概要
1998年4月16日に放送された無印時代の第39話。
ポリゴンショックからの復帰作。元々製作される予定は無かったが、アニメ放送再開を記念して作られたエピソードであり、おそらく初見の視聴者にサトシとピカチュウの関係を知ってもらうという意味合いもあったと思われる。
ちなみに本来の第39話として放送される予定だった「ルージュラのクリスマス」は秋の特番内でテレビ放映された後にピカチュウのなつやすみのVHS版に同時収録された。
あらすじ
サトシとカスミ、タケシの3人は通りかかった美しい森でひと休みしていた。
のんびり良い気分で過ごしていると、草むらの影からこちらを見つめる何かに気づいたピカチュウ。
気になって追いかけてみたサトシ達が見た光景は、群れを作って仲睦まじく遊んでいる野生のピカチュウ達であった。野生の同族を見て嬉しく思ったサトシのピカチュウは仲間に入れてもらおうと近寄るも警戒心の強さゆえに距離を置かれてしまうが、先程にサトシのピカチュウに目があった一回り体が小さな「ちびピカチュウ」だけは率先して歩み寄り互いに尻尾で握手をした結果打ち解ける。だがそこへ空気を読まずサトシが「俺も仲間に入れてくれよー」と近づいてしまったことで野生のピカチュウ達は怖がって姿を消してしまう。
落ち込むピカチュウにサトシが謝る中、様子が気になってサトシ達を密かに覗いていた先程のちびピカチュウが木の枝から足を滑らせて激流の川に落下してしまう。サトシのピカチュウはすぐさま追いかけてちびピカチュウを助けるがこのままでは2匹揃って滝に落ちてしまう。
そこへ群れを作っていたピカチュウ達が協力して2匹を引っ張り上げて救出する。
気を失ったサトシのピカチュウは群れのピカチュウ達に見守られつつもちびピカチュウにほっぺを合わされたことで目を覚まし、お礼にサトシのピカチュウにりんごを与えるちびピカチュウ。一連の出来事を経てサトシのピカチュウは群れのピカチュウに仲間として認めてもらえたようだ。
そんな中、陰に隠れていたいつもの3人組ムコニャがピカチュウの群れを発見。見逃すわけがなく「これだけのピカチュウをボスに届ければ出世できる」と考えピカチュウ達をまとめて掻っ攫う算段を立てていた。
夜になりすっかり群れの仲間達と打ち解けたサトシのピカチュウは夜空の下でご機嫌に歌を歌い楽しい時を過ごしていた。そんな様子を見たサトシ達はほっこりした気分になる。
その光景を見たタケシがふと口にする。
「やっぱりいいんだろうなあ。大勢の仲間と一緒ってのは…」
その言葉を耳にして以降、サトシにいつもの元気がなくなっていき食事中もすっかりサトシは上の空になっていた。食事を済ませカスミとタケシが眠りにつく中焚き火をボーっと見つめながらサトシはなにやら考え込んでいた。だがそこへピカチュウ達の悲鳴が聞こえてきた。かけつけてみればサトシのピカチュウ諸共ロケット団によって網で生捕りにされていたのだ。
ムコニャ達のいつもの名乗りの後でカスミはピカチュウに電撃で網を破るよう指示するも網はびくともしなかった。
コジロウ「それは実用新案特許出願中のピカチュウ捕獲用ネットなのです」
ムサシ「自然に優しい電撃吸収素材でできております」
タケシ「おいどこが自然に優しいんだよ!」
ピカチュウ達を助けようとするサトシ達も先手を打たれる形で纏めてネットで身動きを取れなくされてしまい、その隙にロケット団は大量のピカチュウ達を手土産に飛び立とうとするが、勝利を確信したロケット団は気づいていなかった。
そう、ピカチュウの武器はなにも電撃だけではなかったことを。
ピカチュウ達が一斉にネットをかじり始めたのである。そしてネットを引きちぎって脱出できるだけのスペースを作ったサトシのピカチュウがロケット団の気を引いているうちにサトシ達は自分達の手元にあったネットを広げてピカチュウ達に早く気球から脱出するように促す。ピカチュウ達は1匹ずつ確実に脱出していき、ロケット団が気づいた時にはピカチュウ達は皆逃亡してしまっていた。
「こうなればじゃりん子ピカチュウだけでも捕まえてやる!」と往生際悪く抵抗するムコニャだったがあっけなく避けられ、トドメとばかりにピカチュウに気球を破られ「やなかんじぃ〜!」と叫びながら吹っ飛ばされていった。
こうして無事危機を脱したサトシとピカチュウだったがピカチュウはふと目があった群れのピカチュウと勝利のガッツポーズを決めて喜びを分かち合う。
その様子を見たサトシは「ピカチュウはこのまま野生の仲間達と過ごした方が幸せだ」と考えピカチュウと別れる決意をしてしまう。理由をカスミとタケシに問われても「うるさいなあ!もう決めたんだ!!」と言って聞かない。
たがそこへサトシ達に当然とばかりに着いて行こうとするピカチュウが現れる。
サトシはピカチュウに告げる。
「ピカチュウ、お前ここに残れよ」
「仲間のいるこの森だったら、きっと幸せに暮らせるはずだ」
「さよなら、ピカチュウ…!」
それでも着いてこようとするピカチュウにサトシは
「来るな!この森のみんなは、お前が必要なんだよ…、だから、早く行け!!」
あくまでもピカチュウの幸せを願いながら必死に振り切ろうと走り去るサトシの脳裏には、これまでのピカチュウとの出会いと思い出がフラッシュバックしていた。
その後立ち止まったサトシを追いかけてきたカスミとタケシにサトシは「俺と一緒に旅をするよりも、ここに残ったほうがいい。その方があいつにとって幸せなんだよ!」とようやく抱えていた心中を2人に吐露する。サトシなりの考えがあっただけに2人も強くは言えず思わず黙り込んでしまう。
そして気がつけば夜が明けており、同時にそこには1匹のポケモンが立っていた。
ピカチュウである。
サトシのピカチュウだけでなく、楽しい時を過ごした野生のピカチュウ達も一緒だった。
兄弟同然に仲良くなっていたちびピカチュウにサトシのピカチュウは別れを告げ、仲間達に応援されながらピカチュウは再びサトシの元へ駆け寄り戻っていくのであった。
自分が否定しようと戻ってきた相棒ピカチュウをサトシは涙を流しながら抱きしめ、2人の絆はより強固な物となるのであった。
余談
ポリゴンショックまでは火曜18時30分から放送されていたのだが、このエピソードから放送時間が木曜19時に移動し、以後20年以上に渡って木曜の定番として親しまれることになる。
サトシがシリーズの最後まで相棒として共に歩んでいくピカチュウを(ピカチュウの幸せを願ってのこととはいえ)野生に逃がそうと考えたのは後にも先にもこの回が唯一である。
後にXY編第54話にてコジロウのマーイーカがこのエピソードのラストを彷彿とさせるようなやり取りをコジロウと行う回が存在する。同様にXY編第63話でもロケット団のソーナンスがこのエピソードのラストを彷彿とさせるようなやり取りをムサシと行う回が存在する。