概要
女神アルテミスの聖獣として伝えられる雌鹿。
黄金の角と青銅の蹄を併せ持ち、弓矢よりも早く駆けることが出来たという。
本来この雌鹿は、計五頭存在し、内四頭はアルテミス自らが捕まえ戦車に繋いだ。しかし最後の一頭のみ、他の四頭よりも抜きん出て素早かった。その素早さは、狩猟の女神であるアルテミスですら捕らえるのを断念したほど。
第三の難行
この雌鹿は、ヘラクレスの十二の功業、その三番目として立ちはだかることとなった。というのも、雌鹿のあまりの素早さに、ヘラクレスは丸一年掛けて徒歩でギリシャ中を巡ることになり、ようやくこの雌鹿が水場にいるところを捕らえることに成功した。
その後
その帰り道、ヘラクレスは女神アルテミスとその兄アポロンに遭遇する事となった。
実は難行を出したエウリュステウスは、ヘラクレスがこの雌鹿を捕縛する事は不可能だと思っており、仮に捕らえることが出来たとしても、神の聖獣を傷つけたとして神々の怒りを受けさせようという思惑があった。
思惑は当たり、雌鹿が殺されたと思い込んだアポロンとアルテミスは怒り狂ったが、ヘラクレスが罪の代償として難行を行っていること、雌鹿を傷つけずに捕縛したことを正直に話すと、二神の怒りは収まった。
結果的にエウリュステウスの思惑は失敗に終わり(一説には雌鹿を返さなければエウリュステウスを呪うと逆に神から脅されたとも)、捕らえられた最後の雌鹿も、アルテミスへと捧げられ、五頭揃ってアルテミスの戦車に繋がれたという。