契約の悪魔
むかーしむかし、そのまた昔。
強欲な魔術師がおりました。
魔術師は己の欲望を叶える為だけに魔術を学び、
ある時悪魔に願いを叶えてもらう術を見つけました。
魔術師が魔方陣を描くとその中から悪魔が現れます。
魔術師は大層喜び、こう言いました。
「悪魔よ、
私のありとあらゆる望みを
叶えて欲しい」
それに悪魔はこう応えます。
構わないけれど、そこまで大きな望みなら
代償に魂を頂きます。
それを聞いた魔術師は
「魂なんか渡せるか
それ以外ならなんでもするぞ。
他に何か無いのか」
と魔術師は言います。
「それなら、貴方の知識を
頂きましょう、それと引き換えに
一つ、願いを叶えます。」
悪魔を呼び出した今、
もうそんなものは必要ないと、
悪魔との取引に応じます。
そして、取引の結果いくら使っても無くならない
金貨の山を手に入れた魔術師は、
欲望の限りを尽くします。
しかし時を経ると共に、
お金を使う事にも飽きてきてしまいます。
すると魔術師は悪魔に
「尽きる事のない娯楽が欲しい」
と、言いました。
悪魔は快く承諾し、代わりに魔術師の記憶を求めました。
全てを手に入れ、今が楽しければそれでいい。
そう思った魔術師は、自らの記憶を差し出します。
取引の結果、終わらない娯楽を手に入れた魔術師は、
時を忘れて遊びふけります。
そして長い年月を経たある日、ついに魔術師にも
寿命が訪れます。
幸せの絶頂にいる魔術師は、
「こんなところで死にたくない」
と、言い悪魔に無限の命を求めます。
悪魔は、それなら代償にと、魔術師の魂を求めました。
記憶をなくした魔術師は、魂を渡したくないと言った事も忘れ、
今の幸せが続くならと喜んで魂を差し出します。
すると悪魔は、
「それが欲しかったの」
と言い、魂を自ら用意した檻に閉じ込めてしまいました。
幸せだった空間には肉体だけが取り残され、
魂は何も無い檻の中。
檻を見つめて悪魔は言いました。
「馬鹿な人。
欲張らずに小さな代償で
小さな願いを叶え続ければ
豊かな一生が送れたかも
しれないのに」
そう呟いて、
どこかへ飛び去っていきました。
魔術師の魂は永遠に自由を得られず
悪魔のおもちゃにされてしまいました。
メフィストフェレス・ロア
MMORPG「エミルクロニクルオンライン」の中で、中央国家アクロポリスで一時語られた、上記のストーリーの紙芝居から生まれたロアである。
物語の悪魔がモチーフになっており、ネイビーブルーの髪と真紅の瞳、フリルのついたゆったりしたワンピースを纏い、スーツを着た牛のような使い魔の上に常に寝そべっている。
名前の由来は16世紀ドイツのファウスト伝説やそれに材を取った文学作品に登場する悪魔。中でもゲーテの『ファウスト』に出てくるものが有名。
作品によって多少誤差はあるが、基本は魔術師ファウストが死後の自身の魂を対価として全ての望みを叶えてもらおうとするが、メフィストフェレスは言葉巧みにファウストを誘導し、自滅させようとするものである。
性格は非常に面倒くさがりで怠惰な一方、暇や無為を何よりも嫌う娯楽家。
一見、目的意識もなく興味本位で無軌道に行動しているように見えるが、実は目的のために策謀を巡らす策略家でもある。
つまり天才型インテリ。
非常に頭脳明晰であり、それゆえに自身の存在を早期に理解する。そんな中でプレイヤーと受付嬢の会話を偶然盗み聞きし、プレイヤーに住み着くために策謀をめぐらしたのが、彼女のイベントの根幹である。
最初からプレイヤーの心象風景に移住するのが目的だったようだが、こんな回りくどい手を使ったことに関しては「(面と向かっては)恥ずかしかった」という理由があるらしく、以外と初心なところもあるようだ。
ちなみにわんこをペットとして気に入り自分の物にしようと既成事実まで作ろうとしたが、そのあまりの忠犬っぷりに諦めたらしい。
右脚内股に書かれたロアの証の数字は「Ⅹ」