――アシュレイ、あなたの中で私はまだ 生きていますか?
概要
正式タイトルは『アナザーコード:R 記憶の扉』。
CING開発、任天堂発売のゲームソフト。メーカー発表ジャンルはアドベンチャー。コンセプトは「小説を読むように、解くように」。
発売日は2009年2月5日。ハードウェアはWii。『アナザーコード 2つの記憶』の続編。
前作はイラスト立ち絵+トップビュー視点だったが、今作では舞台形式になると同時に立体感が生まれ、キャラクターも3Dになった。
開発スタッフインタビュー曰く「Wiiリモコンの機能をフル活用したアドベンチャーゲームを、片手で遊べるくらいの手軽さでできるようにしたい」という主旨で作られた。他にも仕掛けを解くヒントが一つだけではないことを伝えるため、あるシーンの謎解きではゲーム中以外にも手がかりが隠されている(気になる人はソフトの取扱説明書を確認してみよう。もしくはホームボタン)。
発売当時の公式サイトではサイト内に隠されている単三電池2本を見つけると『アナザーコード:R』のメインBGMの一つ『サヨコ』がダウンロードできた。
作中には同社開発の『ウィッシュルーム 天使の記憶』に登場するアニメキャラクターや人物写真がさりげなく登場する他、ある登場人物とは実は一部繋がりがあるとインタビューで明かされている。
大まかな流れとしては、死んだと教えられていた父親と再会を果たした主人公が、二年後、美しい自然と湖が有名なキャンプ場を舞台に、湖の秘密や13年前の母親の死の謎、前作で解決したはずの事件の真実を突き止めていくというもの。
ストーリー
三歳のときに死んだと教えられていた父親と再会したアシュレイ・ミズキ・ロビンズは、しかし不機嫌だった。何故なら「これからはずっと一緒にいる」と約束を交わした父のリチャードは、JCヴァレーという研究所に勤め始めてからというものだんだん家に帰らなくなり、既に半年も顔を合わせていない状態になっていたからだ。
そんなリチャードからファミリーキャンプの誘いと二年前に贈られた物と似た形状の小型機械・DASが届いたのは、夏休みの終わりを迎えようとする八月のこと。こちらの都合を無視して一方的に送りつけられた招待状にいっそう不満を募らせるアシュレイだったが、叔母のジェシカから「貴方達には話し合いが必要だ」と説得され、雄大な自然と美しい湖が有名なジュリエット・レイクへと向かう。
しかしバスから降りた直後に自分の鞄を背後の乗客に盗まれた上、半年ぶりのリチャードとの再会もぎこちない。それでもお互いに気持ちをぶつけ合い和解したところで、アシュレイは五年前に行方不明になった父親を捜している家出少年、マシュー・クルーソーと出会う。
父親捜しに躍起になるマシューに二年前の自分を重ねたアシュレイは一日だけ彼の手伝いをすることを決めたが、湖を歩き回る内、今は亡き母親・サヨコとの13年前の記憶を次々と思い出していく。リチャード曰く、その思い出はサヨコの死の謎と、解決したはずの記憶制御装置・アナザーに隠された真実に辿り着く鍵となるらしい。
ジュリエット・レイクに眠る不穏な事件、マシューの父親の行方、そしてアシュレイとリチャード、サヨコを取り巻く謎は解決するのか――。
用語
- ジュリエット・レイク
郊外にある、雄大な自然と美しい湖が自慢の元リゾート地。
ロメオ山脈に囲まれた湖の周りにはキャンプ場とハイキングコースがあり、ゲストハウスを通してIDカードを借りれば誰でも入場が可能。ゲストハウスにはジュリエット・レイクのマスコットキャラクター、JとRのクマがあしらわれたお土産も売られている。
昔、ジュリエット・レイクをリゾート地にする計画が持ち上がり決行されていたが、五年前に起こった湖の汚染問題により断念され、同時にリゾート会社も倒産した。
湖の北側にはリチャードが勤める研究所・JCヴァレーや、そこに勤務する研究者や家族が住むコテージ群、リゾート開発会社の跡地がある。
- DAS
正式名は『DUAL ANOTHER SYSTEM』で、DASは略称。
バイオメトリクスが組み込まれており、顔認証をしたアシュレイにしか使えない。
前作で登場したDASと同じカメラや画像合成機能の他にもバージョンアップしており、こちらにも隠された機能が秘められている。ちなみに見た目はニンテンドーDSiそっくり。
- RAS
正式名は『REBOOT ANOTHER SYSTEM』で、RASは略称。
サヨコが開発した小型機械で、アシュレイ以外の人間が持っても反応しない。電子セキュリティであればどんなに厳重なものでも解除できる。こちらの見た目はWiiリモコンそっくりで、ヌンチャクの形をしたRASの拡張パーツもある。
なおヌンチャクを所持していないとストーリーが進められなくなるので、ソフトはあってもヌンチャクが手元に無い人は要注意。
- アナザー
二年前にリチャードが完成させた記憶制御装置。
元々は国家公認の記憶研究のプロジェクトチームが始めたもので、戦争体験等の辛い記憶に悩まされる患者の記憶を消去・改変する目的で開発されていた。しかし国の上層部がアナザーを悪用する兆しを見せたため、リチャードとサヨコは独断で進捗状況と理論を偽って研究を中止。その後ロビンズ家の金庫にアナザー関連の論文を隠していた。
登場人物
ロビンズ家
本作の主人公。16歳。
前作で父親のリチャードと再会を果たすが、当のリチャードが半年も自宅に帰ってこない現状に深い溝を感じている。本作ではジュリエット・レイクのファミリーキャンプ参加をきっかけに様々な謎を追いかけることになる。
同年代の女子と比較すると幾分冷めているが、基本は自分の気持ちに素直で多感な今どきの女の子。将来の夢はミュージシャン。
リチャード・ロビンズ
アシュレイの父親でサヨコの夫。43歳。
妻のサヨコの死後、たった独りで11年間も無人島のブラッド・エドワード島に籠もり、記憶制御装置・アナザーの開発を行っていた。前作でアナザーを完成させると共にアシュレイとの再会を果たすが、二年後の本作では仕事に忙殺され家をほとんど留守にしている。
アシュレイからは家族より研究の方が大切なのではと疑われるが、言葉や行動で表すのが下手なだけで娘と妻には深い愛情を抱いている。
サヨコ・ロビンズ
アシュレイの母でリチャードの妻。享年28歳。
日本人研究者で、渡米後国家公認の記憶研究プロジェクトチームに参加していたが、リチャードと出会いアシュレイを身籠もったのを機に辞職。その後アシュレイの三歳の誕生日に、アナザー目的で自宅に押し入ったビル・エドワードに銃殺された。本作では彼女が13年前に秘密裏にジュリエット・レイクを訪れた理由を探るのも目的になっている。
黒い瞳と強い意志を持った天才的な科学者で、旧姓はキタザト。
ジェシカ・ロビンズ
アシュレイの叔母でリチャードの妹。36歳。
サヨコが亡くなりリチャードが消息を絶っている間、アシュレイの親代わりとして共に暮らしていた。
アシュレイのよき理解者で、彼女をジュリエット・レイクに送り出した後も電話をかけたりと気にかけている。
クルーソー家
マシュー・クルーソー
ジュリエット・レイクで出会った家出少年。13歳。
五年前に行方不明になった父親を捜すため、手がかりを求めて無断でジュリエット・レイクの敷地内に忍び込んでいた。
考えるよりも先に動く無鉄砲な性格だが、リチャードが所有する専門書を「難しいけど面白い」と言える頭の持ち主で、将来はノーベル賞を取るほどの科学者になりたいと考えている。
家族が大好き故に、父の行方不明を皮切りに皆ばらばらになってしまった現在を悲しんでいる。
マイケル・クルーソー
マシューの父親。失踪当時33歳。
5年前にジュリエット・レイクで起こったある事件を機に行方不明になっている。家族思いで妻や子供達にとても慕われていた。
エミリー・クルーソー
マシューとケリーの母親でマイケルの妻。享年31歳。
夫と子供にたくさんの愛情を注いでいたが、マイケルが行方不明になってからは心身共に憔悴し五年前に病死した。
ケリー・クルーソー
マシューの妹。5歳。
叔父と暮らすマシューとは別に遠方で暮らしている。泣き虫で我が儘で、けれど大事な妹だという。
アルフレッド家
エリザベス・アルフレッド
JCヴァレーの所長・レックスの一人娘。16歳。
話し中のアシュレイとライアンの間に無理矢理割り込んだり、マシューを泥棒呼ばわりしたり等の出来事で二人とは常に一触即発。
我が儘で高飛車、癇癪持ちで他人を振り回してばかりいるが、その理由は四年前の両親の離婚と父親への複雑な感情を紛らわすためと言われている。
トミーとサムとはバンド仲間で、ボーカルとピアノを担当している。
レックス・アルフレッド
エリザベスの父親でJCヴァレーの所長。48歳。
リチャードとサヨコとはMJ研究所に勤めていた頃からの知り合いで、リチャードのJCヴァレー勤務を誘った張本人。
リチャードが一番信頼を置く人物で、合理的で冷徹な判断よりも人の感情や倫理観を重んじる。
ケイト・アルフレッド
エリザベスの母親でレックスの元妻。39歳。
ファッション関係の仕事に就いており、四年前に離婚してからは音信不通になっている。
ジャネット・ライス
エリザベスの従姉妹でアシュレイのクラスメイト。16歳。
夏期休暇をエリザベスと過ごすためにジュリエット・レイクを訪れる。身内に親身だが、悩みの解決のためならと強引な手段を取りがち。
プリンセス
エリザベスの元ペット。犬種はオールド・イングリッシュ・シープドッグ。
昔アルフレッド家で飼われていたが、あるきっかけで脱走してしまい野良犬になっている。エリザベスの唯一無二の親友。
グラハム家
シャーロット・グラハム
ジュリエット・レイクの住民。66歳。
ジュリエット・レイクのリゾート開発で唯一立ち退きを拒否し、現在も祖父の代から所有する土地の民家で暮らしている。
頑固で人間不信気味だが、心を許した人間には優しく接する。
オリビア・グラハム
シャーロットの娘。当時34歳。
結婚に失敗し傷心のまま実家に戻り静養していたが、五年前にギルバートと恋に落ちて駆け落ちする。
ギルバート・モス
元ジュリエット・レイクの住民。当時32歳。
写真家の仕事のためにジュリエット・レイクに移り住んでいたが、五年前にオリビアと恋に落ちて駆け落ちする。
ベンジャミン・グラハム
シャーロットの父親で妻はリリー。享年76歳。
ジュリエット・レイクの時計台と人魚の像を造った時計職人。跡継ぎのロビンに時計塔の鐘の鳴らし方を伝える。
ロビン・グラハム
シャーロットの夫でオリビアの父。享年63歳。
グラハム家の入り婿の時計職人。ベンジャミンの跡を継ぎ、オリビアに時計塔の鐘の鳴らし方を伝える。
ルーシー・グラハム
シャーロットの姪。48歳。
独りでジュリエット・レイクに住むシャーロットを心配して度々同居を持ちかけている。世話好きでとてもお喋り。
JCヴァレー関係者
ライアン・グレイ
JCヴァレーに勤務するリチャードの同僚。34歳。
かつてリチャードとサヨコが所属していたMJ研究所にも勤務しており、リチャードとサヨコとは旧知の仲。
十代の頃から研究を始めた天才科学者で、無機的で淡々とした話し方はどこか人間味が欠けているが、職員からはその頭脳を高く買われている。世話になったサヨコ、ひいては忘れ形見のアシュレイを何かと気にしている。
マイク・タイラー
JCヴァレー研究員。30歳。
JCヴァレーのセキュリティシステムの前管理者。甘いものが大好きな巨漢の男性で、ある人物と情報のやり取りをしているらしい。
ジーナ・バーンズ
JCヴァレー研究員。26歳。
リチャードの助手。真面目でしっかり者だと職員から信頼されており、現在は所内に存在する不審人物を調査している。
ソフィア・キャラハン
JCヴァレー研究員。31歳。
レックスの秘書。高圧的で冷たい話し方で人と接し、JCヴァレーに来たアシュレイを案内する。
ジャド・フィッツジェラルド
JCヴァレーの創立者。享年65歳。
MJ研究所の所長だったが諸事情により解任され、私財を投じてジュリエット・レイクに研究所を創立した。
非常に強い自信家で、才能あって自分の波長と合う者には投資を怠らないが、興味が無い人間にはとことん無関心を貫く冷酷な面を持っていた。
その他
ダン・マックスウェル
森林警備隊員。33歳。
ジュリエット・レイクを訪れたアシュレイが初めて出会った人物。
湖の自然を守るため、日々の巡回や進入禁止の立て札を作る仕事熱心な性格。
トミー・ハリソン
ジュリエット・レイクのゲストハウススタッフ。21歳。
休暇中だけゲストハウスのアルバイトをしているが、人があまり来ないため頻繁にサボりまくる斜に構えた大学生。
エリザベスとサムとはバンド仲間で、担当のギターの腕はかなりのもの。
サム・ヒルマン
エリザベスとトミーのバンド仲間で担当はドラム。18歳。
やや軽薄でお調子者な印象を抱くが、トミーのギターを惜しみなく賞賛する素直な人物。
ボブ・フォックス
レストラン『ボブズ・フードハット』店長。50歳。
サーモン・ライスバーガーを目玉に、ジュリエット・レイク産の水と食べ物を使う地産地消のメニューを出している。
トミー達にバンドの練習場所を貸したり偏屈なシャーロットを助ける親切で気のいい人間。
ジョン・スミス
ジュリエット・レイクを訪れている男。35歳。
黒いスーツにサングラスをかけた場に似つかわしくない姿で何かを探っている動きを見せる。
アシュレイとマシューと度々鉢合わせては「父親捜しは子供が首を突っ込むことではない」と警告する。