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ローマ市民軍

ろーましみんぐん

古代におけるもっとも有名な軍団の始まりであり、そしてその基礎が完成した古代最強のアマチュア軍団。
目次 [非表示]

概要

ローマ帝国以前における、ローマがまだ共和体制であったころの軍団組織。

もっとも正確に語るなら、ローマ帝国以後の軍団もある基準で言えば『ローマ市民軍』なのだが、ここでは一般市民が「市民の義務」として一時的に兵役に就くことで編成される軍隊、という意味合いで使う。


特徴

基本的にローマ市民権を与えられた人々が『国家の危機』に際して、装備を自弁して招集、編成された、ギリシア文化圏におけるファランクス重装歩兵を構成した市民軍と同じである。

違いは、イタリアにおける山岳民族との戦闘を経て、突き槍と円盾による密集陣形からの押し合いから、剣と大楯、さらに投槍を主体とした白兵戦に特化したことである。

また、ファランクスが12列縦隊で一丸となって突撃するのに対し、ローマ軍は百人隊と呼ばれる歩兵小隊を格子状に3列、ハスタティ(第一戦列)、プリンキペス(第二戦列)、トリアリィ(第三戦列)といった形に布陣する。


そして何より、職業軍人でもない一年程度の兵役しか就かない市民なのに、傭兵はおろかガリアの戦士階級とタメを張れるとてつもない練度を誇った最強のアマチュアである。


参加"資格"

ローマ市民軍に参加する資格はあるのは、一定以上の財産を持っているローマ市民権の所有者のみであり、それ以外はたとえ裕福でも参加できない。財産がない場合は、免除という形になる。


ところでなぜここで徴兵対象とは言わず、参加"資格"なのか。

それは古代の市民軍と現代の国民皆兵は、源流は同じなれどイメージは大幅に異なるから。


今で徴兵というと『貴賤問わず、意に反して人生の自由を奪われる』といわれることが多いが、古代における徴兵とは『法律の保護や参政権など、市民の諸権利を所有し、装備を自弁できるほど裕福な民の義務』である。

市民国家と言われるギリシアでもそれは変わらず、貧困層も含めた市民が政治参加したのは、ペルシア戦争において『身一つで兵役義務をこなせるガレー船の漕ぎ手』として発言権が強まったからである。

言い換えれば、『市民軍に参加して義務を果たした市民』になってようやく『ローマ共和国』の国民になれるわけだ。今では当たり前の権利を手に入れるのも一苦労なのである。


そして共和体制末期、とある政治家によってローマ市民権とローマ軍の関係性が大幅に改変されたのだが、それはまた別の話。


各戦列の説明

ハスタティ(第一戦列)

10代後半から20代の若手が配属された最前線。軍務経験が0か浅い市民が配置される。


プリンキペス(第二戦列)

20代後半から30代の壮年層が配属された、事実上の軍主力。軍務経験が豊富で体力も充実しているため、だいたいはこの第二戦列の投入までで決着がつくことが多い。


トリアリィ(第三戦列)

以上の二つの戦列より年配で、どんなに危機的状況であっても逃亡しない、踏み止まって最後まで戦えるほど練度の高いベテランのみで構成される、文字通りの最後の壁。

その為か、他戦列よりも構成員数が少ない。

トリアリィを投入する、とは『最終手段』『危機的状況』という意味合いとされている。


その他

これ以外にも騎兵や投槍兵、投石兵といったものもあり、自弁が前提の市民軍ゆえに様々な装備が確認されている。

一応、財産に応じて求められた最低限の装備と配属先が定められており、騎兵には最富裕層の貴族、投槍兵などは体力はあれど投槍や石ぐらいしか用意できる財産がない庶民が成り手となった。

ちなみにだが、財産が全くない無産市民も市民軍の兵数に数えられたが、装備を用意する金がないので軍役義務もなく、『頭数』という部隊にぶち込まれている。

後日、彼らがローマ軍、引いてはローマ共和国の命運を握ることになるが、それはまだ未来の話。


装備

基本的にローマ軍団と言われて想像される装備構成は、共和体制初期には既に完成されていたと考えられている。

基本的な装備は剣と大楯、対盾用に特化したピルム2本であり、自弁した鎧などを装備している。

第一、第二戦列は上述の通りの白兵特化装備となるが、第三戦列のみはギリシア式重装歩兵と同じ槍と盾装備になっている。

かの有名なグラディウス・・・というか、グラディウスがそもそもラテン語で『剣』。

映画などでよく見る短いグラディウスが採用されたのは共和体制中期ごろ。

短い刺突向けの剣はイベリア半島の部族兵の影響で採用されたと伝わっている。

投槍(ピルム)

散兵として戦う投槍兵のジャベリンよりはるかに重い重投槍。

グラディウスと並んでローマ軍を代表する武器。

重量があるうえ、細長い鉄製の穂先を持っており、当時の盾ならだいたい貫通し、しかも細長い穂先が曲がるため、再利用もできない重い槍が刺さった状態に。

敵は重くなった盾で戦うか投棄するしかなくなり、白兵戦では大きなハンデになる。

代わりに白兵では扱いづらく、騎兵やガリア戦士のような猛烈な勢いで突撃してくる兵士に対して投げる暇もないために苦戦を強いられる。

大楯(スクトゥム)

ギリシア式重装歩兵が使うホプロンよりも縦に長い、体の大半を覆う大楯。

かなりの重量があり、ホプロンのように肩掛け紐もないが、防護力に関しては他の追随を許さない。

突き槍(第三戦列のみ)

ギリシア式重装歩兵と同じ槍。上述のピルムが不得手な敵に対しても有効のため、非常時には第一戦列が第三戦列よりこの槍を受け取って戦闘に入る場合もあった。

雑多

上記の兵装はだいたい統一されていたが、これに関しては自弁ということもあって各人においてバラバラである。

一応、胸当てや脛当てを要求されていたが、胸当てといってもギリシア式筋肉鎧、ガリア式鎖帷子、底辺は一枚板をぶら下げただけの胸当てまで。

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