概要
正確には「ダウン症候群」という。
1866年にイギリスの眼科医ジョン・ラングドン・ハイドン・ダウンの論文により公にされた。
22対の常染色体のうち21番染色体だけが3本組(トリソミー)になっており、受精卵の減数分裂時のエラーにより発生する。
つり上がった細く小さめの目にふっくらした顔立ちといった特徴的な容貌になり、知的障害や心臓疾患、難聴などを伴うことが多い。
筋肉の緊張性が低いために、なかなか首が座らなかったりうまく姿勢を保持できないこともある。また筋肉や骨、関節の発達に遅れが見られることも多く、低身長の場合も度々見られる。
知的障害を併発する可能性は高く、ダウン症でない子供のIQの平均値を100とした場合、ダウン症児の平均値は50とされている。障害の程度は個人差が非常に大きく、グレーゾーン〜軽度の者から、成人しても自立した日常生活が難しい重度の者もいる。
ただし、容貌の特徴も人によってはあまり目立たない場合があり、知能の障害が軽いと検診で見落とされ「自分がダウン症であることに気づかず成人後判明」という例も稀にある。
比較的陽気な性格の者が多く、社会適応能力も高いとも言われているが、身体の障害や病気などを伴うことから、保護者の負担は決して軽くはない。その性格も健常者と同じく個人差があり、自閉症、ADHDなどの発達障害を併発する場合もある。
特に心臓疾患を抱えている者が多く、新生児の50%に先天性の心疾患があるというデータが存在する。これに加え、消化器など内臓疾患や甲状腺など循環器系の疾患、内分泌の機能障害を抱えていることや、免疫機能があまり強くないため感染症・白血病のリスクも高く、従来は若くして亡くなることも少なくなかった。
近年は医療の発達により長生きする者も増えているが、40歳を越すと早期に認知症(アルツハイマー型認知症)を発症する可能性が高いと考えられている。
また中年以降になると身体的な老化も早く、持って生まれた「筋肉が弱い」「基礎代謝が低い」といった傾向が顕著になり、悪影響を及ぼしやすい。このため糖尿病や高血圧症などのいわゆる生活習慣病を発症しやすく、足腰も弱りやすい。
これらは性格的なこだわりで運動に興味がなかったり、食事が偏ったりすることも原因となりうるため、若い時から適切な指導のもとで運動習慣をつける、管理の行き届いた食生活を送ることも必要になってくる。
また陽気と言われる性格も、適切なケアが受けられないと年齢を重ねる中で社会にうまく適応できずにうつ病などの精神疾患を発症しやすくなると言われており(※知的障害・発達障害者は二次障害として精神疾患になるリスクが高い。、メンタルのケアも重要になってくる。
現在は出生前診断である程度判明するため、経済や(親の)健康上の理由から中絶を選ぶ妊婦も少なからずおり、議論の対象となっている。
なお、日本では子の疾患のみを理由とした中絶は容認されていないが、この点は国によって異なる。
発生率は母親の年齢と相関があることが分かっており、高齢であるほど発生リスクが高い。具体的な発生率は30歳で約1/1000、40歳で約1/100というデータがあり、もっと高齢の出産だと更に上昇する。
一方で若い親だからといって全く発生しないわけではない、という点には注意が必要。
母親がダウン症であった場合、子がダウン症となる確率は約50%である。
かつて、特に白人社会においては、特有の顔立ちがモンゴル人に似ているとして(コーカソイド人種にモンゴロイド人種の遺伝形質が発現した先天性疾患者であるとして)『蒙古症(Mongolism)』と呼ばれていた。その後、特定の地域や人種(また、それに由来する遺伝)に関係なく起こりうるものであると証明されたことで、差別を防ぐため、発見者である医師のダウンから取った現在の呼称に変更された経歴がある。
ダウン症を題材にした作品
漫画
- のんちゃんの手のひら
- ブラックジャックによろしく
4巻の新生児科編にダウン症の赤ん坊を産んだ夫婦の葛藤が描写されている。
音楽
- 症状3.×××症(Raphael)
作詞者の華月が自身の親族のダウン症患者を題材にして書いた歌詞。
著名なダウン症の人物
- 金澤翔子(書道家)
- 岩元綾(文筆家。ダウン症患者として日本で初の4年生大学卒業者)