概要
スポーツメーカーのNIKEが2013年より開発をはじめ、2017年から最初となる量産モデルの販売をはじめたランニングシューズ。厚底構造中にカーボンファイバープレートを挿入することで、長距離走が強いとされるアフリカ系ランナーに似通ったランニングスタイルへ導いてくれる画期的なシューズとして注目され、実際に使用したランナーがあらゆる大会で大会新記録を更新している。
流線型を多用したスタイリッシュで洗練されたデザインも人気があり、ランナー以外の層からも人気を得ている。
性能問題
水泳界で2000年代後半に問題視されたSPEEDO社のレーザーレーサーと同じく、ヴェイパーフライを使用するか否かで記録が変わるならドーピングと変わらないとする論が過熱し、国際陸上連盟も国際大会で使用禁止とする方針を一度イギリスメディアに明かした。ほどなく、国際陸連は厚底4cm以上のシューズを大会で使用することを認めない声明を発表。ヴェイパーフライの全面禁止は回避されたが、新型シューズ使用に当たり試作品を陸連へ提供するよう企業側に義務付けるなど、将来的な規制強化策を検討している旨も示された。
靴である以上、あくまでもランナー次第で記録は変わるのでヴェイパーフライが絶対的に優れていると言うわけではないが、非公式記録とはいえヴェイパーフライを履いたランナーがフルマラソン2時間切りを達成している点からも、ヴェイパーフライの性能の高さは折り紙付きである。
現在では、「厚底のソールにカーボンプレートを組み合わせる」というヴェイパーフライのレイアウトは各社に広がっており、その影響力は計り知れない。
デメリット
ヴェイパーフライはランナーの走り方を矯正するシューズであるため、走りこなすには相応の技術が求められる。有り体に言えば玄人向けの運動靴であり、初心者が履いて走ったとしても速く走れるとは言い難い。
また、ヴェイパーフライのようなカーボンプレート搭載シューズの問題点として、壊れやすく寿命が短いという点が上げられる。これはカーボンプレートの寿命がそもそも短く、靴底の寿命よりも先にへたってしまうのである。
製造工程が特殊であることから、カーボン搭載シューズは平均価格が2~3万円台と高価であることも欠点と言えば欠点である。
記録更新例
箱根駅伝
初期型モデルのヴェイパーフライ4%が発売されて1年半経った2019年の本大会では約4割の選手がヴェイパーフライ_4%を履いて大会に参加し、10区間のうち5区間で区間新記録が更新されるハイスピードレースとなった。
そして2019年春に次世代型のヴェイパーフライネクスト%が発売されると、翌2020年の予選会では選手の大半がピンク色のヴェイパーフライを履く状況が生まれた。本戦の往路だけでも83%の選手がヴェイパーフライを着用するまでに至り、記録面では昨年を上回る10区間のうち7区間で区間新記録が生まれる異様な事態となった。こと往路の区間新記録を出した選手は全員ヴェイパーフライで走っていた。
大半の選手がケバケバしいピンク色のシューズを履いて走る姿はある種異様な光景であったことから、ヴェイパーフライは多くの視聴者の脳裏に焼き付いた。それからしばらく、ゲームや映像コンテンツといった各種メディアでピンク色のスニーカーが「速く走れる靴」のイコンとして使用されたほど、ヴェイパーフライが世間に与えた衝撃は大きかった。
種類
- 2017年:ナイキ_ズームX_ヴェイパーフライ_4%
- 2019年:ナイキ_ズームX_ヴェイパーフライ_ネクスト%
- 2021年:ナイキ_ズームX_ヴェイパーフライ_ネクスト%2
- 2023年:ナイキ_ズームX_ヴェイパーフライ_ネクスト%3