概要
歌劇(オペラ)とは、演劇と音楽によって構成され、それが歌手による歌唱で進められる物を言う。
詳細
この作品は、舞台上で衣装を着けた出演者が演技を行う点では、演劇と共通している。
しかしながらこの作品においてはその大半を歌唱による演出で進行する事、そしてその伴奏は交響楽団規模によるものである事が異なる。
この作品においては歴史によりその作品の成り立ちがかなり異なる。
また、作曲家により異なる事もあり、さらに西洋諸国の好みにより作品の流れが異なる。
歴史
始まりはギリシャ芸術
この舞台芸術はルネサンスの終わりに近い16世紀末、古代ギリシャの演劇を再興したいという情熱により、試行錯誤により生まれたものである。
これは当時考えられていたギリシャ悲劇」を元に、「歌うようなせりふを用いる劇」というものが考案された(しかし、実際のギリシャ悲劇は「仮面をかぶった役者が演じ、合唱隊が歌唱する」という、まったくの別物であった)。
現在、この舞台芸術の最古の作品は「オルフェ」であり、最古の作品を作った作者の作品としては17世紀以降に作られた「エウリディーチェ」という作品が残存している。
これらの作品が王侯貴族や上流階級に受けたため、この舞台芸術は引き続き作品が作られた。
作品の二つの流れ
しかし、この作品は当時としても大掛かりであり、その幕間には相当の時間が空く事になる。
そこで、その時間の間悲劇的な作品ではなく、喜劇的な作品を演じる事になった。
ところが、それが頭がよくない上流階級に受けたため、その劇が発展した形のものが単独で演じられる事になった。
これを正式な歌劇(オペラ・セリア)と対比させオペラ・ブッファと呼ぶようになった。
ちなみに、「セリア」とは英語で言うところの『serious』にあたり、「ブッファ」は英語でいうところの『funny』にあたる。
本来の流れに
そして時代は流れ、バロック時代のこの舞台芸術(特にイタリア)はカストラートなどの超絶技巧を披露するための場所となってしまい、まともな筋の演劇を期待するものではなくなってしまった。
そこでクリストフ・ヴィリバルト・グルックなる人物が「あくまでも芝居が主で歌手が従である」形式のものを提唱し、元に立ち返ったとされる。
各国の流れ
少し話は戻るが、このあたりでヨーロッパ各国のこの舞台芸術の発展を解説する。
フランス
フランスにおいてはリュリ(同性愛者だったり、指揮棒を足に刺した事が原因で死んだりした事で有名)により、フランスのオペラが形作られた。
また、18世紀中ごろにはオペラ・ブッファの影響を受け、レチタティーヴォ(朗唱とも呼ばれ、旋律的なふるまいを必要とせず、それを排除した事例もあるもの)の代わりに台詞を持ったオペラ・コミークが発生した。
また、ほかの国とは異なり、原点回帰の問題に関しても深い関心を持っていた。
18世紀後半になると喜劇的な要素よりも英雄的な要素の強いものが好まれ、主な題材は「英雄」「恐怖」「救出」となるようになる(これはフランス革命の影響もあるとされる)。
また、19世紀になると5幕(五つの場面がある)のバレエを含むグランド・オペラという形式になった。
ただし、オペラ・コミークもまだ生き残っていた。
この舞台芸術が喜劇的でなくなってしまったため、大衆的な通俗性を持ったオペレッタ(軽歌劇、喜歌劇)が発生し、後にこれはウィーンにも広まった。
フランスの場合、この舞台芸術よりもバレエに力を入れているふしがみれる。
ドイツ
ドイツにおいては17世紀後半にドイツ語のオペラが作成されたといわれているが、それは現在では失われてしまっている。
17世紀後半になると、専門の劇場が作られ、多数の作曲家が作品を作ったといわれている。
また、18世紀になるとレチタティーヴォの代わりにセリフの語りをもったジングシュピールが生まれる。
また、その後19世紀にはいるとイタリアのオペラと異なる形式のロマンティック・オペラ(フランスのオペラ・コミークの影響を受けたといわれる作品)が生まれた。
また、19世紀後半になるとリヒャルト・ワーグナーが登場する。
一般的に、ドイツのオペラの特徴としてはハッピーエンドが多く、ファンタスティックな要素が強いとされる。
イタリア
イタリアにおいては19世紀にはこの音楽芸術(オペラ・セリア及びオペラ・ブッファ)が引き続き流行し、盛り上がり、さらに発展していった。
ロマン派の流れを汲む作曲家により形作られた。
やがて19世紀の終わりになると自然主義が派生した形で発生したヴェリズモ・オペラが平行して流行した。
そのほかの国
ロシアにおいては19世紀以前はイタリアの音楽家を招いた活動が行われていた。
独自の音楽を出すのは19世紀以降である。
しかし、バレエの方に力を入れているかのような動きを見せている。
チェコでもやはり19世紀後半に国民主義的なオペラが書かれ、それは20世紀はじめまで続いた。
スペインに関しては、作品の舞台に放っているものの、作家はあまり現れていない。サルスエラと呼ばれるオペレッタに近いものがある物が知られている。
主なオペラ作曲家及び作品名
イタリア
モンテヴェルディ
- オルフェオ
- ポッペアの戴冠
ロッシーニ
- セビリアの理髪師
- チェネレントラ(シンデレラ)
- ウィリアム・テル
ヴェルディ
- La traviata(椿姫)
- アイーダ
- リゴレット
- シチリアの夕べの祈り
プッチーニ
- 蝶々夫人
- ラ・ボエーム
- トスカ
- トゥーランドット
- マノン・レスコー
ドニゼッティ
- 愛の妙薬
- ランメルモールのルチア
マスカーニ
- カヴァレリア・ルスティカーナ
サリエーリ
- アルミーダ
- ダナオスの娘たち
- タラール
- オルムスの王アクスール
レオンカヴァッロ
- 道化師
ドイツ
- フィガロの結婚
- 魔笛
- 後宮からの逃走
R・シュトラウス
- エレクトラ
- サロメ
- 薔薇の騎士
- トリスタンとイゾルデ
- ニーベルングの指輪
- ローエングリン
フランス
ビゼー
オッフェンバック
- 天国と地獄
- ホフマン物語
ロシア
チャイコフスキー
- エフゲニー・オネーギン
ボロディン
- イーゴリ公
チェコ
スメタナ
- 売られた花嫁
アメリカ
ガーシュウィン
- ポーギーとベス
日本
團伊玖磨
- 夕鶴
- ひかりごけ
山田耕作
- 黒船
関連イラスト
関連動画
「セビリアの理髪師」より 序曲(Overture from the "Barber of Seville")/ジョアキーノ・ロッシーニ
「イーゴリ公」より だったん人の踊り(Polovtsian Dances from Opera "Prince Igor")/アレクサンドル・ボロディン
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