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マーガレット・ワイスとトレイシー・ヒックマンによる、アドバンスト・ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(AD&D)のクリン世界を舞台とした小説。

もとは、「AD&Dのリプレイ小説」という側面も有する。

日本語版はグループSNE安田均氏訳により、富士見ドラゴン、メディアワークス、角川つばさ文庫から出ている。


また、外伝的作品として、ゲームブックなども出ている。こちらも富士見より日本語版が出ていた(現在は絶版)。


物語編集

世界規模の災害〈大変動〉が起こり、神々が地上世界「クリン」から離れて340年以上が経った。

かつてパーティを組んでいた冒険者たちは、5年ぶりに大陸南西部の町ソレース、およびそこにある馴染みの宿屋兼酒場「憩いの我が家亭」へと集まっていた。

それぞれの旅を終え、集まったのはハーフ・エルフ、丘ドワーフ、ケンダー、人間(魔導士、戦士、騎士)からなる冒険者一行。

しかし、ソレースの地は戦乱も無く平和なはずなのに、なぜか近場でゴブリンやホブゴブリンが姿を現しており、どこか不穏な空気が漂っていた。

そして冒険者たちは、成り行きから、平原人の男女を追手から守るはめになる。

二人が所持しているのは、癒しの力を持つ「青水晶の杖」。それは、〈大変動〉で失われたとされるアイテムだったのだ。そしてそれを追うのは、怪しげな軍勢。そこから一行は、伝説と思われていたドラゴンや、悪の女神「暗黒の女王」、それらの勢力と、世界の命運をかけた戦いに巻き込まれていく。


登場人物編集

主人公パーティ編集

  • タニス(タンサラス・クィシス・ナン=パー)

ハーフエルフのファイター。エルフとの確執からエルフの年齢で言う二十歳で故郷を飛び出し、エルフの特徴を隠すために髭を伸ばし、冒険者一行のリーダーとなる。

母がエルフで父親は人間の傭兵。ローラナとキティアラに対する恋愛感情の揺れが本家では大きく取り上げており、最終的にどちらとくっつくかはつばさ文庫では語られていない。

仲間思いであり、少し責任感を持ちすぎるところがあるためか、本編で仲間を守るために危険に飛び込んでいくことが多い。それで死にかけたこともある。

ほとんどのエルフがそうであるように弓の名手であるが、剣も巧みに扱うことができる。鎧は軽装のレザー。つばさ文庫のイラストではかなりダンディーに描かれており、主人公的なポジション。当然ながら共通語の他にエルフ語を話し、ゴブリン語も少しできる。

  • キャラモン(キャラモン・マジェーレ)

戦士。レイストリンの双子の兄。弟思いであり、病弱な弟にいつも寄り添っている。が、弟の反応は冷たく、たいてい跳ね返されるか罵倒されるかのどちらかである。

力が異様に強く、フリントからは鈍牛と呼ばれていた。剣で戦うことが多いが、場合によれば腕の力だけで敵を殺すこともある。弟と違って頭は悪く、「兄さんの脳味噌は利き腕の中なんだね」等と弟に言われるほどである。ちなみに利き腕は左手。また、竜の翼の飾りが付いた兜を被っている。右手には楯、胴体には鉄の胴鎧を装着している。

魔法を不審がるところや、危険だと思うことが多く、「大審問」については反対していた。そして「大審問」で、兄弟間の仲を引き裂くようなトラウマを背負う(これについてはドラゴンランス戦記五巻で明らかになる)。

弟の魔術と彼の攻撃を合わせて戦う力は大きいと、一行も認めている様子。

「ドラゴンランス伝説」では、「戦記」の後で帰還し、ティカと結婚。「憩いの我が家亭」を継ぐも、自身の力を持て余し、酒におぼれた堕落した生活を送るように(太って剣帯も締められない有様だった)。のちに、訊ねてきたタッスルホッフとともに、暗黒に堕ちたレイストリンを救うために時の旅に出る。この旅の途中で、剣闘士として戦う様になり、以前の身体を取り戻した。

つばさ文庫では、さわやかな雰囲気で描かれている。

  • レイストリン(レイストリン・マジェーレ)

中立を意味する赤ローブの魔法使い。キャラモンの双子の弟。病弱で、いつもせきどめの薬を飲んでいる。肌が金色であり、瞳は砂時計のようにくびれている。

病弱であることと、その身体的特徴は「上位魔法の塔」で行われた「大審問」という魔術師試験で負ったものである。失敗すれば死であるにもかかわらず、史上最年少の21歳で挑み、合格した(この「大審問」での詳細は、ゲームブック「ウェイレスの大魔術師」で語られている)。所持している「マギウスの杖」も、この時に入手した。

兄の心遣いを若干うっとうしく思っている。だが、キャラモンとティカの恋仲にはかなり嫉妬している(兄が愛する人物が自分だけではなくなったから)。

野心家であり、皮肉っぽい口調が特徴。感情を最低限にしか表さないゆえに、一行(兄を除く)から信じられておらず、フリントやスタームとは衝突する場面も多い。ただし、弱者に対しては優しく接する一面も有しており、ドラゴンランス戦記1巻で協力してくれたブープー(取るに足らない種族「どぶドワーフ」の女性)に対し、祝福の祈りを行っていた。

四巻でドラゴンオーブを手に入れ、さらに傲慢になり、一行から歩み去って闇に堕ちていく(ローブの色も黒へ変化した)。彼についてはドラゴンランス戦記だけでなく、ドラゴンランス伝説やドラゴンランス秘史などで語られることが多い。つばさ文庫では異様に若くなった。

  • フリント(フリント・ファイアウォージ)

一行の仲間のドワーフのファイター。やや頑固で偏屈。タニスいわく、彼は戦っているときに背後を守ってくれる岩のような人物らしい。少し荒い言葉づかいが目立つが、とても仲間思いであり、タニスやスターム、マジェーレ兄弟を育てたのは彼と行っても過言ではない。また、ドワーフらしく、腕の良い細工師でもある。両刃の戦斧が武器。

レイストリンと仲は悪いが、タッスルホッフとは良き喧嘩友達。老齢ゆえに、リューマチを患っていたり心臓に少し異常があるなど健康上の問題を抱えている。

水が苦手であり(キャラモンにうっかり川に落とされたことがトラウマらしい)、一巻では「水に入るくらいなら捕まって火あぶりにされたほうが温かく死ねる」等と言い、切羽詰まった状況であるにもかかわらず逃げようとしなかった。

「馬の毛にアレルギーがある」と自称しており、馬に接するとくしゃみをする。しかしこれはただの思い込み。愛用の兜には馬の毛の装飾があるが、本人は「これはグリフォンのたてがみの毛」と言いはっている(ちなみに、もとからグリフォンにはたてがみはない)。

なお、初期設定では洒落者で伊達男という、真逆なキャラだったらしい。

  • タッスルホッフ(タッスルホッフ・バーフット)

ケンダー族の青年でシーフ。トラブルメーカーにしてムードメーカー。長い髪を頭のてっぺんでくくり、背中に垂らしている。愛嬌がある話し方や小さい身長などから繰り出されるおしゃべりは、もはや武器になりそうなほどうるさく、精神を削っていく。しかし憎めず、パーティの皆になんだかんだで愛されている存在。

手癖が悪く、他人の色々なものが彼の腰に結わえつけた小袋の中に吸い込まれていく。だが本人は自覚がなく、「拝借」しただとか「たまたま拾った」などと言い訳する。タニスいわく、彼が「おっと」と言った時は危険フラグらしい(ただしこの手癖の悪さは、「ケンダーの種族的特徴で、好奇心が強すぎるのが理由」とのこと)。

武器は短剣と、フーパック(先端が二股になった杖。二股部分に渡した皮ベルトでスタッフ・スリングとして使用する他、振り回して威嚇の音を立てる事もできる)。ただしシーフゆえに、あまり戦闘力は髙くない。

キャンプ用の食器など、日用品も彼が担ぎ運んでいる。また、地図が好きで、パーティのマッパー(地図係)として地図を描く事も多い。

  • スターム(スターム・ブライトブレイド)

ソラムニアの騎士。騎士道が形骸化している昨今、騎士として高潔で在ろうとしている人物。父親も同様にソラムニアの騎士であり、身に付けている鎧と盾、剣は父の遺品。ただし、鎧と楯のソラムニアの紋章は削り取られている。

かつて彼の父親は、妻と子供を連れて戦いの前に逃亡し、消息を絶っていた。しかしそれでもスターム自身は父を尊敬し、彼の背中を追っている。

実は正式な騎士でなく従士(スクワイア)で、そこから審判にかけられるが、最終的には騎士として正式に任命される。

大司教の塔の攻防戦で、騎竜スカイアに乗ったドラゴン卿のキティアラと対決。一騎打ちの末、壮絶な最後を遂げた後に、真の騎士として名誉とともに騎士団に丁重に葬られた。

シルヴァネスティ・エルフの女王、アルハナ・スターブリーズからは慕われており、〈スタージュエル〉を受け取る。

  • ゴールドムーン

『平原人』と呼ばれる蛮族『ケ・シュ』の長の娘。クレリック。とても美しい容姿で、金と銀の髪を編んでいる。彼女が持つ「青水晶の杖」がすべての根源であり、一行が強制的に旅に出かける羽目になった原因である。

心優しい性格をしており、リヴァーウィンドと恋人同士。ミシャカルという神に仕えており、メダリオンを首に下げている。癒しの技を持つため、杖または彼女の祈りによって傷を癒すことができる。

  • リヴァーウィンド

長身の平原人(ケ・シュ族)。レンジャー。ゴールドムーンの恋人であるが、族長である彼女に対して恋人と思えばいいのか族長として従えばいいのか迷っている(そのため、ゴールドムーンに何か言われたら「それは族長としての命令ですか?」と訊ねたりしている)。

無表情で、感情を表す事がやや苦手。弓と剣を持ち、毛皮を纏う。

「青水晶の杖」は彼が持ち帰ったものであり、その時にドラコニアンに対して恐怖を抱く。廃都ザク・ツァロスにてブラックドラゴン・キサンスと遭遇した際、その強酸のブレスが直撃したため瀕死の重傷を負うが、ゴールドムーンにより癒され復活した。

そのゴールドムーンが一度死んでしまったとき、本気で怒ったことがある(その時は素手で敵を殺すほどの戦闘力を発揮した)。

善側の人物編集

  • ティカ(ティカ・ウェイラン)

「憩いの我が家亭」の給仕娘。人間。後に剣を取って戦うようになるが(ファイターのクラスになる)、主な武器はフライパン。また、盾を叩きつける攻撃も得意とする。キャラモンと恋仲であり、レイストリンに嫌われている。明るい赤毛と豊満な胸と、むっちりとした体形を気にしているらしいが、そこが魅力的だと思われている。

「戦記」の後、「伝説」の序盤では、酒におぼれたキャラモンとの結婚生活はうまくいってなかった。キャラモンが帰還した後に彼と改めて結ばれ、子供をもうける。

  • ローラナ

クォリネスティ・エルフの姫。タニスの幼馴染み。タニスに恋をしているが、無知ゆえにふられてしまい、子供を卒業することを決意する。そしていろいろなことを経験し、大人になった末には、「黄金の将軍」として活躍することになる。大司教の塔の攻防戦にて、スタームが討たれた直後に、彼の遺体を守らんとキティアラの前に立ちはだかった。

つばさ文庫では異様に可愛くなった。

ローラナの兄。ファイター/マジックユーザー。ローラナを巡って、かつては親友であったタニスとは因縁がある。ローラナを大切に思っている。エルフらしく、弓と剣を持つ。また、呪文も使いこなす。

後に善竜の卵とドラコニアン誕生の秘密を、シルヴァラとともに発見。ここから、善竜をクリンに帰還させる重要な役割を担うこととなる(このエピソードは『奪われた竜の卵』としてゲームブック化されている)。

  • シルヴァラ

カガネスティエルフの娘。スタームやローラナたちのクォリ=モリ脱出を手伝ったことが縁で、ギルサナスと恋仲になる。しかし、実はエルフではなく、正体は別の存在。

  • フィズバン

老魔術師。旅の途中で一行に加わった。名前の意味は「じゅう、ボン」といった擬音であり、タッスルからは「そんなの名前じゃない」と言われている。耄碌しており、ファイアーボールの呪文を何とか思い出してかける……といった事が多く、時として仲間も被害に遭ったりも。

秘密が多く、その姿と行動は見せかけで、本作における重要な役割を持った人物。フリントは、死ぬ寸前にその正体に気付いた。

  • キス・カナン

伝説のエルフ王。故人。過去に、シルバネスティからクォリネスティに移住したエルフで、ギルサナスたちの先祖でもある。死後、パックス砦近くの迷宮「スラ=モリ」の墓場にて、玉座に座った骸骨の姿で、魔剣ワームスレイヤーとともに葬られた。数百年後、タニスたちがパックス・タルカスへ侵入するために来た時に、タニスにワームスレイヤーを手渡した

  • テロス・アイアンフェルド

ソレースの鍛冶師。ギルサナスをかくまった事で、トードの部下のドラコニアンに、右腕を肩から切断され死にかけるが、ゴールドムーンの杖の力で癒され生き延びる。腕を失った後、クオリネスティの地で療養し、エルゴスの地で『銀の腕』を移植。後にシルヴァラからドラゴンランスを鍛える力を授けられる。

悪側の人物編集

  • キティアラ(キティアラ・ウス=マタール)

マジェーレ兄弟の義姉。通称キット。ファイター。暗黒の女王タキシスに仕えるドラゴン卿のひとりと、四巻で明らかになった。タニスと元恋人であるが、レイストリンと同じで野心が強く、野望と権力を手にするためなら、タニスさえも利用していく。ゆがんだ微笑が魅力的であり、タニスだけでなく、スタームなど、いろいろな男を魅了している。チェインメイルと剣で武装している。

他者を篭絡し、利用する事を得意としているが、心から誰かを愛したり思いやったりはしていない。自軍の将校らも魅了し無理やり愛人にして利用、価値が無くなるとあっさり切り捨てている。黒エルフの魔術師・ダラマールとも男女関係を匂わせていた。

死の騎士ソス卿を協力者としており、ドラゴン卿として、ブルードラゴンのスカイアを騎竜にしている。

一行が、物語冒頭で「憩いの我が家亭」に久々に集まった際には、彼女一人だけが来なかった。

  • ヴェルミナルド

暗黒の女王タキシスに仕えるクレリックで、ドラゴン卿。

「戦記」の前半の物語に登場。パックス・タルカス城砦の奴隷鉱山を拠点に、周辺地域へと侵略の手を伸ばしていた。残忍冷酷で、ソレースやケ・シュ族の住む平原を、乗騎としている相棒のレッドドラゴン・エンバーに焼き払わせた事がある。

しかしエンバーとは、互いに信頼していない。

タキシスの加護を受け、敵の視力を奪う魔法のメイス・ナイトブリンガーを武器にする。しかし、タニスやスタームに追い詰められ劣勢になった際、エンバーと離され、タキシスからも見放され、その刃に倒れた。

  • フューマスター・トード

ホブゴブリン。たるんだ身体に豚のような眼差しを持つ。「戦記」の冒頭で、ソレースに現れたゴブリンたちの頭として登場した。ホブゴブリンらしく、小狡く残忍な悪党。

ヴェルミナルドの部下であり、下士官。とらえたタニスらを、捕虜や奴隷とともにパックス砦へと移送していた。後にヴェルミナルドが戦死した後に跡を継ぎ、新たなドラゴン卿となった。更に後になって、ケンダー郷の司令官の座に就く。

  • ソス卿

デスナイト(死の騎士)。

元は、ソラムニア騎士の名家に生まれ、自身もソラムニア最高階級である「薔薇の騎士」になった。しかし妻子ある身で、エルフの女性と不貞を働き妻と子を殺害。そこから呪いにかかり、死した身体を業火に焼かれる苦痛を常に感じる事に。

キティアラとともに行動し、各国をスケルトン・ウォーリアーを率いて襲撃、恐怖のどん底に突き落とした。

そのビジュアルは、プレートメールに身を固め、バケツ状の兜で顔を隠しているというもの(兜の下は焼けただれた素顔がある)。兜のまびさしからは、双眸を恐ろしげに赤く輝かせている。乗騎はアンデッドの馬。メイスを武器に持つ。

アンデッドゆえに生身の女性は相手にできないが、キティアラに惚れている。

人気のあるキャラ。作者曰く『強力なヴィランを模索していた時に、設定やら素性やらがいきなり降ってわいた』とのこと。


ドラゴン編集

元となったD&Dと同様に、本作では「色の名を持つドラゴンは悪」「金属の名を持つドラゴンは善」という属性を持つ。

  • キサンス

廃都ザク・ツァロスに棲む雌のブラックドラゴン。ザク・ツァロスで「ミシャカルの円盤」を守っていた。タニスらが初めて戦ったドラゴンで、強酸のブレスをリヴァーウィンドに直撃させ、瀕死の状態にさせた。さらに、レイストリンを捕えてもいる。

ミシャカルの加護を受けたゴールドムーンと、彼女の「青水晶の杖」により倒された。

  • エンパー

パックス・タルカス砦の、ヴェルミナルドの相棒であるレッドドラゴン。火炎のブレスを有する。しかし相棒であるヴェルミナルドの事は信用していない。

ヴェルミナルドと引き離され、フールマータと戦い、相打ちとなる。

  • フールマータ

パックス・タルカスの内部に棲む、年老いた雌のレッドドラゴン。片目が失明しており、もう片目も霞んで視力をほぼ失っている。

いろいろあって耄碌し、頭も若干おかしくなっている。そのため、人間などの他種族の子供たちを自分の子供と思い込み、囲っている(子供たちも親だと慕っている)。

ヴェルミナルドから引き離されたエンパーと戦う事になり、相打ちとなる。

  • スカイア

ブルードラゴン。キティアラの騎竜で彼女の相棒。キティアラとは強い絆で結ばれている。

用語など編集

  • クリン

舞台となるこの世界。

  • ソレース

クリンのアンサロン大陸、その南西部にある町。元はエルフの領地の一部で、過去にゴブリンの襲撃が頻繁に発生したため、巨木の木々の枝の間に家や建物が建てられるように。現在も人間を含めた様々な住民が生活しており、「憩いの我が家亭」もここに存在する。平和な土地で、モンスターの類がこの地に現れる事はまれだった。しかし「戦記」冒頭では、訪れたタニスたちの前にゴブリンが現れている。

  • 憩いの我が家亭

劇中でタニスら主人公パーティが馴染みにしている宿屋兼酒場。ソレースに存在する。ソレースの建物がそうであるように、巨大な樹木の上に大きな足場を作り、その上に大きな建物を建てている。

素晴らしいもてなしと、エールと美味しいスパイスの効いたフライドポテトが評判。

ティカはここの看板娘であり、タニスたちは馴染み客として良く利用している。

  • 青水晶の杖

リヴァーウィンドが「まことの神々の証」の探索を命じられた時に持ちかえった杖。本人は杖を入手した時の状況を覚えていなかった。

当初は、何の力も出なかったが、ある事件で力が発揮。強力な『癒し』の力を発揮する。以後、ゴールドムーンが所持する事に。癒しの力は、ブラックドラゴン・キサンスの酸のブレスを受けた瀕死のリヴァーウィンドを全快させるほど強力。この杖が、ドラゴンランスの物語の発端となった。

  • マギウスの杖

レイストリンが『大審問』の時に、フィスタンダンティラスから授かった杖であり、古の大魔法使いマギウスのゆかりのアイテム。数多くの呪文が封じ込められているらしく、『ルニタリの光』にあてると魔力補充される。見た目は簡素な木製の杖で、先端部は『水晶球を握っているドラゴンの手』の意匠が施されている。

  • ドラゴンランス(武器)

第1次ドラゴンランス戦争で、英雄ヒューマが使用した槍。以後、現在ではおとぎ話の産物とされている。伝説によると「神々が遣わした、ドラゴンに対抗できる唯一の武器」。しかし一つしかないわけではなく、量産されて兵士たちに行き渡っている。

劇中でも、折れたものがキス・カナンの墓に埋葬されていた。また、歩兵用と大型のものが登場。

大型のものは、騎乗用のドラゴンの鞍に直接装着されており、専用の盾もランスそのものに差し込んで装着。ドラゴンに乗った騎士が、両手でランスを抱えるようにして操り、ドラゴンとともに敵ドラゴンに突進し貫く……という戦法を取る。

なお、このランスを鍛えるためには、『カーラスの槌』を用いる必要がある。

  • ワームスレイヤー

エルフ王キス・カナンが有していた魔剣。パックス砦にある秘密の通路「スラ=モリ」内の、キス・カナンの骸骨が座している玉座に置かれていた。「ワームスレイヤー」の名の通り(ワーム=長虫。ドラゴンの類という意味もある)、ドラゴンおよびドラコニアンを倒すのに有用な魔法がかかっているらしい。形状は両手剣。

作中ではあまり活躍せず、登場も少なめ。シルヴァネスティには「ワームズベイン」という雌雄一対の剣が存在する(こちらも後にタニスが授かる)。

ゲームブック「パックス砦の囚人」では、主人公のレンジャー「バーン・バレンシールド」が入手、砦内のドラコニアンやヴェルミナルド卿などと切り結んでいる。

  • ドラゴン卿

暗黒の女王タキシスに仕える、悪の軍勢の騎兵にして指揮官。腕の立つ戦士が拝命される事が多く、ドラゴン卿となった者はドラゴンを模した鎧と、騎竜となるドラゴンが与えられる。

クリン各地に赴任されており、劇中にはキティアラ以外にも、パックス・タルカス砦に着任しているヴェルミナルドといった別のドラゴン卿も登場する。

  • ドラコニアン

本作の悪側の軍勢を構成する、本作オリジナルの種族。いわゆるリザードマンのような、等身大でドラゴンの頭部と鱗、尻尾を持つ半竜の人型種族である。その背中には翼を持ち、その知性も人間並み。鋸刃の剣や盾、自身の身体にあつらえた鎧などで武装しており、その戦闘力も高い。背の翼で、飛行する事も可能。呪文を用いる者もいる。

当初は存在を知られないよう、フード付きローブなどを着込んでその素性を隠していた(僧侶に成りすます事を好むらしい)。普通に戦って倒す事は可能だが、その死体は石化したり(武器が食い込む)、強酸の血を流したりするなど、最後まで油断ならない。

以下の五種類が存在する。

オーラック:魔術を使う事が可能。数が少なく、ドラコニアンの中で唯一翼がない。死ぬと爆発する。

シヴァック:最も大柄。自分が殺した相手に変身する能力を有する(ただし、サイズが同じくらいの種族に限る)。殺されると、自分を殺害した相手に変身して死体が残る(事故死など、殺害した相手が居らず変身できない場合、死体は爆発する)。重量のある鎧兜を用いる。

ボザク:オーラック同様に魔術を使える。死ぬと骨が爆発する。タキシスの僧侶になる者が多く、他のドラコニアンからはその気質を快く思われていない。

カパク:猛毒の唾液を持ち、武器に塗り付けて使ったりもする。死ぬと死体は酸と化し、周囲を溶かす。

バアズ:五種の中で最も小柄。死ぬと死体は石化する。

  • ケンダー

本作オリジナルの種族で、この世界におけるハーフリングやホビットのような存在。ハーフリング同様に小柄で手先が器用、シーフクラスに付く事が多い。ホビットよりもスマートで、他種族同様に靴を履く。

非常に好奇心が強く、興味を引いたものを手にして自分の懐に仕舞い込む種族的な特徴を持つ。

このため、『手癖が悪く、つい盗んでしまう』という種族としての悪癖を有する。ただし、あくまでも好奇心故の事で、悪意や欲望のために盗むわけではない。

小柄で腕力も弱いため、戦士には向かない。また、好奇心が強すぎるため集中できず、学問を納める事も困難なため、魔法使いや学者なども向いていない。このため、一か所にとどまらず、旅に出て冒険者になる者が多い。旅にフーパックを持つ事は、ケンダー族にとってごく普通の事。

人間など他の種族からは、あまり重要視されていない(憎まれてはいないが、重要な種族としては見られていない)。

  • どぶドワーフ

別名アガー。本作オリジナルの種族。ドワーフの劣等種で、ケンダー以上に小柄。

無知で無力であり、種族としては取るに足らないと思われている。下水やゴミ溜めなど、汚らしい場所に住み、身体も洗わずにいるために不潔である(水差しと尿瓶を兼用できる)。下水のネズミなど小動物を食べる。

知性もあまり高くは無く、幼児程度。一応共通語は話せる。

ドワーフの一種故に男は髭を蓄え、女は口髭と顎髭の代わりに頬髯を生やしている。容姿も良くはなく、男女とも似合いの醜さ。

丘ドワーフなど、他のドワーフ族にとっては不快でうっとおしい存在であり、フリントも嫌っている。

しかし決して邪悪な種族ではなく、概して陽気に生活している。


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