概要
小説『日本国召喚』に登場する国家。第二文明圏ムー大陸北半分に国土を持ち、主な都市として首都オタハイト、商業都市マイカルがある。
列強第二位であり、異世界では珍しい科学文明国で日露戦争~第一次世界大戦程度の技術を持ち、永世中立を表明している。
その正体は高度な文明を築きながらも海中に沈んだとされる伝説のムー大陸そのものであり、大昔の地球から転移してきたと思われる描写がある。それを裏付けるように、この国の世界地図(転移前の世界地図)は、地球の世界地図と驚異的なまでに酷似していた(その時の会話を見る限り、作中の世界観ではアトランティスと南極大陸は同一存在ということになっている)。
当時ヤムート(web版および『なろう』版では邪馬台国との関係性もあったとおぼしき描写がある)と呼ばれていた神代日本はこの国の友好国だったようで、その縁もあってか列強の中では最も早い段階で日本との関係が良好となっている。
転移世界においては唯一といっていい科学文明国で、一万年前の転移当初は(古代魔法の存在もあって)圧倒的に魔法文明に劣り、転移した大陸の大半を占領されたが、現代はたった一国で地球の第第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の所謂「戦間期」、一部は第二次世界大戦後半レベルに達するまで科学を発展させており、しかもそれに奢ることなく、かつてのムー大陸の領土を奪い取って成立したであろう他民族の国家とも協調を選んで相互発展を遂げ、第二文明圏盟主として君臨しており、ある意味、日本並みに補正がかった転移国家の末裔。
- 軍艦だけが初登場の時点で日露戦争レベルで止まっている理由はここにあると思われる。というのも、最終的にドレッドノートへと発展する「艦軸上に全周式砲塔を3基以上搭載する」戦間期以降のスタイルの戦艦は、その日露戦争の戦訓(丁字戦法)から来ている。しかしムーはそのような大規模な海戦を経験していないので、前ド級で止まっていると考察される。
作中では
滅びゆく栄光編
日本国使節団が乗ってきた船を機械動力船と見抜き、奇妙な飛び方をする飛行機械で技術力の高さを確信し、国交を結ぶ。
その際、日本国使節団を案内していた統制軍技術士官のマイラスは、日本のジェット戦闘機の情報や、自動車の普及率について驚愕しっぱなしであった。
そして工学が一般的ということもあって、日本を視察したマイラスの報告を、上層部は驚愕したが荒唐無稽と一蹴せず、逆に一部とはいえ積極的に取り入れようとする派閥ができるなど、転移先国家では珍しい先見性を見せている。
日パ戦争の『フェン王国の戦い』にマイラス達観戦武官を派遣し、続く『アルタラス島の戦い』の後、パーパルディアから「ムーは日本に兵器を輸出し、日本を支援して代理戦争をさせている」と疑いをかけられるものの、これを否定し、パーパルディア皇国第一外務局に対して「日本は自国よりもはるかに発達した科学文明国家」であることと、パーパルディア在留の邦人、大使館職員の引き揚げを伝えた。
崩れる均衡編
神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパスで開催された『先進11ヶ国会議』に例年通り、戦艦『ラ・カサミ』(敷島型戦艦に酷似)を旗艦とする最新鋭艦隊を引き連れ出席(出席国は外交官護衛の名目で、最新鋭艦で来るのが通例)し、第二文明圏で侵略行為を繰り返すグラ・バルカス帝国を非難する。
会議中グラ・バルカスが全世界に軍門に下ることを要求、各国外務大臣級護衛艦隊を襲撃する。これに対して参加国は臨時連合軍を組んでこれを迎え撃つことになり『フォーク海峡海戦』が発生した。
戦列艦~前弩級戦艦が主力の臨時連合軍では超弩級戦艦や機動部隊に敵うはずもなく、座礁して撃沈を免れたムーの戦艦『ラ・カサミ』以外全艦撃沈されることとなった。
その後の捕虜返還交渉において、ICレコーダーを用いて「日本にも宣戦を布告した」公式発言を録音し、日本を戦争へ巻き込むことに成功する(ちなみにこれは書籍版で追加された描写)。
新世界大戦編
ムー大陸西方の制海権を賭けた『バルチスタ沖大海戦』に参加。先述の『フォーク海峡海戦』での戦訓をうけ各艦に対空機銃を増設するなどの対策をとるも、第二次世界大戦レベルの艦載機と軍艦の攻撃の前に多くの艦船を喪失し、他の世界連合艦隊とともに撤退する。
新世界大戦編(護国の戦士たち)
『フォーク海峡海戦』で座礁した『ラ・カサミ』の修理を日本に依頼、ムーを抑止力としたい日本は、新世界技術流出防止法による規制を受けない限界までの魔改造を施すこととなる。
書籍版ではこのエピソードは丸々一つ新章として改造の経緯から内情、そして実戦に至る一部始終が追記(というか書き下ろし)された。
激動のムー大陸編
中央暦1643年6月、西部の旧レイフォル及び空白地帯に接する都市アルーにグラ・バルカス帝国陸軍第8軍が侵攻し、陸軍がこれを迎撃するが、戦車を主体とした機甲師団という、これまでこの世界に存在しなかった戦術の前に大敗してしまう。
しかし、日本に対してなりふり構わない便宜や外交折衝したことで、日本から第七師団を中心とした本格的な(そして劇中でも歴史的にも戦後日本初めてとなる)海外遠征部隊の増援を得ることに成功。工業都市キールセキ手前で食い止めることに成功する。
主な登場人物
- マイラス:技術士官
- ラッサン:戦術士官
- ユウヒ:駐日ムー大使
- ヌーカウル:外交官
- ミニラル:ラ・カサミ艦長
- マクゲイル:ムー陸軍キールセキ駐屯地司令
- ラ・ムー:ムー国王
保有兵器・乗り物
統括軍とはムーの軍制において三軍の上に置かれている上部組織で、陸海空問わず関係者が登場する。
基本的な兵器は日露戦争時の日本軍相当となっている。
ただし、航空兵器に関連しては、第二次世界大戦レベルに迫るものがある。
統括軍陸軍
- 70mmガエタン歩兵砲
詳細は不明だが、明かされたスペックや仕様は九二式歩兵砲相当。
これだけでも転移世界ではミリシアル以外の国が持つ魔導砲を圧倒する性能を誇っている。
- 105mmイレール重カノン砲
設置式の分解牽引可能な重砲。スペック上は一四年式十糎加農砲相当。
書籍版ではその大口径を生かしてグラ・バルカス帝国戦車に一矢報いている。
統括軍海軍
- ラ・カサミ級戦艦「ラ・カサミ」「ラ・エルド」
日露戦争時の三笠相当の艦艇、と劇中では紹介された船。Web版ではあくまで三笠とほぼ同じという表現だったが、書籍版では『蒸気レシプロ機関で出力不足だったので重油によるディーゼルエンジンを開発して実用化』したという、技術があるのかないのか分からないような地球的にはぶっ飛んだ経緯で設計されている(地球の三笠は蒸気レシプロ機関で出力は足りており、逆に同等出力の艦艇用大型ディーゼルエンジンでしかも重油となると、第二次世界大戦のドイツや戦後日本のフィルター技術に匹敵するというぶっとんだオーパーツになる。なお未読者向けに説明するとこれを一例とする「チグハグな技術体系」は本作の扱う主要な題材の一つである)
- ラ・ヴァニア級航空母艦「ラ・トウエン」
日露戦争レベルの海軍において唯一、1930年代の技術水準の航空母艦。
艦艇サイズや艦載能力は旧日本海軍の龍驤に迫るが、ラ・カサミ建造時に開発した内燃機関のディーゼルエンジンをそのまま採用しているため、ラ・カサミよりは優速だが空母としては非常に鈍足の20ノットにとどまる。(もっとも搭載機が複葉機のマリンであるため、問題は大きくない模様)。
統括軍空軍
- 戦闘機『マリン』
他の兵器が日露戦争レベルである中、これだけは1936年に採用された九五式艦上戦闘機と同等以上の性能を誇る、ムーにとってのオーバーテクノロジー兵器。劇中人物にも『魔法文明のワイバーン部隊に触発されたのか航空関連だけは歪な発展』と評されており、やられ役以外の活躍も見せている。
民間
- 輸送機『ラ・カオス』
マイラスたちはこれに乗って日本を視察に来た。