この世は芝居の舞台(ランガスタラム) 俺たちゃみんな人形さ。
"そこのお前、よく見ておくがいい悪逆の王と怨霊どもが踊るこの舞台(ランガスタラム)"
概要
『ランガスタラム』(Rangasthalam)は、RRRのラーム・チャラン主演の2018年のインドのテルグ語歴史ドラマアクション映画。監督・脚本はスクマール。
ラームチャランは主演の他にインド本国で自身が代表をつとめる『コニデラ・プロダクション・カンパニー』から他社と共同で配給もしている。
日本では2023年7月14日公開。同日上映はカンナダ語映画の『KGF』(ただし同時上映ではなく、配給会社も異なるので映画館によって上映形式は異なる。例えば、どちらか一方が上映されてないなど)
日本では結果的に2つの会社が配給する事になり、劇場公開版と、JAIHO配信版では字幕の翻訳が異なる。(後述:日本における物議へ)
劇場公開の配給会社はSPACEBOX。
ラーム・チャランが『役者人生の転換点』と語る、2010年代後期伝説の傑作。
あらすじ
1980年代半ばのアーンドラ・プラディーシュ洲中部、ゴーダヴァリ川沿岸の田園地帯、架空のランガスタラム村のチッティはモーターを使って田畑に水を送り込む事を生業にしている村人。
難聴で他人の声がよく聞き取れない障碍があるが、さほど気にせず毎日楽しく暮らしている。彼は近所に住む、ラーマラクシュミが沐浴しているところを偶然見てしまい惚れて、調子はずれな求愛をする。
その一方で村は、『プレジデント』を自称する村長によって牛耳られている。
チッティの兄クマールは、中東ドバイに出稼ぎに行っていたが帰国する。クマールは村をプレジデントが牛耳り、村人を騙して搾取する現状に心を痛め、弟のチッティや悪友のカーシ兄弟達と共に立ち上がり、村長選挙に立候補し、政治家になって村の生活の改善のために奮闘する。
登場人物
- チェルボニア・チッティ・バーブ/ラーム・チャラン(イラスト左)
自称「サウンドエンジニア」。気性は荒く血の気が多いが根は純粋で優しい。昔、倒れてきたヤシの木に当たってそれ以来難聴になる。難聴なのは周知の事実であるが、本人は頑なに隠し通しているつもり。難聴を神様からの贈り物だと考え、うるさい小言を聞かなくて済むと気楽に過ごしていたが・・・ブラコン気味で見た目よりもあどけなさを感じる。ちなみに村にはあと三人チッティという名の村人がいるとのこと。
- ラーマラクシュミ/サマンタ・アッキネーニ
本作のヒロイン。大きな葉で覆い隠して沐浴しているところをチッティに見られ、惚れられてしまう。でも彼の熱心な気持ちに満更でもない様子であり、気持ちに答えようとするがどうしてもチッティに聞こえるように答えられない。最初はチッティに対して睨んでいたが、笑顔を見せるようになる。
- チェルボニア・クマール・バーブ/アーディ・ピニシェッティ(イラスト右)
中東ドバイに出稼ぎに行っていたチッティの兄。柔和で思慮深いが、弟の事になると気性が荒くなるこちらもブラコン気味。村人の中では比較的高い教育を受けている。隣町の娘と婚約中。村の現状をどうにかしようと村長選挙に立候補する。なによりも弟のために。だが、弟はそんな想いを知ってか知らずか・・・
- コッリ・ランガンマ/アナスーヤ・バラドワージ
チッティのビジネスパートナーで、何かと面倒見の良い既婚者の女性。チッティはおばさんと呼んで慕っている。ある日、チッティは彼女の元に村の人より背の高い草むらから立派な時計を見つけ持ってくる。彼女は100ルピーで買い何故かチッティの腕につけてやるが・・・
- 村長/ジャガパティ・バーブ
過去30年ランガスタラム村のプレジデントとして君臨してきた高カーストの地主。名ばかりの農民の共同銀行組合「ソサエティ」を私物化している。
- ダクシナ・ムールティ議員/プラカーシュ・ラージ
左翼政党の新インド党に所属するベテラン議員。チッティから先生と呼ばれている。しかしプレジデントが支配するランガスタラム村には過去20年政治的介入ができずにいた。クマールが村長候補になった際の協力者。
- カーシ/シャトルー
村の荒れくれ者の兄弟の長兄であるが、本物の兄弟かは謎。一度はチッティ達兄弟と対立したが、クマールから協力を要請されて、頭を下げられ協力する。
- マヘーシュ/マヘーシュ・アーチャンタ
チッティの子分にして通訳者。
- きんぴかクイーン/プージャー・ヘーグデー
旅の巡業の花形ダンサー。ダンスを披露しに村にやってきた直接的には本筋に関わりのない人物。
~おまけ~
- にわとり(イラスト中央チッティが抱えている)
チッティがラーマラクシュミに惚れた時、ホウキを奪って元の持ち主に奪い返された後に、可愛い装飾をつけた茶色のにわとりの元に行き、チッティは抱っこする。しばらく浮かれてぬいぐるみのように抱いている。ただそれだけの登場であるがポストカードになったり、パンフレットにも登場し、ひそかに人気がある。後述の動画【Yentha Sakkagunnave】でも見れる。
コメント
RRR関係のみ抜粋。
- ラームチャラン
『ランガスタラム』はインドの現実に根ざし、衝撃的ながらも素晴らしいドラマ。これまでの出演作品の中でも最高の演技ができた。
チャランに脱帽。君に降り注いでいる喝采と称賛は当然だ。もちろん僕からも喝采と称賛を贈る。君以外に誰一人としてこれほど巧みに演じることはできなかった。
『ランガスタラム』の美点は沢山ある。しかし、スクマール監督による主人公チッティ・バーブのキャラ造形、そしてチャランによるその肉付けの見事さは、他の美点を全て覆い隠すほどだ。彼の演技のいちいちがニュアンスに富み、目を奪う。素晴らしい、お見事だ!
日本における物議
『ランガスタラム』が7月14日~日本で順次公開してその3週間後、RRR、KGFを配給した株式会社ツインのグループ会社で外国映画や映像コンテンツを配信しているJAIHOがランガスタラムを配信すると発表した。
当時、まだ公開が始まってない映画館もあり、全国各地の主にミニシアターやファンからは苦言の声が漏らされる。
配給会社が異なるということは、翻訳者も異なり、劇場公開版と配信版では日本字幕が異なるのである。
日本における物議まとめ⇒「ランガスタラム」を配信するなら「K.G.F」も配信しろの声(Togettar)
余談
ランガスタラム村は架空の村だけあってセットはかなり大掛かりに作られた。400人の作業員が動員され、2ヶ月かけて村の病院、寺院、役場、プレジデントの屋敷が建設され、作品全体の9割がこのセットで撮影された。また大道具、小道具にもこだわりがあり、ゴーダーヴァリ川沿いで最大の都市の古道具屋から仕入れ、廃屋窓やドアも活用された。生活用品も新品と物々交換でも仕入れどうしても手に入らないときは手作りというこだわりよう。
画面作りもセピア色の情景を大事にしている。
チャランの役作りに関しても、豪邸に住む二世スター俳優としては異例の配役となった。田舎の村人は彼にとってなじみの薄い世界だった。登場人物たちが話す、ゴーダヴァリ方言はかなり早口で演技の中で自然に口にするのは苦労したと後で話している。
また別なインタビューでチッティ役を他に演じられる人はいると思うか?の問いに対し、自分以外にいないと答えていた。
チャランのスタイリングだけは実姉のスシュミタが担当した。柄や着こなしに関して、実父チランジーヴィの1980年代の衣装も参考にされた。
登場人物の衣装は古着屋で調達され着古し感を出すために紅茶やコーヒーに浸して洗濯が繰り返された。
チャランは自宅で過ごす際に作品に関わる3年ほど前からルンギーで過ごしていた。打ち合わせでスクマール監督が自宅に来た際、衣装についてチャランが監督に尋ねたところ、『今の君の格好そのままだ』と言われたとインタビューで語っている。
作品のタイトルは『RC11(ラーム・チャラン11作目の主演作の略)』で制作が発表され、『Rangasthalam 1985』になり、正式に題名は『Rangasthalam』(ランガスタラム)となった。ちなみに1985年はチャランの生まれた年である。
兄のクマール役のアーディは、テルグ語、タミル語映画で活躍している。
アーディは、『Sarrainodu』で悪役を称賛され、賞まで獲得しているが、この作品の主演はアッル・アルジュンでチャランのいとこにあたる。ちなみにアーディの役柄はラスボス。他にも『Agnyaathavaasi』という映画で主演はパワン・カリヤンで、チャランの叔父の作品にも出演しており、こちらでもラスボスをしている。それゆえにテルグ語映画のランガスタラムで兄といった主人公サイド役はなかなか珍しいが全くない訳ではない。
アーディはこの作品を含めて1980年代の村人役を何度か演じている。
金ぴかクイーンのプージャー・ヘーグデーは、後にチャランと『Acharya』にてチャランのヒロイン役を演じる。
ラージャマウリは映画のセットを見学に来たことがある。村のセットはのちのRRRの背景造形の参考にしたかも知れない。
関連動画
【日本語予告】
【Ranga Ranga Rangasthalaana】(表題歌~革でできた人形だとさ)
【Yentha Sakkagunnave】(なんて美しいラーマラクシュミ)
【Rangamma Mangamma】(なんて男なの)
【Aa Gattununtaava】(選挙だぜ!)
【Jigelu Rani】(金ぴかクイーン登場!)
~おまけ~
映画『Acharya』より【Neelambari】
【Jigelu Rani】とは全く異なる曲のメインの二人チャランとプージャーを見よう。
※注:チャランは主演ではない。
関連タグ
外部リンク
日本版版公式サイト⇒ランガスタラム
日本語版公式X⇒映画『ランガスタラム』公式
ネタバレ注意
舞台は大団円ではないのかもしれない・・・・