概要
MLBナショナルリーグ西地区に所属するコロラド・ロッキーズのホームスタジアムで所在地はコロラド州デンバー。
1995年に完成。球場名は同じくコロラド州に本社を置いているビール会社のクアーズにちなむ。
ナショナルリーグでは1962年のロサンゼルス・ドジャースの本拠地ドジャー・スタジアム開場以来33年ぶりとなる野球専用球場。典型的な新古典様式の球場で、外観は赤レンガと鉄骨を組み合わせた重厚でクラシカルな雰囲気が特徴。赤レンガは球場周辺の古倉庫に調和させたもので、また鉄骨はかつてあった鉄道駅に由来している。
建設中に恐竜の化石が出たことに由来して、これをモチーフにチームマスコットのディンガーがデザインされた。なお、化石が産出したことに因み球場名をジュラシック・パークにしようという案が出たなどと言う、ジョークとしか思えない話もあるらしいが真偽の程は定かでは無い。
センターバックスクリーンから、その一塁側に双方設置されているブルペンにかけてコロラドの自然を模した噴水付きの庭園が設置されており、ロッキーズの選手にホームランが出るとこの噴水が高く吹き上がる演出が行われる。また、隣接するアウェー用ブルペンからは歩いて立ち入れるようになっており、2015年9月19日にトム・マーフィーのMLB初ホームランがここに飛び込んでしまった際に、対戦相手のサンディエゴ・パドレスのブルペンスタッフがボールの捜索のために立ち入る珍事が発生している
。
後述するように所在地の標高が高く寒さの厳しい地域にあるため、芝を守るためにグラウンドに温水を流すパイプを埋設している。
1998年と2021年にはオールスター戦が同球場にて開催された。(因みに2021年は、当初アトランタ・ブレーブスの本拠地トゥルーイスト・パークでの開催だったのが、選挙法改正を巡り抗議が発生したことにより会場が変更された。)
高山都市ならではの珍記録
本拠地であるデンバー市が標高約1600m(約1マイル)もある事からマイル・ハイ・シティとも呼ばれている。このためこの球場の愛称もマイル・ハイとも言われている。なお、ロッキーズが1993年から1995年4月26日までに使用していた本拠地球場の名前もマイル・ハイ・スタジアム(本来はNFLデンバー・ブロンコスのホームだった)である。
標高の高さは気圧と空気抵抗の少なさに直結し、そのため打球が伸びやすい。また球場自体もかなり広いが、長打を防ごうと外野手が後ろに守れば前に落ちるポテンヒットも増加するといった具合で、この事から打者有利な球場で長打が出やすい。フライを打たせてアウトを取る割合が多い投手にとっては鬼門である他、本拠地としているロッキーズのチーム編成にも影響が大きく、長年投壊に悩まされている。
この事から乱打戦になりやすく、球場では1-0のスコアの試合が長らく出てこなかったが2005年7月9日のサンディエゴ・パドレス戦でようやくそのスコアが発生。他球場では珍しくないこのスコアが出現するまでレギュラーシーズンで847試合を要しており、これは大リーグ史上最長の記録である。その後2021年まで10回起きている。
2005年7月9日 ロッキーズ 1-0 パドレス
2006年4月16日 ロッキーズ 0-1 フィリーズ
2006年7月25日 ロッキーズ 0-1 カージナルス
2006年8月1日 ロッキーズ 0-1 ブルワーズ
2008年6月11日 ロッキーズ 1-0 ジャイアンツ
2008年9月14日 ロッキーズ 1-0 ドジャース(初めて0-0で延長戦となり10回にサヨナラ勝ち)
2008年9月17日 ロッキーズ 1-0 パドレス
2009年7月6日 ロッキーズ 1-0 ナショナルズ
2010年6月12日 ロッキーズ 1-0 トロント・ブルージェイズ
2018年7月5日 ロッキーズ 1-0 ジャイアンツ
マイル・ハイで唯一のノーヒット・ノーラン
超が付くほどの打者天国というべき当球場で、2023年時点で唯一ノーヒット・ノーランを達成した人物がいる。
その人物こそ野茂英雄である。
野茂がドジャース時代の1996年9月17日にノーヒットノーランを達成しており、その試合のスコアは
ドジャース9-0ロッキーズ
▽勝 野茂16勝10敗
▽敗 スウィフト1勝1敗
▽本塁打 ウォーラック4号(ド)
となっている。
この快挙について当時のドジャース監督トミー・ラソーダやアメリカのメディアは「ワールドシリーズでの完全試合より価値がある」としている(因みに1956年にドン・ラーセンがブルックリン・ドジャース戦にて唯一のワールドシリーズでの完全試合を達成している。なお、その試合をみていた観客の一人が後にヤンキースとドジャースの両チームを指揮することになるジョー・トーリ。)
なお、この日のロッキーズの野手のスタメンは
1. 二 ヤング .324 8本74点53盗塁
2. 中 マクラッケン .290 3本40打点17盗塁
3. 左 バークス .344 40本128点32盗塁
4. 右 ビシェット .313 31本141点31盗塁
5. 一 ガララーガ .304 47本150点18盗塁
6. 三 カスティーヤ .304 40本113点7盗塁
7. 捕 デッカー 成績不明
8. 遊 ペレス .156 0本3打点2盗塁
となっており、96年シーズンで野手平均打率が.310、3割30本100打点をマークした4人に加え、このシーズンでは今一つな成績だがロッキーズ時代にほとんどの年で3割以上の打率、20本以上ホームラン打つ年は必ず100打点を記録しているウォーカーという超強力打線に加え、打者有利な当球場、さらに雨天で2時間も試合が遅れるといった状況の中で達成したノーヒットノーランは歴史的なノーヒットノーランの一つと数えられている。(成績は1996年のシーズン成績)
これを機に2002年から球場の方でもボールに加湿処理を施して打球が飛び過ぎないようにしているが、野茂のノーヒットノーランはそのヒントになったとされている。
その他
- 1999年5月11日のロッキーズ対メッツ戦は、両チームとも先発投手がボビー・ジョーンズと云う試合だった。この試合は8対5でロッキーズが勝ち、ロッキーズのボビー・ジョーンズが勝利投手に、メッツのボビー・ジョーンズが敗戦投手になっている。なお、ロッキーズのボビー・ジョーンズは2000年にメッツに移籍し1年だけだが同姓同名の選手が在籍したことになる。