概要
脚本はマーシャル・ブリックマンとリック・エリス。
「マンマ・ミーア!」等に代表されるジュークボックスミュージカル(既存の楽曲を使用したミュージカル)の一つ。
1960年代に活躍したグループフォー・シーズンズの結成と一部のオリジナルメンバーの脱退までを、四季に準えながら描く(要は羅生門形式)ドキュメンタリー形式の作品。
本作ではフォー・シーズンズの楽曲を利用している関係上、作詞にボブ・クルー、作曲にボブ・ゴーディオがスタッフとして列挙されている。
ブロードウェイでは2005年11月6日から2017年1月15日まで上演されていた人気作品。
2006年トニー賞では内3部門を受賞している。
ジュークボックスミュージカルとしては「マンマ・ミーア!」に次ぐロングランヒットを誇る。
2014年にクリント・イーストウッドにより映画化された。
タイトルはオリジナルメンバーの出身地であるニュージャージー州に因む。「ジャージーっ子」みたいなイメージか。
フォー・シーズンズ
ビーチボーイズやライチャスブラザーズに並ぶ人気ブルーアイドソウル(黒人音楽を白人が取り入れアレンジした楽曲のこと)グループ。
当時別バンドに在籍していたゴーディエを除く3人が結成していた「ヴァリエーションズ」を母体としている。
何度かバンド名を変えており、現在のグループ名はオーディションに落ちたボウリング場に由来する。
結成からしばらくは鳴かず飛ばずの状態が続いたが、1961年に「シェリー」をリリースしてからは一変、ミリオンセラーを記録し、ビルボードチャート3曲連続1位を初めて記録したロックバンドとなった。
ところがビートルズのヒットやロックの流行により人気が低迷し、オリジナルメンバー2名が脱退、何度もメンバーの入れ替えを行っている。
同時期にヴァリはソロアーティストとしても活動を並行するようになる。
現在はヴァリとゴーディエのみがオリジナルメンバーとして在籍しているが、ゴーディエは作曲活動に専念するようになったため、表舞台に立ち続けているのはヴァリのみである。
オリジナルメンバーが集結するのは、1990年のロックの殿堂まで待つことになる。
尚、当時は一切のインタビューを受けなかったため、ミステリアスな所謂清純派グループとして名を馳せていた。
しかしこれはイメージアップ戦略の一つであり、実際は前科持ちや家庭内不和等のトラブルを抱えているメンバーがいたという(ブリックマンとエリスは本気で驚いたとか)。
登場人物
- トミー・デヴィート: 「春」担当。バンド結成から「フォー・シーズンズ」までを語る。パートはリードギター。声質はバリトン。
ニュージャージー出身のイタリア系アメリカ人。貧しい家庭の生まれで、巷の音楽好きの不良たちを集めてバンドを結成する。しかし多忙なあまり精魂尽き果てたのか、1970年に脱退。以降はラスベガスで清掃業を生業にしていた。俳優のジョー・ペシとは公私にわたって交流があり、「小柄(158cm)だが懐の大きい奴」とペシを評していた。2020年9月20日、COVID-19の後遺症により96歳で逝去。
- ボブ・ゴーディオ: 「夏」担当。「フォー・シーズンズ」の最盛期を語る。パートはキーボード。声質はテノール。ニューヨーク出身のイタリア系アメリカ人だが、後にニュージャージーに引っ越す。高校生の時に「ロイヤル・ティーンズ」を結成した。「タモリ倶楽部」のオープニングテーマでお馴染みの「Shorts Shorts」をリリースしたバンドといえばわかるだろうか。1958年にヴァリと出会い、グループに加入。ヴァリと並んでグループの中心人物となる。作曲家としての能力は高く、数々のヒットナンバーを生み出している。妻と合作したこともある。1972年に作曲およびプロデュース業に専念するようになり、表舞台に立つことはほとんどなくなった。本作ではある一点にのみ関わっており...。
- ニック・マッシ: 「秋」担当。「フォー・シーズンズ」の低迷を語る。パートはベース。声質はバス。ニュージャージー出身のイタリア系アメリカ人。1958年にグループに加入したが、ボーカリストとしてはそれ以前から活動していた。何度か加入と脱退を繰り返していたが、1965年9月に完全に脱退した。2000年12月24日、ニュージャージーの自宅で癌により73歳で逝去。上演前に逝去した唯一のメンバーとなってしまった。「秋」パートは3人のオリジナルメンバーの伝聞等から推測して描かれた者であり、彼の本心は誰にもわからない。
- フランキー・ヴァリ: 「冬」担当。事実上ヴァリのソロプロジェクトになってしまった「フォー・シーズンズ」を語る。パートはリードボーカル。芸名は本名の「フランチェスコ」と歌手の「テキサス・ジーン・ヴァリ」に因む。ニュージャージー出身のイタリア系アメリカ人。実家は床屋であり、本人も理容師免許を持っている。グループの中心人物であり、1966年からはソロでも活動している。代表曲は「君の瞳に恋してる」で、世界中のアーティストにカバーされるヒットナンバーとなった。80歳を超えても尚精力的に活動しており、ミュージカル「グリース」の主題歌を歌っている。
日本での展開
製作は東宝。2016年に初演。
2018年と2022年に再上演されている。尚、2020年はCOVID-19の影響で上演中止になったが、会場である帝国劇場でコンサートが開催された。
2018年にも東急シアターオーブでコンサートが開催されたが、実はコンサートを開催した初のプロダクションである。
また、読売演劇大賞最優秀賞を受賞した初のミュージカル作品である。
ヴァリを演じた中川晃教は最優秀男優賞を、演出家の藤田は優秀演出家賞を受賞した。
両者は2016年菊田一夫演劇賞を受賞している。
余談
本作の内容は概ね事実だが、一部脚色があるので鵜呑みにしないように。
生前のデヴィートも突っ込みを入れており、娘に「パパが酷い描き方されてる...。」と泣かれてしまったそうな(本人は「あのミュージカルのお蔭で収入が増えたんだぞ」と深刻にとらえていたわけではない)。
2020年に逝去したデヴィートを含めたオリジナルメンバーは製作にほとんど関わっていないが、ゴーディオのみヴァリ役の選抜に関わっている。
しかもゴーディオの自宅でオーディションをするという圧迫っぷり。
それだけフォー・シーズンズにとって、本作にとってヴァリは重要な存在なのである。
もし興味があったら確認してみよう。
関連イラスト
別名・表記ゆれ
ジャージー・ボーイズ : 日本版の正式名称はこちら。