概要
それは、映画『名探偵ピカチュウ』の日本での先行公開から4日が経った2019年5月7日のことであった。
YouTubeで“Inspector Pikachu”(直訳すると「検査官ピカチュウ」といったところか)と名乗るアカウントが、「POKÉMON Detective Pikachu: Full Picture」と題した動画を投稿した。
動画の再生時間はおよそ1時間43分で、サムネは同作を配給するワーナー・ブラザーズのロゴになっており、タイトルや動画の再生時間の長さからして、ちょうど日本で公開真っ盛りで、アメリカ本土でも3日後に公開を控えていた同作の本編映像が流出したのではないかと一部で大騒ぎになった。
同作でピカチュウを演じたライアン・レイノルズもこれに気づき、ファンにこの動画の存在を知らせるツイートを掲載した。
本当に本編が流出してしまったのか……多くのファンが恐る恐る(+ちょっとだけ映画を観てみようという出来心から)動画を視聴してみたところ……再生開始からそう経たないうちに驚愕の事実が明らかとなったのである。
動画の内容
動画は、配給を担当したワーナー・ブラザーズと製作を担当したレジェンダリー・ピクチャーズのロゴが流れ、その後、ライムシティを訪れた主人公のティムが街を歩くシーンへと移る。
ところが、とある家の前に到着したところで、急に聞き覚えのない音楽が流れ始める。
それに呼応するかのように、ティムがこちらをゆっくりと向き直ると……。
とつぜん画面が切り替わり、ピカチュウが音楽に合わせて軽快なダンスを繰り広げる様子が映し出される。
そして、このダンスは、動画の再生が終了するまでひたすらずっと続いていくのである(およそ30秒で1セットのダンスを延々とループさせることで時間を稼いでいる)。
要するに、この動画は本編映像の流出と見せかけた、(同作の宣伝も兼ねた)一種の釣り動画だったのである。
公式からの声明はないので憶測の域を出ないが、“Inspector Pikachu”なるアカウントも恐らくは主演男優であるライアン・レイノルズの別アカウントである可能性が高いと言われている(実際、動画の冒頭では、“R. Reynolds”と書かれた透かし文字が入れられている。ちなみにこの透かし文字は通例ではスタッフ向け映像に入れられるものであり、冒頭部分が"本物の流出映像である"とミスリードさせる演出にもなっている)。
反響
この動画は、公開されてからそう経たないうちに1000万回以上も再生される等大きな反響を巻き起こし、どこか昔懐かしい雰囲気すら感じるポップな曲に合わせて、ピカチュウが手足をバタバタさせながら踊っている様子がとてもかわいいと大変な評判になった。
2時間近くもある動画でありながら全部最後まで観てしまったという人もそれなりにいたようだ。
また、踊りの振り付け自体は比較的単純で、再生する速度を多少弄れば色々な曲に合わせられるという汎用性の高さから、別の曲に合わせてピカチュウをダンスさせるという動画も多数作られている。
元ネタ
実は、この動画でピカチュウが踊っているダンスには元ネタがあり、キー&ピールがかつて製作した映画の中でコメディアンが踊っていたエアロビ風のダンスが元になっている。
その後、この映画の監督を務めたジョーダン・ピール氏もファンからの指摘を受けてこれに気づき、反応を示している。
また、動画で使用された楽曲はホイットニー・ヒューストンの『Wanna Dance』という曲である。