元素記号Th原子番号90の元素。
トリウムの名は間接的には北欧神話の雷神トール(Thor)に由来する。間接的にはというのは、直接的にはトリウムの名はトール石(トーライト 、Thorite)と呼ばれる鉱石から発見されたことに由来し、そのトーライトがトールに由来していることによる。
天然に存在するトリウムの同位体はほとんどすべてが原子量232のトリウム232である。トリウム232を含めてすべてのトリウムの同位体は放射能を持っているが主要な同位体であるトリウム232は半減期が140億年と長く、放射能はあまり強くはない。ウラン236がアルファ崩壊を起こすとトリウム232が生成する。トリウム232がアルファ崩壊を起こすとアクチニウム228を生成する。
トリウムは天然に存在する元素の中では最大級の原子番号を持つ元素のひとつである。(原子番号92のウランはまとまった量が天然に存在する元素の中で最も原子番号が大きい元素とされるので原子番号90のトリウムはそれにあと2まで迫る存在であることが分かる。ウランに近い原子番号を持ちなおかつ放射能がウランより弱いく産出量も多いことから「そこそこ安全で安価でとにかく原子番号が大きい元素が欲しい」という用途で使われることがある。
一例として1940~1970年代に製造された高屈折率光学ガラスの中には酸化トリウムを添加したものが含まれている(原子番号が大きいものほど高屈折率化効果が大きいため使用された。)トリウムから放たれる放射線は、ガラスを内部から劣化させて徐々にガラスを茶色く変色させるという欠点があったことから代替技術が開発されると短期間で姿を消すことになる。このガラスを使用した交換レンズは中古市場でカルト的人気がありアトムレンズと呼ばれて高価で取引される。
現代の感覚では考えづらいことだが、酸化トリウムは医療用の造影剤として使用されていた時代もあり、使用から数十年を経て肝臓腫瘍など健康被害を引き起こした