ侵攻を取りやめさせようとしたが、スヴェンにクヌートかウェールズかを天秤にかけられたことで、両方を救うために自身を犠牲にすることを決意。スヴェンを殺害し、自ら王と自称し狂人のように暴れまわったが、騒ぎを聞き駆け付けたトルフィンを静止させて、その隙にあえてクヌートに刺され、クヌートを称賛して息絶える。
その後、奴隷に落ちたトルフィンの夢の世界で度々登場する。
関連タグ
シンデレラ:同じ「灰かぶり」という意味の名前