概要
メタトロン技術を使用した最初のオービタルフレーム(機密のため名目は「新型LEV」となっている)であり、バフラム軍の次世代主力機開発用の試作機。
開発責任者はレイチェル・スチュワート・リンクス博士。当時のバフラム軍LEV隊のエース・ラダム・レヴァンスとヴァイオラ・ギュネーがテストパイロットに選ばれ、ノクティス基地において地球側の観測衛星に察知されない限られた時間の中で運用テストが行われた。
外見と性能
外見は、純白のボディに猛禽類を彷彿させる頭部を持っている。結晶状の翼型の推進器を装備しベクタートラップによる武装の格納・展開が可能となっている。
非常に出力が高いため操縦こそ困難だが、代わりに当時のLEVの10倍以上のパフォーマンスからなる攻撃力、防御力、機動力を誇る。その様はラダム曰く『魔法の力』で、火星の地表から宇宙空間まで瞬間的に移動したり、凝縮したエネルギーを掌から発射する攻撃(バーストショット)の使用が可能になるなど、運用テストが進む毎に開発者のレイチェルすら想定していない機能が解放されていった。
装備
- パドルブレード
右腕に装備された格闘戦用のエネルギーソード。
- シールド
左腕に装備されたバックラー型の空間障壁という設定のエネルギーシールド発生装置。(AX2001/7,10/特集、特別号)
- V・Gカノン
右上腕部に装備している火器。連射性の高いエネルギー弾。
- ネイルガン
両手の指(爪)から連続発射されるエネルギー弾。
- ハンドランチャー×2
ベクタートラップ内に収納された手持ちの高出力ビーム砲。
- ホーミングレーザー
両掌から敵を自動追尾するレーザー光線を無数に照射する。
- バーストショット
掌にエネルギーを凝縮して発射される空間破壊の光球(AX2001/7,10/特集、特別号)。着弾地点で大爆発を起こし、宇宙要塞の隔壁をも破壊する事が可能。メタトロンの物理法則を超えた力の発現であり先述の通り、開発者のレイチェルが想定すらしていなかった機能。
オービタルフレームの危険性
更に研究を進めていくうちに、ラダムの精神波長とイドロのメタトロンの波長が一致していることが判明。レイチェルによるとその様は『生物の記憶は頭脳だけではなく、肉体にも宿る』というものに似ているらしく、同じくテストパイロットだったヴァイオラがイドロに乗り込んだ際には、ヴァイオラを拒むイドロの意志とラダムの脳波によって機能停止する事態を起こしている。
ラダムはイドロに乗り続けるうちにメタトロンの力に呑まれていき、捕まえた蛇を意味もなく殺害したり、自分を火星人(マーシャン)と侮蔑してきた地球出身の軍人に対し「おら、どうした?ヘラクレス!!(地球人の方が生まれつき頑強な肉体を持つ事への皮肉)」と叫びながら過剰な報復に及んだり、イドロに搭乗した際には哄笑を上げながら戦闘を行うなど、凶暴な性格になっていった。
また、ラダムの凶暴化はイドロにも相互に影響を及ぼしており、メタトロンの力がランナーを狂気に陥らせ、ランナーの狂気がメタトロンの物理法則を超える更に力を引き出すという負のスパイラルを起こしている事が発覚する。
更にはそれまで一切存在していなかったカリストの表層からなんの前触れもなくメタトロン鉱石が出現するという現実が改変されたかのような事まで起こる。
こうしたあまりにも異常な状況にレイチェルは危機感を抱き、オービタルフレームの開発中断を訴えたものの、運用テストの圧倒的な成果を見たバフラム軍上層部はそれを聞き入れず、事態は最悪の方向へ向かって行くのだった……
愛する者のために(作中のネタバレ注意)
ラダムはメタトロンに蝕まれていく自分自身に不安を抱き、恋人でもある研究員ドロレス・ヘイズの言葉により「イドロのテストパイロットを辞めて軍を引退する」ことを決意した。しかし、それと時を同じくしてノクティス基地が連合宇宙軍による襲撃を受ける。襲撃部隊がドロレスとレイチェルを誘拐した事を知ったラダムは、救出のためバフラム軍の命令を無視してイドロを起動。連合宇宙軍の拠点ダイモス基地へ急行する。
イドロは敵部隊を突破してダイモス基地内に突入するも、ラダムの眼前でドロレスが敵の凶弾を浴びてしまう。コックピット内に収容するも彼女は程なくして絶命。嘆き悲しむラダムだが、そのときドロレスの遺体に触れたイドロのコンソールに光が走った。まるで『ドロレスの記憶がイドロの機体に転写された』かのように。
愛する者を喪い狂気に陥ったラダムは、メタトロンが見せるドロレスの幻影に導かれるまま暴走を始める。ドロレスと結婚式を挙げる幻覚を見続ける彼にはヴァイオラの言葉も届かず、連合宇宙軍とオービタルフレームの証拠隠滅を企むバフラム両軍のLEV隊を返り討ちにし、背部の推進器を破壊されながらもバースト攻撃による反撃を行おうとしたが、最後は集中砲火を浴びて大爆発。四肢をもぎ取られて機能を停止した。
結局、この事件は「新型LEVの暴走事故」(「オービタルフレーム」はバフラム軍の重要機密であったため、あくまで「LEV」として発表された)という事にされ、『ダイモス事件』として世間に報道された。
また、メタトロンが人体にもたらす影響を考慮してオービタルフレームの量産機は無人型OFラプターが主軸となり、有人型OFの開発は後発となった。
更に時が経ったAD.2173。ナフス・プレミンジャーという男の手によりイドロの残骸は新たなOFとして生まれ変わるのであった……