概要
イワンのばかあるいは馬鹿者イワンとは、ロシアの民話に登場するキャラクターであり、純朴で愚直な男性であり、端から見て損をするようなこともしてしまうが、結果として幸運を手にする人物である。
日本ではレフ・トルストイの作品が有名。
トルストイの「イワンのばか」
1886年に発表された作品であり、原題は『イワンのばかとその二人の兄、軍人のセミョーンとたいこ腹のタラスと、口のきけない妹マラーニャと大悪魔と三匹の小悪魔の話』
ある国にいる4人の兄弟(軍人のセミョーン、たいこ腹のタラース、ばかのイワン、妹で啞のマルタ)の話であり、兄であるセミョーンやタラースは権力や金銭に目がくらみ、悪魔に唆されて何もかもを失ってしまうのに対し、ばかのイワンはそういったものに興味を示さず実直に働いて満ち足りた生活を送っていく。
紆余曲折ありイワンは王女と結婚して王様になるが、それでも人民の先頭に立って以前と同じく畑仕事をしていた。
そこへ悪魔がやってきて王国で金貨をばらまくのだが、イワンの王国の民はばかなので、衣食住が足りている以上誰も金貨を欲しがらず、それどころか悪魔は家を建てようにも国民が金貨を欲しがらないので建ててもらえず、食料も金貨では買えないので残り物を分けてもらうしかなく、次第に困窮していく。
最後に悪魔は高い櫓の上で「手で働くより、頭を使って働けば楽をして儲けることができる」と演説するのだが、イワンも国民もばかなので、頭でどうやって田畑を耕すのか理解ができなかった。悪魔はとうとう力尽きて、頭でとんとんと梯子を一段一段たたきながら地上に落ちた。
ばかのイワンはそれを見て「頭で働くとは、このことか」と悪魔の所にやってくるが、ただ地面が裂けて、悪魔は穴に吸い込まれてしまっただけだった。
余談
現代社会への風刺としてしばしば引用される作品の一つ。
先進国においては第三次産業、とりわけ金融や証券取引など「金が金を呼ぶ仕事」が人気であり巨額の金が動いているが、実体として何かを生み出すわけではなく、家が建つわけでも食料を生み出しているわけでもない。またお金というのはあくまでも「信用」によって取引に使われる道具であり、それそのものが何かしらの価値を絶対的に約束されているものではない。
そういった産業に携わる人間が減り、やがて維持ができなくなったら。あるいは、金に対する信用がなくなったらどうなるか……ばかのイワンは幸せになったが、二人の兄は破滅してしまった。
筋肉少女帯の楽曲
サンボの裏技「三年殺し」を掛けられたイワンが買い集めた子供たちとシベリアの地を彷徨うも「この世の裏」を教えたばかりに子供たちに自殺され、亡骸を埋葬するストーリーになっている。
橘高のギターが冴える一曲で、のちに参加したX.Y.Z.→Aでも演奏された。