終幕の魔王
むかーしむかし、あるところにとてもとても愚かな人間がおりました。
愚かな人間は勇猛果敢で怖いもの知らず、好奇心旺盛でお人よし、
どんな事件も解決し人々から感謝されていました。
ちやほやもてはやされるそのおろかな人間を
ある人は“勇者”と呼びました。
勇者は更に調子に乗って身の程知らずな事柄にも
首を突っ込むようになったのです。
そうしてとうとう、ついに身の程知らずの断罪を受ける時がやってきました。
勇者の前に絶対無敵の魔王が現れたのです!
魔王には……
魔法も化学も、剣も鉄砲も加護も呪いも、効きません。
逃げ出した勇者を魔王はどこまでも追い続けます♪
勇者が泣き叫んでもだぁれも助けてくれません。
もうここまで追ってこないだろうと
逃げ疲れて立ち止まるとそこは真っ暗闇でした。
「自分からここに来るなんて」
声が聞こえて暗闇に目を凝らすと
そこにいたのは魔王でした。
勇者は自ら魔王のいる地獄に飛び込んでしまったのです。
後悔してももう遅いです♪
勇者は魔王に倒されてしまいましたとさ♪
ルチフェロ・ロア
MMORPG「エミルクロニクルオンライン」の中で、何でもクエストカウンターに乗り込んできたアイリス・ロアによって語られた、上記のストーリーの紙芝居から生まれたロアである。
物語に登場する魔王そのものであり、勇者に定められた者(イベント上ではプレイヤー)をどこまでも追い詰め、終わりをもたらす役割を与えられた存在である。
名前の由来は、堕天使、或いは悪魔の代表格として名高いルシファーのイタリア読み。
銀色の長大な縦ロールヘアと赤いドレス、身に着けた竜の骨が目を引く幼女である。
余談ながら、アイリス・ロアは、もっとグラマラスな体形を想定していたそうだが、容姿について触れられていないというミス(?)と、突発的な公演による思いの力の不足から、このような姿になったという。(一説ではこの時のエミル界はほとんど平和そのものなので絶望という概念が薄く、それ故にイリスが集まらなかったともいわれている。)
ルチフェロ本人も幼女体型を気にしており、大人な自分を想定した絵を見せてくることがある。
幼女さながらの純粋さと物静かな雰囲気を持つ一方、物事に対する理解力は非常に高く、終幕の魔王にふさわしい威圧的な台詞を発する事もある。
あどけない物言いも多いが、突拍子もない言動も散見され、強そうなものに惹かれる傾向がある様子。
アイリス・ロアを親と認識しているためか、彼女の言う事に忠実である。
また、終幕の役割は理解している一方で、物事の本質を見極める目もあり、終わらせるべきではない物語には一時の猶予を与える融通の良さも持ち合わせている。
イベントの流れ的に喧嘩腰丸出しの終焉のみ語られる物語にも見えるが、その原典は、イリス博士が「戦争が続く時代の終幕」を願い描かれた、反戦の物語であった。
本当に物語の内容が忠実に反映されていれば、とんでもないチートキャラとも言える。
イベント本編では対抗してきたこれまでのロア達の物語をその力で強制的に終了させるというとんでもないチート効果を発揮したが、プレイヤーの心の力がそれを上回っていたためにロア達は守られ、完全には終了させられずに一時的に機能停止させるにとどまった。
最終章で一度消滅した後に彼女に与えられた新たな物語は「古い物語を終わらせて、新しい物語を始めるための土台を作る存在『幕開けを呼ぶ魔王』」となった。
額に書かれたロアの証の数字は「Ⅺ」