概要
「不死の軍団に興味はないかね?」
CV:宝亀克寿
中央司令部に所属する軍部上層部の人間の1人である。初登場は原作第50話。
アメストリス軍の将校であり、階級は中将。褐色の肌に口髭を蓄えた老紳士といった風貌で、一見すると豪快で大らかな性格で、上層部の将校とは思えない程に気さくでお茶目だが、これらは全て対外的に作った表向きの人物像に過ぎず、その本性は自らの目的の為に平気で弱者を切り捨てられる外道である(ブラッドレイが表向き作っていた気さくで軽いノリのキャラと同じである)。
又、キンブリーが入院した病院の女看護師によると、相当なスケベであり、劇中でもオリヴィエ少将の手や肩をいやらしく触り、彼女を「ぶった斬ってしまいたい!」と怒らせた。
グラマン中将とは幾つかの戦場で共に戦った仲で、彼自身も現場からの叩き上げである。口では彼の事を「あいつがあんな田舎で燻っているなんて勿体ない」と評価するような事を言っていたのだが、実際はホムンクルスに従わない存在であろうグラマンを東部に左遷した張本人だった。
作中での経緯
軍部上層部の緊急会議に召集されて、会議に向かう途中で中央司令部内にいたマスタングを偶然見かけて、後ろから声をかけて驚かせるという形で初登場する。
当初は中央に転勤したマスタングの将来を気遣い、緊張気味な様子で中央司令部内にいたマスタングを(この時の彼は自らの味方になり得そうな上層部の人間を探していた)、後ろからこっそり忍び寄って驚かせるなど、豪快で気さくな態度を見せていたが、マスタングが「大総統がホムンクルスである」というジョークを話した途端、上層部の席に連れ込んでそこで本性を見せ、他の上層部の軍人や大総統と共に彼に対して、「君は束縛されている」というプレッシャーを与えた。
本性は、己の目的である不老不死の為に平気で弱者を切り捨てる外道で、「不死など下らん」と言ったグラマン中将を東部へ左遷したり、イシュヴァール殲滅戦の計画にも参加していた。彼からすれば、愚か者(上層部に背く者)は皆排除され、国家の礎(賢者の石)となる存在であるらしい。
ただし、上記のマスタングとのやりとりの際には、最初に気さくな態度とマスタングの策謀の師であるグラマンの名を出す事で彼を油断させ、軍上層部に対して探りを入れようとしていた彼からまんまと「ブラッドレイがホムンクルスだと突き止めた」という情報を引き出すなど、駆け引きや腹芸には流石に長けている。そしてこの時彼が招集された会議というのが、まさに人柱候補達に関する話し合いの席であり、そこにマスタングをあえて連れ込む事で彼に圧力をかけた。
次に物語に絡むのはエルリック兄弟がブリッグズに来た時であり、傷の男との戦闘で腹部に重傷を負ったキンブリーを、金歯医者の錬金術師と共に見舞いに訪れ、キンブリーの持つ賢者の石で全快させた。しかし、ブリッグズでは時前にエルリック兄弟とファルマン准尉の協力でホムンクルス達の企みと国土錬成陣の存在を突き止めていたオリヴィエ少将に鎌をかけられ、「約束の日」が目前に迫り時間がない中で、一刻も早くブリッグズに血の紋を刻もうと焦っていた事から、ブリッグズのトップである彼女の口車(「年端も行かぬ子供を痛ぶるのは心苦しい」「老いる事が恐ろしい」と言った心にも無いハッタリ)にまんまと乗せられてしまい、上層部の思惑を喋ってしまう。
その後、ブリッグズの「弱肉強食」の掟を持ち出し、少将にスロウスを元のトンネルに戻させ、コンクリートで穴を塞がせた。しかし、トンネル内でプライドに捕食され、腕だけとなった彼女の部下スミスの死を「国家の繁栄には仕方の無い死」と見做した事により、激昂した彼女に「スミスの腕は左でしたか?右でしたか?」と言いながら腕を愛刀で貫かれ、彼女を射殺しようとするも、老害と罵られて斬殺された。
そしてその遺体は、皮肉にも彼女が流したコンクリートによって埋められてしまい、自分が文字通り国家の礎となるという過去の悪行に相応しい因果応報な結末を迎える。
なお、彼の斬殺後にオリヴィエの部下(ヘンシェル)がガッツポーズをするカットがあるあたり、それだけ忌み嫌われていたことがわかる(原作に至ってはヘンシェルから「その不老不死とやら、仲間を捨て国民を裏切ってまで手に入れるものですかね」と疑義を呈されている)。
彼の死を皮切りに、エドワード達主人公勢力によるホムンクルス一派への怒涛の反撃が始まり、今まで安全な場所に居座って陰で好き放題していた他の軍上層部の者達にも、徐々にその報いが降りかかる事になる。言わばレイブンは敵勢力崩壊の原因にして切っ掛けなのである。
その後もホムンクルス・ラースことブラッドレイに、レイブン中将殺害の件について追求されたオリヴィエに「あのような粗忽者」「いらんでしょうあれは」「聞きもしないのにベラベラと喋ってくれました」などと死んだ後までボロクソに罵られ、彼の空席にはその大胆さと強かさを気に入り、同時に彼女をブリッグズを掌握・監視する為の人質とする事を目論んだブラッドレイの命令で、オリヴィエ自身が座る事となった(ブリッグズは国土錬成陣の最後のポイントなので、上記の血の紋の件を含めてブラッドレイを始めとする軍上層部が、自分達の管理下に置く必要があったからである)。
またブラッドレイは、予めキンブリーに対して「レイブン中将の身に何かあった場合は、キンブリーに自身の代理として全指揮権を委ねる」という旨を秘かに伝えており、キンブリー自身もレイブンが行方不明になった件を知っても、少しも動揺しなかったばかりかむしろ好都合だとすら言っていた。さらにその後のブラッドレイが、オリヴィエにレイブン失踪の件を最初から確信を持って追求していた事からも、どうやらブラッドレイは最初から彼をブリッグズに探りを入れ、オリヴィエをブリッグズから引き離す何らかの口実を作る為のただの「捨て駒」として、ブリッグズに送り込んでいた模様(ブラッドレイへの定時連絡をキンブリーが直接行っていた事からも、実際にブラッドレイが現場指揮官として送り込んだのは最初からキンブリーだった事が窺える)。
アニメ版(FA)では、コンクリートに埋まる間際まで不老不死に執着していた。
余談
オリヴィエ少将の話によれば、元々は純粋に国家を想いながら活躍する、勇敢で真っ当な軍人であったとの事だが、「お父様」の不老不死に釣られ、今のような性格に歪んでしまったらしい。その点は、アニメ版でもグラマンによって詳しく語られており、そういう人物だと知られていたからこそ、上層部に味方を探していたマスタングも、最初は彼に心を許してしまったのである。そう言った意味では、最終的にホムンクルスであるブラッドレイに捨て駒同然に扱われた事も含めて、彼もまたホムンクルスによって人生を狂わされた被害者とも言えるかもしれない。