オペラ座の怪人
おぺらざのかいじん
―――――それは、美しくも哀しい愛の物語。―――――
オペラ座の怪人(Le Fantôme de l'Opéra / The Phantom of the Opera)とは、フランスの小説家、ガストン・ルルー(Gaston Leroux)の書いた小説、およびそれを原作としたミュージカル作品である。
本項目では、アンドルー・ロイド・ウェバー版について記述している。
1986年、イギリス・ロンドンのウエストエンドで初演。1988年からはブロードウェイでも上演され、大ヒットとなった。
日本公演は1988年に劇団四季によって上演が始まり、現在でもロングラン上演中。2004年には映画版が製作され、2010年12月17日には劇団四季キャストの吹き替えによる日本語吹き替え版が金曜ロードショーの特別版として放送された。
この作品を語るうえで欠かせないのが、アンドルー・ロイド・ウェバーによる豪華絢爛かつ流麗で、時に激しく時に切なく響く音楽と、客席の頭上に輝く巨大なシャンデリアをはじめとする舞台装置である。特に、第1幕のラストで怪人がシャンデリアを落とす場面は圧巻のひと言。
1905年、パリ・オペラ座の舞台上。オペラハウスの所有物がオークションにかけられている。
車椅子の老人はそのなかのひとつ、オルゴールに手を止める―――。
さかのぼること半世紀、オペラ座の舞台上では、舞台「ハンニバル」のリハーサル中。
しかし華麗な舞台の外では、”オペラ座の怪人”の仕業とされる謎めいた事件が続発していた。
策を講じない支配人に腹を立てたプリマドンナのカルロッタは、オペラに出演しないと言い出す。
急遽代役に選ばれたのは、コーラスガールのクリスティーヌ・ダーエ。
亡き父の贈り物”音楽の天使”にレッスンを受けたという素晴らしい歌声を披露し、舞台は大成功を収める。
そんなクリスティーヌをひときわ熱いまなざしで見つめる青年がいた。
ラウル・シャニュイ子爵は、美しく成長した幼なじみのクリスティーヌの楽屋を訪れる。
その夜、クリスティーヌは忽然と姿を消した。
クリスティーヌの目の前に”音楽の天使”が現れ、オペラ座の地下に広がる彼の隠れ家へと連れ去ったのだった。
”音楽の天使”を名乗って夜ごと彼女に歌を教えていたのは、愛するクリスティーヌをプリマドンナに仕立て上げ、自分の音楽を歌わせたいと願う”オペラ座の怪人”だったのだ―――。
(劇団四季公式サイトより引用)
ここでは、メインの3人を紹介する。
怪人(ファントム)
主人公。顔の右半分を覆う白い仮面がトレードマーク。クリスティーヌに恋をする。しかし、彼女がラウルの求愛に応える姿を見て嫉妬に狂い、恐ろしい事件を次々と起こしていく……。
音域はテノールだが、2004年映画版のジェラルド・バトラー等、バリトンの役者が演じることもある。
主な役者はマイケル・クロフォード(初演キャスト)、ラミン・カリムルー(25周年記念公演)等。日本版(劇団四季版)では市村正親や山口祐一郎等が挙げられる。(山口祐一郎は「オペラ座の怪人」を含む世界三大ミュージカルすべてに出演経験のある世界でも唯一の役者である)
原作においては、「怪人」と呼ばれるものの、「ファントム」の名では呼ばれず、代わりに彼の本名で呼ばれる。
ある意味で、原作と大幅に設定が異なる人物である。
クリスティーヌ・ダーエ
この作品のヒロイン。”音楽の天使”を名乗った怪人から歌のレッスンを受け、頭角を現していく。父はバイオリニストのグスタフ・ダーエ。
音域はソプラノ。
主な役者としてはサラ・ブライトマン(初演キャスト)、シエラ・ボーゲス(25周年記念公演)等。
- OVERTURE - 「ダーン ダダダダダーン」というイントロと、パイプオルガンの音色で有名。TVのBGMに使用されることもあるので、聞き覚えのある方も多いだろう。
- THINK OF ME - クリスティーヌが一躍有名になる曲。2004年映画版では画家ヴィンターハルターの「オーストリア皇后エリーザベトの肖像」と同じ服装で歌う。
- ANGEL OF MUSIC - クリスティーヌとメグ・ジリーのデュエット。
- THE PHANTOM OF THE OPERA - クリスティーヌとファントムのデュエット。序奏はOVERTUREとほぼ同じ。数ある劇中曲のなかでも特に知名度が高い表題曲。
※1986年、ミュージカルの初演に向けてミュージックビデオが制作された。クリスティーヌ役にサラ・ブライトマン、ファントム役にスティーヴ・ハーレイが起用されたが、ハーレイ氏が舞台での経験が少ない等の理由から、2万ポンドの賠償と共にマイケル・クロフォードに交替させられた。
- MUSIC OF THE NIGHT - ファントムのソロ。クリスティーヌに囁きかけるように歌うのが特徴。ちなみに、通常演出版と2004年映画版ではこの曲で、クリスティーヌがファントムに自分の等身大フィギアを見せつけられて気絶するシーンがある。
アンドルー・ロイド・ウェバー版「オペラ座の怪人」を映像化した例は2014年8月現在、2回である。
原作小説からの映画化は過去に多数行われており、作品によってアレンジがかなり異なる。
2004年映画版
「オペラ座の怪人」のなかで最も有名な作品と言っても過言ではない。(ガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」を原作とする映画は過去に何本も制作されている)
元の舞台版自体が多額の製作費をかけることで有名だが、こちらも多額の制作資金をつぎ込み豪華絢爛な映画に仕上がっている。
振り付けや衣装、演出等はかなり舞台版から変更されている。
前述の通り、クリスティーヌは「THINK OF ME」で画家ヴィンターハルターの「オーストリア皇后エリーザベトの肖像」と同じ服装で歌うが、この衣装はドレスから宝石に至るまでスワロフスキー製である。(あくまでヴィンターハルターの肖像画を模した衣装で、ミュージカル「エリザベート」の衣装を模したわけではないと思われる)
また物語で重要な役割を果たすシャンデリアもスワロフスキー製。(落下するシーンで使用されたものはガラス製)
【主要キャスト】
ファントム:ジェラルド・バトラー
クリスティーヌ:エミー・ロッサム
ラウル・シャニュイ子爵:パトリック・ウィルソン
25周年記念公演
「オペラ座の怪人」の公演25周年を記念して上演された公演を映像化したもの。
こちらは純粋な舞台版の映像化作品である(演出や衣装は各地で上演される舞台版に準拠している)。
世界中から最高のキャストを集結し、非常に完成度の高いものになっている(実際主要キャストを務めた3人はミュージカル・スターと言っても差支えのないほどの経歴を持っている)。
「映画版は見たことがあるが、舞台版は見たことがない」という方には是非お勧めしたい。
今作でファントム役を務めたカナダ人俳優のラミン・カリムルーは、今回の演技で非常に高い評価を得た。そのパワフルな歌声と繊細な演技は、2004年映画版のジェラルド・バトラーとはまた違った魅力を持っている。
【主要キャスト】
ファントム:ラミン・カリムルー
クリスティーヌ・ダーエ:シエラ・ボーゲス
ラウル・シャニュイ子爵:ハドリー・フレイザー
続編
アンドルー・ロイド・ウェバー版の「オペラ座の怪人」には「Love Never Dies」というタイトルの続編が製作されている。
こちらは「オペラ座の怪人」の本編から10年後を描いており、オーストラリア・メルボルンでの公演がDVD化されている。
ただし、満を持して「オペラ座ファンです!」という方や、「自分の中に確固たるファントム像がある」という方、さらに「ラウルの待遇の改善を強く望む」という方はネット等で評価を吟味してから視聴することを強くお勧めする。
原案はフレデリック・フォーサイス作「マンハッタンの怪人」(この時点で「あっ……」とお察しできる方はかなりのオペラ座通でしょう)。
DVDに収録されているのはロンドン・オリジナルの演出ではなく新演出版のオーストラリア・メルボルン公演の舞台だが、アンドリュー・ロイド・ウェバーの流麗な音楽と豪華な舞台セット、絶妙なカメラワークが相まって非常に見ごたえのある映像になっている。
クリスティーヌ・ダーエ役
クリスティーヌ・ダーエという役は、元々当時アンドルー・ロイド・ウェバーの妻だったサラ・ブライトマンのために作られた役だった。そのため、音域などもサラ・ブライトマンに合わせたものになっている。サラ・ブライトマンはクリスティーヌ・ダーエ役で一躍スターになったが、1990年にアンドルー・ロイド・ウェバーと離婚。
25周年記念ではカーテンコールに初演キャストとして登場し、コルム・ウィルキンソン、アンソニー・ワーロウ、ジョン・オーウェン=ジョーンズ、ピーター・ジョバック、ラミン・カリムルーら歴代を代表するファントム役と「THE PHANTOM OF THE OPERA」を披露した。
ケサランパサランのペサラン挫:本作を名前の由来とする日本の特撮怪人。
金田一少年の事件簿:原作第1話の事件であり、以降もオペラ座の怪人に関する事件が何度か描かれている。
ファントム・オブ・ジ・オペラ(Fate):「Fate/Grand Order」に登場する英霊。詳しくは該当記事を参照。
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