概要
通称『黒王子(ブラックプリンス)アレク』
人物
偽悪的に振る舞うが、時としてぶっきらぼうながらも情の深さを見せる性格の人物で、善人ではないが冷酷無比にもなりきれない半端な男であり、周囲からはひねくれ者という評価が多い。
経歴
聖杯探求に没頭した素人のオカルト研究家である父を持ち、その父が研究の過程で手に入れた暗号を発端とした冒険の末に、雷と幻視を司る堕天使レミエルを殺害し16歳にてカンピオーネとなった。
権能
電光石火(ブラック・ライトニング,Black Lightning)
雷と幻視を司る堕天使レミエルから簒奪した第1の権能。雷を纏った超高速移動術で、神速を行使する際には火花が走る兆候がある。応用範囲が広く、緩急の制御、分身や飛行だけでなく、他人を神速状態にすることも、軽装で紙より重いものを持たなければ、気配を断ち、音も影もなく神速となることもできる。ただし、人間体での使用は5分で脳が悲鳴を上げ、20分で強烈な時差ボケのような不快感を覚え、限界を超えて使い続けると元の速さにしばらく戻ってこれないという副作用があり、神速共通の弱点として精密な動きも難しい。
自身を電光に顕身させる事も可能で、放電しながら体当たりして相手を感電させたり、雷光弾を放って遠距離から攻撃できる。この状態では神速による肉体的負担が低減するが、カンピオーネの肉体が本来持っている強力な魔術耐性が失われてしまう欠点があり、カンピオーネや神が行う術破りなら容易く破られ、人間の術でも大がかりな備えがあれば解除される可能性がある。特に高所を飛行中に顕身を解かれると、墜落して大きなダメージを負いかねないというリスクがある。
なお『黒き雷霆』という地上を焼き払うための攻撃形態が存在し、電光のエネルギーを爆裂させることで護堂の『白馬』並みの破壊力を発揮することが可能。ただし、これを行うと半日ほど神速も電光化も使えなくなる。
神速
作中では電光並の速さで動ける能力(権能)のこと。厳密には物理的なスピードを上昇させることなく、時間そのものを歪め「移動時間を短縮する」権能。最初から最高速度で動けるタイプや徐々に加速するタイプがあり、常人では捉えることができず精々何かが動いているという程度しか感知できない。通常の人間が2次元的な移動しか出来ないのに対し、驚異的な身軽さを得ることで3次元的に動けるようになり、さらに習熟すると時間のコントロール(落下速度の減速による空中浮遊など)により4次元的な運動が可能となる。
移動能力としては非常に優秀であるが、神速状態では細かい制御がきかないため、高速での突進ならばともかく肉弾戦には向かず、速度自体が上昇しているわけではないので空気抵抗の影響も受けないが衝撃波なども発生せず、神速で運んだ相手を放り出した程度ではそれほどダメージを与えられないなど、攻撃性はそれほど高くない。そのため、攻撃に利用する場合は、武器を使う、高所から地面へ叩きつけるなどの工夫が必要となる。加えて、カンピオーネが権能として獲得した場合は、人の身には余る力であるためか心身に様々な弊害(心臓の激痛と使用後の金縛りや、強烈な時差ボケのような症状といった副作用があり、加速が急なものほど負荷が大きくなる)が生じる。
発動中はほぼ無敵となるが、相手も神速を使う、相手が神速を見切る腕利き、神速を封じる力を持つという場合には優位に立てないほか、光速に達することはできないため光による攻撃は回避しきれない場合がある。神速を捉えるには特殊な素質を持つ者や修行を修めた者が得る心眼の極意たる「観自在」の境地に至る必要があり、最小・最短距離の打ち込みを行える武術(神速を使っている側からすると、コマ送り再生のような不自然な動きで攻撃が迫ってくるように見える)などでなければまず当たらないが、裏を返せば心眼を持つ武神や人類最高峰の武術家を相手にした場合「ただ速く動くだけ」の技量ではたやすくカウンターを当ててくるため優位には立てない。しかし、神速の扱いに習熟して「遅さ」の制御まで可能となり、その極致たる「緩急自在」の域に達したならば武術の達人にとっても脅威となる。
復讐の女神(ジャッジ・オブ・フューリーズ,Judge of Furies)
ギリシア神話の復讐の三女神エリュニエス(鬼女メガイラ・復讐者ティシポネー・時を止めぬ名状しがたきアレクトー)から簒奪した第2の権能。復讐の三姉妹を召喚して「復讐のフィールド」を形成させ、その眼前で行われた攻撃や呪詛を三女神がたくわえ、アレクの指示に応じて加害者に叩き返す。反射ではなく「やられた分だけやり返す」能力なので、十分な威力を叩き返すためにはフィールド内でそれなりのダメージを受ける必要がある。復讐のフィールドは複数展開することも可能。
召喚には一定時間の瞑想と儀式が必要になるが、前もって召喚しておいて自分の元に出現させることは可能なので罠として設置しておくのが基本的な使い方。ただし、最初から女神の姿を晒す形であれば、瞬時にフィールドを形成することも可能。また、瞑想時に消費した呪力に応じて準備時間を短縮することもできるほか、アレク自身の苦痛や血を糧にして瞬時に召喚することも出来る。
さらにこの女神達は相手の技能や武器を模倣してそのまま使うことが出来る(達人の技術までは完全再現できず、ドニの剣技は7割ほどの再現率が限界だった)。女神達が反射できる威力の上限はかなり高く、肉体も頑丈で大抵の攻撃は弾いてしまえるが、上限を超えたダメージを負って殺されると権能も解ける。
大迷宮(ザ・ラビリンス,The Labyrinth)
クレタ伝説の大地と迷宮の神ミノスから簒奪した第3の権能。地底や建造物の中に巨大な迷宮を創り、相手を引きずりこむ。空や海なども対象にでき、展開した地勢に応じて迷いの森や魔の海域などに変化するが、地上に迷宮を作る場合には前もって周辺地形を把握しておく必要がある。迷宮の主たるアレクサンドルには、『最深部へ瞬間移動できる』などの特殊能力が幾つか与えられる。迷宮を霧の結界で包み、指定した敵だけを迷宮の外に排除することもできる。
アレクサンドルが不在の間は、黒い仔牛の形をした小さな顕身が迷宮の管理を行う。使用後1カ月ほどは再使用ができず、魔力の供給がなくなれば3、4カ月で消滅する。ただし、第三者からの魔力供給でも機能の維持は可能。
無貌の女王(クイーン・ザ・フェイスレス,Queen the Faceless)
半人半蛇の女神メリュジーヌから簒奪した権能。配下としたメリュジーヌ本人を使い魔として召喚する。上半身は白い鳥の翼を生やした赤毛で長髪の女性で、下半身は蛇の胴体に魚の尾びれが付いた姿をしている。戦闘ではどこからか取り出した投槍を用いる。顔を見られてはならないというルールを破ると即座に消えてしまうため白兵戦には向かないが、機動力・破壊力共に申し分なく、陸海空のあらゆる戦闘に対応でき、伸縮自在で10m以上の大きさにまで巨大化可能。女神本人であるため知能も高く、捜索・魔術・占い・誘拐などにも対応できる。また、対象の影の中に潜入させ、密かに護衛させることも可能。これらの性質から、アレクは彼女を万能のアシスタントとして重宝している。
さまよう貪欲(ウィアード・グリード,Weird Greed)
巨獣ベヘモットから簒奪した吸引と重圧の権能。直径2、30mの黒い球体を作り出し、相手を引き寄せて束縛する。ブラックホールさながらのすさまじい吸引力からは、まつろわぬ神が呪力を高めようとも簡単には脱することができず、神速を使い全力全速で駆け抜けでもしなければ拘束から逃れられない。引力を一瞬だけ消し去るなどの出力調節も可能で、これを利用して敵の体勢を崩すこともできる。球体の移動速度は極めて遅いため、《復讐の女神》と同じく罠として設置しておくのが基本。吸引力を落とすことで球体のサイズを小さくすることもできる。