概要
狩猟の女神アルテミスが、アルカディア地方のエリュマントス山に放った巨大な猪。
エリュマントス山は、アルテミスが狩猟を楽しんだ所縁ある地であるのだが、住民が自身の信仰を怠ったという名目で、時には腹立たしいことに対する鬱憤払いとしてこの地に狂暴な猛獣や怪物を送り込んでは憂さ晴らしをした。エリュマントスの猪は、その最たる魔物に当たる(ギリシャ神話にはよくある話)。
この大猪は、都市を破壊し、農村を踏み荒らすだけでなく、生粋の人喰いであり、エリュマントス付近の住民をほとほと困らせた。
アルテミスはこれ以外にも、カリュドンの地において、自身への捧げ物を蔑ろにされたとして巨大猪を送り込んだ事もある。この魔猪を退治した英雄こそ、アルテミスの信者にして麗しの女傑、アタランテである。
第四の難行
英雄ヘラクレスは、後に「十二の功業」と呼ばれる難題の四つ目で、この猪を生け捕りを命じられた。
ヘラクレスは雪が降りしきる雪原の上で罠や自慢の怪力を生かし、大声で威嚇しながら追いかけ回し、猪が疲れ果てた所を捕縛した。
この前後のいずれかで、ケンタウロスの一族と争ってしまい、師に当たる賢者ケイローンを死に至らしめてしまう。詳しくはケイローンの項目にて。
最後
ヘラクレスは捕らえた猪をミケーネ王エウリュステウスに見せる為に連れていったのだが、肝心のエウリュステウスは猪を恐れるあまり、大きな青銅の瓶に隠れてしまった。
その後、猪はエウリュステウスによって、生け贄としてアルテミスに捧げられたとも、生かしたままアルテミスに返却されたとも伝えられ、幾つかの諸説が伝えられている。